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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第83章 次のステップ編

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第1994話 新たな旅 ――再会――

 『リーナイト』にて行われた総会での一件。それを終えて後始末にある程度の区切りを付けたカイトは、後の事をバルフレアやレヴィらに任せると『リーナイト』を離れていた。そうして、彼が飛空艇に乗って出立して一晩。カイトは久方ぶりに帝都ラエリアに到着していた。


「おー……なんか懐かしい」

「まぁ、お前はそうか」


 艦橋から帝都ラエリアの光景を一望するソラに、カイトは少し苦笑する。実際には秋の初旬にラエリアに来てこの帝都ラエリアの地も踏んでいるが、彼の場合間に一年ものブランクが空いている。故に妙な懐かしさを感じたのだろう。と、そんな事を言っていると飛空艇は緩やかに着陸態勢を取り、空港に着陸した。


「良し……まぁ、今のラエリアなら問題は無いか」


 飛空艇の鍵を抜いて、カイトは一つ頷いた。内紛の終了以降、目に見えて治安は回復している。やはり大大老が中心となった腐敗で、彼らが軒並み倒れたのだ。結果芋づる式に腐敗していた貴族達も掃討され、身に覚えがある貴族達も流石に今は鳴りを潜めている。治安の面で言えば、天桜学園が転移する前よりも良いぐらいだった。というわけで、飛空艇の鍵を抜いたカイトにソラが問いかける。


「で、カイト。俺達何しにこっちに来たんだ? こっちに来るって引き継ぎは聞いてたけど、何するまでは聞いてないんだけど」

「何するか、と言われてもお前は何もしない。オレが単にシャリク陛下と会って、聖地へ向かう許可を正式に頂くだけだ」

「それだけ? てか、行きの際に貰ってないのか?」


 やはり行きの時はソラは居なかったし、急場で引き継ぎを行ったからだろう。詳しい流れまでは引き継がれていない様子だった。というわけで、カイトがさらりと事情を語る。


「貰うには貰ったんだが……今回の一件の所為で期限が過ぎちまってな。改めて発行してもらう事になっちまったんだ」

「送って貰えばよかったんじゃないか?」

「それがそうもいかなくてな……なにせ場所が場所だからな。偽造防止やらなんやらを多重に仕掛けている関係や今回の一件でユニオン側からの要望やらラエリア側からの要望やらが入っちまったんだ。で、改めて発行し直す羽目になった」


 送るだけで良いのではないか。そんな疑問を得るソラに、カイトが困ったように笑う。これから向かうのは、ラエリアの帝室が管理する聖地だ。本来は立入禁止区域で、冒険者で立ち入った事がある者はラエリアの歴史の中でも数えられるほどだ。

 大大老達さえ、手出しを一切しなかった場所なのだ。日付一つ変わるだけで申請書を改めて発行しなければならなかったり、といろいろと手間があったのである。


「まぁ、それはわかるけどさ……でも少し楽しみっちゃぁ、楽しみだな」

「ま、楽しめる場所じゃあないがな。それでも、見ておいて損はないというか……結構びっくりすると思うぜ?」

「マジか」


 一転気を取り直したカイトの言葉に、ソラの目に僅かな興味が鎌首をもたげる。相手は賢者と言われていると同時に、精霊の一人とも言われているのだ。自分の想像が及ばない相手なのだろう、とは思っていたらしい。それに、彼の場合はもう一つ理由があった。


「実はお師匠さんも何度か会ったって聞いててさ。一回会ってみたかった。お師匠さん、詳しくは教えてくれなくてさー」

「あはははは」


 どうやらこれ故にソラとしても一度会ってみたかったのだろう。どこか期待を滲ませる彼の言葉にカイトは笑う。と、そんな事をしていると空港側から上陸の許可が下りて、外に出られるようになる。


「良し……ソラ。オレは先輩と一緒にこのまま城に向かう。お前は残りの面子率いて、ホテルで休んでおいてくれ」

「あいよ。何かしておく事、あるか?」

「今は無い。あぁ、そうだ。灯里さん起きたら即座に連絡」

「ああ、そういやまだ寝てるんだっけ」

「ああ……起きたら説教かますんでな」

「あははは」


 楽しげにそううそぶいたカイトに、ソラが一つ笑う。ここら逆な気がするが、これが両者の関係というわけなのだろう。ソラもそう理解できていた。というわけで、そんな彼に残留の面子の統率を任せると、カイトは瞬と共にひとまず城に向かう。その道中、城を見上げながら瞬がふと呟いた。


「……前に見た時はまだ修復中の所があったが、もう無いな」

「魔術があるからな。修繕も地球より遥かに早い」

「だろうな……ふむ……」

「どうした?」


 自身の意見に同意して、その後に興味深げに周囲を見回す瞬にカイトが首を傾げる。これに、瞬が答えた。


「ああ、いや……前にこちらに来た時は内紛終結直後だっただろう? それで冒険者達も多かったが……今は少ないように思えてな」

「ああ、それはそうだろう。先輩が言った通り、内紛が集結した直後だったからな。今はもう治安も回復して、帝都は平常運転という所なんだろうさ」

「ということは、今は地方の方が多そうか」

「まぁ、普段は、なんだろうが……」


 今はおそらく『リーナイト』近辺が一番多いだろう。カイトは今回の一件を受けて周辺に待機しているだろう冒険者達を考えて、僅かな苦味を浮かべる。

 これもまた、危惧されている事の一つではあった。人手が一所に集中すればその分、警戒網に穴が出来る。ラエリア内部になにかが起きていたとしても、それを察せられない可能性があったのだ。そんな事を思い出したカイトに、瞬が首を傾げる。


「どうした?」

「いや……すまん。なんでもない。とりあえず、さっさと許可だけ貰って戻ろう。明日には聖地に行きたいからな」

「そうだな」


 今回、『リーナイト』での一件があり当初より予定としてはかなり遅れてしまっている。ただでさえ中津国での一件で遅れているというのに、これ以上長引かせたくはなかった。

 というわけで城に到着して受付で申請を済ませて、しばらく。カイトは予定より少し遅れて瞬と二人シャリクの所へと通される。


「あぁ、カイト。すまないな、待たせて」

「いえ……現状です。私も分身を介して自領の統治をしていますので、大凡の状況は理解出来ます」

「ありがとう……はぁ。まさかたかだか半月でこうも大騒動になるとはな」

「奴らですからね」


 苦笑を滲ませたシャリクに、カイトもまた同じ顔で笑う。やはり色々とあったからかどちらも疲れが見え隠れしていたが、カイトよりもシャリクの方が疲れが見えていた。当然だろう。移動の間に休めた彼に対して、シャリクはここ暫く連日連夜絶え間なく会議に次ぐ会議だったらしい。予定より遅れたのも、その会議や会談を行っていたからだった。


「ああ……数カ国から再度の大陸間会議を開くべきでは、という提案があってな。今もその使者が来ていた」

「それは……まぁ、悪くはないですが、上策でも無いでしょう」

「ああ。我が国としても、大陸間会議は行うべきではない、と思っている」


 カイトの意見に対して、シャリクもまた同意を示す。これは当然といえば当然の話だった。


「ええ……無論、開けるのなら開いた方が良い事は良いでしょう。が、大陸間会議の参加国各国の予定を調整し、となると調整している時間があまりに無駄だ。各大陸の大陸会議の代表者か使節団による会談としておくべきかと」

「その、つもりだ。これについてエネシア大陸は?」

「私は何も聞いてはおりませんが……間違いなく今度のエネシア大陸会議にて出るかと」

「そうか……これはあくまでも我が国としての意見だが、可能な限り大陸間会議は開かない方向で話を進めたい。その旨、レオンハルト皇帝陛下にもお伝え願いたい」

「承りましょう」


 シャリクの要望はカイト自身の意見とも一致するものだ。故にカイトはその伝達を快諾する。先に彼が述べた通り、大陸間会議は手間が大きすぎて開きたくない、というのが彼の考えだ。

 そしておそらくこれは皇帝レオンハルトも同じだと考えていた。シャリクの意見はカイトにとっても開きたい、という国へのカードになるし、逆に皇国の意見も一緒というのはシャリクにとっても手札に成り得た。大陸間会議を開く場合、他大陸の有力国の意見は無視出来るものではないのだ。


「助かる……あぁ、すまない。本来はこの話をしたくて来てもらったわけではないな。瞬。君は大丈夫か?」

「あ、はい。身体の怪我の方はもう殆ど……それより、失った魔力の方が問題で」

「そうか……今回は長丁場だったと聞いている。あまり無理はしないようにな」

「ありがとうございます」


 シャリクのねぎらいに、瞬が一つ頭を下げる。一応回復薬で魔力補給などは定期的に行っていたが、回復薬の本来の用途は怪我の治癒だ。なので戦闘終了後は魔力回復は自然治癒に任せて――本来の用途を求める者が非常に多い事もある――おり、瞬の魔力は全回復していなかった。そうして一つ雑談兼社交辞令を混じえた所で、シャリクは横の補佐官に一つ頷きを送る。


「ああ……それで、カイト。これが新しい許可証になる」

「ありがとうございます」

「ああ。シャーナにもよろしく頼む。それで、申し訳ないのだが今回の一件でまた私が伺う事も伝えてほしい。少し知恵をお借りしたい」

「かしこまりました……そうだ。彼の方はお元気そうでしたか?」


 シャリクの要望を快諾したカイトは、一転『大地の賢人』の様子を問いかける。これに、シャリクは一つ笑って頷いた。


「ああ。君が来ると聞いて楽しみにしている、との事だった。まぁ、そこらの事は私より君の方が詳しいだろう」

「そうですか……ありがとうございます。次は、何も無い時にお伺いできれば」

「そうだな。次は何も起きていない時に来てほしいものだ」


 流石に事あるごとに問題が起きては、二人で会談をしているのだ。カイトとしてもシャリクとしても何も無い時に話がしたい所ではあった。なにか話す事が無くとも、である。というわけで足早に話し合いを終わらせると、二人は改めて城を後にする。


「やはりお忙しいのか」

「ああ……大陸会議を開くからな。大急ぎで予定を調整している所だろう」

「大陸会議……そういえば大陸会議は大陸で行うもの……なんだよな?」

「ああ。大陸間会議が国連の会議だとするなら、大陸会議はユーラシア大陸での会議に近いか。こっちは基本は一年に一度定例的に行われているものだが、今回みたいな状況じゃ緊急的に開催される。ま、エネシア大陸は元々開催予定もあったから問題は少ないんだが、ラエリアやその他の大陸だと今年は開かない予定だった所もある。大忙しでも仕方がない」

「行くのか?」

「ああ」


 この会議にカイトが参加しない道理はないし、クズハからも皇帝レオンハルトから再度の会議への参加要請があった、との連絡が来ている。拒む道理はなかったし、意味もない。とはいえ、これは瞬達にとっては不思議でもなんでもなく、それ故に気になるのはこちらだった。


「俺達はどうするんだ?」

「んー……今はまだ未定といえば未定なんだが、ソラが呼ばれる可能性が高くてな」

「ソラが?」

「ああ。ブロンザイト殿の弟子という立場と、彼の死去がある。そして神剣の担い手という所もあり、か。大陸会議で話し合われる重要議題の二つに関わる中心人物の一人だ。オブザーバーとしての参加を打診されている」


 ここらは基本は自身が矢面に立つ事にしているカイトにとって少し苦い所ではあったが、同時にわからないでもない理由ではあった。なので今はソラと話し合ってどうするか決めている所で、それ次第で冒険部の動きも決めるとの事であった。と、そんな事を話し合ってホテルへと向かったわけであるが、到着したホテルではソラが誰かと話している様子だった。


「ん?」

「客……か?」

「みたいだな」


 今回ソラが来たのは突発的な事で決まっていた事ではなかったが、どうやらソラは気兼ねなく話せる相手だったらしい。緊張や立場ある相手を前にした真剣味は見受けられなかった。と、そんな彼がこちらに気が付いた。


「あ、カイト」

「ん?」


 ソラの言葉に、彼が話していた相手が椅子の影から顔を覗かせる。そうして見えたのは、以前にラグナ連邦にて彼が協力していたエマニュエルの部下の二クラスだった。が、こちらはカイトは兎も角瞬は知らない相手だ。故に彼が不思議そうに問いかける。


「ああ……知り合い、か?」

「あ、うっす。前にラグナ連邦で世話になった警察の方っす。二クラスさん。こっち、ウチのギルドマスターとサブマスターです」

「ああ、君達が……」


 ソラの紹介に、なぜかラエリアに来ていた二クラスが頷いた。そうして、ソラの紹介を受けたカイトと瞬の二人が彼に挨拶をして、暫くの話し合いが持たれる事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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