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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第79章 手がかりを探して編

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第1882話 手がかりを求めて ――二回目の戦いへ――

 シャリクの求めを受けて収穫祭の事件で発見された旧文明の遺跡の一つへとオブザーバーとして突入する事になったカイト。そんな彼がオブザーバーとして会議に出席したわけであるが、その後に彼の部屋を訪れたのは、暗殺者達の長シャヘルであった。

 そうして少しのシャヘルとの会話の後、カイトはひとまずティナの所へと向かっていた。が、そんな彼がティナの所でしたのは、バルフレアへと連絡を取るということだった。超長距離通信が必要なので、ティナの所へ向かう必要があったのだ。


『へー……それ、面白そうだな。俺も行くか』

「それは陛下に聞いてくれ。お前なら一日でそこからここまで横断出来るだろ」

『徒歩前提にすんなよ』

「お前なら徒歩前提でも行けるだろ」


 楽しげに、カイトが冗談を口にする。まぁ、バルフレアである。船に乗り遅れたから、と大陸を横断し泳いで大陸と大陸の間を渡る様な化け物である。カイトと並んでランクEXの彼が不可能なわけがなかった。


『ま、それは兎も角……その話なら聞いてるよ。一度、俺にもお誘いがあったからな。断ったけど』

「何だ、意外だな」

『ああ……流石に今回ばかりは根回しが忙しくてさぁ』

「……バルバルー。後ろ後ろ」

『あ? あ! てめぇ! そのテロップなんだ!』


 カイトの肩に腰掛けていたユリィの指摘を受けて、バルフレアが後ろを振り向いて背後に立っていたユニオン職員の持つフリップを見て声を荒げる。そこには二日酔いがひどくて断ったんです、と書かれていた。

 どうやらユニオンの会合やら他ギルドとの会合やらで連日連夜飲み会が続いているらしく、その流れでついうっかり断ってしまったらしかった。

 逆に飲んでいる時なら、二つ返事で受けた事だろう。更にその場合、彼と飲めるほどの高位のギルドの面々も参加する事だろうから、中々に錚々たる面々が揃う事になっただろう。


「おい……それはどうでも良いから。とりあえず預言者出してくれ」

『あ、すいません。私の方で手配させて頂きます』

「すまん。頼む」

『いえ』


 ぺこぺことカイトに対してユニオンの職員の一人が頭を下げて、即座にレヴィを呼びに行く手配を行う。そうして背後の騒動を尻目にしばらくの時間が流れて、レヴィがやってきた。


『呼んだか?』

「ああ。悪い。少しこっちに来て支援が欲しい。バルフレアの奴が動いてるって事は、もう大凡事前の手配は終わっただろう?」

「そう言うと思って、すでに貴様の横に居るがな」

「おっと。流石は預言者……」


 カイトは唐突に響いたレヴィの声に、一つ感心を浮かべる。これで必要な人物は横に居る。というわけで、コメディを行うバルフレア側と連絡を取る必要は無くなった。


「おーい。悪い、もう通信大丈夫。バルフレアには一週間後、そっち行くから。皇女様の周辺警護に必要な物やら整えといてくれ、って」

「そちらも私が手配済みだ。問題は無い」

「そか……って、事らしい」

『あ、はい。では預言者様。留守はこちらで』

「ああ。こちらは国軍と協力し、以前の案件に当たる」

『はい』


 レヴィの言葉に、ユニオンの職員が頭を下げる。やはり事務の面では無茶しか言わないバルフレアと道理に基づいて、その上で先まで見通すレヴィでは後者の方が信頼が厚い様子だった。なお、カイトが連絡を取ったのは三百年前から居る顔なじみだ。なので普通に話しても問題は無いとの事であった。そうして通信が切れた後、カイトは改めてレヴィの方を向いた。


「さて……また今回も今回で面倒事に巻き込まれたわけなんだが」

「また<<守護者(ガーディアン)>>か。確か今回、一応皇国側の問題でネックレスは使えないんだったな」

「一応、オレの正体を知らない奴も少なくない。こいつをオレが持っているという事は即ち、オレが前線に立った事になる。流石にそれは面倒を巻き起こしかねないからな。そうさせてもらった」


 レヴィの一応の確認に対して、カイトは十字架型のネックレスを取り出して頷いた。これがあれば基本的に封印装置の中のゴーレムは全て意のままに操れるわけであるが、それ故にこそ下手に意のままに操ると自身の正体に繋がりかねなかった。と、そんなネックレスを見て、ユリィが問いかける。


「そういえば、カイト。それ、どうするの? 攻撃されなくならない?」

「ああ、それか。ティナ、確かお前さっき、良い手がある、とか言ってなかったか?」


 カイトはこの部屋に来た時の事を思い出し、飛空艇の状態を遠隔で検査するティナへと問いかける。元々こうなるかもしれない、というのは想定されていた事だ。なので部屋に来た時点でティナへと相談を持ちかけており、この返答を受けていたのであった。


「ああ、うむ。それな……まぁ、考えれば簡単な話よ。ゴーレムがお主の管理化にあるという事は、お主の意思でお主を攻撃させる事も出来るじゃろ」

「セーフティ掛かってるんじゃないか?」

「そこはそれじゃ。当たらずとも良い。所詮こんなものは当たる当たらぬではなく、攻撃されるという事が重要じゃ。単にお主が他と同じ様に狙われておると見えれば良いんじゃからのう」

「あー……なるほどね。確かに」


 ティナの言っている事は尤もだ。そうカイトは納得する。そもそも問題なのは攻撃されないかもしれない、という点と彼のコントロールに入っている事により巡回などを行わず、一切の動きを見せない事だ。

 が、そのどちらもカイトの意思一つで動かせるのなら、敢えて前と同じ動作をさせる事で偽る事も出来た。とはいえ、何も問題が無いわけではない。それをティナが指摘する。


「後の問題と言えばどうやって多くのゴーレムを操るか、という所であるが……これについては先にノートに記載があったので、それを参考にすればよかろう」

「一応、何度かやったが……」

「うむ……そもそも軍勢として操る事はまだやっとらんからのう。ゴーレム一個の性能や操作試験に時間を割いた弊害とも言える。まぁ、そう言っても軍勢もさほど違いはあるまい……そこはなんとかしてもらうしかあるまい」

「後はぶっつけ本番と」

「そうなるのう」


 そもそもカイトもティナも他にいくつもの案件を抱える身だ。なので必然として収穫祭で手に入れたネックレスとその中に封じられているゴーレムの解析にのみ掛り切りになるわけにもいかず、しかも表向きカイトは突入していない事になっているという事も相まって、彼の現在の主戦場となる冒険部ではあまり使えない。結果、ゴーレム操作に関してはあまり練習が出来ていなかったらしかった。


「ま、そこらは些か違和感が出ても、後はオートで任せるしかないか」

「そうじゃのう。あまり苛烈にする必要も無いが、逆にぬるくなっても問題はあろう。ま、ぬるくなくとも、今回の面々でも普通に行けるじゃろうがな」

「それもそうか。それ考えれば、あんま操作に気を取られないでも、全力で攻撃させても問題無いか」


 カイトは改めて今回の潜入を行う面子を考えて、あまり気にする必要はないだろう、と判断する。今回、ラエリア側の要請で収穫祭の時と同じく兵士達も入る事になっている。今後なにかがあった場合にも対応出来る様に、一度敵を見てもらう為だ。

 が、この兵士はバリーを筆頭にしたシャリクが直々にスカウトした元冒険者だったり、どこかの貴族の家系出身で腕が立ったりする精兵だ。流石にアルやリィルの様に倒す事は出来ないでも、一対一であれば身を守る程度はなんとかなる。とりあえずやられなければそれで良いのだ。やられなければ、後はシャヘルやカイトらがなんとか出来る。


「うむ……さて、こちらもとりあえず一段落出来た」

「ああ……さて、では明日の打ち合わせを行うとするか」

「うむ」


 レヴィの申し出に、ティナが一つ頷いて同意を示す。そうして、この後も少しの間一同は調査に備えての打ち合わせを行う事にして、準備に勤しむ事になるのだった。




 さて、カイトが会議を行ってから数日。当初の予定ではユニオン本部に向かう日に、カイトは冒険部の一部人員を連れてラエリアの郊外の少し離れた区画に設けられた臨時の軍野営地へとやってきていた。

 今回、カイトの要望というかティナの指示によりゴーレムとの戦いを経験させる為、ルーファウスや瞬らも連れてきたのである。ここらの面子なら今の実力なら十分に戦闘に耐えられるだろう、という判断だった。


「ふむ……まぁ、やっぱり物々しい警戒態勢か」

「そらそうじゃろ。そもそも相手が相手じゃ。しかも今回は入る前からわかっておる分、尚更警備は厳重になろう」

「そりゃそうか」


 相手は<<守護者(ガーディアン)>>。旧文明を一つ滅ぼした存在だ。単独とはいえ油断出来る相手ではない。というわけで、カイトは一度通信機を起動する。


「セレス。聞こえるか?」

『はい』

「そちらに問題は?」

『ありません……ええ。一切問題は』


 カイトの問いかけに、今回の一件でカイトが前に出ている間のシャーナの守護を任されたセレスティアが一つ請け負った。これについてはラエリア側から改めて彼女に臨時で依頼が出されており、万が一にも<<守護者(ガーディアン)>>が外に出る事があってもシャーナの身の安全を守れる様にしていた。というわけで、彼女と彼女の率いるギルドはラエリアの城にて待機中だった。


「そうか……悪いな、無理を言って」

『いえ。そちらよりまだ楽ですよ』

「あはは。確かにな……が、万が一はわかってるな?」

『ええ。私達の世界にも<<守護者(ガーディアン)>>に関する情報はあります。油断するつもりはありません』


 相手は<<守護者(ガーディアン)>>だ。何が起きても可怪しくないのだ。想定外の反応をしてくる可能性は十分に考えられ、外での待機の筈のセレスティアにも僅かな緊張があった。ここまでラエリア側が物々しい警備を敷くのも、彼女と同じく何が起きても不思議はないと考えている顕れと言っても良いだろう。


「頼む……さて」


 セレスティアの返答に一つ頷いたカイトは、通信を切って改めて前を見る。すでに今回の戦いに参加する者たちの支度も整いつつあり、冒険者側の参加者の全員が揃っていた。その中でもカイトは異様な集団に目を向ける。それと同じ様にそちらに視線を向けた瞬が、僅かに苦い顔を浮かべる。


「……あまり良い思い出が無いな」

「前に、ほうほうの体で逃げたからか?」

「ああ。彼らは誰も彼もが腕利きだった」


 瞬が見ていたのは、グリム率いる<<死翔の翼(ししょうのつばさ)>>の団員達だ。まぁ、あれだけの事があったのだから仕方がないだろう。とはいえ、そんな彼にカイトは笑う。


「それなら、今は味方である事を喜ぶべきだろうな。彼らと戦う事は今回はありえん」

「そう……だな。そう思おう」

「そうだ……ああ、そうだ。先輩、少しだけ良いか?」

「ん?」


 そういえば、と思い出した様なカイトに、瞬は少しだけ首をかしげる。そんな彼に、カイトは少しだけ裏の事情を語った。


「今回、<<死翔の翼(ししょうのつばさ)>>は居ない事になっている。その点を踏まえて、動いてくれ」

「? つまりどういう事だ?」

「知ってるかもしれんが……<<死翔の翼(ししょうのつばさ)>>はまだ悪評の方が高い。流石に今ここで重要な任務に彼らを雇ったのではシャリク陛下の外聞が悪い。が、腕は有用だ。なので一時的に彼らは別のギルドに名を偽って雇われていてな」

「なるほど……それで、あの死神を見ないのか」


 <<死翔の翼(ししょうのつばさ)>>は傭兵ギルドとして、かなり名を馳せた存在だ。が、同時に傭兵がメインの仕事になり、南部軍に助力していたという事実がある。

 なので北部軍が中心であるラエリア軍としても<<死翔の翼(ししょうのつばさ)>>はあまり受けが良くなく、暗殺者ギルドの長たるシャヘルの参加もあってあまり波風を立てたくないのであった。なのでグリムは今回は参加しているものの仮面の姿で、特徴的な死神の鎧は身に着けていなかった。


「あそこに居るのはあくまでも<<死翔の翼(ししょうのつばさ)>>とは無関係なギルドだ。外ではそう振る舞ってくれ」

「わかった……何という名なんだ?」

「<<黒の翼(くろのつばさ)>>。黒揃いの武装を身に着けた新進気鋭のギルドとして、今回は参加している。あの仮面がグリムだ」

「わかった」


 とりあえずそれさえ覚えておけば良いか。瞬はカイトの返答に一つ頷いて了承を示す。そうして、カイトらはその後軍やシャヘルらを交えて少しのミーティングを行い、十字架型の封印装置を起動させて迷宮(ダンジョン)を出現させるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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