表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1578/3939

第1547話 地球からのメッセージ ――丁度その頃――

 カイトとは別口で『時空石』の調査に赴いていたティナ。彼女はその調査に並行して、特定の状況で使用する魔導機やその兵装の試験を行っていた。

と、そんな最中に巨人種と言われる魔物の群れとの戦闘になりラウルやアルを筆頭にした魔導機の部隊による戦闘が起きていたわけであるが、それについては問題なく終了していた。


「ふむ……ま、十分に慣れたパイロット達じゃ。問題は起きまいか」


 アル達の戦いを見ながら、ティナは一つ頷いた。とりあえず問題が起きる要因は見受けられず、周囲を偵察している小型艇からの報告ではこの戦闘の余波で魔物が接近しているという事も無いらしい。

であれば、この試験が終了すると同時に艦隊を元の位置に戻しても大丈夫だろう。と、そんな事を考えている所に、報告が入ってきた。


「少佐。地中に放ったドローンが所定の位置に到達しました」

「む? おぉ、そうか。では、結果を表示させよ」

「はい」


 ティナの指示を受けて、モニターに地中に潜行させたドローンからの調査結果が表示される。こちらはカイトの側とは違い大きさに制限は無いし、ドローンには小型の魔導炉も積んである。大きさの問題で検査機は小型と言って良いが、それでもカイトの持つ手持ち式に比べれば数倍の検出範囲があった。


「ふむ……やはり一帯には『飛空石』が多いのう」


 元々『飛空石』の層に向けてドローンを放っているのだ。表示された結果を見てもティナはそれを当然と考えていた。とはいえ、だからといって何もしないというわけではない。


「とりあえず手頃なサンプルを一つ回収しておくか」


 地中数十キロの『飛空石』というのは存在は知られているものの、滅多な事で地中にある『飛空石』のサンプルは手に入れられない。そもそも技術的な問題からこの領域にまで試料を取りに行けないのだ。ティナとて三百年前当時は殆ど手に入れられた事はなかった。

 生のサンプルが手に入れられるのなら、手に入れておきたい所だった。というわけで、ティナはドローンを操作して手頃な『飛空石』のサンプルを入手するべく動く事にする。どうせ『時空石』を探す為にはドローンを動かす必要がある。なので行き掛けの駄賃、という所でもあった。


「……よし。これで良いじゃろう」


 ティナが目をつけたのは、こぶし大程の『飛空石』だ。それをドローンに取り付けたマニピュレータを操って格納部に格納する。

 なお、この格納部には特殊な素材を使用しているらしい。『飛空石』は性質として重力を低減させる。近くにある魔導炉と反応してドローンの自重を変化させ、身動きを取れなくしてしまう可能性があった。というわけで、格納庫には周囲の魔力を遮蔽させる素材を使っていたとの事であった。


「さて……これでここらの『飛空石』のサンプルは入手出来たのう。次は、目的の『時空石(あれ)』じゃが……」


 カイトからの通信によると、入手難易度は時乃が出てきて力を貸すレベルの難易度らしい。まず間違いなく簡単に見付かるとは思えない。とはいえ、それはわかっていたのでドローンは何機も作って今まで色々な所に投下し、オートで捜索させていた。

 今回もその一つというわけだ。それならなぜ『飛空石』のサンプルまでここで手に入れているのか、というと場所による差が無いか調べたいとの事であった。そこに埋まっている事はわかっていても、場所によって性質に差があるかは実際に確認しない事には分からない。

 であればこれも必要な事だと言えるだろう。なお、流石にこれらを逐一今回の遠征で回収するのは手間なので、『飛空石』しか見付からなかったドローンは別途回収の部隊を派遣する事になっている。


「まぁ、すぐに見付かるわけもあるまいな」


 そんな簡単に見付かれば良いが、それはいくらティナといえども高望みだと理解していた。故に彼女はドローンの操作をオートに切り替えると、椅子に深く腰掛けた。と、そんなドローンの検査を一通り終えた所で、再び報告が入ってきた。


「少佐。戦闘が終了しました」

「む……そうか。では艦隊を元の位置に戻し、引き続き訓練を再開せよ」

「了解です」


 後は待つだけ。ティナはそう判断すると、再び訓練の再開を命ずる。そうして、彼女は彼女で更に何日か色々な所で地質の調査や魔導機の試験を行いながら、過ごす事になる。




 ティナが地質調査の名目で艦隊を率いてマクスウェルを出発しておよそ一週間。カイトが丁度『時空石』を見付けた日の事だ。ティナの方では数十の地点にドローンを放ち、後は結果を待つだけになっていた。というわけで、艦隊はすでに帰還の途上だった。そんな飛空艇の中で、ティナは僅かに苦い顔だった。


「ふむ……まぁ、滅多に見付からぬとはわかっておったが」


 今回ティナが投下ポイントとして見繕ったのは、今までの地質調査で比較的『飛空石』の層が浅い所にあるとされていた場所だ。あまりに深いと深いで信号が届かなくなってしまう可能性があったし、魔物との遭遇の危険性が高くなる。現にいくつかのドローンは魔物によって破壊されてしまっており、再度調査の為のドローンを送るか悩んでいる所だった。


「ふむ……」


 現在稼働しているドローンの数――あくまでも現時点で稼働している数で用意している数は更に多い――はおよそ60機。厳密では無いが延べ時間としておよそ一万時間程の調査を行わせているわけであるが、結果は芳しくない。延べ面積としては日本の国土面積の半分ぐらいは調べ回ったと言って良いだろう。それでも、見付からないのだ。苦い顔も仕方がない。


「より深い地層にある『飛空石』の層にあると考えるべきなのやもしれんのう……」


 浅い層をこれだけ探し回って見付からないのだ。となると普通に考えられるのは存在していない、という事であるが、カイトというか時乃曰く、推理としては間違っていないという事だ。にも関わらず見付からないという事は、探している場所が悪いという事だ。


「むぅ……これ以上地下となると今のドローンでは対応出来んのじゃが……」


 今回用意しているドローンの大きさはおよそ1メートル程。形状としては長方形で、新幹線のおもちゃを少し巨大にした様な感じだ。これが現在の彼女が様々な機能をもたせた上で小型化出来る限界の大きさだった。これ以上の性能を持たせるとなると、いくら彼女であっても大型化せざるを得なかった。


「が、そうなると今度は魔物に見付かる可能性が高くなるしのう……難しい話じゃ……」


 見付からない為には小型化するしかないが、そうすると今度は信号が届かなくなってアウトだ。ドローンが進む場所は地下。常に遮蔽物に覆われていると言って過言ではない。故に外よりも遥かに信号は届きにくい。そればかりは、いくら魔術を使っても避けられない事だった。

 であれば大型化して出力を上げて対応するしかないわけであるが、そうなったらそうなったでティナが述べた通り魔物に見付かりやすくなり、というわけである。故に彼女の顔は悩ましげだった。


「むぅ……」


 どうしたものか。結論から言えば最終的にはカイトの方の調査結果を待つしかないわけであるが、もしあちらでも状況が芳しくないのであればその次を考える必要がある。

 であれば、今から考えておいても損はなかった。と、そんな風に次に向けての対処を考えていたティナであったが、彼女が放った数十のドローンの一機から反応が返ってきた。


「む?」


 実は今回用意したドローンが反応する様にセットしたのは、『時空石』だけではない。どうせこんな地中深くにまで行く事は稀なのだ。せっかくなので、とティナはアイギス達の様な数万年を経ている魔石の様に滅多な事では手に入らない物があれば反応する様にセットしていた。

 そちらについては流石に日本の国土面積の半分程度を探し回れば数個見付かっているとの事で、彼女もそれかと思って結果を表示させた。が、そうして結果を見て彼女は思わず目を見開いた。


「……これは……」


 見たことのない反応。ドローンの送ってきた報告はそれだ。それに、ティナは真剣な表情を浮かべる。これは『時空石』の反応である可能性は非常に高かった。

 というのも、彼女らからしてみれば『時空石』とは見たこともない物質だ。故にサンプル一つ存在せず、データは何一つ存在していない。となると、検査機に表出される情報としては未知となるのが正しいのである。


「……艦長。余じゃ。ドローンの一つより反応があった。そちらへ向かえ。座標データは今よりそちらに送る」

『了解です。艦隊を座標の場所に向かわせます』


 ティナの連絡を受けて、飛空艇の艦長が即座に舵を取る。これが何かはまだ分からないが、可能性が高い以上回収する必要があった。そうして、艦隊はその日の夕方にはその目的の場所へと到着する。


「ここらの筈じゃが……」


 飛空艇を降りて地面に降り立ったティナは腕に装着したウェアラブルデバイスを使い、地表付近まで移動させたドローンを操作する。そうして、そんな彼女の指示を受けたドローンが地表に姿を現した。


「よし」


 やはり地中を進んでいたからか所々に細かな傷が見受けられたものの、小型であった事もあり魔物に見付からなかった事で目立った傷は見受けられない。内部も無事と考えて良いだろう。

 というわけで、彼女はドローンを回収すると再び艦隊をマクダウェルへと発進させる。と、そうしてドローンを手に自室に戻る道中、今回こちらの補佐に来ていたアイギスより報告が入った。


『マザー』

「ん? なんじゃ」

『マスターより連絡が入っていますよー』

「む? おぉ、少し時間を過ぎておったか」


 当たり前の事であるが、どちらも同じ物を探している以上適時連絡は取り合っている。が、カイトは基地に居ない時間の方が多いわけで、彼の基地への帰還の時間に合わせて連絡を取り合う様にしていた。今回ドローンを回収する為に外に出ていたら、予定の時間が少し過ぎてしまっていたらしい。

 とはいえ、その彼が連絡を送ってきたという事は彼ももう基地に戻ったという事だ。こちらから折り返し連絡を送っても問題はないだろう。というわけで、ティナはドローンをアイギスに預けると飛空艇の通信室へ入る。


「カイト。すまぬな。こちらで少々進展があり、そちらに対処しておったら取れなんだ」

『ああ、アイギスから聞いてる。ドローンから気になる反応があった、って?』

「うむ。まだ中を見ておらぬのではっきりとした所は言えぬが、可能性は高かろう」

『そうか。実はこっちも丁度見付けられてな』

「何?」


 ほぼ同時か。ティナは偶然の一致に僅かに目を見開いた。が、少し考えてこれもあり得ると思い直した。


「いや、不思議はあるまいか」

『まぁな。オレの側は時乃の支援が入っている。あれが無ければ今もまだ調査中だったろうぜ』


 そもそもカイトの持つ検査機の性能は時乃の手による改造で数倍に引き上げられている。つまり、当初の見込みに反して調査は数倍のペースで進んでいたのだ。

 時として地脈の影響で調査出来ない時間がある向こうの事を考えれば、偶然一致したと考えても良かった。と、そんなわけで笑うカイトがティナへと問いかける。


『で、とりあえず二つ見付かったわけだが……そっちはどれぐらいで帰還出来るんだ?』

「こちらはおそらく今夜には帰還できよう。帰還の途上で反応があってのう。少し横道に逸れた」

『そうか……こっちは明日の朝出立だから、明後日の昼には帰還出来る。それまでに試験の準備を整えておいてくれ』

「うむ」


 『時空石』は現代のエネフィアにとって未知の物質と言って良い。故に確認には皇帝レオンハルトよりの勅令で万全を期して行う事になっており、カイトが立ち会えと命ぜられていた。

 彼なら何が起きても大精霊達の助力があり対処出来るだろう、という判断だったし、これについてはティナも同意した。事実として、彼なら時乃の力で万が一何かが起きても対応が出来る。考えられる危険性を考えれば、この程度は妥当だという事だった。というわけで、ティナはその日の夜には帰還して、明後日のカイトの帰還に備えて準備を始める事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1548話『地球からのメッセージ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ