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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第89章 草原の戦い編

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第2216話 戦士達の戦い ――隠し事――

 兄弟子であるクー・フーリンからの依頼を受け、彼の弟子として新たな一歩を踏み出した瞬へと魔術の教授を開始したカイト。そんな彼と共に瞬はルーン文字の勉強を開始したわけであるが、だからといって日々がなにか変わるわけではない。

 敢えて言えば瞬の日々の修練に魔術の勉強が加わった、というだけである。というわけで瞬が日々の勉強を重ねる傍ら、カイトは何時もの日々に戻っていたのであるが、瞬がルーン文字の勉強を開始して数日。カイトへと来客があった。と言っても知らない人物ではなく、それどころか懇意にしている相手の一人と言っても過言ではなかった。


「ふーん……久方ぶりに同盟の会議をねぇ……まぁ、確かにここしばらく各々色々とあったから、全員が顔をあわせて集まれていないっちゃ集まれていないもんなぁ……」

「ええ……まぁ、元々総会に備えて設けられた同盟ですが、終わったからと解散するものでもないでしょう。参加率が下がってしまうかもしれませんが、ですが」

「そこは知らんし、現状で同盟にその程度の価値しか見出だせんようなギルドはあまり多くないと思うがね」

「私も、そう思いたい所ですね」


 カイトの言葉に来客ことランテリジャが一つ頷いた。どうやら彼の所のけが人も大半が現場復帰となり、彼やエルーシャが不在となっても十分に動けるだけの体制が戻ったらしい。そして同様に他のギルドも大半が似たような状況となっていた為、当時の被害状況を確認したり、現状を確認する為に一度しっかりと時間を設けて集まろう、となったのである。


「だな……まぁ、そういう事ならウチに異論はない。こちらとしても被害状況は確認しておきたいし、復帰するなら復帰するでそこらも確認しておきたい」

「ウチとしてもそうですからね。で、これは一応のお話なのですが……」


 カイトとの合意を得たランテリジャであるが、そのままの流れで一度言葉を区切る。そうして、彼は持ってきたかばんの中から一通の封筒を取り出した。


「以前のように、一つ依頼を受けたいな、と思っておりまして」

「ウチとそっちでか?」

「いえ……全体で、です。といっても勿論、全員というわけではないですけどね……とりあえずこちらをご確認頂けますか?」


 ということは、この封筒は依頼書か。カイトはランテリジャから差し出された封筒を受け取って、中身を確認する。が、そうして受け取ってみて小首をかしげる事になった。


「これは……なんだコレ」

「おや……意外ですね。ご存じないんですか? 別に取り立てて珍しいものでもないのですが……」

「ああ……こんな事やってんの?」

「時々、ですけどね。規模が規模ですから、参加者もそれ相応に必要なので」

「ふーん……」


 中々面白い事をしてるじゃねぇか。カイトは内心で牙を剥いて、楽しげに笑う。そして同時に、なぜ自分にこれが隠されていたかも察した。興味を見せない筈がないからだ。

 そして興味を見せれば碌な事にならない、と全員が察していたからでもある。というわけで、内心で壮絶な笑みを見せながらも、表向きは少し悩んだものの興味津々という様子で口を開いた。


「……そだなー。ウチも参加するか。幸い、ウチも腕利きは割と揃ってるしな」

「わかりました。ありがとうございます。おかげで、主戦力に困らなそうです」

「ということは、セレス達も参加か」

「ええ。せっかくなので、と。何がせっかくなのかはわかりかねましたが……」


 流石にそれはわからんだろうな。少し苦笑気味なランテリジャに対して、カイトは内心で苦笑する。こればかりは、彼女らの背景を知らないとどうにもならない。というわけで、カイトは敢えてうそぶいた。


「それは流石にオレにもわからんな……ま、そりゃ良いや。とりあえずウチも参加で」

「はい。では、それに合わせて会議場の日程を押さえておいて頂ければ」

「わかった。会議は依頼の何日ぐらい前にしておく?」

「三日前で良いでしょう。前日までに用意を完璧に整え、軍の方と打ち合わせも終わらせる形で想定しています」

「りょーかい」


 妥当といえば妥当な日程か。カイトはおそらくランテリジャが前もって軍との間で事前打ち合わせを行うだろう事を考え、この判断を妥当としておく。そうして更に種々の確認を行って、ランテリジャは次の所へ向かうと一方のカイトはカイトでそれを見送って、楽しげに執務室に戻ってきた。


「アッルフォンスくーん。ちょーっとおっはなっししっましょうかー」

「……あ、アルならさっき基地に呼ばれたから行くって言ってたぞ。ついさっきだな」

「そうか」


 これは多分連絡が入ったか、自分で察して連絡を送り呼び出しを受けたな。カイトはこちらは事情を理解できていないからこそ自然と答えていたソラの返答に、そう理解する。というわけで、彼はスキップを刻みながら自席に深く腰掛けると、机をトントンと叩いて通信機を起動させた。


『……』

「ほぉ、珍しい事もあるもんだ」


 何時もなら、自分が通信を入れると何があろうとスリーコール以内には確実に誰かが出るものだ。にもかかわらず、今日はどういうわけか待てど暮らせど一向に誰も応じない。アルからの連絡が公爵邸にも入った、というわけなのだろう。というわけで、カイトは期待に沿った行動に出る事にする。


「ちょっとランからの依頼もあって公爵邸行ってくる。通信、出れないみたいだからな」

「そか……あ、ランからの依頼ってことは同盟で動きそうか? さっきなんかそんな話ちらっと聞こえたけど」

「ああ、そうだな……武闘派の面々と……後は特にトリン。お前も参加で考えておいてくれ」

「僕もですか?」


 唐突に水を向けられて、ソラの補佐を行っていたトリンが驚いた顔を浮かべる。これに、カイトは一つ頷いた。


「ああ。今回は分隊の指揮も必要になりそうだ。ソラに分隊を一つ任せるが、補佐を考えれば必要だ」

「はぁ……となると、かなり大きめの依頼ですか」

「かなりでかいと考えてくれ。ウチも五割ぐらいで参加を考えたい所だが……さて、どうしたものかね」

「ウチの五割?」


 カイトの呟いた単語に、ソラが思わず目を見開く。すでに冒険部は百人規模のギルドだ。そもそも発足時点で百人近い冒険者を抱えていたが、そこに様々な要因がありすでに二百は優に超えた。その半数となると、その時点で百人だ。規模としてはかなりの物で、依頼の大きさが察せられた。


「ああ……軍からの依頼で、大規模な動員が掛かったらしい」

「……ヤバいか?」

「まさか。単に合同演習だ。危険は一切無い。アルが基地に呼ばれたのも、その関係だろう」

「あー……そういや最近デカイ事件ばっかだったもんな。一回演習やっとくか、ってのは自然か」


 ソラは昨今の情勢を鑑みて、おそらくカイトがそこらを仕掛けたのだろう、と思ったらしい。近頃の事件の多さも考え、合同演習を行うのは悪くないと思ったようだ。そしてカイトとしても、この判断には諸手を挙げて賛同を示す。


「ああ。<<死魔将(しましょう)>>達は今のエネフィアで冒険者と正規軍が協力もせず相手に出来るような相手じゃない。合同演習をやってお互いの癖やら腕やらを見ておこう、ってのは正しい判断だ」

「……そりゃわかるけど。どうしてそんな楽しげなんだ?」

「まー、色々とあってな」


 訝しげなソラに、カイトは楽しげに笑いながらそううそぶいた。と、そんな彼はその言葉で少し浮かれすぎていた、と僅かに気を取り直して必要事項を伝達する。


「ああ、とりあえず依頼書はコピーを一通こちらに置いておく。桜、残留組の統率は任せる。今回は状況からオレ、先輩、ソラの三名は必須で参加になる。また、可能なら瑞樹もなんだが……レイアの散歩中だから、後でオレから話しておこう」

「あ、わかりました。長引きそうですか?」

「いや、そうはならん。依頼書によると日程は二日。二日目も夕方には戻る。場所はマクスウェル近郊だ。万が一の場合にも連絡は取れる場所だ……が、依頼の間は戻れないから、夜にも戻れないと思ってくれ」

「わかりました」


 依頼の危険度はさほどではないが、どうやら拘束時間は長いらしい。まぁ、合同演習という事は色々とあるのだろう、と察せられた。なので桜は一日こちらで待機しておく事を決めて予定を立て始める。そうしてそこらに方を付けた所で、瞬が問いかけた。


「俺もか?」

「ああ。オレが本隊、残り二人で分隊を指揮して行動だ。そして依頼の内容を鑑みると、桜より先輩向きの依頼だ。総合的な側面から先輩となった」

「そうか……」


 なにかはよくわからないものの、カイトがそう判断したのだからそれが正しいのだろう。瞬はカイトの言葉に一つ頷いた。というわけで話を終えた所で、カイトは椿へと依頼書の写しを手渡した。


「椿。こちらをコピーし、掲示板への提示を行うようにしてくれ。また、桜のフォローも頼む。ソーニャは受諾した冒険者の人数を確認し、オーバーしないように下と連携しながら調整を」

「「わかりました」」


 こんなものかな。カイトは一通りの指示を出し終えて、一つ頷いた。今回は依頼内容としてはそこまで困難な依頼とはならないが、依頼の規模としてはかなりの規模になる事が想定されていた。なので人数調整などを考えればかなり忙しくなりそうだった。


「さってと。これで一通り終わり、と」

「カイト殿」

「んぁ?」

「俺達はどうするべきだ?」

「ん、ああ、二人か」


 ルーファウスの問いかけに、カイトは少しだけ逡巡する。今回はかなり大規模な依頼になる事が確定しているし、アルら軍の面々も総じて参加だ。戦闘員としての面々も冒険部でも腕利きが揃っており、戦力としては整っているように思われた。というわけで、カイトの結論はこれだった。


「……そうだな。判断は二人に任せる。参加するなら参加するで良いし、しないならしないで良い。戦力は十分に整っているからな」

「そうか……なら、依頼書を見て判断させてもらっても大丈夫か?」

「勿論……が、そうだな。まぁ、予め言っておけばルーファウスはソラか瞬の隊、アリスはオレの隊になるだろう。そこを踏まえて、考えておいてくれ。後の詳細は追って考える」

「わかった」


 カイトの返答に、ルーファウスはそれを踏まえて参加の是非を考える事にする。そうしてそれを最後に質問は特に無く、カイトはおそらく自分の来訪を察しているだろう公爵邸へと向かう事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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