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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第82章 悪夢の中の再会編

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第1988話 七つの大罪 ――事情――

 レックスの消滅と入れ替わるようにして帰還したレクトール。そんな彼からカイトへと今までの無礼を詫びる一幕があったものの、それについてはカイトは改めて自身の都合で正体を隠していた事を明言。気にしないように告げていた。そうして、その一幕から少し。改めてレクトールは自己紹介を行っていた。


「レクトール・アヴセウム。黒き森の賢者の子です」

「サルファの子孫、か。何代先だ?」

「十一代です。母が黒き森のエルフの王族出身で、父がレジディアの王族出身です」

「なるほど……血としてはエルフの方が強いように思える」

「はい」


 カイトの推測に対して、レクトールは一つ頷いた。ここら、混血と言っても完全に二分の一されるわけではない。どちらの因子がどれぐらい強いのか、というのはまちまちで、種族の掛け合わせなどで決まった割合などはなかった。


「ま、そりゃ今はどうでも良いか。それで、なんでお前がグリムに?」

「実は……つい半年ほど前まで記憶喪失に陥っておりました」

「「「……」」」


 レクトールの返答に、カイト以下セレスティア、イミナの三人が思わず顔を見合わせる。


「……どうされました?」

「い、いえ……実は兄さんが見つからないので、一応表向き記憶喪失になっているのでは、と言っていたんです。でもまさか本当とは……」


 当然といえば当然の事であるが、セレスティアはレクトールの事を知っているわけがない。なので正しく嘘から出た真、と苦笑するしか無かったようだ。そんな彼女に、カイトも似た様な顔で告げる。


「ま、まぁ……不思議じゃないといえば不思議じゃない。世界転移において衝撃が走る事は往々にして起こり得る、というのは知られた話だ。一応聞くが、セレスティア達とは全く別の所に飛ばされた、で間違いないな?」

「セレス。お前が出たのはエネシアか?」

「はい」


 これについてはカイトもサリアら情報屋達が仕入れた情報から正しいものと考えられている。無論、その時点で一緒だったのであれば


「なら、やはり別です。私が拾われたのは双子大陸南部。詳しい事は記憶が朦朧としていて定かではないのですが……魔物の群れに襲われていた所を、先代に助けて貰いました」

「先代……というと先代のグリムか?」

「はい」

「ふむ……丁度真反対あたりの所に出た形か……」


 厳密に言えば正反対とは言い難いが、北半球と南半球だ。かなりの誤差が出た稀有な例と言えただろう。


(彼女らの召喚は奴らによるものと思えたが……流石に距離が離れすぎているか? 失敗にしても距離が離れすぎている。一度に召喚された事はおそらく事実。召喚でこぼれ落ちたか……それとも巻き込まれたか。もし巻き込まれたのであれば、目的はセレス達か。いや、逆もありえるが……)


 流石に自分との縁を考えた場合、セレスティア達の方が多すぎるか。カイトは現状わかっている情報から推測を立てる。


(何が目的だ? セレスティア達を呼び込んで……オレだ、と言われればそれまでではあるが……考えられんな)


 もしセレスティア達が召喚により呼ばれていた場合、何が目的なのだろうか。カイトは自身の所に繋がりつつあるかつての縁を考え、少しだけ悩む。


(いや……もしオレが目的ではなかったら? では何が目的だ? あの世界には何がある? そしてあの世界にしか無い物は……)


 何があり何が無く。カイトは無数の考察を行っていく。と、そんな彼に驚いた様子を見せたのは、レクトールだ。


「……どうされました?」

「ん? ああ、いや……すまん。色々と考えていた。もしお前らが召喚されたものであれば、その目的はなにか。逆に召喚ではなく事故であるのなら、問題はない。が、そうでないのなら、奴らは何が目的なのか……オレか、それとも無関係か」

「召喚であれば、貴方の目覚めを促す為と思いますが」


 カイトの言葉に対して、セレスティアがそう口にする。それに対して、カイトは笑って首を振る。


「本当に、そう思うか?」

「え?」

「そうだな……一応、シンフォニア王国第二王朝の国父として、オレは多くの秘密を知っている……ん? なんだよ、その反応」


 シンフォニア王国第二王朝の国父。そう自身を告げたカイトに対して、三人は目を丸くしていた。すっかり当たり前の事だと思いこんでいたが、違うらしい。というわけで、レクトールが問いかけた。


「い、いえ……第二王朝の国父ですか? 廃城の賢者の?」

「ああ……廃城というか今じゃ学園都市だろう?」

「え、ええ……もう誰も姿を見た事が無いという学園都市の奥深く。廃城の最深部に居るとされている大賢人……」

「ああ……まぁ、三百年か? それぐらいはもう離れているから誰も知らないだろうがな」

「「「……」」」


 ぽかーん、という具合でレクトールは唖然となる。とはいえ、たしかにこれはカイトもわからないではなかった。そもそもカイトがヒメアと再会した頃にはすでに彼は伝説上の人物で、居ると言われているものの誰も見た事がないというのが触れ込みだ。

 レックス達も精神崩壊状態となり静かに暮す彼の周辺を騒がせないように、誰にも彼がかつて勇者カイトだった者であると告げず、公的には彼を<<廃城の賢者>>として通した。

 そしてやり直した後はレックスに言われ学生になっていた時にヒメアとの再会を成し遂げているため、誰も知らなくとも無理はなかった。


「まぁ、知らなくても無理はないか。ヒメアの契約による記憶の再生成が行われた結果、オレもオレである事を取り戻せたぐらいだ。あの後はすぐに、だろうしな……」

「は、はぁ……」

「いや、それはどうでも良い。兎にも角にも、色々と分かっている事はある。あの世界の特殊性とかな」

「特殊性……ですか?」

「ああ。これは当然ではあるんだが、世界に応じて特殊性というか、ある程度の独自性は存在している。このエネフィアなら、この広さだな。実際、かなり規格外の広さを持っている。おそらくこれが基準になるんだろう」


 やはり幾つもの世界を回ったからだろう。カイトは世界毎に独自性がある事を理解しており、エネフィアはこの広さだと考えていた。もちろん、星に応じて若干の誤差があるだろうが、広さはかなりの物だった。


「それはともかくとして、世界毎に独自性がある。それじゃあ、お前らの世界はなにか。その一つに、特殊な鉱石がある」

「特殊な鉱石?」

「ああ……その大剣の素材。何か、と問われてお前は答えられるか?」


 セレスティアの問いかけに対して、カイトはレクトールの背に背負われる大剣を指し示す。これにレクトールは即座に頷いた。


「『夢幻鉱(むげんこう)』です。神界の最深部。最高難易度を誇る迷宮(ダンジョン)でのみ極僅かに算出される虹色に輝く半透明の鉱石……確か御身の双剣も……」

「ああ。『夢幻鉱(むげんこう)』で出来ている。と言っても、緋々色金(ヒヒイロカネ)との掛け合わせだがな。緋々色金(ヒヒイロカネ)と双対を為す最高位の金属……あれが取れる世界は限られる。おそらくこのエネフィア近辺であれば、あの世界だけだろう」


 カイトはかつての自身の双剣を思い出し、あの世界でのみ産出される鉱物を思い出す。あれもまた、あの世界に繋げる理由の一つになり得た。


「ですが、それは私達が呼ばれる理由にはならないのでは?」

「本当にそう思うか?」

「え?」


 セレスティアの問いかけに、再度カイトが楽しげに問いかける。そうして、彼が告げた。


「その武器にはオレ達が仕掛けた無数の守護が存在している。その武器を異世界から召喚する、というのは不可能だ。それこそ、オレ達でもなければな。が……絶対にそれでも召喚が出来ないわけではない。例えば……その使い手を召喚するとかな」

「? それならどうして可能なのですか?」

「オレ達が仕掛けた守りはあくまでも武器に対する守り。例えば奪われて属性の変質が起きたりしないように、というわけだな」


 先にレックスが言っていたが、彼らが残した武器はそれぞれ全てがそれぞれにとっての目印になっている。なので性質の変容があった場合には探せなくなってしまう可能性があったため、そうならないように各種の守護を仕掛けたのだ。が、それはあくまでも武器に対してであって、使い手を守ってくれるものではない。というわけで、カイトが問いかける。


「セレス……お前、さっき封印を解いたな?」

「はい」

「それはレックスが掛けた守護だ。<<汝に誉れあれ(ヒーロー・オーダー)>>。他にもその武器には<<汝に勇気あれ(ブレイバー・オーダー)>>、<<汝に慈愛あれ(プリンセス・オーダー)>>やら……そういった守りが八個ある。八個全てを解放して初めて、そいつは完璧な力を取り戻せる」


 オレが掛けたのが、<<汝に勇気あれ(ブレイバー・オーダー)>>だな。カイトはそう語り、改めて大剣を見る。そうしてその守りが何か、と語る。


「じゃあ、これがなにかというと。例えばレックスの<<汝に誉れあれ(ヒーロー・オーダー)>>だと、聖性の保持だな。武器の属性転換……例えば聖剣が魔剣になるような堕転してしまうのを防ぐ、というわけだ」

「ちょ、ちょっと待ってください! ということは、私達がしている事は……」

「まぁ、言ってしまえば武器の守りを解いて、そういう事が起き得る状態にしていると言っても過言じゃない」


 僅かに顔を青ざめたセレスティアに対して、カイトは楽しげに笑う。これにセレスティアは思わず呆気にとられた。


「良いんですか?」

「おいおい……セレス。舐めてくれるなよ? オレ達が無数の戦いを共に経てきた相棒だ。一つ二つ封印が解かれたぐらいでどうにかなると思うか? 第一八個も守りを設けてるんだ。お前らが解く事も想定内。別に一切の問題は無いよ。そもそも、その間使って良い、と言ったのはオレ達だしな」


 使われる事は想定内だし、その為にこっちも色々とセーフティを設けたのだ。なのでカイトとしては一切の問題はなかった。


「ま、そういうわけで八個の守りの中には奪取の禁止をもたらしているような力も働いている。異世界からの召喚はまず不可能と断じよう……が、そうなるとどうやれば奪取出来るか。持ち手を召喚してしまえば良い、というわけだ。もしかしたらセレスが持っている瞬間を狙われた可能性も十分に存在している」

「召喚して、何を狙うのですか?」

「当然、『夢幻鉱(むげんこう)』だ。あの世界の『夢幻鉱(むげんこう)』は迷宮(ダンジョン)の中。普通には入手出来んが……そいつがあれば、不可能じゃない。同じ素材を共鳴させられるからな」

「あ……」


 確かに、不可能ではない。そしてそれなら、カイトの双剣が狙われなかったのも理解できる。あれは彼が述べた通り、緋々色金(ヒヒイロカネ)が含有されている。

 なのでどちらが反応するかわからないし、何より純粋に『夢幻鉱(むげんこう)』を求めるのであればやはり『夢幻鉱(むげんこう)』だけで作られているレックスの大剣の方が良いのである。


「……ま、今考えても何もわからんが。レックスから託されたんだ。しっかり守ってくれ。そいつはオレ達にとってとても大切な物だ。預けてる以上、預けられた奴の責任は果たせよ」

「……はい」


 カイトの言葉に、レクトールは一つ頷いた。そうして、この後はしばらくレクトールの今までの経緯とこれからについて話し合う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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