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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第80章 ユニオン総会編

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1965/3948

第1936話 ユニオン総会 ――遠征隊――

 八大ギルド連名での提案、という形で出されたバルフレアの提案。それは<<死魔将(しましょう)>>達の活動を鑑みて、国々では不可能な暗黒大陸への調査隊の派遣という大事業だった。そうしてなされた提案に対しては、やはり様々な意見が出る事になる。


『基本、ウチも暗黒大陸への遠征は賛成だ。が、その前に一つ明確にしておきたい』

『ああ、なんだ』

『八大ギルドは揃ってこの遠征に参加する。それは間違いないのか?』

『勿論だ。現在の素案では、八大ギルドで唯一暗黒大陸への渡航歴のある俺を中心として、主力部隊の構築を行っている』


 とあるギルドマスターの問いかけに、バルフレアがはっきりと明言する。流石に八大ギルドもそれぞれ抱えている領地や国との関係から総力を供出する事は出来ない――というかそれ故に連名での提出だし、他のギルドからの協力を求めていた――し、彼らを欠くと逆にそこを狙われた時に痛い。

 が、他方暗黒大陸の平均的な魔物のランクを鑑みた場合、彼ら抜きでは遠征隊は組織出来ない。なのでこの明言は当然だったし、必須だった。そしてこの根回しは終わっている為、他の八大ギルドのギルドマスター達も一切異論は口にしなかった。


『わかった。じゃあ、もう一つ。遠征隊、って事だが場所が場所だ。飛空艇はどうするんだ?』

『ああ……これについてはアウィス』

『おう。基本的にはウチを中心として、クオンの所、その他ユニオンが各国より協力を依頼し、艦隊を供出してもらう事になる。艦隊の総指揮は俺が執る』


 バルフレアの促しを受けて、<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>ギルドマスターのアウィスが口を開いた。先にユリィが言及していたが、<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>は飛空艇の艦隊を中心としたギルドだ。なので艦隊の運用や飛空艇の事であれば彼らが一番長けており、そしてどこかに拠点を置かないからこそ、今回の遠征では唯一総戦力での参加となっていた。

 まぁ、同時にそれ故ギルドメンバー達は艦隊の運用の問題から残る事が多く、後方支援が主と言っても過言ではない。そうしてアウィスの言葉を受け、改めてバルフレアが口を開く。


『その他、遠征隊の総指揮は俺が執る。あそこを一番知ってるのは俺だ。これに異論は?』

『そこはねぇさ。ただ俺達も協力するにあたって、あんたら八大がどんだけ本気なのか、って知りたかっただけだ』


 実際、このギルドマスターの言葉には多くの冒険者達が同意するところだったらしい。なにせ暗黒大陸は未踏破領域。正真正銘、何があるかわからない。八大ギルドの様に地力が十分ならまだしも、そうでない所が本気度を気にするのは当然だろう。


『で、基本的な出立の日程だが、これはまた別途通達する。俺達が冒険者とは言え、やはり何事も準備は入念にやりたいからな』


 特に今回は暗黒大陸という事もある。入念な準備を必要とする、という判断はわからないでもない。とはいえ、とバルフレアは切り出した。


『つってもだ。この中で南半球出身の奴はわかってるだろうが、向かう先は南半球。これから段々と暑くなる時期だ。流石に夏での渡航は避けたい。可能な限り、再来月までを目処に動くつのりだ』


 妥当といえば妥当か。カイトはバルフレアの意見をそう理解する。とはいえ、万全に動く為にも、やる事はいくつもあった。


『それでそれに伴い、来月初旬に先遣隊が出発する。先遣隊は実際の調査を行うのではなく、暗黒大陸西岸のこのエリアに陣地を設営する。その後はその場の安全確保を行いつつ、翌月の本隊の到着を待つ。その間の支援はエンテシア及びマギーアが受け持つ事になっている』


 それなら安心か。そこかしこで胸を撫で下ろす声が漏れ聞こえる。どうやら、マギーア王国の治安の悪さは鳴り物入りで喧伝されているらしい。皇国の支援が明言されている事に安堵を浮かべていた様子だった。無論、皇国以外の各国も支援はしてくれる事になっており、地理的な要因から直接的な支援がこの二国というだけで間接的にはさまざまな支援があった。


(ふむ……まぁ、やはり日程としちゃ妥当か。昨日もそう話したし……)


 あの大宴会の最中。やはり集まったのは冒険者でも高位と呼ばれるランクSの猛者が多かった。しかも大半が影響力の高いギルドに所属しているか、ソロでも名を馳せた者たちばかりだ。なので基本宴会の最中でも、真面目な話がされていたのである。


(先遣隊と後発隊の二つに分ける……現状、これしかない)


 本来、バルフレアの予定としては一気に全員で乗り込むつもりだった。先遣隊を出した場合、それが本隊到着まで暗黒大陸の未踏破領域にて堪えきれるかどうかがわからなかったからだ。

 しかも、最悪の場合は<<死魔将(しましょう)>>達のアジトまであるのだ。先遣隊を出して状況確認を行いたいが、同時に出して大丈夫かの判断が出来なかった。故に本隊に全戦力を集中させ、何が起きても大丈夫な様にしよう、と考えたのである。


『お前さえ、先遣隊に入ってくれるなら。もしくは、お前が本隊を率いてくれるのなら』


 カイトはバルフレアが深い溜息とともに根回しの最中に述べていた事を思い出す。やはり同じランクEXの冒険者だ。バルフレアは冒険者としてのカイトの腕を他の誰よりも買っていたし、同時に信頼していた。

 故にバルフレアは先遣隊を出すべきでは、というカイトの意見に対してこう述べたのである。勿論、そんな事が出来るわけがない。本隊への参加が限度だ。万が一日本とのやり取りが必要になった場合、カイトは必須なのだ。無論、彼としても領地の事や冒険部、天桜学園の事など様々な面がある。先遣隊として長期に抜ける事は出来なかった。

 が、暗黒大陸への渡航歴のあるバルフレアからしてみれば、ランクEX抜きの先遣隊は油断すれば全滅の可能性があり得る。他方、彼が先遣隊として出てしまえば本隊を誰が率いるか、という問題が出る。

 統率力や武名などの関係から、生半可な武名ではまともな統率も出来ないだろう。それを考えれば、カイトかバルフレアの二択だった。結果、カイトが出れない以上は、と先遣隊を派遣するという意見は却下となったのであった。


(昨日の宴会での妥協点は、先遣隊はあくまでも陣地防衛に務める事。奥地への潜入は一切無し……)


 バルフレアとしても苦渋の決断ではあった。が、現状こちらが中津国で被った被害を鑑みれば、先遣隊を出して準備をしっかり整えねば、本隊が乗り込んでも全滅もあり得る。油断は出来ない。


『って、感じだ。先遣隊は俺が任せられると判断した奴を司令官とする』

『ってことは、まだ未定?』

『そうだな。どうしても中津国の一件でこちらも大きく見直しを迫られている……まぁ、可能なら司令官を含め、今回の会議で決定したい』


 頭が痛い問題だ。バルフレアは言外にそう言って肩を竦める。先遣隊の司令官だが、流石にこれは昨日の飲み会で決められる問題ではなかった。なのでこの場で改めて、となったのである。と、そうしてバルフレアとともに誰が先遣隊の司令官で良いか考えるカイトへと、瞬がふと問いかける。


「なぁ、カイト。少し良いか?」

「ん?」

「その暗黒大陸……オルテア? だったか。どんな所なんだ? 誰も……いや、バルフレアさんを除けば誰も行った事がない、という触れ込みだとは聞いているんだが」

「ふむ……」


 そういえば確かに暗黒大陸だ、と誰もが言うだけでこの場でさえ詳しくはその大陸の概要は話されていない。まぁ、話して役に立つほどの内容を誰も知らないからだ、と言ってしまえばそれまでなのであるが、確かに些か不親切と言っても良いだろう。というわけで、カイトは遠征隊に関する質疑応答の時間を利用して、瞬へと軽くレクチャーする事にした。


「そうだな。先輩も一応、本隊にはなるだろう。知っておいて損はないか」

「ウチも行くんだったか」

「ああ。ソレイユ達が来たのはその一環だな……で、そうだなぁ……」


 どう言えば良いか。カイトは少しだけ逡巡する。そんな所に、ユリィが軽く教えてくれた。


「暗黒大陸、って言うけど別に暗黒で覆われていたり、禍々しい感じは無いらしいよ」

「そうなのか?」

「うん。暗黒大陸、って呼ばれるのは地図上……ほら。完全に真っ暗な状態だから、暗黒大陸、って呼ばれるの」


 ユリィの指差しを受けて、瞬も改めてエネフィアの世界地図を見る。すると確かに暗黒大陸の周辺地域は完全に真っ黒に覆われていて、何があるかさっぱりわからなかった。


「一応、バルフレアの言葉だと普通の大陸で、人は住めそうではある、という事だったけど……」

「住めそうではある、か」

「うん。これはバルフレアの考えだけど、旧文明のどれかはあそこに拠点も持っていたかもしれない、だってさ」

「そうなのか?」


 ユリィの言葉に瞬が驚いた様に目を見開く。暗黒大陸は人の住めない土地。それが瞬の考えだし、実際現在に至るまでエネフィアの大半が持ち合わせている認識だ。が、それはあくまでも現代人の常識を基にした考えであって、それ以前の旧文明もそうだったのか、と言われればわからなかった。というわけで、これにカイトも一つ頷いた。


「ああ……実際、バルフレアが暗黒大陸に行ってみよう、って考えたのは古い文献にあの大陸の事が書かれていたから、らしい。それに、疑問にならないか?」

「何がだ?」

「何故誰も住んでいないのに、古くからあの大陸について知られているか、ってな」

「あ……」


 誰かはたどり着いているからこそ、そこの事が知られているのだ。実際、伝説的な扱いだった浮遊大陸にせよ、三百年前は人が居ないと思われていたウルシア大陸にせよ、実際には人が居て往来があった。単に当時の情報網の関係から多くの者たちはそこに誰も居ない、と思っていただけだ。


「伝説になる、という事は即ち誰かがかつては居た可能性はある。無論、長い間ではないかもしれない。単に一時的な拠点として、だな。が、それでも一時的とはいえ住んでいたのなら、そこに何かしらの施設があり、何かしらの意味があった可能性は高い。バルフレアはそれを見付けに行った、ってわけだ」

「なるほどな……」


 確かに旧文明であれば、それも可能かもしれない。瞬は現代文明を遥かに上回る技術力を持っていた旧文明を思い出し、カイトの言葉に納得を示す。と、そんな彼はふと思い、カイトへと問いかける。


「そうだ……それなら月の女神はなんと言っているんだ?」

「シャルか? これが残念な事に、ルナリアはあの大陸には手を出していなかった、という事だそうだ」

「ルナリアは、か」

「ビンゴ」


 瞬が目ざとく気付いた単語に、カイトは一つ笑って頷いた。


「旧文明最後の一つ。ルナリアでもこのラエリアにあった旧文明でも無い文明が、あそこに行った可能性があるらしい。まぁ、それ故にどんな事をしたかわからないそうだ」

「なるほどな……そういえばルナリアもラエリアも北半球か」

「ああ。だから逆に北半球に遺跡は多いが、南半球には少ないんだ。実際、南半球はオレも詳しくない」


 どうしてもカイトも何かしら繋がりがあるのは北半球が多かった。なので南半球に拠点を置いた旧文明には縁がなく、同時にそれ故にこそ彼も詳しくは知らないそうである。実際、今も彼は北半球のかなり北側に拠点があるおかげで、南半球より北半球の方が詳しい。

 どうしても、南半球のウルシア大陸などについては明るくないのであった。そうして、その後も暫くの間質疑応答の裏で瞬からの質疑応答を繰り広げる事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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