表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第92章 コンベンション編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2355/3945

第2316話 コンベンション ――支度――

 <<偽りの書(アヴァンチュリエ)>>発見に伴う資料室の封鎖を受けて検討された封印の間移設。これの候補地となる場所を地下で見繕ったカイトであるが、彼はティナと共に更にその奥に設ける隠し部屋に関する偽装工作を話す事になる。

 これについては他の工事と一緒に行わせる事になったわけであるが、見積書の依頼など手配については発注こそ自身の署名を入れたものの後は椿に任せ、彼は改めて近々に迫るコンベンションへ向かう用意を整える事になっていた。そしてそれは冒険部上層部全体がそうで、瞬もまたその一人だった。


「はぁ……よし。これで大丈夫か。なぁ、カイト。本当に俺まで行くのか?」

「ああ……実際に使う事が多いのは先輩とソラだ。ギルドの実働部隊を率いる奴がコンベンションに参加する事は決して珍しい事じゃない」

「そうか……はぁ」


 今回のコンベンションであるが、冒険部からは技術班を代表して灯里とティナ、その他幾らかの研究を主導する者数名。更にはソラ、瞬の二名が実働部隊を率いる者として参加する事になっていた。

 カイトはこれとは別。規模から対外的なやり取りの場が設けられる可能性が高かったため、そこに参列するための参加だった。無論、彼も彼でコンベンションに参加する事は参加する。そんな彼はため息混じりの瞬に告げる。


「まぁ、こういう場に参加するのはいつもとは毛色の違う冒険者が多いだろう。そういうのを見ておくのも、悪くない経験だ」

「そうだがな……が、道具の良し悪しなんて使ってみないと一切わからん」

「それはそうだがな……どういう物が今後出るか、というのを知っておくだけで良い。実際、企業にせよそれを広く知らしめるためにコンベンションを開くわけだからな」


 やはり瞬はコンベンションに参加した事はないし、それはソラ達も変わらない。なのでどういう物かが想像出来ず、瞬は若干の気後れが生じてしまっていたようだ。


「そうか……」

「ま、とりあえず参加してみろ。どうせ今後は何回も参加する事になる。雰囲気になれない事にはな」

「そう……だな。わかった。そうしよう」


 どうやらカイトの言葉で瞬も少し前向きに考えられたようだ。一つ頷いて改めて書類に向き直る。と、そこにソラが執務室へと戻ってきた。


「うぁー……ただいまー。なんとか片付いたー」

「おう、お疲れ……被害状況は?」

「特に問題なーし。いつもの依頼の範疇ってとこ」


 カイトの問いかけに小規模の遠征隊を率いてコンベンション前最後の大規模任務に臨んでいたソラが一つ首を振る。すでにコンベンション開始の週に入っており、渡航許可も確保済みだ。

 この日からは日帰りの依頼は受けられても数日掛かる依頼は受けないようにしていた。ソラはその前の最後の依頼を請け負ったのである。そんな彼は自席に戻るとそのままカイトへと気になっていた事を問いかける。


「で、お前の方こそ出る前に出てた救援要請はどうだった?」

「そっちも問題ない。被害もなかった。隊長が良かっただろう」

「安西はそこら慎重な男だ。安心して任せられる」


 どうやらソラが出立の直前に発せられた救援要請を出した部隊を率いていたのは、安西という男だったらしい。瞬はカイトの言葉に一つ同意の言葉を付け加える。というわけで上層部男子勢が勢揃いしたわけであるが、そこから行う事は味気ない書類仕事だけだ。というより、執務室に居る全員が、である。


「御主人様。設計事務所から例の件で見積書が」

「そうか……うへ……やっぱ高いか……見積書、ティナに回してくれ。妥当かどうか確かめさせる」

「かしこまりました」


 椿の持ってきた見積書を見て盛大に顔を顰めたカイトであるが、そのままティナへ送付する様に指示しておく。基本こういった増改築の相場は彼女の方が詳しい。魔術師は自分で自分の工房を作成する事も多く、彼女ほどであれば数個工房を持っていたからだ。というわけで、更に支度を進めること暫く。今度はルーファウスがやってくる。


「カイト殿。少し良いか?」

「うん? 時間が掛かる話じゃなければ」

「それはわからんが……『振動石(ヴァイブ・ストーン)』の件だ」

「それか。聞こう」


 『振動石(ヴァイブ・ストーン)』を広く普及させ邪神の洗脳に対する対抗策を早急に立てる、というのはカイトにとってかなり重要な事項だ。なのでその報告を持ってきたのであれば、今の仕事の手を止めてでも聞く価値はあった。


「まず本国から礼があった。送ってくれて感謝する、と。これはその書状だ」

「確かに受け取った」

「ああ……それで引き続きこの件については俺から情報提供をして良い、と言われた」

「そうか……わかった」


 現状、教国を裏から操る<<死魔将(しましょう)>>達はまだ動くべき時ではないと考えていた。なのでルーファウスを介して研究開発や必要な情報は提供しようと考えている様子だった。

 というわけで、彼を介して教国の考え方や今後のルーファウスの行動の指針などを話し合う事になるが、それも暫くして今度はエードラムと今回の一件で話し合いがある、と彼は再度執務室を後にする。それを見送って、カイトは再度書類仕事に勤しむ事になるのだった。




 さてカイト達がコンベンションに参加するべく書類仕事に勤しんで数日。とりあえず優先的に書類仕事に精を出した事もあり、なんとか数日は空けられる様になっていた。というわけで、リデル領に向かう面子はひとまず空港に集合して移動する事になっていた。


「よし……とりあえず点呼も確認した、と」

「うむ。技術班も問題なしじゃな」

「おっしゃ……じゃあ、後は出発の手続きだけ済ませて移動を待つだけか」


 ティナの返答に一つ頷いたカイトは、後は待つだけを明言する。今回は人数が人数だし、何が大掛かりな買い物があったとしても後で送り届けられる事になる。

 なので飛空艇を出す事はなく、マクスウェルとリデル領を往来する飛空艇に乗って移動するつもりだった。というわけで、特段の問題もなく飛空艇に乗り込んで一同は到着を待つ事になる。その道中、暇である事もあってふとソラが問いかけた。


「そういやさ。今回なにか見たい物とかあるのか? 一応俺もリストは見たけどさ。特にこれってのは思いつかなくてさ。トリンとも話はしてるんだけど……基本今のままで問題ないっちゃないから」

「そうだなぁ……見たいものが無いか、と言われればあるにはある。例えば通信機の新型とか見ておきたいからな」

「あー……通信機か。確かに新型、見ておきたいよなぁ……」


 カイトの指摘に、ソラはなるほどと思ったらしい。そして改めて確認してみれば、意外とそんな感じで少し見たいな、と思う物は幾らかあった。


「だろう? 他にも小型の冷暖房器具もこれからの時期を考えれば見ておきたい物の一つだ。野営地を設営するのなら、特にな」

「あー……確かにそう言われればあったら便利だよな。他にも除雪機の類もあったら便利か」

「そういう事だ。現状、冒険部で保有していなくて必要になりそうなのはいくらでもある。まぁ、敢えては語らないから、自分が必要と思う物を見れば良い」


 今回、カイトは敢えて色々と語らずにコンベンションに臨ませていた。何が必要になりそうか、と考えさせるためだ。とはいえ、それでは意義が掴めない可能性はあったため、ある程度の意図は語っていた。


「そか……わかった。りょーかい。別に買わないといけない、ってわけでもないんだろ?」

「そりゃ、コンベンションだからな。展覧会や博覧会だ。出店側も買ってね、というよりこういう製品出すからよかったら意見聞かせてね、という趣きが強い」

「りょーかい。それなら安心だ」


 カイトの言葉にソラは再度の安堵を滲ませる。兎にも角にもやはり彼にせよ瞬にせよ困るのは買わないといけない状態に陥ってしまう事だ。その心配が無いとわかっただけでも、この話に意義はあったと言えただろう。そうして暫く待つ事になるのであるが、そこで今度はふと瞬がカイトへと問いかけた。


「そういえばカイト。今更なんだが……ふと気になった。一つ良いか?」

「うん?」

「リデル領はどんな所なんだ? リデル家が商家だというのは聞いているが……詳しくは聞いた事が無い気がしてな。ソラは?」

「そういや……俺も聞いた事無いっすね。トリンは何回か行った事あるって話してましたけど……あいつともリデル領についてはそんな話してないっす」


 瞬の問いかけを受けたソラが、こちらもまたそういえば、と少し興味深い様子でカイトを見る。やはり二大公五公爵の一つに挙げられる以上は名前は良く聞くし、なにか量産品を買う時にふと手に取るとリデル家が運営する企業の商品だと言う事はよくある。

 なのでソラ達も聞いた事が無いわけではないが、詳細を知っているかと言われれば首を傾げるしかなかった。というわけで、やはり同じ公爵として同じ公爵の事は基本しっかり熟知しておく必要があるカイトが口を開いた。


「そうだな……リデル家はハイゼンベルグ家と共に皇国でも中央付近に位置する場所を領有している。ただしハイゼンベルグ領が皇国の中央でも北側に近く、リデル領は若干南側だ。南方の国々との商売を取り仕切っていたわけだ。その名残で、今でもリデル領では南方の商材は主力商品の一つになっている」

「そういや……確かに贈答品で南国フルーツを貰うとすると、リデル家のマークが入ってたりするな」

「そうだな。南国フルーツはリデル家でも力を入れている商品だ」


 やはり組織として上層部に居るとなにかと贈答品などを贈る機会もある。そういう場合にフルーツを選ぶ事は地球でもエネフィアでも一般的であり、ソラも瞬も付き合いの一環で買った事はある。そういう時、リデル家の紋章が入っていたのを思い出したようだ。


「他にも傘下の企業の中には飛空艇の開発をしている企業があったり、冒険者達が使う道具の研究開発を行っているような研究所も保有している。貴族の中でも比較的研究開発を行っている家と言えるだろう。それ故に学問としても盛んな面があり、軍事に長けたブランシェット家に対してリデル家は文治に長けていると言われる事もあるな」

「「へー……」」


 改めて語られるリデル家の特徴に、ソラも瞬も感心した様に頷いた。というわけで、そんな二人にカイトは更に続けた。


「そしてそういうわけだから、皇国ではマクダウェル領と並んで比較的展覧会や博覧会……コンベンションや学会は多い。まぁ、学会は神殿都市の関係から流石にマクダウェル領以上とはならんがな」

「コンベンションになにか違いはあるのか?」

「良い質問だ……そうだな。マクダウェル領で行われるコンベンションは本当に技術的にまだ研究開発段階の物が発表される事が多い。それに対してリデル領ではもう研究開発もある程度終わり、商品化の目処が立っている『商品』と言える物が発表される事が多い。新製品、というわけだな」


 それで今回も買える物はあるだろう、という事だったのか。ソラは自身の質問に対するカイトの返答に、そういう事だったのか、と納得する。そしてそういう事なら、と彼は口を開く。


「ということは……結構商人の人は来そうだな」

「ああ。だから今回のコンベンションもスーツなどの礼服着用が基本的なマナーだ……まさか忘れてないよな?」

「きちんとしてるよ」

「俺も忘れてはない……はずだ」


 カイトの確認に対して、ソラも瞬も一つ頷いた。こういうコンベンションに参加したり招待されたりするような冒険者であれば、スーツの一つも持っていた。なので今回は冒険者が来ていても全員がスーツや礼服という珍しい光景が見られる見込みだった。


「なら、問題無いな。ま、流石に冒険者に礼儀作法を求める事は無いから、そこまで肩肘張って考える必要もないが」

「そうか……リデル領そのものの気候とかは?」

「うーん……気候ねぇ……さっきも言った通り、南方に位置しているから比較的温暖といえば温暖か」


 瞬の問いかけに、カイトはやはり特に自分達の活動に関係が無いからか少し気を抜いた様子で思い出しながら答えていく。そうして、これから暫くの間三人はリデル領に関する事を話しながら移動の時間を潰す事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ