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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第92章 コンベンション編

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第2315話 コンベンション ――改築――

 リデル家で開かれるコンベンションに向かうにあたり幾つかの出来事への対処を行いながら日々を忙しく過ごしていたカイト。そんな彼は『リーナイト』にてユニオンの会報に関する話を終えると、灯里からギルドホームにある資料室の更に奥。封印の間と俗称されている一室で起きている異変を聞く事になる。

 それを受けて封印の間の調査を開始したカイトであったが、原因は一千年ほど前の錬金術師が記した<<偽りの書(アヴァンチュリエ)>>という魔導書が灯里を主人と定めた事だった。というわけで、封印の間の出来事に対応した彼はその後、桜の提案を受けて封印の間移設に関する話を行う事になるわけであるが、それも一時間ほどで大凡が詰められて移設の候補地を直に確認する事になっていた。


「そういや、確かにここらは空き部屋が多かったか……ここの有効活用、なにか考えないとなぁ……」

「そうじゃのう。地下のダンスホールについては修練場に改修しこそしたが……こっちの小部屋については何もしとらんからのう」


 元々、冒険部のギルドホームは高級ホテルを改修する形で設けられている。例えば居住エリアは家具類の入れ替えこそ行えどそのままだし、執務室も元はといえば事務室を改修する形で設けている。

 なので高級ホテル時代の名残はそこかしこに残されており、使う見込みの無い地下の一部は未改修のままだった。というわけで、放置されていた未改修のエリアの一角を封印の間として改装しよう、となったのである。


「で、改装するは良いがどうするんだ?」

「それなんじゃが、ひとまずは普通には入れぬ様にする必要がある。なので些か手間ではあるが、魔術で異空間を接続したい所じゃ」

「面倒ではあるが……最悪の事態を想定すれば必須か」

「うむ。まぁ、ウチの地下も同じ事をしておるし、魔導書を所蔵する部屋を設けるのであればその程度はせねばならん」

「本来しなければならないのを延々放置してたウチが悪い、か」

「そーいう事じゃな」


 若干苦い顔のカイトの言葉に、ティナも少しだけバツが悪い様子で頷いた。やはり彼女は魔女。魔導書などの扱いには一家言存在しており、現状を改めて再認識すると些か看過できないと思ったようだ。とはいえ、カイトはそうではないのですぐに気を取り直す。


「ま、今更だがしっかりやっておこう。で、そういうって事はあれか? いつもの隠し部屋パターンか?」

「うむ……表向きの封印の間と、更にその奥に隠し部屋を作って更に重要度の高い資料はそちらに秘蔵する形じゃな」

「となると、ある程度の広さが必要か……」


 ティナの指摘にカイトは地下の見取り図を確認しながら、それが可能なスペースはどこだろうか、と確認する。そうして、彼が通路の奥にある物置部屋を指差した。


「あそこ……だろうな。一番良いのは」

「奥の物置部屋か。確かに悪うは無いのう。一度部屋を見てみるか」

「ああ」


 地下には幾つか用途に分けた物置が存在しており、その内幾つかはすでに地下の修練場にて訓練をする者たちのための物置や更衣室として転用している。が、今回カイト達が書庫として流用しようとしているのは奥まった所にあり、利便性の観点からそういった転用から除外されていたものだった。

 というわけで、殆ど誰も入らなかった物置部屋であったが、幸いな事に付喪神達により手入れは行き届いていた。なので埃っぽくなく普通に立ち入る事が出来た。


「ふむ……うん。良いんじゃないか? 広さとしてはこじんまりとしているが……」

「大凡二十畳程度……かのう。まぁ、どうせそこまで仰々しい物はおかんし、管理を考えればこの程度で良かろうて」

「だな……さて。これで表向きは決まったとして。奥を更にどうするか、か」

「業者に頼まねばならんが……そこは仕方があるまいて」


 今回、カイト達が考えているのは広く通達を出した上で許可制で閲覧を可能にした魔導書などを封じる封印の間と、更にその奥にギルドの上層部や隊長などを務める者限定で把握している秘匿性の高い隠し部屋だ。


「金は掛かるが……必要経費か。業者も専門の業者に依頼……いや、今回の場合は設計から依頼か」

「うむ……まぁ、お主の知り合いにそういった知り合いは一人二人はおろうて。それに頼むのが良いじゃろう」

「そうだな……」


 今回は既存の構造を活かすのではなく、既存の構造に継ぎ足す形で設備を設けなければならないのだ。しかも魔導書などを封じる構造も必要だ。専門の設計士に設計図の作成から依頼せねばならず、工期も比較的長くなる予定だった。と、そんな事を考えるカイトであるが、地下にも居る人の気配を読み解きながら深い溜息を吐いた。


「んー……工期が長いし費用が掛かるから、と今まで放置してたのが悪かったっちゃ悪かったんだが……人が増える前にやっとくべきだったなぁ……」

「増改築の工事になると、どうしても人が入らねばならんからのう。そこらの言い訳も必要となろう」

「定期メンテナンス、じゃあ通じんかなぁ……」


 どこか困り顔で、カイトはここの増改築に関する言い訳をどうするか考える。当然だが隠し部屋は一般から隠されていなければ意味がない。なので上層部は別にしてこの部屋の事は一般のギルドメンバーには伏せる事になる。

 ということは、改築に関しても密かに行ってもらう必要があった。というわけで、そこらを物置部屋に放置されていた荷物に腰掛けながら、二人は話し合う。


「なにか妙案は無いか?」

「そうじゃのう……兎にも角にも大前提はバレてはならぬ、という事じゃ。が、すでにギルドの人員は当初より増え、地下の利用も始まった。これでバレぬ様に手配するのは難しいじゃろうな」

「そこなんだよな……どうにかしてバレない様にしつつ、ここの改築を行う必要がある。ある程度の日程なら、封印の間移設に伴うメンテナンスでも良いんだが」


 再度の現状の再確認を行うティナの言葉に、カイトも再度の現状確認を行う。それにティナもまた頷いた。


「うむ……が、それは現状難しい。となれば、なにか別の工事に偽装してここの改築も行わねばなるまい。であれば、なにか丁度よい工事はないか。そこじゃな」

「丁度よい工事ねぇ……そう都合良くほいほいと工事が出てくるもんか」


 あれば儲けものなんだがね。カイトはティナの提案に一つ考えを巡らせる。そうして自身の脳裏に魔術で展開した今までいずれ、となっていた話を思い出す。と、そんな彼がふと笑みを浮かべた。


「……ああ、そうだ。一個だけあった。工事の場所やらを隠しながら、かなりの日程を掛ける事が出来る工事が」

「ふむ?」

「裏口だよ。ものすっごい昔だが、何回か戦争になった場合の話を話した事があったろ?」

「ああ、そういえばそういう事もあったのう」


 戦争。これは勿論、国と国や貴族と貴族が戦う戦争ではない。ギルド同士が戦う事を指していた。これが一番最初に話に出たのはユニオンの歴史について学ぶ時――ユニオン設立前のギルド戦国時代に話が及んだため――の事だ。それ以後も何度となく話は出たのであるが、どのタイミングも別に考える必要はないだろう、と特段話題にもならなかったのである。


「結局何回か話に出たものの、あれはクズハと話さねばならぬが故に立ち消えたんじゃったか」

「そういう事だな。まぁ、話さなきゃならんってわけでもないから単に費用掛けてまでやる必要が無いってだけだったんだが……」

「一度は本格化したといえば本格化したがのう」

「同盟締結の折りな」


 ようやく話を思い出したらしいティナに、カイトもまた一つ頷いた。同盟締結に関する会議を開いた際、万が一に備えて脱出路を設けるべきでは、という話が本格化したらしい。が、その後はすぐに色々とあったせいでそれも結局そのままだった。


「そうだな……そこでクズハと話をしていた体で工事を開始させるか。費用の捻出が面倒になるが……」

「そこは仕方があるまい。そもそもやらねばならぬ工事を放置しておったのが悪い」

「まぁな……しゃーない。これも必要経費と考えて予算に含めるか。また予算を組まなきゃならんが……あー。色々と稟議する事があるから、それと一緒にやっちまうかぁ……」

「そうしておくのが良かろう。あまり遅らせられる事でもないからのう」

「となると、ここからはまず見積り依頼出さないと、か……」


 やる事が一気に増えちまった。カイトは肩を落としながら、ここからしなければならない事を口にする。が、やらないと先程の灯里の様に事あるごとに資料室を封じなければならないのだ。研究も行っている冒険部にとって資料室の封鎖は深刻で、座視して良い事ではなかった。というわけで、カイトとティナは戻って早速見積もりを出す手配を行う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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