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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第80章 ユニオン総会編

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1947/3938

第1918話 ユニオン総会 ――開幕――

 遂に開始される事になった、一年に一度行われるユニオンの総会。その会議場へと足を向けたカイトと瞬、ユリィの三人を待っていたのは、今までに見た事もないほどの冒険者達だった。そんな光景に圧倒されつつも、三人は土壇場で到着した冒険者達の列を横目に本部の奥へと進んで会議場へと進んでいた。


「……っ。なんだ?」


 何か妙な感覚があった。瞬は一瞬だけ感じた妙な違和感に気付いて、思わず足を止める。これに、カイトが教えてくれた。


「ああ、それは会議室へ通じる異空間に入った証拠だ。悪い、そこは言ってなかったな」

「ああ、異空間化してるのか」


 納得だ。瞬はカイトの謝罪に特段疑問は無かった。先にも言われていたが、ここに来ている冒険者達は千は優に上回る。しかも今年は特に多いという話だ。

 なので会議室はそれ相応に広くないと全員は入れないわけであるが、本部の大きさを見てもそこまでの許容量はない。が、ここは剣と魔法の世界だ。空間なぞ魔術で広げる事は容易だった。しかもここはユニオンの本部。八大の技術が大いに使われている事だろう。そうして、異空間化した空間を進む事少し。三人はいくつもの扉が並んだ円状の廊下へとたどり着いた。


「えっと……33番だから……」


 カイトは受付で貰った番号札を片手に、廊下の壁に掛けられている案内板を確認。自分達が目指すべき場所を確認する。


「……あっちか。行こう」

「ああ……?」

「はいはい、おきゃくさーん。覗きは厳禁でーす」

「え、あ、おう……」


 自分達と同じ様に番号を確認し扉を開けたギルドがあったらしく、そこから中を見た瞬が興味深げに中を覗いていたらしい。そんな彼の背をユリィが押して、先へと進んでいく。そうして階段をいくつか上り下りする事になるのだが、瞬はその道中でカイトとユリィへと問いかけた。


「なぁ……明らかに会議場の形状として可怪しい気がするんだが」

「明らかに高すぎる、か?」

「あ、あぁ……というか、ちらほらと見えた中はその……なんというか、だな。空洞になってないか?」


 どんな会議室なんだ。瞬はちらりと見える会議場の内部構造を見て、疑問が隠せないらしい。が、これにカイトは見た方が早い、と彼に先を促した。


「それは見た方が早い。もう着く」


 どうやら気付けば、30番代の通路にたどり着いていたらしい。というわけで、三人は階段を上って3つ目の扉の前へと移動する。


「ここだな……番号札と、登録証……ユリィ。お前のも」

「はいはい」


 カイトの要請を受けて、ユリィが自身の登録証を取り出した。これに、カイトは更に自分の登録証二枚を取り出す。それに、瞬が訝しむ。


「二枚ともなのか?」

「片方は偽造証だからな……一応、そっちで登録してるから冒険部のギルドマスターとしてはそっちが必要。それに対してオレ自身の本来の登録証も必要なんだ」

「で、私は冒険部に所属してないから、ランクEXの登録証が必要なわけ。出席してるかどうか判別出来ないからねー」


 どうやら身分を偽造している為、色々とカイトには面倒があるようだ。というわけで、カイトとユリィは自分達の登録証を部屋番号の下にあったカードリーダーに読み込ませる。


「……俺は良いのか?」

「ギルドマスターが居るなら、サブマスターは必要ない。単にきちんと割り振られたギルド、ないしは冒険者が使いましたよ、という記録だからな。まぁ、入室の記録にも使えるから、不安だったらやっとけば程度だ」

「ふーん……」


 まぁ、物は試し。やってみておくか。瞬は別に入室の記録を取る必要は感じられなかったが、興味があったので自分の登録証をカードリーダーに読み込ませておく。と、そうして彼が読み込みを終わらせた所で、カイトが一歩ズレて扉の前を空ける。


「……さ、開けてみろ」

「……ああ」


 何が待ち受けているのか。瞬は若干のワクワクと若干の不安を胸に、扉へと手を当てる。そうして扉を押し開いて、目を見開いた。


「……なん……だ、これは……」

「これこそ、ユニオンが誇る大会議場。天空会議場だ」


 そこにあったのは、瞬が覗き見た通りの巨大な円筒状の空間だ。そこには無数の小規模の円盤に似た何かが飛んでおり、それに乗って人が移動している様子だった。そして同じ物は、彼らの前にもあった。


「これが、33番昇降機。流石にあれだけの人数を収容しようと思ったら、どうしても横には無理だ。結果、縦にも、って感じでな」

「考えはわかるが……それを実行出来るのが流石はユニオンという所か……」


 瞬は巨大な円筒状の会議場を見る。会議場はかなり大きく、中央にはおそらく映像を映し出すのだろう投影用の魔道具が設置されていた。どうやら厳密にはこの昇降機なる席に乗って動かないでも良いらしく、飛空術の使える冒険者は自由自在に動き回っている様子だった。

 そんな眼前の光景を見ながら、三人はひとまずは昇降機へと乗り込んだ。席順としては中心にカイトで、その右側に瞬、相変わらずカイトの肩にユリィという形だ。そうしてひとまず椅子に腰掛けて、瞬が興味深げに問いかける。


「それで、これをどうやって動かすんだ?」

「特に難しい事はない。ほら、先輩の席の右の肘置きの部分。丁度手を置く部分にスイッチがあるだろ? それを叩いてみろ」

「これか……っと、操縦桿か、これは」


 カイトの指示に従ってスイッチを押し込んでみると、丁度肘置きの左右に操縦桿とレバーが現れる。


「ああ……右手の操縦桿は前後左右の操作。左手のレバーで昇降を制御出来る」

「……やりやすいな」

「そこの改良を行ったのはオレだからな。大本はユニオンにあったが……使いにくかったからティナに改良してもらった。元々は円盤みたいな操作盤一つで動かす形だった。昇降がスイッチの押し込みだったり、とかなり難しくてな」

「なるほどな。こちらの方がやりやすい」


 それは簡単な筈だ。瞬はカイトの返答に、一つ笑う。そうしてそんな彼に、カイトが告げた。


「付近の昇降機とはある程度までしか近付けない様にはなってるから、その点は問題無い。試しに動かしてみろ。来年、もしオレが来なかった場合には先輩かソラが来る事になるからな。慣れといた方が良い」

「……わかった。少し動かしてみる」


 瞬はカイトの説明を聞いて、ひとまず物は試しと昇降機を操ってみる。と、そうして上下の動きを確認しようとレバーに手を伸ばして、ふと彼は手に何かスイッチが当たった事に気が付いた。


「ん? こっちのスイッチはなんだ?」

「ああ、それは元の場所に自動で戻るスイッチだ」

「わざわざ自分で戻さなくて良いのか」


 一通りの操作方法を確認した瞬は、最後にレバーのスイッチを押してみる。すると、カイトの言う通り最初にあった場所へと自動的に昇降機が移動してくれて、扉からタラップが伸びた所で完全に停止した。


「なるほど。簡単だな」

「まぁな……さて、後はじゃあ開幕を待つか。ああ、もし馴染みでも見付けられたら、自由に動かしてみろ。何事も慣れだからな」

「ああ、わかった」


 兎にも角にも人が揃わねば会議も何も無いのだ。そして開幕まではまだ後少し時間があった。なのでカイト達はそれぞれの形で少しの間時間を潰す事にするのだった。




 さて、カイト達が会議場に到着して、およそ一時間。瞬の昇降機の操作や内装の確認などに付き合いながら時間を潰していたカイトであったが、開幕が近づいた事で一旦は席に着く事にしていた。


「……改めて見ると、すごいものだな」

「ん?」

「いや……もう殆どの席が埋まっただろう? そう思うと、これだけの冒険者が集まったのか、とな」


 すでに開幕まで幾ばくも無い。なので何時もは自由気ままな冒険者達も、開幕が近いからか流石に自席に戻っていた。それだけ、この総会が冒険者達にとって意義として重要な物なのだろう。瞬はそう理解する。


「ああ……っと、流石にもう開始か」

「ん?」

「見てみろ」


 カイトは瞬に対して、中央にある映像を投影する用の魔道具を指し示す。それに瞬も少し目を凝らしてみれば、魔石が起動している事が理解できた。

 そうして、彼が魔道具の起動を認識したと同時。投影用の魔道具から光が放たれて、八個のギルドの旗が浮かび上がる。その内いくつかについて、瞬は見覚えがあった。


「八大ギルドの旗か」

「ああ……<<天翔る冒険者ヴェンチャーズ・ハイロゥ>>やら<<熾天の剣(してんのつるぎ)>>やら……この総会が八大ギルドの名の下に行われる事を示している」


 なるほど。それは総会の開幕に際して誰もが静まり返るわけだ。この会議は八大ギルドの名の下に行われるというのだ。とどのつまり、ここでの無作法はその八大ギルド全部に喧嘩を売っているに等しかった。どれだけじっとしていられない冒険者であろうと最低限それが礼儀、というわけなのだろう。

 そうして、一同の見守る前で八個の旗の中央にユニオンの旗が浮かび上がる。とはいえ、それで終わりというわけではなかった。そのユニオンの旗から更に、いくつかの瞬が見たことのない旗が浮かび上がる。


「ん? なんだ?」

「あー……あれ、ランクEXの冒険者達を表した旗だよ。ほら、あれ」

「あれは……」


 ユリィの指摘に瞬が見たのは、妖精の絵柄を中心として下地に大剣と大太刀がクロスした様な旗だ。これが誰を示しているのか。それを考える必要はないだろう。


「お前らか」

「ああ……双剣がオレ。妖精はそのままユリィだな。本来、一人一つだが……オレ達だけな」

「ということは……あれはバルフレアさんか。そういえば見た事があるな、あの模様は……で、あっちはバランタインさんか」


 瞬はカイトの説明を聞いて、更に大凡が理解できる旗を見る。バランタインの物はハルバートに炎の意匠。バルフレアの物は籠手に<<天翔る冒険者ヴェンチャーズ・ハイロゥ>>の旗と同じ下地だった。

 他にも何かの大地に似た意匠が施されたものや、果てはユニオンの旗によく似た旗まであった。後に聞けば前者は浮遊大陸の実在を証明した冒険者の物で、後者はアレグラスの物だそうだ。

 と、そうして八大ギルドに加えて歴代のランクEX冒険者達の旗が浮かび上がった所で、二台の中央へと昇降機が移動する。その片方に乗っていたのは、バルフレアその人だ。横には<<天翔る冒険者ヴェンチャーズ・ハイロゥ>>の幹部の一人が腰掛けていた。サブマスターらしい。


『あー、あー……全員、聞こえてるか? 聞こえてない奴はさっさと言え。呼び方がわからない奴はスピーカー横の黄色のスイッチを押せ』


 どこか手慣れた様子で、バルフレアが集まった冒険者達へと声を掛ける。どうやら魔道具のテストと言う所らしい。昇降機の前面に取り付けられたスピーカーから彼の声が響いていた。

 確かにこれだけ広ければ、よほど声を張り上げねば全員には届かない。それでも届かないかもしれない。なのでマイクとスピーカーがあって当然だろう。そうして、数分。どうやら聞こえていない様子のギルドの所で作業が手早く行われ、了承が取れたらしい。バルフレアとはまた別。中央に進み出たもう一台に乗っていたレヴィが頷いた。


『オッケ。全員問題無しか……良し。じゃあ、八大は全員中央へ来い』


 全ての用意が整ったのを受けて、バルフレアが八大ギルドの長達へと号令を掛ける。それを受けて、クオンら八大ギルドの長達が乗った昇降機が中央へと移動する。


『良し……じゃあ、最後に確認だ。これより総会を行う。異論がある者は、申し出ろ』


 やはり総会はユニオンマスターとして最大の見せ場にも近いのだろう。バルフレアはいつになく真剣な目で、八大ギルドの長達へと告げる。それに、剣姫モードのクオンが口を開いた。


『<<熾天の剣(してんのつるぎ)>>。異論無し』

『<<土小人の大鎚(ドヴェルグのおおづち)>>。同じく異論ねぇ』

『<<森の小人フォレスト・スピリット>>。異論ありません』

『<<知の探求者達(シーカー)>>。異論は無い』

『<<魔術師の工房ウィッチーズ・クラフトワークス>>、問題ないわ』

『<<(あかつき)>>。異論はねぇ』

『<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>。問題ねぇぜ』

『良し……<<天翔る冒険者ヴェンチャーズ・ハイロゥ>>。異論無し』


 八大ギルドの長達が、総会の開幕に異論が無い事を明言する。先にも言われていたが、この総会は八大ギルドの名の下に行われる事になっている。そして八大ギルドの間に格の差は無い。故に彼ら全ての合意を得て、総会は開幕されるのが常らしかった。そうして八大ギルドの長達による宣誓が行われたのを受けて、バルフレアが再度口を開いた。


『……では、これよりユニオンの総会を開始する!』


 バルフレアの号令が、会議場全体に轟いた。そうして、ユニオン全体の事を話し合う事になるユニオン総会が開幕される事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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[一言] ユニオンの会議場が完全にスターウォーズの首都惑星の会議場で草ですな
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