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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第76章 ルクセリオン教国編

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第1710話 ルクセリオン教国 ――廃病院の戦い――

 ルクセリオン教国北部の廃村。そこに巣食う魔物の群れの討伐任務を請け負ったカイト。そんな彼は数度の交戦やトラブルを経ながらも、ついに群れを率いているボスの所へと到達する。

 が、そんなボスはランクS級の『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』と呼ばれる魔物だった。これにまともに戦う事は困難を極める為、カイトはソーニャとの間で更に強大な力の融通を行うべくキスを介した儀式を行う。そうして、儀式が交わされた後。カイトは自身に強大な退魔の力が宿っている事をしっかりと認識する。


「ふむ……受け入れて分かったが。やっぱりとんでもない力だな」


 その身にソーニャの退魔の力を宿し、カイトは改めて彼女の力の強さを実感する。最低でもシャルロットの加護を持たない自身より一回りは強い力を持つだろう。それほどの力だった。


「アリス」

「……え、あ、はい」

「どうした? 力の増大で違和感か?」

「え、あ、はい」


 カイトの問い掛けに、アリスは頬を僅かに赤らめながらも頷いた。なお、この時カイトは深く追求する事は出来なかったので聞いていないが、頬が赤いのは目の前でキスシーンを見たかららしい。


「そうか……まぁ、この状況だ。抑える必要はない。存分に、その力を振るうだけで良い」

「あ、はい」

「……あ、ああ……それなら良いんだが……とりあえず、試運転だけはしておこう」


 大丈夫かなぁ。カイトはそう思いながらも、不相応の力を手に入れた際には時として熱に浮かされた様な状態になる事はあると知っていた為、アリスもまたその状態なのだろうと思う事にしたようだ。とはいえ、ここから実戦である以上、試しは必要だ。


「オレも少し試し切りはしておくか」


 無数の雑魚を相手にするアリスはさておき、カイトはここからランクSの魔物と戦わねばならないのだ。故に彼は一度自身の感覚を慣らすべく、軽く準備運動をしておく事にする。


「シェイラさん!」

「何!?」

「アリスと共に少し準備運動を行う! 支援を!」

「ええ!」


 単身敵を食い止めていたシェイラは、カイトの要請に二つ返事で頷いた。そうして、彼は一つ深呼吸をして、アリスを向いた。


「アリス。緊張や調子が整わないのなら、深呼吸」

「あ……はい」


 すぅ、はぁ。アリスは先程のキスシーンで火照った頬をなだめるべく、数度深呼吸を行う。そうして数度深呼吸をした頃には、彼女の心もなんとか平常にまで整った。


「……いけます」

「良し……じゃあ、少しだけ」


 カイトは一つ頷くと、廃病院の屋上から飛び降りる。そうして、数十メートルまで迫った魔物の大群に向けて刀を構えた。


「……」


 自らに宿る退魔の力を、カイトはしっかりと認識する。そうして、試しに一太刀軽く振るってみた。


「……え?」


 アリスの困惑にも似た声が、カイトの耳に聞こえてくる。まるでゴミ掃除で塵を掃く様に。軽い感じで放たれたカイトの斬撃はその余波だけでも魔物の群れを消し飛ばしていた。そしてその結果に、カイトもまた驚きを得ていた。


「……こりゃ、凄まじいな。これがソーニャの力か。もしヤッてたらどんだけなんだ……?」


 かるく切っ先を魔物の軍勢に向けて力を放てば、それだけで魔物の群れが塵となり崩れ去る。日光にも耐えられるだろう領域の魔物でさえ、一切合切塵に変えていた。

 もし彼女が自身の負担を鑑みずに全力で力を放てた場合、下手をすると『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』さえ問答無用に塵となる可能性さえあった。それほどの力であった。


「アリス。お前も試してみると良い」

「あ……はい」


 先程までとは違う意味で呆然となっていたアリスであるが、カイトの指示に一つ頷いた。こちらも余波ではあるが若干強化されている。故に彼女もカイトと同じく切っ先を魔物の群れに向けて、しかし何らかの魔法陣を展開した。


「<<聖なる矢(セイクリッド・アロー)>>」


 アリスの生み出した魔法陣から無数の光の矢が生み出され、魔物の群れへと飛翔する。やはり儀式の余波で更に強化されているからか、それは一本一本が先程より強大な力を宿していた。


「……いけます。これなら十分に」


 基本的にアリスがやる事はシェイラと同じく廃病院に敵を近づけない事と、もし万が一近付かれた場合には近接戦闘でソーニャを守る事だ。この様子なら十分に雑魚相手なら大丈夫だろう。それを見届け、二人は廃病院の屋上に戻る。


「さて……アリス。ソーニャの守りは任せる。オレも行ってくる」


 カイトは一度だけ呼吸を整えると、廃病院の中で迸る闇色の光をしっかりと見据える。どうやらまだローラントは無事らしい。満身創痍という風でも無く、堅調な戦いをしている様子だった。そんな彼目掛けて放たれた闇色の光の前に、カイトは降り立った。


「……む」


 一太刀で消滅した闇色の光に、ローラントが思わず瞠目する。相手は一応は格上とされているランクSの魔物だ。その攻撃を問答無用に切り裂ければそうもなる。


「またせたな」

「その分、期待させて貰って良いのだな?」

「今見た通りだ」


 僅かに安堵した様に息を吐いたローラントに、カイトは敢えて余裕を滲ませて告げる。そうして、カイトは改めて『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』をしっかりと見据える。


「ふむ……」


 見た限り、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は堕族に似た姿だ。人間に似た本体を中心として、その周辺に闇色のモヤを身に纏っている様な形だ。ただ人間に似ているだけで眼窩には青白い炎が宿っており、口もない。そんな『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』はカイトを見ると、強い意志の滲んだ視線を向けて手を挙げる。


「っ」


 『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が手を挙げた次の瞬間。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の指先から闇色の光が迸った。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の基本的な攻撃だ。


「はぁ!」


 闇色の光に対して、カイトは僅かに障壁に力を込める。現在の彼には自前の退魔の力に加えて、ソーニャの強大な退魔の力が宿っている。結果、その障壁にも強大な退魔の力が宿っていた。それ故、カイトの障壁は一枚も破られる事なく闇色の光を防ぎきった。


「十分、行けるな……ローラント。支援を頼む」

「ああ。前線は任せる」


 これだけの性能があれば、喩え相手が格上だろうと勝てる。そう判断したローラントはカイトの要請を受け入れ、少しだけ距離を取る。そうして、それを背にカイトは真っ向勝負を仕掛ける事にした。


「はぁ!」


 更に強大な闇色の光を放とうとした『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に対して、カイトは居合斬りを放ってそれを食い止める。


「……ほぅ……真正面からでも受け止められるか」


 闇色の剣を手にカイトの斬撃を受け止めた『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に対して、カイトが笑う。基本『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は支援系かつ遠距離攻撃系の魔物だが、それでもランクはS。身体能力であれば十分に高い。そうして、僅かな間鍔迫り合いが行われる。


「ふっ!」


 とはいえ、やはりいくらランクSの魔物であろうと支援を中心とする魔物だ。純近接かつアンデッド系に特攻の力を有しているカイトとの鍔迫り合いで勝てる道理はない。故に、数瞬の後。カイトが力を込めると、それだけで『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が吹き飛ばされた。


「上出来だ!」


 そんな吹き飛ばされた『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の先には、すでにローラントが控えていた。いや、正確には彼の居る方へとカイトが吹き飛ばしたのだ。そうして、ローラントが一切の躊躇いなく両手剣を振るった。


「っ!」


 両手剣を振るい直撃かと思われた一撃であったが、直撃の直前。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は全身から闇色の光を放ってその場に急停止。あと少しという所で、ローラントの攻撃は外れる事となる。が、その停止のタイミングを見逃すほど、カイトは甘くはなかった。


「そのタイミングで止まったらダメだろう!」

『!?』


 敢えて近づくではなく刀の切っ先を向けたカイトに対して、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は驚きにも似た表情を浮かべる。

 そうして、そんな『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に向けてカイトの刀の切っ先から極光の光条が迸る。それは先にカイトが試射をした一撃で、しかし今度は出せる上限値での一撃だった。


「ローラント!」

「ああ!」


 光条の発射と同時。ローラントが飛び上がって光条の進路上に躍り出る。そうして、その直後。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』がカイトの光条によって吹き飛ばされた。


「おぉおおおお!」


 光条に撃たれ猛烈な勢いで向かってくる『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に向けて、ローラントは容赦なく大剣を振りかぶる。今度は、避けられない。そうして気迫に満ちた斬撃が放たれ、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の闇へと大剣が深々と突き刺さった。


「ちっ!」


 斬撃を放ったローラントであるが、その顔は苦かった。カイトの光条も上乗せしたが、やはり相手はランクSの魔物だ。しかも彼には特攻と言える力はない。故に直撃はさせられたものの、致命打にまでは至らなかった様だ。


「とはいえ……中々にダメージは与えられたか」

「らしい」


 どごん、という音を立てて地面に激突した『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』であるが、その胴体には袈裟懸けに大きな傷があった。更には身体の各所には強大な退魔の力を受けた事により血の様にモヤが吹き出しており、決して小さくない怪我に見えた。


「「……」」


 二人は無言で頷いて、起き上がろうとする『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に向けて地面を蹴る。アンデッド系の魔物は上位に至れば、再生力が高くなる。故にこの期を逃さず、一気に攻めきる事にしたのだ。そうして、二人は左右から切り込んだ。


「「ぐっ!」」


 左右から切り込んだ二人であるが、あと少しという所で起き上がった『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が悶え苦しむ様に頭を抱え総身から闇色の光をシッチャカメッチャカに放出する。それに煽られ、二人は思わず足を止める事となってしまう。


「ローラント! 無事か!?」

「あ、ああ!」


 やはり退魔の力で守られているカイトに対して、なにもないローラントではローラントの方が受けるダメージは大きかったらしい。カイトが少し地面を滑った――これは彼の体術の薫陶もあるが――だけに対して堪えきれずに吹き飛ばされていた。そうして足を止めたカイトに向けて、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が手を向ける。


「ちぃ!」


 これの回避はまずい。カイトは闇色の光条ではなく闇色の球体が出来上がりつつあるのを見て、真っ向から叩き切る事を決める。そうして、彼が覚悟を決めた直後。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の手から超音速で闇色の光球が放たれた。


「……」


 一瞬で精神を鎮めたカイトは、ただ静かに闇色の光球を見定める。が、その彼の真横に、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が現れた。


「っ!」


 誘われた。カイトは真横に現れた『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に気付いて、自身がこう出るだろうと読んだ上での行動だと理解する。そして、彼が理解した直後。脇腹に衝撃が走った。


「ぐっ!」


 どぉん、という音と共にカイトが吹き飛ばされる。そうして幾度も壁を突き破って吹き飛ばされていくカイトに対して、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は先程自身が投じた闇色の光球を右手でキャッチ。軌道を変えて、カイトへと再度発射した。


「カイト!」


 廃病院の壁を突き抜けて吹き飛ばされたカイトに、ローラントが声を上げる。そんな彼には目もくれず、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は吹き飛ばされていったカイトに向けて一直線だった。どうやら、危険度であればカイトの方が高くローラントは取るに足らないと判断した様だ。

 と、そんなわけで廃病院の壁を超音速で吹き飛ばされていったカイトであるが、廃病院を抜けた所で更にアンデッドの魔物の群れを吹き飛ばしながらも虚空に刀を突き立てて急減速。そのまま自身に向けて一直線だった闇色の光球に向けて拳を握りしめた。


「オレを、舐めてんじゃねぇええええ!」


 どうやら脇腹を強打され、痛みで怒りを得たらしい。カイトは雄叫びと共に、思いっきり闇色の光球を殴りつけた。そうして殴られた闇色の光球は一瞬だけ停止し、そのまま弾かれる様にその背後を追走していた『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』へ向けて射出された。


『!?』


 どうやら『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』もカイトがまさかあの状態から思いっきり闇色の光球を殴りつけて弾き返すとは思っていなかった様だ。が、そもそもこれは『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の放った弾だ。故に平然とキャッチすると、それを再度カイトへと発射する。


「はっ!」


 再度自身に向けて一直線に飛来する闇色の光球に対して、カイトは刀を掴むとそのまま思いっきり上へと蹴っ飛ばす。そうしてサマーソルトキックの様に一回転すると、自身が地面と水平となる頃合いで虚空を蹴って地面を這う様に『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』へと肉薄した。


「うらぁ!」


 どうやら接近戦は避けられないと判断したらしい『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は手に両手剣に似た闇色の剣を持っており、カイトと打ち合わせる。そうしてまたたく間に数十の斬撃が交わされる事となる。


「っ!」


 数十の斬撃を交えた後。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の眼窩に宿る青白い炎が燃え上がったのをカイトは見る。そして、直後。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の力が与えられ青白い炎を宿した骸骨型の魔物が大挙してカイトへと押し寄せた。


「させるか! はぁああああ!」


 大挙して押し寄せた骸骨型の魔物に対して、なんとか追いついたローラントが割って入る。そうして、彼が全力で斬撃を放ち、骸骨型の魔物の群れを押し戻した。と、その次の瞬間だ。唐突に、廃病院の屋上から一筋の光条が迸った。


『!?』

「何だ!?」


 骸骨型の魔物の群れの中心で剣戟を交えていたカイトと『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が思わず上を見上げる。すると、彼らの丁度真上の結界が一部砕け散っていた。そして、直後。ソーニャの声が響いた。


(運良く奴が離れましたので、結界の魔石を私の力で浄化しました)

『GYAaaAAあああ!』

「なるほど」


 日光の直撃を受けて消滅していくアンデッド型の魔物の群れと、いくら通用しないとはいえ多少の減衰は受ける事になる『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の苦悶の声を聞いて、カイトがほくそ笑む。ただでさえ特攻の状態で、その上に相手に減衰まで入ったのだ。これなら一気に押し切れるだろう。


「はぁああああ!」


 雄叫びをあげて、カイトが一気に退魔の力を漲らせる。それは鍔迫り合いを行っていた『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』を照らし出し、その身を包んでいた闇色の衣を剥がしていく。


『!?』


 引き剥がれつつある自らの闇色の衣に、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が驚きを浮かべる。が、それに対してカイトは一気に押し込んだ。


「甘いんだよ!」


 自身に注目した『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に対して、カイトは周囲から忍び寄らせていた魔糸の束で『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』を貫いた。そうして内側から退魔の力が迸り、闇色の衣の切れ目から闇色のモヤではなく極光が漏れ出してくる。


「そのまま、消し飛びやがれ!」


 鍔迫り合いに込める力を更に強固にして『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』を逃さぬ様に押し込む傍ら、カイトは魔糸に注ぎ込む力を一気に増大させる。そうして一度崩れたのをきっかけとして、『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の守りが一気に崩れる。が、流石はランクSの魔物という所だ。あと少しという所で、全員から闇色の光を放ってカイトを吹き飛ばした。


「ぐっ! だが、まだまだ!」


 カイト自身は吹き飛ばされたものの、魔糸はまだ引き千切られていない。故にカイトは上空へと逃げ出そうとした『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』に向けて、自身もまた地面を蹴った。


「トドメだ!」


 逃げるべきか迎え撃つべきか。『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』は逡巡した様子を見せる。そしてどうやら、迎え撃つ事にしたらしい。

 が、この迷いが、勝敗を決した。闇色の両手剣を編み出そうとした『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』であったが、その直前。カイトの魔糸が分裂して腕を拘束したのだ。


「はぁああああ!」


 『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』の胴体に向けて刀を突き立てたカイトは、雄叫びと共に退魔の力を更に『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』へと流し込む。が、その直後。あと一瞬で『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』が消し飛ぶというタイミングで、何かがカイトの耳朶を打つ。


『……』

「!?」


 今のは何だ。カイトが聞こえた何かに疑問を得た次の瞬間。まるで堤防が決壊する様に内部から『常世を憎悪する影(ヘイトリッド・ソウル)』から極光が迸り、闇の全てを消し飛ばす。そしてその余波で周囲の結界もまた、大規模に消し飛ぶ事となるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1711話『ルクセリオン教国』

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