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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第76章 ルクセリオン教国編

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第1768話 ルクセリオン教国 ――褒美――

 教皇ユナルの提案に乗る形で行われた、ルードヴィッヒの提案。それはアリスを再度カイトの下へ向かわせるというものだった。そんな提案が行われているとはつゆ知らず、カイトは怪我の治療に務めていた。そんな彼であったが、戦いから明けて数日。ソラがハイゼンベルグ公ジェイクの調書を受ける数日前になり、改めて教皇ユナルに呼び出されていた。


「おぉ、カイトくん。良く来てくれた」

「いえ、教皇猊下。今の今まで来れなかった事、まことに申し訳ありません」

「いや、君こそ今回のルクセリオ防衛の英雄。まさに、次世代の希望だろう。その君に無理をさせてしまった我々こそ、感謝の言葉しかない。ありがとう」


 一応は社交辞令としてのカイトの謝罪に、教皇ユナルははっきりと礼を明言する。そうして一つ社交辞令が交わされた後、改めて本題に入る事となった。


「さて……まずは本題に入っておこう。まぁ、本来はこのような場で言うべきではないのかもしれないが……トレーフル行きの事だ」

「はい」

「これについては、少しだけ予定が遅れてしまったが明日には向かおうと思う。君の方は大丈夫かね? もし無理なら、私一人で行こうと思うのだが……」

「いえ、ご心配なさらず。それにここしばらくは病室で寝たきりでしたので……少し外の空気を吸いたいと思っていた所です」

「そうかね。では、その様子ではもう大丈夫かね」


 少し冗談めかしたカイトに、教皇ユナルが笑う。勿論、カイトの怪我が完全に癒えたわけではない。が、何度か言及されていた様に、カイトの怪我は宗矩が手加減をした事により致命傷や後遺症が残る領域ではない。何より、宗矩とて父がカイトと戦いたがっている事は知っている。故に後遺症が残ったり、怪我の治療が長引く事にならない様に配慮していたのである。


「はい。一応、激しい運動は出来ないとの事ですが……」

「そうかね。ああ、そうだ。勿論、君の主治医と相棒については君への同行を認めよう。何、異族ではあるが……ルクセリオ防衛にも力を借りたのだ。文句が出ても、私がなんとかしよう」

「ありがとうございます」


 教皇ユナルの配慮に対して、カイトが深々と頭を下げる。これは言うまでもなく、リーシャはカイトの怪我があればこそ。ユリィはそんな彼の介助に必要かもしれない、という所だろう。

 これについては道義的な面から反対意見も封殺しやすく、特に今回カイトが怪我を負ったのは教国の首都ルクセリオを守る為というのは誰もが知っている。なんとかなる、というのは正しい言葉だった。


「うむ、うむ……さて。それで些か話は逸れるのだが、良いかね?」

「はぁ……」


 話は逸れるが良いか、と問われた所でカイトにはイエスしか選択肢は無い。というわけで生返事な彼に対して、教皇ユナルは話を始める。


「まず、今回のルクセリオ防衛への助力、感謝しよう」

「いえ……私達も今はもうこの世界に住う者の一人。お気になさらず」

「ありがとう」


 改めての感謝の言葉に対して、カイトは首を振り、教皇ユナルはその謙遜に感謝を示す。これはまぁ、あくまでも社交辞令としてのものだ。なのでこれについてはこれで良い。が、ここで出された以上は何らかの意味があるだろう事を、カイトは理解していた。


「とはいえ、だ。君達に力を貸して貰った事は事実。それに対して何か礼をしたいのだ。何かをしてもらったのなら礼をする。これは君達の世界でも常識だろう?」

「はい……勿体無いお言葉です」


 流石に常識を持ち出されて話された以上、カイトも受け入れるしか無い。勿論、それが過ぎた話でなければ、だが。そうして受諾の意向を示したカイトに、教皇ユナルは僅かに相好を崩す。


「うむ……ヴァイスリッター卿」

「はっ」


 教皇ユナルの言葉を受け、ルードヴィッヒが進み出るそうして進み出た彼を見て教皇ユナルは一つ頷くと、改めて話を進めた。


「実はヴァイスリッター卿より話があり、君達の所に改めてルーファウスとアリスの二人を派遣したい、となったのだ」

「それは……私共としましては、願っても無い事。二人の実力は私も良く把握しております。ですが、二人は戻ったばかり。アリスについては特に、まだ学生の身かと」


 流石にこの申し出はカイトも驚くしか無かった様子だ。顔には驚愕が浮かんでおり、意図を掴みかねたからか困惑さえ浮かんでいた。


「うむ。その疑問は尤もだ……ヴァイスリッター卿。君より語りなさい」

「はっ」


 教皇ユナルの指示を受け、ルードヴィッヒがカイトへと先に仲間内でした話。アリスの才能を開花させる場所が無い事や、ルーファウスの目覚めについてを語っていく。


「と、いうわけなのだ。ルーファウスについてはお目付役と捉えて貰っても良い。存分にこき使ってやってくれ」

「なるほど……」


 ルードヴィッヒの言葉に、カイトも理解を示す。元々アリスの才能を伸ばすのは苦労していただろうな、というのはカイトも理解していた事だ。

 であれば、この彼の申し出は決してお礼というだけではなく、別の側面もあると理解出来た。敢えて言えば、修行の旅。そう見做すべきだろう。

 一義的には増援として天才ルーファウスとその妹を冒険部へと出向させたとも見做せる。双方に悪くない判断だと言えるだろう。


「そういう事なのだ。是非とも、受けてもらいたい。無論、これでは君達への礼と言うより、我々の事情に付き合わせた形だ。なのでもし何かあれば、マキスウェルに居るエードラムに助力を申し出ると良い。彼女は私の腹心と頼む騎士団長の腹心でね。腕はルーファウスにも劣るまい」

「ありがとうございます」


 とどのつまり今回の謝礼としては教国の支援という所か。カイトは感謝を述べながら、内心でそう総括する。まぁ、確かに彼としても金銭より情報が欲しいし、その情報は最初から合法的に手に入れられている。現状、ギルドの運営は安定している事だし、下手に大金を与えられるより、この方が良い事は良かった。


「それと、だが。もう一つ君達に感謝の証として渡したい物がある。是非、受け取って欲しい」

「は」

「うむ……ライフ。例の物を彼に」

「はい」


 教皇ユナルの指示を受け、ライフが歩いてくる。そうして彼が一つの情報媒体をカイトへと差し出した。


「こちらを」

「ありがとうございます……これは?」

「うむ。君達が皇国で見つけたと言うゴーレム……ホタルと言うのだったか。その情報と言う所だろう」

「それは……良いのですか?」


 改めて言うまでもない事であるが、ホタルはマルス帝国時代の最高傑作だ。その情報が厳重に管理されて然るべきだ。それを渡すのだから、カイトの驚きも無理もない。


「うむ。先だって皇国で君達が国際的な港町を守り抜いた際、皇国は国宝に類する物を君達に与えたと言う。なら、首都たるルクセリオを守り抜いてくれた君達に過去の者達の情報を与えたとて別に不思議もない。君達も何も分からぬままに使い続けるより、よほど良いだろう」

「ありがとうございます」


 これは確かに有り難い。カイトはそう思う。勿論、情報をぶっこぬいた以上は必要は無い物であるが、合法的に所持できるというのは話が違う。今後六番機を復元するにしても、この情報を基にした、といえば随分と話は違ってくるだろう。


「うむ、うむ……ああ、後それと。クロディという学者は覚えているかね?」

「はい。つい先日もお昼をご一緒させて頂きました」

「そうかね。その彼女より報告があって、そのホタルなるゴーレムのメンテナンスポッドとやらが見つかったとの事だ。聞けば情報も元々の物だという」


 そういえばそんな報告をティナから受けてたな。カイトはデータとしてのホタルの修理履歴が見つかったと言っていた事を思い出す。


「それを持って帰ると良い」

「良いのですか?」

「うむ。というのも、我らの所には君の持つゴーレムがない。故にメンテナンスポッドだけ幾つもあった所で意味がないのだ。しかも、どうにも情報の書き換えや読み出し……だったか。そんなものも難しいそうでね。言ってしまえば無用の長物なのだよ」

「はぁ……」


 技術的な限界。そう言われてしまえば、カイトとしても頷くしかない。なにせ教国の技術的な限界がどこか、というのはあくまでも推測でしかないからだ。無理と言われれば無理。そう納得するしかなかった。


「ははは。まぁ、これはそうは言うが、実際には外してみてどうなるか、と言うのを試したいそうでね。すまないが、実験的に使いたい、という所だそうだ。なので壊れても文句は言わないで欲しい」

「ああ、そういう事でしたか。いえ、構いません。ご好意ですでに情報を頂いている以上、最悪はこちらでなんとか出来るかもしれません。更には皇国にて見つかったカプセルもある。こちらで修理できるのなら、やってみるだけです」


 なるほど。カイトは最悪はゴミを押し付けるという所か、と理解して教国の申し出を受け入れる。外してみてどうなるか、というのは誰にも、それこそティナにだって分からない。やってみるしかないのだ。

 そして教国もあのままより一つぐらいは分解して調べたい、と思っている事だろう。なら、どう外せば良いかなどを調べるためにも、ホタルの使っていたメンテナンスポッドを使うことにしたのだろう。

 カイト達にしても彼女のカプセルはすでに確保しているので、壊れた所で気にならない。最悪は部品だけ回収という事もできる。どちらにも悪くはない提案だった。


「うむ、ありがとう。アンセルム。彼はこう言ってくれているが、一応は繊細な作業を行いなさい。彼らへ贈る物だ、ということを忘れないように」

「は。肝に銘じ、研究者達にも厳命致します」

「うむ……さて。これで事務的な話は終わりだが。明日には君と旅をする事になるが……いや、実に楽しみだ。なにせ故郷の地を踏むのはかれこれ十数年……いや、数十年ぶりかもしれなくてね」

「そうなのですか?」


 顔に喜色を浮かべた教皇ユナルに、カイトが問いかける。それに教皇ユナルは頷いた。


「うむ……前に語らなかったかな? しばらく帰っていないと」

「伺いはしましたが……よもやそれ程とは思いもしませんでした」

「ははは。恥ずかしい事に妻を亡くし、その後は娘の為にただガムシャラに……いや、おそらく妻の死から逃げたかったのやもしれん。もう私には分からぬ事だが」

「は……」


 どこか寂しげな目をする教皇ユナルの顔に、カイトは何も言えなくなる。故に舞い降りた僅かな哀愁の雰囲気であったが、一転して教皇ユナルが微笑んだ。


「まぁ、そういうわけなのであの子の手紙で私も思い直してね。この機を逃すと、下手をすると死ぬまで行かないかもしれない。それは流石に妻への不義理だ。なので、今ばかりは私個人としての我がままを、とね」

「良い事かと。奥さんもお喜びになられるでしょう」

「ははは。喜んでくれれば良いが。逆に遅い、とどやされやしないか心配だ」

「あはは」


 少し冗談めかした教皇ユナルの言葉に、カイトもまた笑う。そうして少しの雑談の後、教皇ユナルが一つ片眉を上げる。


「ああ、ついうっかり話し過ぎた。すまないね、ありがとう。故郷へ行く為にも、色々とせねばならない事があるのだ」

「いえ……では、私はこれにて」

「うむ……さて。それで各地の被害は……」

「それでしたら、現在の所……」


 カイトが退がったことで、再度真面目な話が行われる。そうして、カイトはそれを背に聖堂教会を後にして、冒険部の帰還の手配を急ぐ事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1769話『ルクセリオン教国』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新年から更新お疲れ様です。 [気になる点] この和やかな会話の裏でユナルは勇者カイトを忌々しく思ってて道化師とも繋がり、カイトはカイトで教国を訝しんでるのかぁ ドロドロしてるなぁ 御作はこ…
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