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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第91章 新たな素材編

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第2295話 未知の素材 ――更に下へ――

 『振動石(ヴァイブ・ストーン)』を求めてルナリア文明時代の非合法組織の隠れ家へとやって来ていたカイト率いる冒険部。そんな彼らは半ば崩壊した非合法組織の隠れ家を見つけ出すと、まずは各所に住み着いた魔物の討伐を実行。ある程度安全が確保された所で、遊撃として一人で動いていたカイトは遊撃を切り上げ同じく遊撃として動いていたカナタと合流。そこで少しの雑事を行う事になったものの、彼女と共に最下層にあるという採掘エリアに続く通路を進んでいた。


「そういえば……ふと思ったんだが、採掘エリアがあるという事は精錬施設もあるという事なのか?」

『あるにはあると思うがのう。詳しくはわからん』

「なにか情報は無いのか?」

『無いよ。が、流石に採掘エリアがあって精錬や鋳造を行う場所が無いというのは思えぬ。何かしらは、そこにあると思うべきじゃと思うだけじゃ』


 カイトの問いかけに対して、ティナはあくまでも推測である旨を明言する。そもそも手に入っている地図だって、ヴァールハイトが末端用にと配布されている物を手に入れたというだけだ。隠しエリア等は記載されておらず、記載されていないだけで存在している可能性は十分にあり得た。


『そもそも、余らはここがなんのための施設かさえわかっとらん。わかっとるのは非合法組織の隠れ家というだけじゃ。なぜここに設け、何をするために作られたのか。そこは不明なまま、ここに入っておる』

「単に『振動石(ヴァイブ・ストーン)』があるというだけ、か」

『そういう事じゃのう』


 カイト達は別にここに遺跡の発掘等に来たわけではない。目的はただ一つ。『振動石(ヴァイブ・ストーン)』の確保だ。結果的にそれがこの施設の採掘エリアにあるというだけで、『振動石(ヴァイブ・ストーン)』が採掘出来るのであればこの施設で無くても問題は一切なかった。というわけで、そこらに視点を向けた二人は改めて現状を見直してみて、思う所を口にする。


「一度、この施設が何を目的として設立されている物か調べる必要がありそうか」

『そうじゃのう……そも目的が『振動石(ヴァイブ・ストーン)』にあるだけで、それ以外を調べんで良いわけではない』

「どうする? やっとくか?」


 現時点で皇国が保有する最高戦力たるカイトとエネフィア有数の頭脳であるティナが揃っている状況というのは、皇国として見てみるとなにかが起きた場合でも万全を期して対応出来る状態と言える。

 万が一を考えるのであれば、この状態で調べるのがベストと言えた。そしてそれ故に、カイトの問いかけにティナは頷いた。


『そうじゃのう。『振動石(ヴァイブ・ストーン)』が見つかり次第、一度調べておくのが良いやもしれん。が、そこまで本腰を入れる必要もない。先にも言うたが、あくまでも目的は『振動石(ヴァイブ・ストーン)』。それさえ手に入ればここが何であろうと余らには関係がない……なにより、どうせろくでもない事は確定しとろうからのう』


 どこか呆れるように、ティナはこの施設に対して吐いて捨てる。そもそもここは非合法組織の隠れ家だ。その時点でなにか非合法な匂いしかしていなかった。それに、カイトも笑って同意する。


「まぁな……わかった。地下の採掘エリアの探索が終わり次第、空いた人員には安全なエリアの探索を行わせてくれ」

『そうしよう。ここからどれだけ時間が掛かるかもわからぬし、人手を余らせる意味も無いからのう』

「後はま、その時々で考える事にしますかね」


 ティナの返答にカイトは一つ頷いて、後はなにかが起きた時に考える事にする。何が起きるか、なぞわからないのだ。というわけで、後はその時に考える事にした彼はカナタと共にそのまま歩いて最深部である採掘エリアへと向かっていくのだった。




 さて、この施設の設立目的を調べる事にして暫く。カイトとカナタの二人は道中数度魔物と遭遇しながらも、危なげなく最深部である採掘エリアへと続く最後の階段を抜けていた。


「……ティナ。階段を下った。ここまではまだこちらの姿は捉えられているな?」

『うむ。そこまではまだお主らの姿が映っておる』


 ここから先は魔物が居るかどうかさえわからない領域だ。故にわずかに声のトーンを落としたカイトの問いかけに、ティナはまだ見えている事を明言する。それに、カイトは一つ頷いた。


「よし……改めて確認だ。この次の曲がり角以降、監視カメラは使えなくなってるんだな?」

『うむ。地図によるとその更に先に採掘エリアがあるらしい。が、カイト。わかっとると思うが、そこの階は施設の掃討に含まれておらん。基本は魔物がおるものとして考えよ。まだこちらには何も映っとらんがのう』

「あいよ」


 あくまでも監視カメラに映っていないだけ。ティナの言葉にカイトは軽い様子で応じながらも、油断は一切していなかった。というわけでなるべく足音を立てないように注意しながら、二人は曲がり角へと近づいていく。ティナが見れている監視カメラはここの曲がり角に設置されている監視カメラまでだった。そしてそこまでは数分の距離だ。言っている間に、二人は曲がり角までたどり着いた。


「……着いたぞ」

『気を付けよ。何がおるかわからんぞ』

「わかってる……カナタ」

「ええ」


 曲がり角の壁に張り付きながら、カイトはカナタと一瞬視線と身振りのみで会話する。そうして一瞬で意思を伝達した両者であるが、カナタが武器を魔銃に切り替えて二人同時に壁から飛び出した。


「「っ」」


 もしこの先に魔物が居た場合、カナタが魔銃で牽制を行っている間にカイトが肉薄し切り捨てる。そんな意図で同時に飛び出した二人であるが、幸いな事に通路には一切魔物は存在していなかった。そうして飛び出した二人が見たのは、巨大な隔壁であった。


「……ティナ。通路に敵影無し。が、代わりに巨大な隔壁がある。こいつは見えてないのか?」

『見えておらんのう。が、おそらくそれ専用に監視する監視カメラがあったんじゃろう。丁度採掘場隔壁と名前が付いておる』

「りょーかい」


 ティナの返答に、カイトは一度天上を見回してみる。すると、わずかに斜めになっている監視カメラが確認できた。


「……あった。ティナ、壊れた監視カメラを見付けた」

『壊れた、か。お主の目算として、破損の度合いはどの程度じゃ?』

「修理不可能な破損……ではなさそうか。これは……ああ、単にケーブルが断線しているだけみたいだ。なぜかはわからん」

『なるほど……ちょい待っておれ……良しヘッドセットの画面をこっちに回した。なるほど……このタイプであれば、ケーブルは……』


 いつもの事であるが、カイトのヘッドセットにはカメラが仕込まれていてそちらの映像は別に確認出来るようにしていた。今はオペレートのために施設のコンソールを使っていたので見えないだけだ。

 というわけで、そちらの映像を施設のモニターでも見えるようにしたティナが状況を確認。なにかを行い始める。そうして、待つこと暫く。彼女が口を開く。


『よし。カイト。これよりケーブルを送る。それを付け替えてくれ』

「あいよ……っと。キャッチした。やり方を指示してくれ」

『うむ。まず……』


 ここからなにかをするにあたって、施設の監視カメラがある方がなにかと便利だ。というわけで手早く修繕を行うことにしたらしい。というわけで修繕を開始したわけであるが、単にケーブルを取り替えるだけだ。十分ぐらいで作業は終わっていた。


「よし……これでどうだ?」

『うむ。映像回復。そちらの状況がよう分かる。それが隔壁か……思う以上にごっついのう』

「なにかわかる事、もしくはわかっている事は?」

『そうじゃのう。一応わかっとる事としてはそこから先は完全に整備されておらぬ洞窟そのものというのが、ヴァールハイトの遺した情報じゃ。まぁ間違いなく魔物は出て来たんじゃろうな。それ故の隔壁じゃと推測される』


 カイトの問いかけを受けたティナが、重厚な隔壁の存在理由を推測する。やはりどうしても採掘エリアは地面から直接採掘をせねばならないが故に、ここまでと同じ様に金属等で通路を整備する事は難しい。必然として洞窟とみなせる状態であり、ここからは隠れ家の施設の一部と見るより洞窟の中と考えた方が良かった。それを聞きながら、カイトはティナへと問いかける。


「そうか……ティナ。どうする? 開くか?」

『そうじゃのう……わずかにで良い。中が覗けるか確認してくれ。後はどうするかはそこから考えるしかあるまい。まぁ、どうにせよ今日は採掘エリアへは立ち入らんので、最終的な判断はお主に任せる。開けぬのなら開けぬでも良いよ』


 最終的に、採掘エリアへと入るのはカイトだ。故に最後はカイトに判断が委ねられた。というわけで、判断を委ねられたカイトは次の一手を考えるためにも、隔壁へと手を当てる。


「よし……じゃあ、開くか確認してみる」

『気を付けよ。しょっぱな魔物が顔を出す事もあるからのう』

「あいよ……カナタ。少し距離を取ってくれ」

「ええ……万が一の場合は即座に乱射すれば良いのね」

「頼む」


 数歩下がって魔銃を構えるカナタを背に、カイトは改めて隔壁に当てる手に力を込める。そうして彼はゆっくりと隔壁を押してみて、人が入るための扉が動くかどうかを確認した。が、すぐに首を振る事になった。


「……ダメだな。鍵が掛かってる。ティナ、そちらからなんとか出来ないか?」

『調べよう……ダメじゃな。どうやら物理的な鍵が掛かっておるらしい』

「……ぶっ壊すか?」

『やめよ。魔物が入ってくる方が面倒じゃぞ』


 楽しげに不穏な発言を行うカイトに、ティナが笑って却下を明言する。最悪はそれしかないが、それは最後の手段だった。そしてもちろん、カイトも冗談としてしかいっていない。というわけで、彼もまた笑って気を取り直す。


「だよな……さて、そうなるとどこに鍵があるか……」

『地図によればその隔壁の近くに守衛室に近い場所がある。鍵があるとするとそこじゃろうて』

「か……わかった。そっちを調べてみよう。そこの監視カメラは?」

『残念ながら、死んでおるのう』


 カイトの問いかけに、ティナは肩を竦める。基本的にこの階層の監視カメラの類は半分以上が機能を停止しているらしかった。が、それでも大丈夫は大丈夫だった。


『まぁ、問題はなかろう。なにせそこじゃからのう』

「まぁな……守衛室である以上、出入りを目視で監視出来ないと困るからな」


 カイトは隔壁の真横に設けられている窓を見て、ここがその守衛室なのだろうとすでに当たりを付けていたらしい。そして事実、そここそが守衛室だった。と、そんな事を話していると彼の影が盛り上がって、シャルロットとユリィ、そして専用の外装を装備したホタルが現れた。


「手伝いに来たよー」

「サンキュ……じゃあ、さっさと隔壁の鍵を探しちまって中を確認して帰るか」


 今日はあくまでも隔壁の先がどうなっているか、と少し覗く程度にしている。というわけで、勢揃いした一同は少し広めの守衛室の調査を開始する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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