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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第92章 コンベンション編

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第2320話 コンベンション ――会場入り――

 リデル領で開かれるコンベンションに研究施設の開設に伴う設備の購入の参考にするべくやって来たカイト率いる冒険部。移動日となった初日は特に何もする事がなかったため、カイトはティナ、灯里と共にリデル領リデル名物のフリーマーケットの散策を行っていた。

 そうしてフリーマーケットにて幾らかの掘り出し物を見付けた三人であったが、フリーマーケットの散策を終えた後はさらなる掘り出し物を求めてリデル内の店を回っていた。


「よーし。買った買った。こんだけ見付かれば今回は満足って所か」

「余も満足じゃのう。三百年ぶりじゃから色々と店が増えたが、店が増えればやはり掘り出し物も見付かりやすくなるもんじゃ」

「いや、まったくだ。やっぱ人が増えればその分粗悪品も増えるが、掘り出し物も増えるもんだ」


 どうやら三百年で街が復興・発展した結果、思った以上に掘り出し物が見付かりやすい土台があったらしい。無論それ以外の物も増えたし、店も増えたせいで当たり外れの幅も広がった。なのであくまでも今回は運良く多く見付かったと考えた方が良いだろう。そんな二人に、灯里がふと興味を抱いて問いかけてみた。


「二人からするとどっちが楽しい? 私コンベンションって参加した事ないからさー」

「んー……オレはどっちもどっちだなぁ……」

「余もそうじゃのう。こういうウィンドウショッピングは一個人として、コンベンションは技術者として参加しておるから、どっちも興味深い点は多いからのう。が、その方向性は全く違う。一緒くたには出来ん」

「あ、なるほど……確かにそう言われれば」


 ティナの返答に、灯里もなるほどと納得出来たらしい。彼女は確かに地球でも優れた研究者でエネフィアでも優れた研究者と成りつつあるが、それ故に学会には参加していてもこういったコンベンションには参加する機会はなかった。なので彼女は彼女でコンベンションはどんなものなのだろうか、と少し気になっていたようだ。というわけで、そんな彼女にティナが告げる。


「まぁ、コンベンションについては明日参加すればわかろう。別に堅苦しい場ではないし、大凡の土台はこれが作ったもんじゃから地球のそれと似ておる」

「あ、やっぱり?」

「優れた物、優れていると思う物はどんどん取り入れる。それがコヤツの優れた点と言えるじゃろうな」


 コンベンションの流れなど随所に地球と似通った点があったので、灯里はおそらく土台か改変をカイトがしているのだろうな、と思っていたらしい。そして案の定、カイトが色々とやっていたらしかった。というわけで、いつもの様に彼が裏話を教えてくれた。


「いや、実際さー。いろんな企業や研究所が逐一一つ一つ持ってこられても面倒だから全部纏めてやってくれ、って言ったんよ」

「あー……あんた大変そうだもんねー……」


 カイトの意見を求めて日に何人も訪れるだろう者たちの数を考えて、灯里は彼がそう言ったのも無理もないと思ったようだ。実は為政者として名を馳せていく後年の方が彼への謁見申し込みは多く、こういった技術関連の意見について求められる件数も後になればなるほど増えていったらしい。結果ついに業務がパンクしかねない事になり、コンベンションを開かせる事になったらしかった。


「大変なんてもんじゃない……月に数十件ってなったら手に負えん。コンベンション開いて一気に見た方が良いし、技術交流にもなる」

「あの頃はちょっとやばかったのう。まぁ、平和となり各方面で研究開発が出来る程度の余裕が生まれた、と喜ぶべき事なんじゃろうが」

「まぁなぁ……」

「なんというか……ご愁傷様というか」


 そもそも平和にしたのはカイト達であるが、その結果彼らは忙しくなっていったのだ。その様はまさしく忙殺というにふさわしかったようだ。なんとも言えない困り顔だった。とはいえ、困れば対処をするしかなく、結果としてコンベンションが普及する事になったらしかった。


「いーんだよ、平和になった証だから……ま、流石に忙しすぎたからウィルが介入したりする事になっちまったが」

「お主がパンクして倒れたからのう。いや、あれはフォローしきれんかった余らが悪いが」

「うーわー……」


 どうやら当時の忙しさは想像を絶したらしい。後にカイト曰く、もうどうやっても時間が足りないので、幾つもの謁見を同時に行った事もあったそうだ。

 やり方としては分身を使ったそうだが、流石にカイトの忙しさに相手も半笑い――相手も笑うしかない忙しさだったらしい――で仕方がないと了承してくれていたそうであった。と、それに引きつった様子の灯里であったが、ふとそこで何かに気がついた。


「……ん? 倒れた?」

「予定の調整が上手くいかんでダブルブッキングどころかトリプル、クアドラプル、最悪はクインタプルまでいった」

「それを対処しようとしたお主が阿呆は阿呆じゃがのう。断れば良いものを」

「あの時はしゃーなかった。誰も彼もが技術の蓄積がない時代だ。それで失敗したってんならこっちでなんとかしてやるのが上の仕事ってもんだろ」


 だから惚れられていくのだろうなぁ。灯里は恐らく予定調整のメイド達が失敗してはそれの尻拭いを全部やっていったのだろうカイトの姿を想像し、呆れながらも納得するしかなかった。というわけで、灯里は呆れながらも笑う。


「あんたらしいっていうかなんていうか」

「そう言ってもらえたなら何より。あんたの弟分はこっちでもいつも通りってわけだ」

「そういう事じゃありません」

「いってぇ!」


 ぱこんっ、と頭を叩いた灯里に、カイトが悲鳴を上げる。まぁ、この無理をしそうになり止められる数少ない人物の一人が灯里だ。その彼女が居なかった結果、と言っても良いかもしれなかった。というわけで、それからは再び灯里が説教を行ういつもの様子が見受けられながら時間は過ぎていく事になるのだった。




 さて、カイト達がフリーマーケットや各所の店で掘り出し物を求めウィンドウショッピングを行って一日。結局あの後は灯里の説教の後は普通にホテルに戻って買い集めた品を適当に確認して時間を費やし、夜は夜で灯里やティナと飲んで大人の時間を過ごし、として一日が終わる事となっていた。

 というわけで明けて翌日の朝。カイトは冒険部の人員を率いてリデル領リデルの郊外に設けられた大規模な会場に足を運んでいた。そうして足を運んだ会場では、中に入る前からある意味おもちゃ箱をひっくり返したような状況だった。


「ふわー……やっぱ昨日も見て思ったけど、すげー……これも全部、コンベンションに参加する物なんだよな?」

「ああ。基本的に中は小物。外は大型魔導鎧や戦闘用に使われる各種の魔道具がデモンストレーションを行うスペースになっている」

「外……そういえばこんなおおっぴらに出して大丈夫なのか?」


 どこか子供の様に目を輝かせたソラの問いかけに答えたカイトに、瞬は少しだけ不思議そうに問いかける。一応今日から二日間は招待客のみの限定公開で、そこでしか公開されないような品もあるという事だ。が、この様に会場の外にあっては丸見えで、そういった物がないか、それとも何かしらの対処が行われているかのどちらかしか考えられなかった。


「ああ、それなら問題ない。出発前にも聞いたと思うが、参加証は首に掛けてるな?」

「ああ……移動中は盗まれない様に仕舞っていたが」


 カイトの問いかけに、瞬は馬車から降りたと同時に首に掛けている参加証兼身分証明証を提示する。これが無いとこの二日間は会場には入れなかった。カイトが招待状を待っていたのも、この参加証があったからだ。


「よし。会場の近辺からおよそ一キロには特殊な結界が展開されていて、その参加証を持っていないと何も見えないんだ。簡易の異界化がされている、と考えても良い。もしくは位相が若干ズレているか、だな」

「そうだったのか」


 恐らく今見えているのはその結界の内側に入っているからなのだろう。瞬はそう理解する。そしてその認識が正解だった。


「ティナ。開会まで後どれぐらいだ?」

「まだ三十分はあろう。説明するなら、少し急がねばという所じゃが」

「ま、単に見てもらうだけだ。大丈夫だろう……ソラ、先輩。一回こっちへ」

「え、あ、おう」

「ああ」


 ちょうど良い機会なのでソラにも見せておこう、と思ったらしい。話は聞いていたが唐突に水を向けられたソラは若干慌てながらも、瞬と共にカイトの指示に従って数百メートルを一歩で移動する。が、相変わらず中は見えたままだった。


「……ここらへんで良いかな。二人共、一度参加証を」

「おう……あれ?」

「ん?」


 カイトに言われるがままに参加証を彼へと渡した二人であるが、すると途端に会場以外が何も見えなくなってしまう。そんな二人に、カイトは告げる。


「そのまま会場へ移動してみろ。<<縮地(しゅくち)>>で良い」

「わかった……ソラ」

「うっす」


 カイトが言うからには大丈夫なのだろう。瞬もソラもそう判断して、言われるがままに<<縮地(しゅくち)>>で会場へと移動する。すると会場へは移動出来たものの、先に立っていたはずのティナ達とすれ違う事はなかったし、それどころか昨日飛空艇からは見えたはずの各種の展示物は一切見えなかった。ということで、状況を理解した二人にカイトが告げる。


『二人共、これでわかっただろう? 昨日はまだ運び込みがあったから結界の展開はしていなかっただけで、今日は朝の段階でこの結界が展開されている。飛空艇からも何も見えない状態だ』

「「はー……」」


 カイトの開設に瞬もソラも感心した様に頷いた。そしてそういうわけで、外でデモンストレーションを行っても問題無いのであった。というわけで、説明が終わった事もあってカイトの所へ二人は合流。参加証を受け取ると、改めて中の状況がわかる様になった。


「あ……見えた」

「そういう事だな。これが無いとここから四日は見えないし、入る事も出来ない。いや、入れるは入れるがな。ただ、何もないだだっ広い空間が広がるだけだ」

「なるほど……」


 確かにこれなら問題無いだろう。瞬はカイトから語られた防犯対策に納得を示す。というわけで防犯対策に納得した三人は改めてティナ達と合流して、会場の中へと入っていく。


「参加証の提示をお願いいたします」

「はい」

「はい……確認いたしました。外に出るのは自由にして頂いて大丈夫ですが、中に入る場合は再度受付にて参加証の提示をお願いいたします」

「わかりました」


 当然だが、この二日間は招待客限定で公開されているものだ。なので出入りは事務員が立っており、しっかりと確認していた。そうして会場の中に入った一同であったが、まだ開幕までは幾分の余裕があった。なのでカイトはティナと少しの話し合いを持っていた。


「ティナ。一応、そっちは任せる。費用面についてはどっちかに応じて話をこっちに振ってくれ」

「わーっておるよ。まぁ、冒険部側以外でお主に話を振る事はまずないがのう」

「だろうけどな」


 <<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>の技術力はエネフィアでも最優だ。なので基本的には設備などの類も自前で用意する。こういったコンベンションで企業が一般向けに用意する物は買う事が無いのであった。無論、気になっても自分達で作れるので買う事はまず無いと断言してよかった。


「冒険部側でなにかがあったら連絡してくれ。それか、なにか興味深いものがあったらだな」

「うむ。その時は情報共有しておこう」

「頼む。こっちは特段無いとは思うが」

「じゃろうのう……ま、もし何か作って欲しい物が思い浮かべば後で言え。お主の場合、そこらのアイデアを出すきっかけになるじゃろうからのう」

「そうしよう」


 言うまでもない話であるが、カイトは武器も防具も買う必要は一切ない。というより、市販品の武器では彼の出力に耐えきれないし、市販品の防具では彼の敵の攻撃力には耐えきれない。意味がないのだ。

 というわけで、必要なのは良いなと思えたアイデアの方で後はそれをティナらが参考にして独自に落とし込み、カイト用に拵えるだけであった。そうして暫くの間二人はここからの打ち合わせを行い、開幕を待つことにするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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