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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第76章 ルクセリオン教国編

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第1750話 ルクセリオン教国 ――狭間の魔物――

 『狭間の魔物』。世界と世界の狭間に存在する魔物。久秀達の襲撃によりそんな名で呼ばれる魔物が生み出されたルクセリオン教国首都ルクセリオ。そんな街を防衛する戦いに加わったカイトは、ルーファウスとともに<<原初の魂(オリジン)>>を目覚めさせると、転移術で『狭間の魔物』の一体へと肉薄する。


「っ」


 転移術で転移した直後。カイトは小柄な方の『狭間の魔物』が自身に気付いている事を理解する。が、彼は気にしなかった。なにせ今の彼には転移術のデメリットが効かないからだ。


「ほいさ!」


 『狭間の魔物』が動くよりも前に、ユリィが雷撃を叩き込む。と、その直後だ。雷撃に向けて、『狭間の魔物』が突っ込んだ。そうして、一瞬だけ雷撃と『狭間の魔物』の押し合いが行われる。が、それを尻目に、カイトが転移術で消える。


「そんなに入りたいなら、入りやがれ!」


 どんっという轟音と共に、カイトの飛び蹴りを受けた『狭間の魔物』が彼と共に雷撃の中に叩き込まれる。が、雷撃に飲まれた『狭間の魔物』は平然と立ち止まって振り向いた。


「あらぁ……ノーダメっすか」


 ならなぜ防いでたし。カイトは素直にそう思う。そんな呆気に取られたカイトに対して、『狭間の魔物』は今度は雷撃の勢いを駆ってもう突進した。


「おぉっと!」


 振るわれた剣に似た鋭利な突起物にカイトが思わず仰け反って回避する。雷撃の閃光でよく見えないが、どうやらこの『狭間の魔物』は腕に剣に似た鋭利な刃物が付いているらしい。と、そんな刃物で切り裂かれた空間を見て、カイトは思わず瞠目した。


「は……おいおい……お前、もしかしてあいつより強くね……?」


 大きく切り裂かれた空間を見ては、さすがのカイトも呆気に取られた。小物だから雑魚だろう。そう思っていたのだが、予想外に大物の可能性はあった。見誤った、という訳なのだろう。


「っと! そんな事言ってる場合じゃございやせんね!」


 ついで縦向きに振るわれた斬撃に、カイトは空中で身を捩って回避。一度距離を取るべく、そのまま加速してミドルキックの要領で回転蹴りを叩き込む。


「さぁ、戦闘開始だ」


 自身の蹴りを受け勢い良く吹き飛んでいく『狭間の魔物』に向けて、カイトが虚空を蹴る。が、その途中で『狭間の魔物』の人であれば丁度口の部分が開き、口腔と思しき部分から極光に似た光が放たれた。


「っ! だが!」


 放たれた閃光に向けて、カイトは一切の迷いなく突っ込んでそれを殴り付ける。が、そうして殴り付けた閃光は、まるで障子を破るが如くに簡単に破れた。


「!?」


 乗せられた。カイトがそれを悟ると同時に、『狭間の魔物』が消える。移動先は彼の背後。意趣返しのつもりなのかもしれないが、カイトは『狭間の魔物』の口腔内に光が溢れていた事に気付いていた。


「っ」

「ほわちゃ!」


 カイトの背後に『狭間の魔物』が飛び、大口を開けた直後。そこに大型化したユリィが割り込んで掌底を顎の部分に叩き込み、強引に口を閉ざす。そうして、直後。『狭間の魔物』の目や耳、鼻だろうありとあらゆる穴から光がこぼれ出て、『狭間の魔物』の顔面で大爆発が起きた。


「油断大敵」

「どっちに言ってる?」

「どっちにもー」


 再び小型化して肩に腰掛けたユリィに、カイトは楽しげだ。無論、彼女も楽しげだ。確かに、この『狭間の魔物』は強いかもしれない。だが、だからなんだというのか。伊達に世界最強は名乗っていないのだ。

 とはいえ、相手も流石は世界と世界の狭間で生きる魔物だ。この程度では、死ななかったらしい。一瞬だがぐらりとふらついて倒れるかに思えた『狭間の魔物』の身体が、倒れるより随分と前で止まった。


「おぉ……まだやれんのか」


 ゆっくりと再生しながらこちらを見る『狭間の魔物』にカイトが楽しげに問い掛ける。この程度では終わらないだろうぐらい、わかっている。この程度の雑魚ではないのだ。


「懐かしいねぇ……何度も何度も何度も、お前みたいなのと戦ったよ」


 あの地獄の様な月日。ただ殺戮と破壊だけしか振りまけなかった悔恨の日々。その中でカイトは何度となく、世界の崩壊を食い止めるべく戦った。その中には、どこかの人類が空けた空間の穴を塞ぐ様な作業も何千何百とあった。そうなると、こんな敵程度とは数えるのも嫌になるぐらいあった。


「来いよ。折角だ……遊んでやる」


 ゆらりとよろめいた状態で止まった『狭間の魔物』であるが、一転して戻る勢いさえ上乗せするかの様な超速度でカイトへと肉薄する。


「……」


 超速度を利用して叩き斬ろうとした『狭間の魔物』に対して、カイトは明らかな余裕の表情でそれを受け止める。一方、そんな彼の肩のユリィが、指で銃の形を作っていた。


「いやさー……流石にバカ? どーん!」


 見るまでもなく自分はここに居るのだ。一直線に向かってきた所で、カイトに攻撃を防がれた時点で自身の攻撃の的になるなぞ目に見えた話だ。

 なのに一直線に向かってきた『狭間の魔物』にユリィはただただ呆れるしかなかった。そして、そんな彼女の指先から極光の球が超音速で放たれる。が、これは一瞬で身を捩った『狭間の魔物』に呆気なく避けられた。


「ま、それぐらいはやってくるでしょ」

「はい、じゃあユリシアさん。次の一手をどーぞ」

「はーい」


 カイトの合いの手に合わせて、ユリィが指をくんっ、と横に振るう。すると、先程放たれた魔弾の前に半透明の壁が現れた。そしてその壁に魔弾が激突した直後。カイトが身を捩った状態の『狭間の魔物』に向けてタックルを叩き込む。


「ほらよ!」


 『狭間の魔物』へとタックルを叩き込んだカイトは、そのまま『狭間の魔物』を投げ飛ばす。そうして投げ飛ばされた『狭間の魔物』の先には、ユリィの作った半透明の壁で弾かれた魔弾があった。


「おまけだ!」


 魔弾の直撃とともに閃光に包まれた『狭間の魔物』へ向けて、カイトが無数の武器を編んで連射する。そうして閃光の中に消えた武器の嵐であるが、コンマ数秒と経たずにはじき出された。


「……」

「りょーかい」


 笑みだけを浮かべたカイトに、ユリィが楽しげに応ずる。そうして、その次の瞬間。先に魔弾を弾き飛ばした半透明の壁が『狭間の魔物』の全方位に現れた。


「はっ!」


 全方位に現れた半透明の壁はユリィの掛け声に合わせて、カイトが武器の嵐を叩き込む一方向のみを残して閉ざされる。それに、『狭間の魔物』は武器の雨に強引に突っ込んでその残る出口から出ようとする。


「いや、さっすがにそりゃダメだろ!」


 武器の雨に強引に突っ込もうとした『狭間の魔物』に向けて、武器の雨の最後に突っ込んだカイトが一気に突っ込む。そうしてそのまま、彼が『狭間の魔物』を殴りつけて強引に押し戻す。


「おっしゃ! やっちまえ!」

「はいさ!」


 カイトの掛け声に合わせてユリィが最後の一枚を編み出して、完全に封殺する。そして、直後。カイトがその立体のてっぺんに手を乗せる。


「っ」


 てっぺんに手を乗せたカイトであるが、しかしその直前にジャンプしてその場を離れる。そして、直後。彼が手を乗せていた天井が砕け散り、極光が吹き出した。


「ちぃ! これじゃダメか! っと!」

「っと。サンキュ」

「良いってこった」


 障壁を破られた反動で一瞬ふらついたユリィを肩に乗せ、二人は一度仕切り直しを図る。


「ふぅ……なっかなかにやる」

「当然でしょ」

「だわな」


 どうやって倒したものか。それこそ一撃で簡単に倒してしまえれば良いのであるが、そうも出来ないのが現状だ。なら、地道に勝ちを得ていくしかないだろう。とはいえ、地道に戦って勝ちを得たいわけであるが、それと同時に気になる事もあった。


「あれも、気になるんだがな……」

「今気にしたってしょうがないでしょ。それよりあっち」

「わーってま、わーってま……」


 さて。カイトは気合を入れるとばかりに、首を鳴らす。そうして、彼は刀を構える。


「さ、仕切り直しだ」


 どうやら幾度かの攻撃で小さくない手傷を負っているらしく、『狭間の魔物』の反応は僅かには鈍くなっている。着実に勝利には近付いているはずだった。というわけで、カイトは<<縮地(しゅくち)>>を起動させて一気に肉薄する。このまま一気に攻めきるつもりだった。と、そうしてカイトが斬撃を交え始めたと同時に、ティナから念話が入ってきた。


『カイト。聞こえとるかー』

『あいあいー。絶賛遊んでる所で良ければー』

『良いぞー。どーせその程度の小物に負けるお主でもあるまいになー』


 別にこの程度の相手に本気になる必要は無い。それ故にどちらも気楽だった。というわけで、ティナが現状を報告する。


『まず皇国よりレガドを通じて、超長距離通信による報告じゃ。こちらの下手人は二人。魔物の群れなどの襲撃も無し。が、下手人共はバレたと同時に、魔物の群れを呼び寄せたそうじゃ。とはいえ、こちらはさほど大掛かりな群れにはなっておらんとのことじゃのう』

『本命か?』

『さてのう。今までの事を鑑みるに、各個人が好き勝手に動いている可能性も若干じゃが指摘されておる。無論、大まかな統率はあの道化師が執っておるんじゃろうが』


 やはりここで一番のボトルネックだったのは、久秀達が全員各々が道化師達とは別の思惑があることだろう。例えば久秀ならカイトへの帰陣を考えているし、石舟斎と宗矩に至っては戦えればそれで良い、という所だ。

 後者は比較的大将軍らに近い考え方だが、それも二人だけと来ている。自分の思惑でここに居るのか、それとも道化師の思惑でここに居るのか。各個人の思惑が掴めないからこそ、道化師の思惑もまた掴めなかった。


『まぁ、良いか。そちらについては後で考えるとしよう。下手人の風貌は?』

『一人は着物服の女。あちらに向かったクズハ曰く、前に見えた女じゃそうじゃ。もう一人は、誰も見ておらぬ。本当に新手の女じゃそうじゃ』

『……新手?』


 前に見えたのは七人だったはずだが。それが唐突に増えたのを受けて、カイトは思わず顔に真剣さを滲ませる。


『うむ。相当腕利きは腕利きじゃ。今、ソラが戦っておるそうじゃ』

『……まぁ、今のあいつなら、十分に戦えるだろう。それにクズハということは、アウラも向かっただろう。そちらはなんとかなるだろう』

『うむ。あちらについては道化師共が動かぬ限りは気にする必要はあるまい』


 兎にも角にも、クズハ達より圧倒的に格上の者たちが動かねばあちらは盤石と言える。そして最悪の場合にはシャルロットが居るので、カイトを強制的に呼び戻す事も出来る。その場合にも備えて手は打っているので、なんとかなると考えて良いだろう。


『で、こちらには?』

『うむ。大陸間弾道弾を応用した輸送機の発進準備を大急ぎで進めさせておる。今回が初使用となろうな』

『オーライ。こちらも問題無し、か。じゃ、こちらは後は少し堪える事にしますかね』


 倒せるのなら倒すつもりであるが、倒さないで良いのなら倒したくないのがカイトの思惑だ。あまり目立つと、動きにくくなるからだ。更に言えば、目立てば目立つほど、自分の正体に気付かれる可能性も高くなる。ただでさえ現状、皇国の思惑もあって段々と目立ち始めている。これ以上目立ちたくないのがカイトの考えだった。と、そうしてひとまず次の一手を考えたと同時だ。唐突にティナが困惑を浮かべた。


『む?』

『どうした?』

『っ! 何じゃ、コヤツ! なんじゃ!』


 どうやらティナの側でなにかが起きたらしい。彼女の慌てた声の後に、怒鳴り声が聞こえてくる。


『っ! カイト! 下手人がもう一人こちらに来おった! 以前に瞬が見た奴じゃ!』

『っ!』


 ということは、あの自分が見たこともない剣士か。カイトはここに来て現れた敵に、思いっきりしかめっ面をする。


「ユリィ」

「オッケー……と言いたいんだけど、カイトはどうする?」

「オレはもう一人パートナーが見つかりそうでな。安心しろ」

「えー」

「あはは……お前だから、任せられるんだろ」


 一瞬冗談を交えた二人であるが、一転して真剣な顔で話を進める。相棒だからこそ、任せられる。その言葉に嘘偽りなぞあろうはずがない。そしてそれ故の申し出であるぐらい、ユリィにもわかっていた。


「わかってる……じゃ、気を付けてね」

「ああ。お前もな。敵は奴ら(死魔将)の配下……ぬかるなよ」

「うん」


 カイトの注意に、ユリィも一つ頷いて消える。そうして、彼女が消えた後。まるでそれを見ていたかの様なタイミングで、斬撃が『狭間の魔物』の背後に疾走った。


「あら……ごめんなさいね。ついうっかり隙だらけだったものだから」

「あぁ、丁度良い。少しダンスパートナーが不在になっちまってね。お相手は頼めるかな?」

「ええ、勿論。ご主人さまのご命令ですもの」


 カイトの軽口に合わせ、ゆっくりとカナタが舞い降りる。と、それとほぼ同じ速度で落ちていった『狭間の魔物』であったが、即座に立て直してこちらへと急浮上していた。


「オーライ。じゃ、行くか」


 カナタの軽口を横に、カイトは改めて笑みを浮かべる。そうして、彼は一気に急降下して、急浮上してくる『狭間の魔物』と激突するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1751話『ルクセリオン教国』

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