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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第85章 次への一歩編

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第2062話 新たなる活動 ――活動再開――

 新たに冒険部に加わったソーニャの活動の準備を行った後に行われたアイナディスとの会合。それはエルフ達が治める『神葬の森』にて新たな領域が見つかったため、そこの調査への協力を依頼したい、という事であった。

 それに応諾を示したカイトは、改めて議会にその返答を伝えに向かったアイナディスを朝一番に見送ると再びギルドホームに戻り、ソーニャの紹介を行っていた。


「さて……全員、揃っているな?」


 今回、新しく全員の活動を補佐する事になるソーニャが加わる為、カイトは珍しく朝には上層部全員が揃う様に通達を出していた。というわけで、彼は全員が揃っているのを確認した後、改めてソーニャの紹介を行った。


「今日から新しく上層部の補佐をしてくれる事になったソーニャだ」

「ソーニャ・フィロワです。よろしくお願いします」

「彼女には基本的に上層部が請け負う依頼の選定を行ってもらう。まぁ、主には遠征隊などの上層部が率いる事が推奨される依頼だな。また、その依頼の概要をまとめてどんな必要性が鑑みられるか、という助言もしてもらえる。基本、下で行ってもらっている業務をこちらで専任として請け負って貰う形だな」


 一応、カイトとしては先んじて上層部の面々にはソーニャにどんな業務をしてもらうか、というのを伝えてある。が、改めて、彼女にしてもらう業務についてを説明する。そうして一通り説明した後に、カイトは一つ告げた。


「とまぁ、そんな感じで依頼の選定には少し時間が掛かる。なので本格的な開始は今週末から、と考えている。それまでに何かあった場合、もしくは見繕った依頼についての助言はしてもらってくれ」

「なんとかご期待に添えるよう、尽力させて頂きます」

「ああ……で、彼女のしばらくの世話役はアリスに任せている。可能な限り、彼女のフォローもしてやってくれ。では、解散。各自業務に戻ってくれ。ああ、桜、先輩、ソラの三人はそのまま残ってくれ。一応、改めて紹介しておこう」


 解散を告げたカイトは、そのまま引き続きソラ達サブマスターの紹介を行っておく事にしたようだ。確かにギルドとして重要なのはこの三人。そこを紹介しないわけには、いかなかった。というわけで、改めてカイトを筆頭にしたギルド運営における最高幹部四人が集まる事になる。


「さて……まずオレを含めてこの四人が、ギルド冒険部における現状の最高幹部になる」

「よろしくお願いします」


 改めてのカイトの紹介に、ソーニャもまた改めて頭を下げる。そうして、カイトは更に各個人の紹介に移った。


「ああ……じゃあ、一人一人紹介しておこう。まぁ、ソラは良いな。以前に話した通りだ」

「おう。ま、よろしくな」

「はい」


 元々ソラのみは、大陸会議に出席していたのだ。なのでソーニャともすでに面識があった。というわけで、ここの紹介を軽く終わらせると、カイトは継いで桜へと話を向ける。


「で、こっちが天道 桜。ウチで基本内政面や、天桜学園との折衝役を務めてくれている」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 頭を下げたソーニャに、桜もまた頭を下げる。そうして彼女の紹介を終えた所で、カイトは瞬に視線を向ける。


「で、こっちが一条 瞬。このギルド上層部の中で一つ年上は彼だけだから、基本ここで単に先輩と言われるのは彼だけだ。彼が実働部隊の統率を主に担っている」

「よろしく頼む。多分、俺が一番世話になると思う」

「はい。お願いします」


 瞬の言葉に、ソーニャが一つ頷いた。基本的に冒険部サブマスターの内誰が一番外に出るか、と言われるとやはり瞬が多かった。なので最も世話になる可能性が高いのが、彼だった。そうしてサブマスター三人を紹介した後、カイトは三人に各々の仕事に戻って貰う事にする。


「よし。じゃあ、三人もまた通常業務に戻ってくれ。ああ、先輩は後で腕輪の件があるから、また声を掛ける」

「わかっている。すまん」

「ああ……良し。で、これが冒険部上層部となる。後は追々覚えていってくれ」

「はい」


 人については、すでに全員記憶出来た。ソーニャは曲がりなりにもユニオンの事務員としてのスキル――この場合は後天的に習得した技能という意味――で、全員の顔と名前を一致させる。そうして全員が戻った後、カイトは少し理由があって改めて彼女と共に休憩用の椅子に腰掛けた。


「で、今回あまり人数が多くても大変か、と思ってアル……アルフォンス・ヴァイスリッターを筆頭に軍からこちらに出向している面々については省いた。こちらについては後で紹介するが、そちらも可能な限り覚えてくれ」

「はい」


 どうやらここには皇国のヴァイスリッター家の騎士も居るらしい。ソーニャはアルの名からそれを把握し、一つ気合を入れておく。まぁ、流石にアルがどんな人物かは知らないのだ。ルーファウスのような人物かも、と気合を入れても仕方がない。そうして、そこの説明をしたカイトは更に一応言い含めておく。


「で、これ以外にも上層部が懇意にしている冒険者がこっちに来ている事もある。こちらについては、そんなもんだと思って追々覚えていくと良い」

「はい……それで、その。一つ気になったのですが、あちらは?」

「ん? ああ、トリンか」


 確かにトリンは明らかに天桜学園の生徒とは思えない。なので一人だけ上層部に混じって集合していた彼が気になったようだ。これに、カイトは笑って説明する。


「彼はトリン。ソラの相棒だな。基本ソラの補佐をしてくれている奴、と思っておいてくれ。知略の面なら、あちらの方が上だ。もしソラが依頼を請け負うとなると、彼も基本は一緒に行動する。そこを勘案に入れておいてくれ」

「わかりました」


 カイトの指摘に、ソーニャは一つ頷いた。ペアで基本的に行動をする冒険者は少なくない。なのでそれと同じと考えれば良いだけの話だった。というわけで、一通りの上層部の説明を終えた彼は一つ問いかける。


「さて……これで上層部は説明したが、何か他に聞いておく事は?」

「有事の際、貴方が居ない場合は基本どなたに意見を伺えば?」

「ああ、それか……ああ、そうだな。そこを説明する必要があったか」


 ソーニャの問いかけに、カイトは一瞬常態化していた事でうっかり忘れかけていた事を思い出す。そうして、彼は一つ重要な事を伝えておく事にする。


「ティナ! 悪いが、戻る前にこっち来てくれ!」

「む? なんじゃ」

「ああ、悪い……彼女はティナ。冒険部技術班でトップ二人、とは先に話したな?」

「はい」

「その片方が、彼女だ」

「よろしくお願いします」


 カイトの紹介に、ソーニャが改めて一つ頭を下げる。どちらにせよティナは紹介しておかねばならなかったし、後にする意味もなかったので丁度良かった。というわけで、そんなソーニャの挨拶にティナもまた頷いた。


「うむ。ま、余は基本下の研究室で研究をしておるか、もしくはマクダウェル公爵邸の研究室で研究をしておるから、基本お主の世話にはならんかのう」

「公爵邸?」

「色々とあって、地球の技術を応用した技術開発に向こうにも一室頂いた」

「後は、同じく先に話した灯里さん。彼女もあちらに研究室がある」

「はぁ……」


 やはり地球の技術をエネフィアで再現するとなると、出来るもの出来ないものと色々とある。それは流石にソーニャにもわかった。なのでそんな事もあるのだろう、と生返事だった。

 そして冒険部でも地球の技術の解析などへの技術協力をしている、と伝えているため、公爵邸に研究室を一室与えられても不思議はない、と誰も疑問に思っていなかった。とはいえ、今伝えたいのはそこではない。


「で、基本有事の際にオレがいなければ、彼女が全体の統率を担う」

「サブマスターではなく、彼女がですか?」

「ああ。サブマスターにして役職を与えると色々と彼女の動きを阻害するからな。基本は自由に動いてもらう為に、役職はつけていない」


 ここらは、今のカイトと似たような立場と言えるだろう。勇者カイトという立場が出ると動きにくくなる様に、サブマスターにするとその分公的な仕事も増えてしまう。

 カイトには出来ない裏方仕事をしてもらう為にも、そして同様に動きが取りにくい自身に代わってクズハ達の支援をしてもらう為にも、役職を与えるわけにはいかなかった。と言ってももちろん、そんな事を言えるわけがない。なのでこういう場合の言い訳もきちんと考えていた。


「まぁ、独特な形だというのはオレもわかっている。が、ウチは何分元々が地球への帰還を目指すギルドだからな。技術班の動きを阻害しない様に、というのが前提としてある」

「それで役職は与えない、と」

「こいつらの研究が一日遅れるだけで、目標達成に一日の遅れが出るからな。それじゃあ本末転倒だ」

「なるほど……」


 確かに、カイトの言っている事には筋が通っている。ソーニャは冒険部の独特な点について、きちんと筋が通っていると納得した。そしてであれば、彼女としても異論は無かった。


「わかりました。もしもの際はよろしくお願いします」

「うむ……で、これだけか?」

「ああ。ああ、そうだ。一応灯里さん見掛けたらきちんと時間には待機しとけ、と言っといてくれ」

「……そうじゃな。言っておこう」


 流石に良い大人なんだから言わなくても良いだろう。一瞬そんな言葉が口をついて出そうになったティナであったが、灯里なら時間に戻れば良いでしょー、と普通に彷徨いている可能性があった。それでもやらかす事はまず無いが、万が一という事もある。言い含めておいた方が良さそうではあったので、受け入れたらしかった。


「頼む。こちらもなるべく時間には間に合わす」

「うむ。では、また後での」


 カイトの言葉に頷いたティナが立ち上がり、改めて執務室を後にする。今は特に転移術研究の前準備の更に前準備に忙しいのだ。あまり時間を費やすわけにもいかなかった。

 無論、それは灯里もだが、彼女の場合は息抜きも天才的に上手い。気が向いたタイミングで入っている――同時にそれ故徹夜もあるが――事も多く、居ない可能性も十分にあった。


「さて……じゃあ、これからギルドホームの案内をしたいんだが……」

「何か?」

「お一人様、お約束をすっぽかして下さった方がいらっしゃいまして」

「はぁ……」


 盛大にため息を吐いたカイトに、ソーニャが不思議そうに首を傾げる。とはいえ、ギルドの重要人物となるサブマスターも紹介されているし、下の受付には到着した時点で挨拶をしている。マクスウェル支部への挨拶はこの後だ。

 この上で誰か重要人物が居るとは、思えなかった。が、この時点でソーニャ以外全員が理解していた。本来この場に居なければならない筈の一人が足りていない、と。


「はぁ……多分街の子供達と遊んでるんだろうが。久方ぶりにすっぽかしやりやがった」

「誰なんですか?」

「ソレイユ。<<森の小人フォレスト・スピリット>>から臨時でウチに派遣されている弓兵だ」

「……それ、もしかして……」


 流石に教国のユニオン支部出身とはいえ、ユニオンの職員である以上はソレイユの噂ぐらいは聞いた事があったのだろう。出された名前に思わず絶句していた。


「そのソレイユだ……兄妹でウチに今来てるんだが、兄貴の方は現在入院中で病院。あっちは普通に無事だから、朝は控えとけ、って言ったんだが……はぁ」

「ただいまー! みんなおはよー!」

『戻った』

『只今もどりました!』


 噂をすれば影がさす。盛大に呆れ返ったカイトがため息を吐いたと共に、窓からソレイユが飛び込んできた。その横には日向と少し上機嫌な伊勢――散歩でテンションが上がっている――が一緒だ。


「はい、来ましたー」

「どしたの?」

「はーい。ちょっちこっち来ましょうねー」

「ほえ?」


 どうやらソレイユは朝の招集の事を完全に忘却の彼方に消し去っていたらしい。不思議そうな顔をしててくてくとカイトの所へと歩いていく。そうして、射程圏内に入った瞬間に雷撃を纏ったデコピンを叩き込んだ。


「いたっ! 何!?」

「朝はよこい言うたじゃろうが!」

「……あ」

「はぁ……」


 どうやら怒られた事で思い出したらしい。ソレイユが目を見開いた。いつもならお説教をしたい所であったが、残念ながら今日はあまり時間もない。なので今のデコピンでチャラにしてやる事にした。


「まぁ、時間が無いからお仕置きはこれで勘弁してやる」

「ごめんなさーい……」

「はい、よろしい。まー、最近はしっかりしてたから、久しぶりにお前らしさが出ちまった、って所だろ。大目にみてやる」

「うん……」


 しゅんっ、としょげ返るソレイユに、カイトは一つ微笑んだ。まぁ、前から言われていた事であるが、彼女の悪癖は仕事をすっぽかす事だ。

 それでも後でしっかり帳尻を合わせられる腕を持っているので問題になる事はほとんど無い――冒険者は結果が全てと言っても過言ではない――が、それはそれだろう。


「で、彼女がソレイユ。これでも腕は確かだ。少なくとも、ウチの弓兵全員を合わせたよりも上だろう」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 思わぬ所で出たユニオンの大物に、ソーニャも少しだけ緊張を滲ませていた。そしてそれに対するソレイユもやってしまったばかりだからか、珍しく普通の挨拶だった。


「よし。これでひとまず、現状で教えておくべき相手は全員だろう。後は、さっきも言ったが追々覚えておいてくれ」

「はい」

「じゃあ、後はギルドホーム内を移動しつつ、適時紹介しておこう」


 これでソレイユを含めて必要な人物を全員紹介出来たか。カイトは一通り紹介を終えた事を確認し、一つ頷いた。そうして、彼は改めてギルドホームの案内を開始する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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