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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1554話 地球からのメッセージ ――戦闘開始――

 天桜学園が発注した通信機の資材。それの輸送隊がマクシミリアン領の隣、フランクール領を拠点とする盗賊団に襲われるという事件が発生する。それの対処の為にフランクール軍と行動を共にしていたカイトは、軍の討伐隊の指揮官となるジェイコブという男と共に討伐戦の最後の打ち合わせを行っていた。

 そうして、カイトが打ち合わせを開始して二時間。彼は瑞樹達に作戦内容を通達すると、自身は引き続きフランクール軍の飛空艇に乗っていた。


「そうか。わかった。こちらもたった今、マクシミリアン軍より連絡が入った。すでにあちらは所定の位置に待機しているらしい」

「わかりました。では、こちらも陸上部隊に加わります」

「そうしてくれ」


 カイトの報告を受けたジェイコブは幾つかの指示を矢継ぎ早に下しながら、彼の申し出に一つ頷いて側近に手で案内する様に指示を出す。それを受けて、カイトは陸上部隊が待機する揚陸艇の場所へと案内された。


「ロヘル少尉!」

「ああ、マルクスか。どうした?」


 ロヘル。そう呼ばれた若い男はカイトを案内した兵士の言葉に振り向いた。


「例の冒険者をお連れしました」

「ああ、彼が……ロヘル・サイモン。階級は少尉だ」

「はじめまして、少尉。カイト・天音。こっちは相棒のユリィです」


 カイトはロヘルから差し出された手を握りながら、自身とユリィの紹介を行う。そうして挨拶を交わしあった後、ロヘルが本題に入った。


「で、おたくも一緒に来るって?」

「ええ。お願いします」

「それは良いんだが。相手、結構腕利きらしいが……まぁ、明らかに俺より強いんだろうおたくは大丈夫なんだろうが。他は大丈夫なのか?」


 カイトについてはすでに実績として評価がある。なので幾ら冒険者崩れだろうと盗賊程度に負けないと思っているのだろう。が、それ以外の面子については基本的に実績(二つ名)が無いか、無名に近い。ロヘルが疑問に思うのも無理はない。


「ええ、問題はありません。今回、陸戦を行うのはオレとこいつ、後一人だけです」

「ふーん……まぁ、相手は召喚術師だ。油断だけはしてくれるなよ。あいつらは何してくるかわからないからな」


 一応、仲間として戦う以上は義理として、という所なのだろう。ロヘルはカイトへと一応の注意を促しておく。それにカイトも頷いて、ロヘル率いる陸戦隊の隊列から少し離れた所で待機する事にした。


「召喚術師、か……本物なら厄介だが……」

「どうするの?」

「そりゃ、倒すさ。が、本物の召喚術師が相手なら、中々に考えものだな」


 ユリィの問いかけにカイトははっきりと倒すと明言しながらも、僅かな苦味を口にする。召喚術師。それは読んで字の如くだ。それ故にこそ、厄介な相手としてカイトも認識していた。


「まだ、この世界にいる魔物と契約している程度なら良いんだが……どこともしれない異界の存在と契約しているとなると話が面倒になってくる」

「正真正銘異界の存在だからねー。今回は特に完全に追い込むからまずくない?」

「まずいな。まぁ、倒せない事は無いんだろうが……」


 どうしたものか。カイトはユリィと二人、どうするべきか考える。召喚術、というとエネフィアでは幾つかのパターンが存在する。それに応じて面倒さが変わってきた。というわけで、唯一カイトと共に陸上に降りて戦う事になるカナンへと注意を促す事にした。


『召喚術師……ですか? それ、本物ですか?』

「わからん。未確認情報だ、という事だ」


 カイトの連絡を受けたカナンがまず第一に思ったのは、話の真偽だ。天桜出身の冒険者達とは違い、彼女は純粋にこちらで生まれ育っている。冒険者としての経歴ももう年を超えている。なので召喚術師が冒険者の中でも珍しい事は知っていた。それ故の疑念だった。


『流石に召喚術師が盗賊になる、とは思えませんよー』

「あはは。まぁな。その様子だと召喚術師の詳細はわかってるか」

『ええ、まぁ……一つ目、エネフィアの魔物を契約で縛って使役する召喚術師』

「一番低級パターンだね」

『二つ目、異界の存在を媒体を依代にして召喚する召喚術師』

「中級パターン」

『三つ目、異界の存在と契約して使役する召喚術師』

「上級パターン」


 カナンの言葉に合わせて、ユリィが指折り数える。そうして三つ語って、カナンが問いかけた。


『この三つが召喚術師の等級、ですよね?』

「ああ。その三つ。この内、カナンはどれか見た事があるか?」

『あ、実はあの、前に一緒だった人の中に一人召喚術師が……』

「まぁ、お前ぐらい経歴長いと一人ぐらい知ってても不思議はないよな……中級か?」

『いえ、上級です。あ、そういっても半分上級、らしいんですけど……』

「「ふへ?」」


 カナンがはっきりと明言した言葉に、カイトとユリィは思わず目を丸くする。本当に珍しい冒険者が居たらしい。


「そりゃまた、すごいな。半分とはいえ上級の召喚術師なぞ滅多にお目にかかれん」

『ええ、凄かったです。地脈とか色々と条件を整えれば呼び出せる、って』


 凄かった、か。カイトはカナンの言葉から、これは彼女がかつて一緒だった仲間達だと理解する。なお、これはレーヴと呼ばれる女冒険者がそうだったらしい。

 あの時もしこの召喚術を行使出来ていれば、『人牛(ミノタウロス)』の群れなぞひとたまりも無い。そう言い切れるぐらいの力があったらしい。が、使わなかったということは、そういうことだ。言っても詮無きことだろう。


「まぁ、それなら厄介さについてはよくわかっているだろう。居たら一旦引け」

『はい』


 仲間に召喚術師が居たのだ。必然としてその厄介さは身に沁みて理解している事だろう。というわけで、カイトは特に注意しないで終わっておく事にする。というわけで、カイトは肝要な事を告げる事にした。


「で、カナン。お前は速度を活かして裏からの攻撃を頼む」

『わかりました』


 裏。それは相手の背後からの部隊に加わる様に、という指示だ。彼女は少し先行して盆地を迂回。待機しているマクシミリアン軍の奇襲部隊に合流してもらう予定だった。カイトはこの間の二つ名の授与がある為、敢えて旗として前面に出る予定だ。というわけで、カイトは更に種々の指示を冒険部一同に与えていく。


「よし……では、各員。注意して戦闘に臨んでくれ」

『『『了解』』』


 カイトの指示に全員が了承を示す。今回、基本的に来ているのが天竜部隊という事もあって地上戦を行うのはカイト達とカナンだけだ。魅衣も地上戦は可能だが、天竜部隊の援護に入って貰う必要がある。

 天竜とはいえ矢は届くのだ。氷属性による物理的な障壁、風属性による受け流し等様々な魔術を使える彼女の支援は有効だった。


「さて……」

『こちらオペレーター。各員、作戦開始まで後30分。先行している偵察部隊によると、相手に動き無し。まだ気付いていない模様です』

「よっしゃ。隠密性に優れた機体持ってきた甲斐がある、ってもんだ」


 オペレーターからの情報伝達にロヘルが笑みを浮かべる。今回フランクール軍が持ってきた飛空艇は消音性に長けている上、偽装として外壁を周囲の色に合わせて変化する物となっている。

 その分速度は出ないが、気付かれず接近するには丁度よい。まぁ、速度が出ない飛空艇を選んだのは敢えて盗賊達が逃げられる程度にする為だ。付かず離れずを保てる程度にしているのである。


「おい、お前さん。そろそろ作戦開始だ。戻ってくれ」

「あ、はい」


 ロヘルの指示にカイトは一つ頷いた。ここからは、基本的には降りるまでは彼らと共に行動だ。というわけで、カイトはロヘルに案内されて揚陸艇の所へと向かう事になる。そうして向かった所にあったのは数人乗りのバイクに似た物体だ。

 が、機体の左右には腰掛ける為の椅子とシートベルトがあり、車輪の部分には小型の飛翔機が取り付けられている。以前にカイト達がラエリア内紛において使用した物の大人数向け、という所だ。


「こいつ、使った事あるか?」

「いえ……前のラエリアではボードを使いましたので……」

「ああ、個人用のか。こいつは相手からの迎撃が薄いだろう時に使う奴だ。まぁ、俺が操縦するからこのまま座ってれば問題ない」

「わかりました」


 ロヘルの指示に対して、カイトは一つ頷いた。そうしてそれを確認した後、ロヘルは再び歩き出した。


「で、ちょっとお前さんの手を借りたい。ついてきてくれ」

「はぁ……わかりました」


 どうやらまた別に仕事があるらしい。カイトは首を傾げながらもロヘルに従って歩いていく。そうして到着したのは、飛空艇の底部付近、魔導砲の管理を行うエリアだ。そこにたどり着いて、ロヘルが口を開いた。


「作戦の概要は聞いてるな? その最初の所で砲撃して追い立てるわけなんだが……下手に盗まれた物資に命中させたくなくてな。砲撃をマニュアルで行う。まぁ、魔銃の大本は地球の技術って聞いてる。使い方はわかるだろ?」

「ええ、一応は」


 基本的に飛空艇の魔導砲は照準のロック等を含めて艦橋で行える様になっている。が、それらはやはり機械によるオートに近い。なのでこういった場合にはマニュアル操作で動かせる様になっているのであった。というわけで、頷いたカイトに向けてロヘルは一つのコンソールを指さした。


「じゃ、頼む。俺も俺で後ろのコンソールで魔導砲を操る。荷物には傷付けない様にしろよ」

「わかりました」


 どうせ盗賊達が逃げる間、カイトも暇なのだ。であれば砲撃に協力しても問題はないだろう。というわけで砲撃用のコンソールに腰掛けると、即座にコンソールが起動して周囲に魔導砲上部に取り付けられたカメラからの映像が送り込まれた。


「さて……」

「使い方は覚えてる?」

「伊達にテスターやってねぇよ」


 ユリィの茶化しに笑いながら椅子に腰掛けたカイトの前にあったのは、戦闘機の操縦桿に似た操縦桿。これで向きを変えられる。出力や発射する魔弾の種類は左手側にあるバーやスイッチで操作可能だ。

 他にも必要なら暗視カメラに似た機能もあるし、夜間戦闘に備えてライトもある。レーザポインタに似た機能も完備されている。ただ狙いを付けて撃つだけで良かった。そういった機能を逐一確認していたカイトであったが、ふと後ろを向いた。


「そう言えば、ロヘル少尉」

「なんだ?」

「道中で落ちた荷物は?」

「俺達の後ろに居る輸送隊が回収する。気にせず荷物を落として大丈夫だ」

「わかりました」


 カイトの問いかけにロヘルが自身のコンソールの調子を整えながら教えてくれる。どうやら気にせずに撃って良いらしい。というわけで、カイトは改めてコンソールに向き直る。そうして待つ事およそ二十分。再度オペレーターからの報告が入った。


『こちらオペレーター。敵影確認。モニターに表示します』

「……」


 さて。カイトはオペレーターの言葉に僅かに気合を入れる。これは狩りと一緒だ。追い立てて追い立てて、罠に嵌める。先走ってはならない。そうしてモニターに映像が映ったとほぼ同時に、盗賊達の見張りの一人がこちらに気が付いた様子が見えた。


『盗賊、こちらに気付きました……野営地を放棄して逃走を確認。作戦開始です』

「了解。二番、攻撃に入る」

『二番砲撃了解。荷物には当てないでください』

「了解」


 カイトはオペレーターの了承を受けて、魔道砲の出力を僅かに上昇させる。どうやら盗賊達は竜車を中心として活動しているのか、飛空艇に気付くや否や即座に人員を荷馬車に乗せて即座に逃げ出していた。

 置き去りにされたのはテント類だけだった。最悪は無くても荷馬車の中で眠れる、というわけなのだろう。そうして彼らが向かう先は当然、西だ。そんな盗賊達に向けて、カイトは照準を合わせる。


(狙うのは車輪。モードは……貫通で行くか。出力は……10%程度で良いだろう)


 とりあえず荷馬車さえ止めてしまえば後は盗賊をどうにでも出来る。故にカイトは盆地へ向けて進む盗賊団の荷馬車の一つに狙いを定める。どれに天桜が発注した資材が入っているかはわからない。故に傷一つ付けるつもりはなかった。


「ふぅ……」


 深呼吸を一つ。そうして、カイトは動きを予想して、引き金を引いた。それに合わせて砲身が一瞬だけ光り輝いて、盗賊団の荷馬車の後輪を撃ち抜いた。


「お見事」

「おう……さて、次だ」


 これで一台撃破。カイトはユリィの称賛に笑みを浮かべると、再度集中する。そうして、彼は牽制を織り交ぜながら盗賊団を追い立てていくのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1555話『地球からのメッセージ』

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