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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第89章 草原の戦い編

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第2232話 戦士達の戦い ――相談――

 『リーナイト』の一件から暫くして行われたギルド同盟の会議。それはひとまず全員の安否確認から始まり、今度の皇国で行われる演習の参加の是非についてを相談するものでもあった。これにカイトは立場上参加せねばならない事を明言し、他のギルドマスター達もカイトこと冒険部の事情を把握していた為、特段の問題もなく参加で確定する。

 そんな話をしながら暫く。会議も中程になった所でクオンとアイナディスが参加を表明。それを受け、ギルド同盟の大半が参加を表明する事になり、会議は終わりとなっていた。


「はぁ……終わり終わり。まー、とりあえずお前らの顔が見れて良かった」

「おいおい。柄にもねぇな」

「さーすがの俺もこの間の一件はそう思ったんだよ」

「がっははは。そりゃ、まだまだ若造共はああいった修羅場の数が足りてねぇからな」

「爺は黙ってろ」


 やはり真面目な会議が終われば後はギルドマスターとはいえ冒険者達という所だろう。肩を回したりして歩きながら、ここから酒でも飲みに行くか、と話し合っていた。


「カイト。俺達はこれからどうする?」

「んー……どうするかね。とりあえず戻ってからといえば戻ってからだが……」


 ソラの問いかけに、カイトは僅かに悩みを見せる。実際の所、何をするにしても時間は中途半端過ぎた。というわけで帰ってから残務処理でもするか、と考えるカイトであったが、そんな所に声が掛けられた。


「カイトさん」

「ランか。どうした?」

「いえ……少し聞いておきたい事がありましたので、お伺いしたく」

「なんだ?」


 基本的にランが声を掛けてくる時は、自分達の利益になるかならないか判断する時だ。カイトはそう理解していればこそ、これは必要な問いかけなのだろう、とその言葉の先を促す。そしてその問いかけは案の定だった。


「実際の所、公爵家としては今回の演習にどれほど重点を置いているのかな、と」

「ふむ……それについてはさっき話した通りだと思うが」

「ええ……ですがその上で、一つ聞いておきたいのです」

「ふむ……そりゃまぁ、オレが見ている限りでは本気度は中々高いと思うがな。そもそもどの案件にせよ、皇国で対応の中心となるのはマクダウェル家だ。そこについては、疑う余地は無いだろう」


 ランテリジャの問いかけを受けたカイトは、改めて自分達が今回の演習においてどれだけ力を割いているかを語る。それを一通り聞いて、ランテリジャは一つ頷いた。


「ですか……なら、良いのですが」

「何かあったのか?」

「実は……少し困った事になっていまして」


 カイトの問いかけに、ランテリジャは少し苦笑する様に笑う。そうして、彼は一つ身の上話を口にする。


「まぁもう隠す必要もないとは思うのでお話しますが……僕が姉さんの補佐をしているのは実家から言われて、というのは良いですね?」

「前に話していたな。じゃじゃ馬娘の子守を、という塩梅だったか」

「あはは……当たらずとも、遠からじと」


 現在エルーシャはこの場には居ない――馴染みの女性冒険者と話をしていた――ので聞かれる事はないとは思うが、それはそれとしてランテリジャはこういった軽口を気軽に叩けるような性格ではないだろう。なのではぐらかすような言葉であるが、それで大凡は正しいという事で良いのだろう。


「ま、それはさておき……確かエルは縁談を物理的に蹴って、冒険者をやってるんだったか」

「お調べでしたか」

「まぁな……本名はエルーシャ・フィオーリ。フィオーリ家の次女だったな」

「あはは……今日の事を話したら、父がカイトさんによろしくと」


 どうやらランテリジャも今更自身の実家を隠すつもりはなかったらしい。フィオーリ家もカイトこと冒険部とは何度かやり取りを行っており、その関係でカイトも会った事があった。というわけで、ランテリジャも明かす事は父からの許可を得ていた。


「ああ……で、それがどうかしたか?」

「それで、その、ですね……実はその相手方の男性がしびれを切らし、強硬策に出ようとしている、と」

「面倒だな。が、生半可な腕だとエルには勝てんだろう。しかも言えば、つながりも中々に厄介だ。オレなら拳闘王アイゼンの弟子に手出しなぞしたくはないがな」


 カイトは数日前にやって来た男の事を思い出し、改めてその力量を思い出す。彼の力量は間違いなく拳闘士としてはエネフィア最上位に位置している。それが近くにいる状態でエルーシャに手を出すなぞ、自殺行為も良い所だった。


「自分も、そう思います。そして真っ当な方なら、そう考えるでしょう」

「つまり、真っ当じゃないと」

「そういう事です……真っ当じゃなければ父もこちらに連絡を取る事なぞしなかったでしょうしね」


 フィオーリ家でエルーシャの扱いがどうなっているかは定かではないが、少なくともランテリジャよりは下だろうというのはわかる。なので今回の一件ではランテリジャにも被害が及ぶ可能性があった、という事なのだろう。というわけで、流れで話を聞いていたソラが問いかける。


「……裏か?」

「かと……ソラさんもご存知だったんですか?」

「お師匠さんから教えてもらったからな……後それと、ラグナ連邦で会った人の中に裏に所属してた人が居た。今は警察に捕まってるけどよ」

「そ、そうですか……」


 彼も彼で中々にすごい経験をしているみたいだな。ランテリジャはソラの語る内容を聞きながら、僅かに頬を引き攣らせる。そんな彼に、今度はカイトが問いかける。


「それで、なんだ? こちらで動いた方が良いのか?」

「いえ……主体的には、こちらで動きます。動きますが……」

「……万が一の場合と、裏が出て来る時点で、か」

「そういうことです」


 基本的に、真っ当に生きていれば裏ギルドと関わりを持つ事はまずない。なので裏に繋がりがある時点で基本的にはかなりの頻度で非合法な行動を行っている可能性が高く、エルーシャとランテリジャの父もその噂を耳にした時点で一度縁談は停止。裏を探っている所だという事であった。


「……わかった。こちらも注意しておこう。戦争は戦争で面倒だが、裏ギルドが関わるともっと面倒だ」

「すいません。お願いします」


 カイトの明言にランテリジャは一つ頭を下げると、あまり要らぬ勘ぐりを姉から受けない様に足早にその場から離れる。そうして去っていった彼の背を見送って、カイトとソラは僅かに話をしていた。


「裏ギルド……ねぇ。厄介な話にならなけりゃ良いんだが」

「裏ギルドってそんな頻繁に出て来るようなもんなのか?」

「ねぇよ。だから、二人の父親も動いているんだろうな。裏ギルドと繋がってるのがバレりゃ拙いってのはわかってる人だ。縁談はそれを知らず、という所だったんだろう」


 知っていればまず、縁談なぞ受け入れない。相手は相当やり手なのだろうな、とカイトは推測し、僅かに警戒を滲ませる。


「……ソラ。暫くオレはこの件の対処を行う。ギルドは任せる」

「おう……何かしておく事とかあるか?」

「無い……な。少なくともウチが攻撃対象になる事はない様に動くし、ここで相談したからとウチにまで手を出すようだとバカも良い所だ。その程度の相手なら、今のウチでも潰せる程度だろう」

「裏っつってもピンきりか」


 カイトの言葉に、ソラが僅かに肩を竦める。彼としても色々と思う所はあるらしい。そんな彼に、カイトも一つ頷いた。


「そりゃそうだ。やむにやまれず裏に所属してる、ってんならなるべく被害は出さない様にするだろうが、金目当てや表のやり方に馴染めず、とかになるとそこらのごろつきと変わらん。そういう輩に腕利きってのは少ない。武芸やらの力の扱い方がわかってないからな」

「そかな……」


 思えば、確かにマルセロさんはあまり被害を出さない様に戦っていたかもしれない。ソラはかつての事を思い出し、そう思う。と、そんな彼は一転して気を取り直した。


「ま、そりゃ良いか。で、それはともかく……お前は何するんだ?」

「ひとまず情報を洗わせる。フィオーリ家はウチともつながりがあるから探ってたが……そのお相手はウチとはほぼほぼ無関係な相手でな。放置してたんだが……こうなっては、調べるしかあるまいさ」


 いくらカイトが情報屋ギルドを抱えていると言えど、何から何まで調べさせる事はない。人員も有限なのだ。なので他領地を拠点としていたりする商人やらはあまり積極的に調べさせておらず、エルーシャの相手方についても他領地かつエルーシャ自身が蹴っ飛ばしていたのでさほど興味を見せていなかったのである。が、事ここに至ってはそう言ってもいられなかった。


「……良し。とりあえず帰って、色々な支度をするか」

「おう」


 さっきまで何をやるか、と悩んでいたんだがな。カイトは若干辟易としながらも、動かねばならない以上はやるしかないと覚悟を決める。そうして、カイトはソラと共に冒険部のギルドホームに戻る素振りを見せつつも、一人公爵邸へと向かうのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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