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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第82章 悪夢の中の再会編

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2007/3938

第1978話 七つの大罪 ――見知らぬ山――

 <<守護者(ガーディアン)>>を駆って星々の海の中で戦いを繰り広げていたカイト。そんな彼はおよそ一時間に渡って、エネフィアへと向かわんとする巨大な魔物達を単身片付け続けていた。


「はぁ……流石に疲れてきた」

「マスターの魔力量で疲れる事、あるんですか?」

「肉体的にゃまだ行けるがな。流石に精神的にキツい……案外、思考による加速は疲れる」

「まぁ……本来そこまで多用する想定にないでしょうしねー」


 カイトの返答に対して、アイギスはなるほど、と一つ頷いた。やはりどうしても<<守護者(ガーディアン)>>は人が使う事を想定して設計されていない。あれは基本自動操縦の様に動くもので、一時間もの長時間使う想定はされていないのだ。

 それでも、一時間もの間乗りこなせているのはそもそもカイトがオリジナルである事と、アイギスという補佐があるからに他ならない。どちらが欠けても、おそらくこうはならなかっただろう。


「で……残りは?」

「イエス……今の所、なんとか探知範囲に居る全てを討伐出来ているかと。大殊勲間違いなしの戦果です」

「殊勲を貰える相手が残らにゃ、なんにもならんがね」


 アイギスの軽口に、カイトは少し疲れた様にその場に尻餅をつく。流石の彼もここらで一息つかねば、ここから先が保たない様子だった。そうして、アイギスが巡航速度でエネフィアへの帰還を開始する。


「ざっと何匹ぶっ倒した?」

「イエス……ざっと二百五十です」

「よくもまぁ、あれだけでかいのがこの宙域に居たもんだ」


 一体につき数百メートル。それだけの巨体を持つ魔物を数百体、カイトは単騎で滅ぼしたのだ。しかもエネフィアを中心として延べ数千万キロは移動していただろう。相当な疲労があったのも無理はない。とはいえ、どうやらカイトを休ませてくれる、という優しさは『暴食の罪(グラトニー)』には無かったらしい。


「マスター! なにか念話が飛んでいます!」

「何だ」

「モニター、出ます!」

『ほぉ……中々便利になっているな』


 アイギスの言葉を受け、モニターにレヴィの姿が表示される。それにカイトは心底嫌な予感しかしなかった。


「次はなんだ。もういい加減にしたいんだが」

『私もそろそろ休みたいがな……どうやら、そうも言っていられん状況になったらしい』

「次はなんだ……」

『こちらからはいまいち見えないのだが、ラエリアの艦隊より報告が入った。無論、お前の艦隊からも報告が来ている』

「聞きたくねぇな……」


 レヴィの位置からは見えなくて、艦隊からは見える。それはとどのつまりまたぞろ『暴食の罪(グラトニー)』からなにかが出たという所なのだろう。というわけで、非常に胡乱げなカイトへとレヴィが告げた。


『安心しろ。聞かなくても問題はない……なにせ、おそらくお前狙いなのだろうからな』

「「げ」」


 マジかよ。カイトとアイギスは揃って頬を盛大に引き攣らせる。


『報告によると、『暴食の罪(グラトニー)』より超巨大物体が出現。直後超速度で飛翔したとの事だ。方向は上。宇宙空間に向けて、と考えて良いだろう』

「つまりオレが邪魔だからぶっ潰そう、って腹か」

『しかないだろうな……なにせ折角自分が呼び水撒いて呼び寄せてるのに、それを片っ端から片付けていくんだ。目障りでない理由がない。相当なデカブツだそうだ。報告の中には山が飛んだ、というぶっ飛んだ言葉さえある』

「やだねー。まーた超弩級戦艦っすかね」


 先に<<守護者(ガーディアン)>>が叩き切った超弩級戦艦。それより巨大な戦艦は確かに存在していた。と言っても流石にサイズはたかが知れており、来るならぶった切るだけであった。


『さぁな……が、こちらに戻るのならまず確実に貴様とはぶつかる。潰すしかないぞ』

「あいよ……アイギス。巡航速度そのまま。現在の速度は……って、どした?」

「あのー……マスター……あれもマスターがご存知のものです……?」

「んぁ?」


 もはや呆然という具合のアイギスに、カイトが不思議そうに首を傾げる。一応『暴食の罪(グラトニー)』討伐の中心人物だったので、大半の有名な艦艇については把握している。なので見れば分かるはずだった。そう。見れば分かるはず、だったのだ。


「……なんだ、ありゃ……」


 少なくとも見たことがないほどに巨大な何か。山と形容されたのも無理がない。本当に、山程の大きさがあったのだ。それも<<守護者(ガーディアン)>>のような数百メートル級ではない。この数百メートルの巨大な<<守護者(ガーディアン)>>をも上回る巨大な物体だった。


「……」

「わからん」


 見覚え、無いんですか。そんな無言のアイギスの問いかけに、カイトもただ唖然となりながら頷くしかなかった。少なくともカイトが関わった文明のどれとも一致しない、超巨大な戦艦。いや、もはやここまで巨大になると要塞だ。それが、こちらに超速度で接近していた。


「……マスター。相対距離、10万キロ。敵、明らかにこちらに一直線です」

「あはははは……笑うしかねぇなぁ……」


 あんなのが居るなんて聞いてないぞ。カイトは見たことのない文明の見たことのない兵器に乾いた笑いを浮かべる。そうして見る見る内に巨大な要塞が接近し、こちらを有効射程距離に捉えたらしい。


「マスター! 敵、攻撃来ます!」

「えぇい、くそっ! やりゃいいんでしょ、やらぁ! こうなりゃやってやらぁ!」


 こうなればやけくそだ。カイトは気合を入れて立ち上がり、己の感覚と<<守護者(ガーディアン)>>の感覚をリンクさせる。そうして、飛来する無数の砲撃に対して刀を構えて一気に突っ込む。が、突っ込んで速攻で引き返す事になった。


「これだめ! マジだめだろ! なんだよ、このデカさ!」


 比較する対象が無い宇宙空間なので大きいと言っても一、二キロという所かな、とカイトは考えていたらしい。が、実際にはそんな領域ではなく、少し近づいてだめとわかったらしかった。


「あいつ、どれぐらいだ!」

「三十キロ! どうやったら作れるんですか、あんなの!」

「宇宙で作ったんだろ! スペースコロニー級とか、バカじゃないのか!?」


 一応、カイトが遭遇した文明にもスペースコロニーのような宇宙で生活する為の施設があった。この要塞は丁度その平均的な大きさに近く、カイトはそう言ったのであった。

 なお、スペースコロニーというと一般的には回転して重力を発生させるオニール・シリンダーが思い浮かぶし、カイトも基本的にはそれを思い浮かべる。

 が、流石数世紀先の文明という所ではなく、カイトが知っていたのは重力発生装置により回転しないでも大丈夫な物だった。そして目の前にあったのもまた、回転しないでも大丈夫な様子だった。


「ちぃ! アイギス! バズーカあるか!?」

「ノー……いえ、イエス! ありました! なんでもあります、これ!」

「うっしゃ! こうなりゃ単騎で攻城戦やってやる!」


 アイギスの指示を受けて超巨大な砲台を顕現させた<<守護者(ガーディアン)>>を操り、カイトは無数の砲撃を回避しながら狙いを定める。要塞表面には無数の砲台があり、とりあえず撃てば当たるような状況だった。が、そもそも撃てるかどうかが、問題だった。


「っ!」


 照準を合わせるべく止まったと同時に放たれる無数の砲撃を前に、カイトはやむなく砲撃を中止。一気に虚空を蹴ってその場から距離を取る。が、どうやらこの砲撃にはある程度の追従性があるらしく、即座に軌道を変えて<<守護者(ガーディアン)>>へと肉薄した。


「ちっ! それなら!」


 そこまで甘くはないか。カイトは舌打ちしながらも、敢えて背面の噴出孔から虹色のフレアを吹かして再加速。更に距離を取る。そうして砲撃を誘導してやって、刀で一太刀に全てを切り捨てた。


「アイギス! 火器管制は全てお前に任せる! こちらで全て回避する!」

「イエス! 砲撃可能になり次第、砲撃を敢行します! 衝撃による操作のミスに注意を!」

「あいよ!」

「っと! マスター! その前に敵要塞のハッチと見られる部分が開きます!」

「来るってことね! りょーかい!」


 これだけ巨大な要塞に機動兵器が搭載されていないとはカイトも一切思っていなかった。なのでここで出してくる事には一切の疑問はなく、ただ叩き潰すだけだった。そうして、カイトは横目に数百体の人型兵器とその数倍の小型戦闘艇が発進するのを見る。


「人型はこっちでなんとかする! あのコバエなんとか出来る良いのないか!」

「えっと……イエス! 全身に小型の迎撃用ガトリングが!」

「良いね! 消耗は気にするな! 大盤振る舞いしてやれ!」

「イエス! って、突っ込むんですか!?」


 一転して突っ込む姿勢を見せたカイトに、アイギスが思わず声を荒げ目を見開く。これにカイトは背面のフレアを更に強めて加速して、数百機の人型兵器の中に突っ込んだ。


「幸いこいつらは分かる! 性能の限界も凡そな! こっちの方がでかいし、性能も良い!」


 一太刀で数機纏めて両断し、カイトは返す刀で更に数機を纏めて切り捨てる。この人型兵器はカイトが見知った文明の人型兵器。数千機集まろうと<<守護者(ガーディアン)>>の敵ではない事を彼は知っていた。が、そんな彼でも流石にあの見知らぬ巨大要塞の砲撃だけはまともに真正面からやるつもりはなかった。


「っ! マスター! 要塞側面のひときわデカイ砲台に発光を確認! 数秒後になにか来ます!」

「あいよ!」


 放たれる白い閃光に、カイトは思考による加速を加えて一気に距離を取る。そうして白い閃光が数機の人型兵器を飲み込んで、遥か彼方に消えていった。


「そこ!」

「はぁ!」


 アイギスが白い閃光により出来た穴を利用して要塞側面の巨大砲台へと砲撃し、カイトが横薙ぎに刀を振るい人型兵器を数機纏めて切り裂いた。


「っ……砲台、破壊出来ず!」

「ちっ! やはり障壁はデカさに見合った出力か! しかもこっちだけで良いもんなぁ!」

「更に言うと全力砲撃も出来てませんしね」


 カイトの言葉に対してアイギスは道理を述べる。やはり威力が高くなれば高くなるほど、どうしてもエネルギーを蓄積する時間が必要だ。

 が、現在はカイトが高速で動いたり剣戟を放ったり、全身の小型ガトリング砲で戦闘艇を迎撃したりしているのだ。エネルギーを蓄積出来る余裕なぞ皆無に等しかった。そして更に、砲撃の反動でわずかに減速した途端に無数の砲撃がお返しとばかりに放たれる。


「っと!」

「中々に近寄れませんね」

「さて、どうしたものかな」


 前には数百機の人型兵器。更にその先には無数の砲撃。その更に先には、おそらく隕石の衝突にだって耐えられるだろう強固な障壁だ。もはや本当に攻城戦に他ならなかった。そしてそれ故、これを破壊したいのなら普通の攻城戦よろしく接近して障壁を破壊して要塞を破壊するしかない。


「……アイギス。魔銃はあるか? ライフル型とかの単発高威力型があればベスト」

「検索開始……イエス。本当になんでもござれですねー」

「良し」


 アイギスの返答を聞いて、カイトは刀を投げ捨てる様にして顕現を解除。それに合わせてアイギスがライフル型の魔銃を二つ顕現させる。


「距離を取って潰す。高機動戦闘だ」

「イエス! 肩部ランチャーと各部の小型ガトリング砲はこちらで!」

「頼む! 他に砲撃可能な武装を取り付けられるなら、全部出せ! 出し惜しみは無しだ!」

「イエス! 腰部カノン砲! 脇部連装砲! ありったけ出します!」

「良し! とりあえずありったけをお前は撃て! こっちで敵の攻撃は回避して、近寄ってきた奴は全部撃つ!」

「イエス!」


 とりあえず人型兵器を片付けない事には近付けない。まぁ、片付けた所でその先には砲撃が待っているのであるが、兎にも角にも目の前の人型兵器をなんとかしないと背後から攻撃を食らう事になる。こちらを片付ける事が先決だった。そうして、カイトは両手にライフル型の魔銃を構えて、迫りくる無数の人型兵器に相対するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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