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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第十一章 従者編

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第221話 第二陣の生徒たち ――戦闘面子――

 カイトの武勇伝?に全員が聞き入っていた頃、下のミーティングスペースでもちょっとした集会が行われていた。


「と、言うわけで今日からコイツらが加わる。」


 そう言って巌の様な筋肉を持つ男が後ろに並んだ少年少女達を紹介する。彼等は第二陣の生徒達。今まで冒険部上層部の指示の下、慣熟訓練を行っていたのが、ようやく第一陣と共に依頼を受ける許可が降りたのである。


「さすがに宣誓などはしなくてもいい。しかし、今日以降は全員命の危険が伴う任務についてもらう事になる。決して、油断はするな。では、解散。」


 そう言って巌の様な男が解散を命じると、第一陣の面子が第二陣の面子へと激励とも茶化しとも取れる言葉を送っていく。


「ああ、夕陽……神崎と彩羽、七宮、神楽坂は残ってくれ。」


 そう言って巌の様な男は第一陣から4人残す。


「あら、私も?」


 事情は理解しているらしい弥生は、自分が呼ばれるとは思っていなかった様だ。


「どうしたんっすか?綾崎先輩。」


 一方、どうやら事情を聞いていなかったらしい少年は、そう言って綾崎に事情を尋ねる。少年は、茶髪の軽薄そうな男である。背丈は瞬と同じぐらいで、綾崎と異なり靭やかな筋肉を持っていた。


「ああ、夕陽。スマンな。お前達を上層部の連中に紹介しておきたくてな。」

「え?」


 その言葉に、集まった女生徒の内、二人が反応する。緊張に少しだけ身を硬くしていた。


「七宮もそう緊張しなくても良いだろう。俺達と同じ学園生だ。」


 そんな七宮を見て、綾崎は苦笑する。そういう綾崎だが、確かに、緊張したくなる気持ちがわからなくもない面子であった。


「それに、俺達と同じか、下だろ?年下にあがってっと神崎に笑われっぞ。」


 そう言って彩羽が茶化すように笑う。それに七宮は若干苦笑しながら反論する。


「そうは言ってもやっぱりあの面子じゃ、ねえ?」


 そう言って七宮は弥生に問いかける。


「あら、そう?私は部長が幼馴染みだし、その他の子もそれなりに知ってるからあまりそうではないわね。一条ともそれなりに付き合い有るし……」

「あ、そっか……神崎君は緊張しない?」

「そうっすよねー、俺も緊張はするっすよー。先輩だってそうっしょ?」


 この中で唯一一年生なのは神崎と呼ばれた茶髪の、軽薄そうな男だけである。彼はまったくそんな様子は見せず、笑っていった。


「お前が緊張している所見たいぜ。まあ、俺もあんま緊張しねえけどな。」

「せんぱーい。それは酷いっすよー。先輩だって神楽坂先輩の前じゃあがってたじゃないっすかー。」

「あ!お前!それ言うなよ!」


 そう言って茶化しあう神崎と彩羽。それがそれなりに続いた頃、綾崎が一向に終わらない漫才にしびれを切らした。


「お前ら、そろそろ執務室に行くぞ。」


 綾崎がそう言って一同を促す。


「うぃーっす!」


 その後を神崎が続く。更にその後に残りの三人が続いた。そうして一同が執務室の前に立つと、いつも騒がしい執務室は妙な静けさに包まれていた。そうして耳を澄ますと、中からはカイトとティナが何かを語る様な声が聞こえた。


「……会議中か?それにしては雰囲気が異なるが……」


 それにしては何かおかしい気もすると綾崎が首をかしげるが、会議中であれば尋ねるのも無礼か、そう考えて少しだけ待つことにする。


「入っていいぞ。」


 そうして少しだけ待っていると、中からカイトの声が響いた。それに綾崎が執務室の扉を開いた。


「すまない、少しいいか。」


 そう声を発した人物を一同が注目する。そうして一番始めに言葉を発したのは瞬であった。


「ああ、あやひ……綾崎か。どうした?」


 二人は同じ部活連の所属であり、会頭と副会頭という間柄であった。熱意溢れ、意思の強さが前面に出た一条と、意志の強さが表には出ない―出ないだけで熱意は普通以上に存在する―実直剛健な綾崎、バランスがとれていたのである。また、冒険部が出来るまでの第一陣では、違うパーティであったが、共に実力者として良く一緒に鍛錬をしていたのである。

 ちなみに、瞬は何時もの癖で名前を呼びかけたが、仕事中と思い、苗字で言い直した。なお、綾崎の名前は綾人である。


「ああ、一条。すまないな。会議中だったか?」

「いや、そういうわけじゃない。」


 周りからはそう見られていたのか、と瞬が苦笑する。実際は大きく異なっていたのだが。


「それにしては、静かだった様だが……」

「まあ、お前も何時かは聞く時が来るかもな。」


 瞬は既にカイトにはこの男が信頼のできる事を伝えていた。後はカイトの判断次第である。


「そうか……では、その時を楽しみにするとしよう。」

「ああ、そうしておけ。聞けば驚くぞ。」


 綾崎が小さく笑みを浮かべた事を見た瞬が、笑ってそう言った。その表情で、弥生は何があったのかを悟る。


「それで?何のようだ?」


 雑談はこの程度にしておいて、と前置きして、瞬は綾崎の来訪理由を尋ねる。


「ああ、第二陣の実戦的な訓練が終わったんでな。その挨拶にこさせた。」


 そう言って綾崎は後ろに居た4人を紹介する。


「順に神崎、七宮、彩羽、神楽坂だ。」

「ちぃーっす、神崎 夕陽です!よろしく!」

「七宮 夏奈です。」

「彩羽 亮だ。」

「神楽坂 弥生よ……と言うのは何か変ね。」


 綾崎の紹介に従い、4人は順に挨拶していく。


「なあ、カイト。この人選って意味あんのか?」


 その自己紹介を受けて桜と瞬が挨拶していると、ソラが小声で聞いてきた。


「まあ、実力の高い奴だろうな。今回は技術職メインとは言え、戦闘系が居ないわけでもない。来ているのは半分半分だな。」


 具体的には弥生、七宮が支援担当の面子、彩羽と神崎が戦闘系である。


「ふーん、まあ、弥生さんは知ってっけど、他のは?」

「ああ……彩羽先輩が剣道部副主将で、藤堂部長と共に全国大会常連……は知っているか。あの軽そうな一年の神崎は綾崎先輩と同じく空手部所属。此方は全国大会優勝経験者で、世界大会U-16の優勝経験有り。」


 ちなみに、これら生徒達の情報は全て桜か瞬経由で入手している。カイトは地球に居た時、こんな情報に興味は無かったので、知らなかったのだ。


「んが、まじかよ……」


 軽薄そうな見た目から実力を心配していたソラ。開いた口が塞がらない。


「なにげに今回の第二陣一番の期待株だな。」

「はー……人は見た目によらないってやつか……」


 そう言って話していると、カイトが左手を並んでいた第二陣の生徒達とは逆の方向へと伸ばした。そして響く、パンッという音。


「……まだまだだ。」


 そうしてカイトがそちらを向けば、そこには神崎が居る。彼がカイトに殴りかかったのだ。


「すっげー!今の見えてたんっすか!こっち向いてなかったっすよね?」

「まあな……弥生さん、けしかけないでくださいよ……」


 苦笑しながらカイトが襲撃をけしかけた弥生に文句を言った。


「あら、この程度は余裕でしょ?」

「ああ、……でも、勝手に試されるのは好きじゃない。」

「む、この程度ってのは少し心外っすね。」


 少しだけ癪に触ったらしい神崎がむっとしていた。


「お前も、全力じゃないからいいだろ。」


 そう言って神崎に向き直したカイトが笑う。


「まあ、そうっすけどー……もう一回、いいっすか?」


 そう言って拳を手の平に当ててパンッと音を出す。


「何回でも来い。」


 そう言ってカイトが立ち上がる。


「んじゃ、遠慮なく!」


 そう言って飛びかかる寸前、走る態勢のまま動きが止められる。


「後片付け面倒になるから、ここでそんなことしない!」


 そう言って二人の動きを制したのはユリィである。


「……すげ。」


 自らに悟られること無く、一切身動きが取れない現状を引き起こしたユリィに神崎が呆然と眼を瞬かせた。


「悪い。」

「もー……やるなら地下か練習場でやってよ。」


 カイトが謝罪したのを受けて、カイトに愚痴ったユリィは魔術を解いた。


「元気があるのは良い事だけどねー。も少し君も場所考えようね?」

「うっす……すんません。」


 さすがに悪いと思ったらしい神崎は少しだけ落ち込んだ様子でユリィに頭を下げた。


「まあ、もしオレとまた戦いたいなら、こっちで、だな。」


 そうしてカイトが示したのは、先ほどまでソラが座っていた机にあった一枚の書類である。


「なんすか?」


 カイトが持ちだした書類を全員が覗きこんだ。


「第二回トーナメント?」

「何だ、結局やるのか?」


 かつて出場経験のある綾崎が問いかける。最近力量が上がってきた事と第二陣が入った事で、再度模擬戦に似た事を多くやる生徒が増えていたのだ。その為、カイト達上層部の面々がやるかも、と言っていたのは聞いていたのだった。


「今回は団体戦とタッグマッチ、個人戦だな。どれに出ても良いが、団体戦だけは強制だ。団体戦とタッグマッチには防衛目標が設定される。それを潰すか、相手の全滅が勝利条件だな。」

「まあ、こういう機会でもないと、別の相手と組むこともないでしょうからね。」


 瞬とカイトが今回の企画意図の説明を行う。人数が増えてきた事により、団体戦が組めるようになっている。それで今回は集団戦をメインに鍛錬を行う予定であった。ちなみに、カイトが敬語なのは表向きは綾崎の方が年上だからだ。


「今回は賞品も出る。と言っても、まあ……何にするんだ?」


 瞬はそう言ってカイトを見る。よく考えれば、賞品を何にするかは決定していなかった。実はカイトは更にちょっとした理由から多少賞金も出す予定なのであるが、さすがにそれは伝えない。尚、賞金については理由含めてまだカイトとティナ、ユリィしか知らない。理由もあって、まだ伝えられないのだった。


「まあ、アクセサリーの予定だ。魔術的付与がされた物がベストだろう。」


 瞬の問い掛けを受けて、カイトが今の所の予定を告げる。アクセサリーと言っても高価な物を贈れば教員たちから問題にされかねないので、実用性重視にする予定である。


「とはいえ、デザインを重視しないわけじゃあない……と、いうことで、桜と瑞樹、弥生さん。後日少し付き合ってもらえるか?」


 人選はセンスの良い面子である。良家の子女二人に、現役読者モデル。人選としては問題ない。そうして、カイトから問い掛けを受けた三人は一度顔を見合わせて、弥生が代表して答えた。


「ええ、そういうことなら。」


 ということで全員から許可を貰えたのでカイトは数人で出掛けることを決定する。既に椿には告げてあるので、自身の予定の調整も終了していた。


「だが、お前らも出るのか?」

「個人戦には出ませんよ。出るのは団体戦とタッグマッチだけです。」


 綾崎の質問に、カイトが答える。カイト達上層部が出れば、それだけで個人戦には諦めが蔓延しかねない。それではトーナメントの意味がなくなってしまう。更に登録を促すため、賞品や賞金を設定したのであった。


「それに、集団戦では自分たちもバラバラに分かれます。おまけに、自分とティナは指揮しません。鍛錬は施しますが。」


 当然だが、学園内で最も戦闘指揮を執り慣れているのはカイトとティナである。兵士の質が同じで指揮官として二人が出れば、それだけで勝敗が決する。


「今回は影に徹する訳か……」

「ええ。さすがに我々が出張れば意味ありませんからね。」


 そう言って綾崎が考えこみ、カイトが苦笑する。


「成る程。わかった、手間を掛ける。」


 カイト達上層部の意図を把握した綾崎は、そこに疑問を挟む余地がないと悟ると礼を言った。


「いえ、これが役割ですので。先輩こそ、第二陣の総指揮、ありがとございました。」


 礼を言った綾崎に対して、カイトが礼を返す。さすがにカイト達が前に立つと言っても、それだけではカイト達に何かあった場合に問題となる。それ故、第二陣の総指揮はカイト達が直接指導していない綾崎に一任したのであった。


「構わん。俺にも良い経験となった。」

「ありがとうございます。」

「では、これから我々も最後の慣熟訓練を行ってくる。彩羽、夕陽。行くぞ。」


 そのやりとりを最後に、綾崎が踵を返す。後は実戦でもきちんと連携が取れるかどうか、という最後の確認が残っていた。それを終了して、初めて依頼へと出発するのであった。


「はい、お願いします。」


 そう言って綾崎が退出する。それに合わせ、彩羽と神崎が後に続いた。


「んじゃ、先輩!今度は絶対一撃当てるんで!」


 そう言って去っていく神崎を見て、ソラは苦笑する。


「俺達だってまだ出来てねえよ。」

「さて、オレがきちんと力量さえ抑えてやれば、出来るんじゃないか?」


 カイトがそう言って笑う。それに対してソラは溜め息を吐いた。


「経験も、抑えてくれりゃあなんとかなるんだけどな。」


 例えこちらが力量で上回っても、技術と経験で簡単に覆されるのである。十年以上の戦闘経験ばかりは、どうしても追い付き様が無かった。


「無理だな。」

「だったら言うなよ……」


 そうして、カイトと二人で笑うソラ。


「え?何?そんなに天音くんって強いの?」


 残る面子で唯一、カイトの正体を知らない七宮が興味を持つ。


「それは、まあ、トーナメントのお楽しみ、ということで。」


 そう言って意味深な笑みを浮かべるカイト。七宮はそれに納得したのか、それ以降は聞かなかった。そうして翌日、第二回トーナメントの告知がされたのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

 次回予告:第222話『第二回トーナメント』

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