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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第85章 次への一歩編

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第2052話 血の猛り ――起こり――

 冒険部においてリーナイトでのユニオン総会で怪我をした者たちが中心となり結成された遠征隊。それに瞬は基本は部長連や部活生達と関わる事が多い、という事で参加する事になっていた。

 そんな遠征隊が野営地を設営して二日。彼は藤堂や綾崎と言った部長達を筆頭にした腕利き達と共に荒野地帯にて訓練を行っていた。そうして、瞬対藤堂・綾崎の二人の模擬戦から少し。待てど暮らせど魔物が現れない事を受けて、一度一同は場所を変える事にしていた。


「ここらなら、大丈夫か……?」

「さてな。わからん」

「まぁ、見つかれば儲けものか」


 改めて簡易の休憩所を設営しつつ、瞬は綾崎の言葉にそう思う。今回の目的はあくまでも魔物との戦いだ。模擬戦ならギルドホームに併設されている訓練場でも出来る。というわけで、改めて簡易の休憩所を設営して、瞬は周囲の気配に感覚を研ぎ澄ませる。


「ふむ……群れが幾つか、ありそうか」

「その、ようですね……こういう時、使い魔が居ればと思いますね」

「言うなよ。俺達には無理だ」

「そうですね」


 どこか楽しげに笑う瞬の言葉に、藤堂もまた笑う。冒険部では現在、使い魔の創造はあくまでも魔術師達の専売特許に近かった。純粋に近接戦主体にも関わらず作れるのはほぼほぼカイトぐらいなものだ、と言って良いだろう。

 が、その代わりに彼らには気配を読む鋭敏な感覚があり、それを代用すれば魔物が居るかいないか程度は理解できた。というわけで、その感覚で敵の居場所などを掴んだ瞬が、改めて藤堂と綾崎へと問いかける。


「とりあえず、どうする?」

「ふむ……先と同じく班に別れて行動するべきだろう、とは思うが……」

「流石にこうも近いと、そう言ってもいられなさそうですね」


 気配を読む限りだと、魔物の群れ同士はさほど離れているようには見えなかった。かといって、こちらが病み上がりである現状を鑑みれば、連戦や混戦状態になってしまうのは避けたい。少し考えねばならなかった。


「とりあえず、厄介な『荒野の虎(ランド・タイガー)』は近くには居ない様子だが……」

「戦っている最中に来る可能性は十分に考慮しておくべきかと」

「だな……」


 近くにはいないからといって、こちらが認識されない範囲に居ないとも限らない。三人は現状をそう判断する。そうして少し三人は考え込む事になるのだが、瞬が一つ提案した。


「俺がフォローしよう。流石に現状だと連戦も混戦も避けたいだろう。万が一『荒野の虎(ランド・タイガー)』などの強い魔物の横槍があった場合、俺がなんとかする」

「頼まれてくれるか?」

「元々、その為に来ているからな。なに、<<原初の魂(オリジン)>>と鬼の力を併用すれば、ランクS相当の魔物も何とかなる。安心してくれ」


 どこか申し訳なさそうな綾崎の問いかけに、瞬は一つ笑って快諾する。そもそも彼が来た理由は現在の部長連や部活生達がどの程度の力量になっているか、というのを確かめる為だ。彼自身が訓練をする為ではない。そこを、彼は履き違えていなかった。それに、綾崎が礼を言う。


「すまん。藤堂、補佐を頼まれてくれるか?」

「はい。この数です。中々、苦労するでしょう」

「総仕上げにはもってこいだ」


 藤堂の言葉に綾崎が笑う。そうして、二人が瞬以外の面子を連れて、休憩所を後にする。それを見送って、瞬は一人椅子に腰掛けた。


「ふぅ……」


 ひとまず、全体的に問題なさそうか。瞬は一息ついて、今回の遠征の手応えを思い出した。やはり一部にはまだ動きにぎこちなさがあったものの、総体としては割と問題の無い範疇に留まっていた。これならカイト達が戻ってきてすぐに本格的な動きに移れるだろう。彼はそう結論を下す。と、そんな彼はふと、手を見つめた。


「にしても……」


 何かがおかしい。瞬は鬼の力を使ってから感じる自身の火照りに、僅かな違和感を感じていた。実のところ、彼がいの一番に残る事を進言したのにはこの違和感が理由の一つにあった。思うよりコントロール出来ていない、と判断したのである。


「若干、力に振り回されている感じがするな……」


 仕方がないか。瞬は不可思議な状況に対して、これから慣れていけば良いだけと判断する。確かに自身の急激な因子の増加は気になると言えば気になるが、そこらは追々調べていけば良いだけの話ではある。今は、この力に慣れて更に先に進める様にする事が先決だった。


「ここらなら、<<雷炎武(らいえんぶ)>>を使っても因子を使ってもどちらでも大丈夫そうか」


 幸いな事に現在の瞬はランクB程度の冒険者に匹敵する実力がある。鬼の力と<<雷炎武(らいえんぶ)>>を併用すれば、ランクAでも上位層に届き得るし、<<原初の魂(オリジン)>>を使用すればランクSの冒険者とだって渡り合える。

 現状、彼一人――ソラぐらいでないと危険地帯では足手まといになる為――であるのならマクダウェル領内の大半に挑む事が出来た。なのでよほどの事態でない限り、どちらを使ってもなんとかなる、と考えられた。


「そういえば……ソラの奴は異族としての力をどうするつもりなんだろうか……」


 あいつも中々良い因子を持っていると聞いているんだがな。瞬はかなり昔に聞いたソラの肉体的な要素を思い出し、そう呟いた。なお、これについては戦略眼を鍛えている為、いまいち本腰を入れていない。が、それは瞬の預かり知らぬ所であった。と、そんな益体もない事を考えながら、瞬は遠征隊の戦いを見守る事にする。


「ふむ……やはり綾人の速さは眼を見張るものがあるが……」


 あいつだけでなく、空手部の面々はやはり速度が良いな。瞬はかつては――今は基本全体を率いる――自身が直接的に率いていた陸上部の面々にも匹敵する速度を見せる空手部の面々に、僅かな感心を抱く。


「なるほど、ああやって重心を維持して……む……ふむ。面白い戦い方だな。水で囚えて、か……なんだったか……俺がやるなら、雷で囚えてみるのも面白いか……? 傍目八目か。やはり離れてみてみれば、勉強になるな……」


 なるほど、こういう訓練もあるのか。瞬は遠くから全体を俯瞰して見て初めて見えるものに、どこか感心した様に観察を続けていく。と、そんな事を考えていられるのも、少しの間だけだった。唐突に、巨大な竜の雄叫びが聞こえてきた。


「む……」


 出番か。瞬は現状を鑑みて、自身が出るべきと判断する。そうして、彼は槍を生み出して綾崎達へと告げた。


「綾人! 増援はこちらでやる! お前達はそのまま戦え!」

「任せる! 終わり次第、そちらの支援に入る!」

「頼む!」


 綾崎の返答に、瞬は改めて一つ深呼吸をして周囲の気配に耳を澄ませる。そうして、彼はこちらに近付く巨大な魔力の塊に気が付いた。


「ひのふのみの……多いな」


 どうやら、群れがやって来てしまったらしい。一個一個の力こそさほどではないので、本来なら綾崎達が万全の状態で出迎えて訓練相手と出来ただろう。

 が、如何せん現状はすでに戦いを行っていたし、この状態で若干弱いとはいえ竜種を相手に戦いを挑むのは得策ではない。なので、瞬はやはり自身が食い止めるのが良いと判断する。どうやらあくまでも訓練という事で、殲滅ではなく足止めに留めるつもりらしい。


「……見えた」


 暫くの後。瞬はこちらに進軍する地竜の群れを目視する。まぁ、地竜と言っても小型の恐竜程度の大きさで、一体一体の大きさは二メートル程度。ランクはC程度という所だろう。油断さえしなければ、そして万全であれば今の冒険部なら狩れる相手だった。瞬であれば、本気でやれば殲滅は十分可能だろう。


「……ふぅ」


 深呼吸を一つ。瞬はそれで迫りくる地竜の群れへの覚悟を決める。そうして、彼は地面を蹴って冒険部の面々が増援に来るにあたって丁度よい場所に立ち止まる。


「ここら……か?」


 ここなら後ろの冒険部の面々へ通す事なく戦えるか。瞬は後ろの面々からある程度の距離を取りつつ、もし万が一自身が抜けられても追いつける距離の場所で待ち構える。


「よし……後は、タイミングを見計らって鬼の力を解き放ち、だな」


 瞬は群れを自身に引き付ける為に何をすれば良いか、と改めて自身の頭の中で組み立てる。とはいえ、それは今まで何度もこういった遠征隊での訓練でやって来た事で、一応手順を見直しておこう、というに過ぎなかった。


(……早すぎても駄目だし、遅すぎても駄目だ)


 遅すぎれば群れはこちらから距離を取って<<竜の伊吹(ドラゴン・ブレス)>>を射掛けてくるかもしれないし、もしくは自身を危険視してしまい迂回されかねない。

 後者は何とか出来る可能性が高いが、前者の場合下手に避けると後ろの面々に直撃しかねない。それは困る。故に、瞬は交戦の直後はまだ因子を解き放たない事にする。


「さぁ……来い!」


 敢えて、瞬は声を大にして地竜達を睨みつける。それに、地竜達も声を荒げてこちらへの速度を速める。威嚇された、と思ったのだ。そうして、先頭の一体が瞬へと猛烈なタックルを仕掛けた。


「っと!」


 自身を食い破らんとして頭を下げた先頭の一体の頭を踏み台にして、瞬が飛び上がる。そうして、彼は群れの進軍速度を遅くする様に、無数の槍を群れの合間に叩き込んだ。


「ふぅ……すぅ」


 群れの中程で地面に着地し、瞬は息を大きく吸い込んだ。これで、群れの速度は十分に殺せている。後は少し離れた所で戦う綾崎達に向かうかこちらに来るか悩む地竜達をこちらに向かせれば、十分だ。

 というわけで、彼はここからが本番と鬼の因子に力を注ぎ込みながら、一瞬だけ呼吸を止めた。<<戦吼(ウォークライ)>>。その準備だ。


「……っ」


 息を止めて一気に鬼の因子に力を注ぎ込んだ瞬間。瞬は自身が灼熱に包まれたような感覚を得る。そうして、その感覚の直後。彼の意識は一瞬にして塗りつぶされた。


「『ぐぉおおおおおおおおおおお!』」


 後に、瞬は言う。気付けば戦いが終わっていて、カイト達の前で寝かされていたと。そうして、『鬼』の<<戦吼(ウォークライ)>>が響き渡る。


「……」


 響き渡った強大な力の咆哮に、地竜達が後ずさる。それに、意識を灼熱に飲まれた瞬はただただ圧倒的な強者である事を示すかの様に、一瞥した。


「……はっ」


 ぶんっ。軽く、瞬が腕を振るう。それだけで、群れの半数が消し飛んだ。そうして、何も無かった筈の彼の手に大鉈に似た大太刀が現れる。


『瞬! 何をしている!』

「……」


 ヘッドセット型の通信機を介して聞こえた綾崎の言葉に、瞬は軽く彼を一瞥する。流石に綾崎も予定にない瞬の状態に驚き、慌てて問いかけたらしい。が、まるで弱者には興味がない、とばかりにそんな問いかけを一切無視。瞬はそのまま周囲の魔物を手当り次第に殲滅していく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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