表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第87章 馬車の旅路編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2195/3944

第2156話 馬車の旅路 ――帰還――

 <<残骸の竜(ダスト・ドラゴン)>>に汚染された森を抜けて二日。宿場町跡地にて一泊した調査隊は更に半日を掛けて、宿場町へと到着。そこでユニオン支部に報告を行うと、そこで父と合流したヴァルトとは別れる事になる。そうして、更に二日。カイトと瞬、ソレイユらはバイクを使ってマクスウェルへと帰還していた。


「ふぅ……今回は中々に楽な依頼だったか」

「まぁ、本来はランクB級の冒険者が受けるような依頼だからな。ランクA相当の先輩だと楽な依頼に感じちまうだろう」


 町中に入った事でバイクを異空間に収納し、歩いて移動する最中。瞬とカイトはそんな事を話しながら歩いていた。なお、その後ろではユリィやソレイユらが話しながら歩いており、どうやら男同士女同士に分かれていた様子だった。


「そうか……まぁ、それでも今回俺自身の状態を考えれば、妥当な依頼だったか」

「そうだろう……で、実感としてどうだった?」

「ふむ……」


 今回、カイトが瞬を選んだのは戦闘力と専門性の関係からであったが、同時に彼を実戦に出す前にカイト自身が近くに居て確認しておく事で、安全かどうか確認しておこう、と思った事が大きかった。

 というわけで、彼自身の所感とは別に瞬の所感も聞いておきたい所だった。そうして、少し。彼が自身が感じた事を語る。


「やはり何時もよりも若干安全運転で進んだ……とは思う。同時に何時も以上に出力の上昇が高いな、とも思った。特に少しだけ、抑制が可能な程度の鬼族の力でも使った瞬間に一気にコントロールが効かなくなる様に思えた。勿論、暴走とは少し違うが……」

「ふむ……まぁ、妥当な所か」


 実際、オレ自身もそうだったしな。カイトは自身の過去を思い出し、瞬にも似た事態が起きているのだと考えていた。


「そうなのか?」

「ああ……言ってしまえば先輩の現状は出力の最大値がランクSの冒険者の中でも更に上位に位置する冒険者に匹敵する状態だ……そうだな。わかりやすく言うと、今まで普通の自動車に乗っていたのが、いきなりF1カーに乗せられたようなものだ。同じだけアクセルを踏み込んでいるつもりでも、あっという間に加速してしまう」

「なるほどな……確かに、感覚的にはそれが一番良いかもしれない」


 自分が思った以上に出力が上昇する。そんな感覚に対するカイトの説明に、瞬は我が意を得たり、と納得する。と、そんな事を話しながら歩くわけであるが、そこで出発時には居なかった人物が口を開いた。


「おい、カイトー。そういや、お前さん今あのデカイホテル使ってるんだったよなー?」

「あー? まぁ、色々とあってなー。事故物件だし」

「聞いてんぞー。あそこ、脈の真上にあったと思ったんだけど、地脈の調整とか大丈夫かー?」

「ああ、それか。そこは流石にオレがミスるか?」


 アンブラの問いかけに、カイトは笑いながらどこか試す様に肩を竦める。それにアンブラも頷いた。


「だろうなー。ちょっくら使って大丈夫かー? ついでなんで脈から魔力吸収しておきたくてなー」

「まー、使ってないから良いが……なんか急ぎたいのか?」

「今回出てみたけど、やっぱまだ違和感あってなー。魔力回復が上手く行ってないんだわー」

「あー……まぁ、お前も中々な量持ってるからなー。一ヶ月やそこらじゃ完全回復は無理かー」

「脈とか専用の場所使えりゃ、良いんだけどなー。流石に学者に回せるほど甘い状況じゃないからなー」


 苦い顔のカイトに対して、アンブラもまた苦い顔で笑う。そもそも彼女が彼女の所属するギルドに顔も出さずこちらに来た――そしてそれ故に助手はそちらに向かった――わけであるが、彼女は言うまでもなくマクダウェル家でも重臣の一人だ。

 特に地質学やそれに関連する地脈の研究などにおいては最重要の人物の一人と位置付けられており、怪我については即座かつ最大限の手配がされていた。が、あくまでも学者なので魔力回復については自然治癒に任せた方が良いだろう、と急速回復はさせていなかったのであった。


「わかった。まぁ、ウチの脈を使った回復室は使ってないからな」

「……なんだ、それは?」


 唐突に出された不思議な名に、瞬は目を丸くしていた。そしてこれは当然で、そして同時に仕方がない事だったからだ。


「ああ、回復室か? ギルドホーム地下には脈が通っている事は、先輩も知っているな?」

「ああ。それ故に選ばれたとも聞いている」

「ああ……実はそこに密かに回復室を作っていてな」

「いや……だからそもそも回復室というのは何なんだ?」

「聞いた事なかったか……ウルカで聞いているかと思ってたんだが」


 困惑気味な瞬に対して、カイトは若干意外そうな顔を浮かべる。ここまで話せばわかるかな、と若干思っていたらしい。


「魔力を回復させる為の専用の部屋だ。ギルドホームに回復室を持っているギルドは割とある。ウチもその一つ、というわけだ。<<暁>>にも当然ある」

「ふむ……それは不思議はないと思うが……何故知らなかったんだ?」

「ウチのは基本、使える様に出来ていないからな」

「使える様に出来ていない?」


 それにしては今回使わせる様に手配しているみたいだが。瞬はカイトの返答に首を傾げる。これに、カイトは事情を説明した。


「ああ……そもそも回復室というのは、自分である程度魔力が操れる様にならないと使えない部屋だ。今の先輩ぐらいになると、大丈夫なんだが……」

「前までは使えなかった、と」

「そういう事だ。前にミニエーラでの一件があった後、ソラには使わせていた。それぐらいにはならないと、使えないんだ」

「そ、そんななのか……」


 何故かはわからないが、そういう物らしい。というわけで、瞬はその何故の部分を問いかける。


「だが、何故なんだ? 便利だと思うんだが……」

「さっき言ったと思うが、地脈を利用しているんだ。だからある程度脈の莫大な魔力を受け止められる土壌が必要になる。その時点でランクが低い冒険者は使う事が出来ない」

「それは納得できるな」


 地脈の魔力が膨大である事は瞬もわかっている事だ。故に地脈を利用した回復が使えない、と言われれば納得は出来た。一瞬で自身の限度を超えてしまうからだ。


「ああ……で、次にその膨大な魔力を受け入れられても、それを排出できるだけの技術が居る。魔力欠乏状態は、言わなくても大丈夫だな?」

「魔力を使いすぎた状態だな」

「ああ……あれとは逆。魔力が過多になった状態もあるんだ。多すぎて身体を崩す、というわけだな」

「そうなのか……回復薬とかだと、そんな事になった事はないが……」


 魔力の使いすぎによる魔力欠乏状態は瞬にも覚えがある事なので、わかりやすかったらしい。しかし逆の多すぎる状態は、まるっきり想像が出来なかったようだ。が、これは当然といえば当然だった。


「そりゃそうだ。回復薬程度じゃそんな事にはならないからな。何より回復薬による過多は一瞬だけだ。後は何をしなくてもすぐに抜けてしまう」

「でも回復室だと、その状態がずっと続いちまうんだー。だから上手く循環させてやらないと、魔力過多症って症状になっちまって……」

「なっちまって?」


 敢えて一度言葉を区切ったアンブラに、瞬が首を傾げる。そうして敢えて一度言葉を区切ったアンブラが、若干の真剣さを滲ませて告げた。


「……化け物(魔物)になっちまう。ま、そうなる前に普通は自分で気付いて出ちまうけどなー」

「なぁっ……」


 かんらかんらと笑うアンブラに対して、思った以上に深刻な事態をもたらしかねない症状に瞬は思わず言葉を失った。とはいえ、そう言われては瞬も納得するしかなかった。


「な、なるほど……確かにそれは滅多な事じゃ使えないですね……」

「そだなー。ま、そういうわけで循環を上手くやりつつ、体内に魔力蓄積させられるレベルにならんと使えないんだぞー」

「そうですか……ということはソラはできるのか」


 ソラは使った。そういう事であれば、彼はそのコントロールができる様になっている、という事だった。これに、カイトは頷いた。


「ああ。あいつの場合、収容所で如何に効率的に魔力を蓄積するか、とかそういうのを身を以て学ぶしかなかったからな。一年間ずっと吸魔石の枷を嵌められて、生活していたんだ。一歩間違えば欠乏症。そうならん様に失った魔力を吸収させつつ、余分な分は放出させる訓練を積んでいたそうだ。溜めすぎても、辛いからな」

「なるほど……それが結果として、魔力を循環させる技術になった、と……」


 言われてみれば当然といえば当然の話だ。ソラがどこでその技術を学べたか、というとミニエーラ王国しか無い。そしてそうするしか生きられなかったのだ。使える様になって当然だった。そうして少し考え込む瞬に、カイトはわずかに真剣な顔で告げる。


「先輩も、学ぶ必要がある」

「ああ……体内の魔力に影響を与えてくる敵が出て来た場合に備えて、だな」

「ああ……ランクが上に行けば行くほど、そういう特殊な事をしてくる奴は出て来る。今回の<<残骸の竜(ダスト・ドラゴン)>>は単なる毒だったが……<<腐敗する竜(カースド・ドラゴン)>>はその好例と言えるだろう」

「胸に刻もう」


 ソラを羨んでばかりもいられない。瞬は今度は自身こそがそれを習得せねばならない、と胸に刻む。特に彼は純粋な戦闘員としての役割を自身に課している。である以上、何が相手でも生還する事ができる様にならねばならなかった。


「まー、そこらはお前さんらが好きにするこったなー。私はそれを使わせて貰う、ってだけだなー」

「まー、お前は普通にできるからな。しかもドワーフは地脈との相性が良いし」

「そだなー」


 ドワーフはノームの眷属だ。故に地脈との相性が良いらしく、アンブラにとっては回復室はある程度使い勝手が良いらしかった。と、そんな事を話しながら歩く事少し。一同はギルドホームへと帰還する。そうして帰還した一同を出迎えたのは、予め帰還予定時間を伝えていた椿であった。


「おかえりなさいませ」

「ああ、ただいま……椿、リーシャは?」

「医務室にてお待ちです」

「そうか……まぁ、オレも行かんと怒られる立場だ。ちょっと行ってくる」

「かしこまりました」


 一応、復帰に許可は出ているが、そもそもカイトはマクダウェル公である。故に体調管理は人一倍気を付けなければならない上、カイトはよく自分の身体を無視し行動しがちだ。

 殊更、リーシャには睨まれやすい。故に行ける時には顔を出しておく方が良かった。というわけで、そこでユリィ達とは別れ逆に椿を連れてリーシャの所へと向かう事にする。


「おーう、リーシャー。久しぶりだなー」

「あ、アンブラさん。お久しぶりです」


 アンブラとリーシャは一応魔導学園における同僚だ。そして共にマクダウェル家に仕えている存在でもある。故に彼女も親しげだった。


「あっははは。悪いなー。ちょっくら診て欲しくてなー」

「はい」


 元々リーシャには話を通しておいたのだ。なので若干恥ずかしげなアンブラの申し出に快諾を示す。そうして、ひとまずアンブラの診断が行われる事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ