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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第91章 新たな素材編

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第2283話 未知の素材 ――雪山へ――

 『天使の子供達エンジェリック・チルドレン』の女の子の発見をきっかけとして、ヴァールハイトが遺した『振動石(ヴァイブ・ストーン)』の情報を手にしたカイトとティナ。

 二人はヴァールハイトの遺したその他の情報と共にそれらを持ち帰って一旦マクスウェルへと帰還すると、かつてレガドから手に入れた二千年前の地図を基に作られた比較データを使い改めて『振動石(ヴァイブ・ストーン)』が取れたという鉱脈のある場所の割り出しを行っていた。というわけで、二人がヴァールハイトの遺したデータを確保して翌日。あっさりと場所の割り出しは終わっていた。


「割り出し終わったぞー」

「もうか? 早いな」

「昨日も言うたじゃろ。比較検証を行うためのデータはすでに整っておるとな。故にそちらを使えばあっさりと終わる。ま、これはヴァールハイトも予想外じゃったかもしれんがな」


 元々カイト達が二千年前の地図を持っていた、というのはレガドから提供されてのことだ。これについてはヴァールハイトには語っていなかったが、あっさりと終わってくれたのならそれに越したことはなかった。


「そうか……まぁ、早いに越したことはない。教えてくれ」

「うむ……手っ取り早く見た方が早かろう。端末に情報を送る故、そちらを確認してくれ」

「あいよ……来た来た」


 先にヴァールハイトも言っていたが、地図を口頭で言われるより実際の地図を見た方が早い。なのでティナもそうした方が良いと情報を送ることにしたようだ。というわけですぐに送られてきたデータをカイトは確認。そちらを開いた。が、そうしてすぐに彼は目を丸くすることになる。


「あれ……? ここ……」

「うむ。どういう因果か、マクダウェル領にあるらしいのう」

「そりゃ楽で良い。ウチから人員出せるし、オレが動くこともできる」


 やはり『振動石(ヴァイブ・ストーン)』を回収するとなるとボトルネックになるのは他領地にあり、そこの貴族とのやり取りをせねばならないことだろう。一応皇帝レオンハルトからも最優先に動けと言われていて、必要とあらば全ての許可を与えるという言葉を貰っている。

 なので最悪は彼に動いて貰って貴族達には有無を言わさず協力させることもできる。が、それでもやり取りに時間は必要だし、数日は要する。が、マクダウェル領ならカイトの一存で大抵のことは出来たので、その心配は無用だった。


「じゃな……ま、そこはそれとしてじゃ。場所としてはウチの北西部。『新緑の森』から更に北に行った魔族領との境目ギリギリの所じゃな。まぁ、そう言っても少し離れてはおるので、許可が必要ではない程度には南か」

「前にオレが行った所の丁度南か。前は魔族領だったが……」


 カイトが思い出したのは、ルゥの娘ルゥルがやって来た時に訪れた魔族領の山だ。その際にも横を通ったのであるが、どうやら丁度そこが該当の山だったようだ。


「うむ。ウチとしても魔族領側としても僻地も過ぎるし開拓するにも些か極所じゃ。住めぬわけではないが……あまり街等は作り難い場所じゃからのう」

「ルナリア文明でもそれは変わらず、そしてそれ故に非合法組織の隠れ家にはうってつけだった、ってわけか」

「そういうわけじゃろうな」


 カイトの言葉に、ティナも大凡を推測して頷いた。カイトとしても調査隊を送ったことはあるが有用性は低いと判断しており、あまり調査隊についても本腰を入れさせたわけではない。遺跡があってもおかしくない場所の一つだった。そしてそんなことを考えて、カイトは一つごちる。


「うーん……こういう場所結構あるなぁ……一度しっかり調べさせた方が良いんだろうか」

「やったほうが良いか否かで言われればそうじゃがのう。費用対効果が見合うかと言われれば、流石に首を傾げるしかないのう」

「だよなぁ……まぁ、それを見透かされて非合法組織が隠れ家作ったんだろうけれども」

「そこばかりは、エネフィア特有の問題じゃのう。如何せんエネフィアは広い」


 表面積にして地球の数倍の面積があるのだ。そしてそれ故に魔物の発生源を完全に掴むことも難しいし、全ての領土を守り抜くなぞ物理的に不可能。結果、どうしても使えないエリアが発生してしまうのは仕方がないことだった。


「だな……はぁ。まぁ、余裕があるときにやってくしかないか。後は、色々と情報が手に入った際か……いや、今はそこらはどうでも良いな。とりあえず今はこっちか」

「じゃのう……で、場所については先に言った通り。また残っておった資料に当時の非合法組織の出入り口がどこにあったか、等の情報も記されておった。どこまで無事かはわからぬが……少なくとも手がかりとしては十分じゃろう情報が残されておった」

「そうか……となると、どうしたものかね」


 少なくともこれで現状行けるだけの手札は整った。後はどうするかだけであった。これに、ティナは笑った。


「行くしかあるまいて」

「そりゃそうだ。それは確定だろ」

「まぁの……問題は誰がどう行くか。行くにしてもどうするか、じゃの」


 わかりきったことを。そう言うカイトに対して、ティナもまたわかりきったことだと口にする。そしてそれ故にこそ、問題は彼女の指摘通りだった。


「軍を向かわせたい所ではあるが……問題はどの部隊をそこに向かわせるか、じゃのう」

「調査も必要だし、色々と考えれば軍もなかなかに考えものか」

「じゃのう……お主……より正確には冒険者が行くのが良いやもしれんな」

「うーん……」


 ティナの提案に、カイトはどうするか考える。今回行く場所は僻地だ。その上でルナリア文明の非合法組織の隠れ家跡である可能性が高いという。軍に行かせたい所ではあったが、場所や周囲の関係から軍を向かわせるのも難しかった。となるとカイト(冒険者)の出番というティナの提案は理に適っていた。


「確かにオレが行くのが最適か。冒険部で動いた方が良いか……?」

「む? なぜそうなる。お主単独でも良かろう。単に事前調査というだけに過ぎぬからのう。流石に軍が絡まねば採掘なぞできん。その部隊を派遣するための事前調査が任務になろうて」

「ルーに情報を手に入れて貰っておきたいんだ。より正確にはルーを通して教国に、だな。サンプルを提供しておきたい」

「ほぉ……なるほど。それは良いやもしれんな」


 現状、教国とは和平交渉が成立していることがありある程度は友好関係を持っていると言って良い。そして邪神や邪教徒との戦いでは教国もこちら陣営と見做すべき、というのが現状のカイト達の認識だ。

 それを睨んだ場合、『振動石(ヴァイブ・ストーン)』と洗脳対策の情報は共有しておくべきと考えていた。そこを語られ、ティナもなるほどと納得。その意見に同意する。


「となると、確かに冒険部に依頼を出す方が良いじゃろな。ヴァールハイトの件もある。流れとしてはカナタの保護者であるお主に発注されて不思議あるまい」

「か……良し。冒険部側で動くか……そうだな。ついでにフロドとソレイユにも話を通しておいて、万が一にも備えさせるか」

「それが良かろう……では、こちらで必要な装置類はリストアップしておこう」

「頼む」


 今回向かう先はルナリア文明の遺跡と言っても良いだろう。いつもの様に邪神の影響を受けた何かしらの存在がある可能性はあった。というわけで二人は周囲との調整を行いながら、出立の用意を整えることにするのだった。




 さて、二人が冒険部にてルナリア文明の遺跡への事前調査任務を請け負うと決めてから一週間ほど。皇国側や魔族領側と色々なやり取りを経て、最終的にカイトによる遠征は了承。そのままルーファウスへと事の次第――邪神対策の一貫である旨――が話され、彼の方も教国より協力が命じられることとなっていた。


「カイト殿。先の件だが、こちらも了承が出た。是非に参加してくれ、とのことだった」

「そうか。わかった……なら、支度を急ぎ進めてくれ。明後日には出立だ」

「すでに進めている。予め言っておいてくれて助かった」


 カイトの指示に、ルーファウスはすでに準備は進行中であることを明言する。そしてそれ故にアリスが今は不在で、彼女の側も用意に余念がなかった。


「そうか……とはいえ、本決定となった以上は本格化する必要があるだろう。通常業務は切り上げて良い。そちらに取り掛かってくれ」

「かたじけない」


 カイトの指示に、ルーファウスは一つ頭を下げて執務室を後にする。そうして彼が去っていったと入れ替わりに、ソラがやって来た。


「カイト。ひとまずこっちの遠征の支度整ったぞ」

「ああ、わかった……何か不足はあったか?」

「いや、飛空艇も問題なかったし、人数も少なめっちゃ少なめだからな」


 カイトの問いかけに、ソラは支度についてはつつがなく進んでいることを明言する。今回、向かう先は先と同じく雪山になっていることが想定されている。

 なので馬車や竜車による渡航は出来ても野営地の設営が厳しく、飛空艇をキャンプ代わりに使うことが考えられたのであった。そしてそれ故に冷所での運用が大丈夫か一度専門施設にメンテナンスを依頼しており、その結果を聞きに行ってくれていたのであった。


「そうか……お前の側はどうなんだ?」

「こっちは尚更問題ないって。それに多分一番支度が必要無いの俺だろうしな」

「まぁ、お前はな」


 言うまでもないが、ソラには<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>がある。それに宿る意思も目覚めている以上、彼に洗脳はもはや通用しないと断言しても良い。

 実力もある程度ある以上、彼だけは一切の支度無く挑んでも問題がなかった。とはいえ、それはあくまでも邪神関連というだけの話で、別の側面から一番準備が必要なのは彼でもあった。故に彼は自席に腰掛けると、一つごちる。


「にしても……遂に雪山かぁ……雪山というか積雪というか……雪ってあんま見たことないから実感無いんだよなぁ」

「防寒と重量低減はしっかりしておけよ。特にお前の場合は全身金属の鎧だからな。重量の低減を忘れると雪の中にずっぽり行っちまうからな」

「笑えねー」


 こればかりは仕方がない話なのであるが、これから向かう山の積雪がどれぐらいかは行ってみないとわからない。というより、そこらも含めての事前調査だ。

 そして状況からソラを欠くことは考えられておらず、彼もまた自分が行くべきだろうと了承を示している。となると、カイトの言う通り雪の中に嵌ってしまう可能性は大いにあり得た。故に少し冗談混じりなカイトの言葉にソラは笑う。が、カイト側は念押しを忘れなかった。


「実際、笑えんよ。最悪は強引に抜け出して魔物に見つかって、とかになる可能性もある。雪山での重武装は他以上に気を付ける必要がある」

「わかってる。一応、オーアさんに再調整もしてもらってるよ」

「なら、大丈夫だろう……まぁ、実際今回の雪山での活動はそこらの教導の側面もある。こっちも冬本番になると積雪は確定するからな」


 マクダウェル領は皇国でも北側に位置している領土だ。領土面積がアラスカ並と広いので基本積雪の無い地域もあるらしいが、カイトというか冒険部が拠点としているマクスウェルは例年雪が積もる。今回の遠征はその冬本番に備えて上層部に積雪状態での行軍に慣れてもらおう、という側面があったのであった。


「もう結構寒くなってるからなぁ……そろそろセーターとか買わないと、って話してるし」

「手編みとかしてもらえないのか?」

「わっかんね。俺教えてもらえないだろうし」

「だわな……ま、それはさておき。防具はもちろん、休みの時に使う防寒着についてはしっかりしておけよ。暖房があっても寒いぞ」

「あ、そっか。そっちも当然必要だよな……忘れない様にしとこ」


 カイトの指摘に、ソラは目を見開いてしっかりと胸に刻む。どうやら防具類についてはしっかり対策をしていたらしいが、それ以外の所を忘れていたらしかった。というわけで、ソラが改めて支度に勤しむことになり、カイトもまた全体の調整に余念なく動くことになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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