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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第76章 ルクセリオン教国編

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第1753話 ルクセリオン強国 ――白騎士と鬼武者――

 冒険部本陣を狙い襲撃を仕掛けてきた源次。そんな彼を食い止めるべく単身<<原初の魂(オリジン)>>を使用して戦いを挑んだ瞬。彼は本気を見せた源次により、昏倒させられる事となる。

 そんな彼であったが、ユリィとルーファウスが割り込んだ事でなんとか飛空艇に搬送され一時寝かされる事になっていた。そうして彼が目を覚ましたのは、彼が昏倒して半時の後。ようやく市民達の避難が終わって周辺からの増援がやって来た頃合いだった。


「っ!」


 がばっ、と瞬が跳ね起きる。そんな彼が見たのは、自身の横に腰掛けて一旦休息するルーファウスの姿だった。


「あぁ、瞬殿。目を覚ましたのか。まだ寝ていれば良かったんだろうがな」

「ルーファウス……? ここは……俺は……」


 瞬が覚えているのは自分がみぞおちに一撃を食らい昏倒させられ、倒れそうになった所で強引に立たされた所までだ。故に彼はルーファウスが来た事については完全に理解出来ていなかったらしい。


「貴殿らの飛空艇近くに設営された臨時の陣営の中だ。俺も少し前まで戦っていたが……一度引いた」

「……お互い、すっからかんか」

「ああ……ああ、これを」


 瞬が見た限りでは、ルーファウスの魔力はほぼすっからかんだった。彼とて莫大な魔力を保有している筈なのだ。そして今はカイトとの模擬戦とは違い、回復出来る。その彼が、すっからかん。相当な激戦を経たのだろう、と彼には察せられた。と、そんな彼が瞬へと差し出したのは、回復薬だった。


「これは……ぐっ!」

「ああ、あまり動かない方が良い。俺から見てもかなり強烈な一撃だった」


 胸を押さえて蹲る瞬に、ルーファウスが改めて回復薬を差し出す。そんな痛みで、瞬は現状をようやく理解した様だ。


「そうか……俺は負けたのか……お前がここまで?」

「いや……俺は支えたまでだ」

「そうか……すまん。にしても、良く逃してくれたな」


 ルーファウスの頷きに礼を述べた瞬は、源次が逃してくれるとは思えず思わず問いかけた。が、これにルーファウスは僅かな苦い笑いを浮かべた。


「逃げた、か……いや、あれはギリギリだった」

「どういうことだ?」

「まずユリシアが上空から支援し、俺が割り込んだまでは……覚えているか?」

「いや……すまん。腹を蹴られたぐらいまでは覚えているが、そこからはてんで記憶が無い」

「そうか」


 仕方がない事だろう。ルーファウスはあの時の状況を鑑みて、仕方がないと判断する。そうして、彼は手短に現状を説明した。


「あの後、撤退が完了した冒険部の支援があってな。同時に瞬殿が倒れたのを見て陸上部……だったか? そんな生徒達がお前を回収しに来てな。なんとか彼らに預けて、俺とユリシアの二人で奴を食い止めに掛かった」

「そうなのか……ということは、奴はもう?」


 逃げたのか。言外に問いかける。瞬に対して、ルーファウスは苦い顔で首を振る。


「いや……」

「あれ……は……」


 ルーファウスの視線の方角を見て、瞬が思わず絶句する。流石に<<鬼殺し>>の力は感じないが、それでも瞬にだってわかる様な強烈な闘気がそちらでは渦巻いていた。


「流石に三十分近くも戦って、俺も保たなかった。故に一度下がっただけだ。そこに偶然、瞬殿が目覚めたという所か。団長……父さんが寄越してくれた百人規模の増援でなんとか、だ」

「そうか……」

「あ、おい! 瞬殿!」


 一度しかめっ面をして立ち上がった瞬に、ルーファウスが慌てて引き止める。が、これに瞬は呼吸を整え鬼の血を活性化させて告げた。


「この程度なら問題は無い。キラーの攻撃でダメージはあったが、それももう抜けている。肋骨にヒビは入っていたんだろうが……鬼の血を活性化させればなんとかなる」


 立ち上がって横に置かれていた防具に袖を通しながら、瞬は胸の痛みの治癒を促進しながらそう告げる。鬼の血は頑強な肉体を与えてくれると同時に、強大な治癒力も与えてくれていた。それを使えばなんとか、行けるはずだった。


「それに、お前もまた行くんだろう? 上もまだ戦いは続いている……なら、戦力は一人でも多い方が良いはずだ」

「……恩に着る」


 瞬の指摘は尤もだ。源次ほどの相手を前にするのなら、並の兵士が数十人も居るより、怪我で僅かに戦闘力は落ちているとはいえ瞬ほどの戦士が一人居た方が遥かに良い。故にルーファウスも僅かに解いていた防具を改めてしっかりと締め直し、立ち上がる。そうして、二人は一度装備をしっかりと整えて回復薬を補給して、改めて外に立つ。


「……相変わらず化け物か、あの二人は」


 外に立った瞬が思うのは、『狭間の魔物』と相変わらずの大立ち回りを繰り広げるカイトと、巴と共に遠距離戦を繰り広げるティナだ。どちらも三十分の間延々と戦い続けていたのだろう。


「あの二人か?」

「……ああ。カイトとユスティーナはまぁ、わかっていたが。カナタもよくやる」

「彼女があそこまでとは、な。俺もまだまだだ」

「仕方がない。彼女はたしか、旧文明の最高傑作という話だ。どちらかというと、それについていくカイトが可怪しいんだろう」


 ルーファウスの言葉に対して、瞬は笑いながら道理を告げる。それに、ルーファウスもまた笑う。


「確かに……いや、俺がこれを言うのはダメか」

「ん?」

「いや、なんでも無い」


 ルーファウスは数日前にカイトの強さの秘訣の一端を垣間見たのだ。その自分が彼を可怪しいというのは間違っている。そう思った様だ。と、そうして一つ戦闘前の雑談を繰り広げた後、二人は同時に目を閉じる。


「「……」」


 やはりまだ二人はランクSではない。そして瞬は慣れてはいるもののダメージから、ルーファウスはダメージこそさほど無いものの慣れが無いから、<<原初の魂(オリジン)>>の展開に僅かな時間を要する事になる。そうして数十秒ほど呼吸を整えた後、二人は己の前世をこの世へと呼び戻す。


「良し……ルーファウス」

「ああ……先程の様な醜態は晒さん」


 瞬の声掛けを受けたルーファウスは一つ頷いて、改めて戦場を見据える。そうして、二人は同時に地面を蹴る。向かう先は勿論、この戦場の中でも最激戦区と言われる一帯だ。


「……来たか」

「……先程の様な醜態は晒さん。総員、一度撤退。これ以降、俺と瞬殿で抑える」

「第二ラウンドだ」


 片や剣を構え、片や槍を構え。二人は源次を前に改めて気合を入れ直す。そんな所に、ユリィが舞い降りた。彼女は騎士団が出て来た事で一度引いていたらしい。邪魔になるし、下手にこれ幸いと自分も標的にされてはたまらないからだ。


「二人共、怪我は大丈夫?」

「問題はない」

「俺もだ……流石に足手まといにならない様に自分の身体ぐらい自分で理解している」

「そ……じゃあ、良いかな。一葉と三葉は共に周辺の魔物の掃討を。二葉は三葉の支援。ああ、それと三人とも、フル装備着用許可出たよ」


 やはりユリィも現状は流石に手を抜ける状況ではなかったらしい。即座に指示を下して、今まで源次を抑え込んでいた三人娘を一度下がらせる。流石にルーファウス単騎では無理だったので、カイトが急ぎこの三人を増援に遣らせたのだ。

 が、それでも状況は厳しく、中々に面倒な状況と言ってよかった。と、そんな指示を出した彼女へと、一葉が問いかける。


「ユリィはどうしますか?」

「私はこっちの支援……あ、三葉ー。カイトから許可出たから、武器庫持ってって良いって」

「はーい」


 ユリィの言葉に、三葉が手を挙げる。武器庫、というのは彼女の魔導殻に架橋するウェポンパックだ。最も広域に攻撃する為の兵装で、現状これを使うべきと判断されたのだろう。動きは非常に鈍くなるが、そのための二葉でもあった。

 この状況だ。どう考えても冒険部の支援なぞ出来るわけもないし、魔物に横槍を入れられては最悪はこちらに甚大な被害が出る。なるべく堅実な戦いをしたいのなら、横槍は失くすべきだった。

 と、そうして三人娘が一度それぞれのフル装備を整えに向かったのを見て、今までこちらの作戦会議を待ってくれていた源次が口を開く。


「……相談は終わったか?」

「ああ……待たせたな」

「別に気にはしない。これで存分に戦えるというものだ」


 瞬の返答に源次は僅かに笑う。そうして、四人が一斉に戦闘を開始した。


「おぉおおおお!」


 まず仕掛けたのは、瞬だ。彼は源次に向けてお得意の投槍を叩き込む。が、単に投げただけでは、今まで通り叩き切られるだけだ。故にそこに、ユリィが魔術を展開する。


「っ」


 流石に源次もユリィの支援の手が加わった槍を軽々と切り捨てる事は出来ないのだろう。彼女の力が加わって一気に強度を増した槍を見て、即座に背後へと跳んだ。が、そんな彼の背後に、ルーファウスが転移術でタックルを叩き込んだ。


「はぁ!」

「ちぃ!」


 背後からのタックルで吹き飛ばされ強引に軌道上に戻された源次が舌打ちする。まぁ、当然だがあれほど一方的に瞬を叩きのめせるのは、ひとえに一対一という状況があればこそだ。

 ルーファウスと比べても圧倒的と言える彼と言えど、<<原初の魂(オリジン)>>を使える二人にユリィによる底上げがあるのなら、なんとか足元には及ぶ程度にはなっていた。そんな彼は軌道上に戻されるもなんとか身を捩って回避して、槍の柄を蹴る。


「……」


 投げられた槍の柄を蹴って半回転させ、源次は槍の柄を引っ掴んでコントロールを奪取する。そうして、彼は槍を器用に操って背後に回り込んでいたルーファウスへと引っ掛けて、前面へ回り込ませる。


「くっ!」

「っ」


 前面へと押し出されたルーファウスを見て、追撃の氷弾を叩き込もうとしていたユリィが氷弾を水に変換。そのままルーファウスを迂回する様に源次へと水の槍として発射した。


「はっ!」


 放たれた水の槍に対して、源次が裂帛の気合を放って一度押し留め、その隙に彼自身はバックステップで遠ざかる。そうして遠ざかった彼は、地面を蹴って自らへと肉薄せんとする瞬へと槍を投げつけた。


「っ! だが!」


 猛烈な速度で自らに肉薄する槍に向けて、瞬は自身の槍を突き出した。投げつけられた槍はもともと彼の槍で、単にコントロールを奪取されたというだけだ。

 故にその強度は彼が理解しており、投げられた時点でコントロールも無い。故に意図も簡単に破壊する事が出来た。と、そんな彼が槍の先に見たのは、弓を構える源次の姿だ。


「はぁ!」


 目を見開いた瞬の眼前に、巨大な氷の壁が出来上がる。ルーファウスが前世の得意とした得意の氷属性を使って、氷壁を編み出したのである。それはただでさえ天才的な彼の才能に<<原初の魂(オリジン)>>が加わった事で、得意とした属性とは正反対の属性でも桁違いの強度を与えていた。


「ちっ」


 自らの放った矢がルーファウスの氷壁に食い止められたのを見て、源次は思わず舌打ちをする。この程度で誰かを倒せるとは到底思っていなかったが、それでも残念な結果になった以上は仕方がない。と、その一方でその氷壁を足場にして、瞬が上空へと躍り出る。


「っ」


 躍り出た瞬に向けて、源次が僅かに顔を顰める。が、瞬の動作に迷いはなかった。そうして、彼は再度槍を源次へと叩きつけた。


「……はっ!」


 投げつけられた槍に対して、源次は今度は<<鬼殺し>>を構えて一刀両断に叩き捨てる。と、そんな所に、ユリィの雷撃が迸った。流石にこのタイミングだ。ほぼ直撃という所で、極大の雷の中に源次は消えた。


「やったか!?」

「……」


 どうだろうか。ルーファウスの言葉を小耳に挟みながら、瞬は油断なく槍を構える。が、数秒後。結果が見えて思わず二人が唖然となった。


「「……はい?」」

「ちょ、ちょっと卑怯じゃない……?」

「……危なかった。雷でなければ、手酷い怪我を負わされる所だった」


 さすがのユリィも自身の一撃を完全にノーダメージでやり過ごされては、思わず頬を引き攣らせるしかなかった様だ。が、結果が全て。雷はほとんど彼に痛痒を与えていない様子だった。そうして、彼が一つ気合を入れるとそれだけで周囲に残っていた雷の残滓が全て消し飛ぶ事となる。


「ふんっ……ふぅ」

「……」

「……ああ」


 これは小手先の技でなんとかなる相手ではない。二人はそう認識を一致させると、改めて気合を入れ直す。そうして二人が突撃しユリィがその支援を行うべく魔術を準備した瞬間。轟音が鳴り響いた。それに、源次が興が削がれたとばかりに刀を仕舞う。


「……ここまでか」

「「っ……」」

「良いよ。今のこっちの手札じゃ、彼に勝つのは難しい。これ以上行くと、こちらが手酷い目に遭わされる」


 追うべきか、追わざるべきか。そんな一瞬の悩みを見せた二人に対して、ユリィが首を振りながら指摘する。そうして、三人はその場から消え去った源次をただ見送る形になってしまうのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1754話『ルクセリオン教国』

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ルーファウスが得意の氷属性を使って、氷壁を編み出したのである。それはただでさえ天才的な彼の氷属性に<<原初の魂オリジン>>が加わった事で桁違いの強度を持っていた。 ルーファウスが得意…
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