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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1546話 地球からのメッセージ ――魔導機達の戦い――

 カイトとはまた別に『時空石』を探す為、マクダウェル公爵軍の調査隊として行動をしていたティナ。彼女はドローンの行動を待つ待ち時間を利用して実地にて魔導機と半魔導機の各種の試験運用を行う事にしていた。というわけでとある半魔導機の試験を行っていたわけであるが、その最中に巨人種と言われる巨大な魔物の群れによる襲撃を受けていた。それを受けてティナはこれを実戦に即した訓練として活用する事とし、アルはその指示を受けてカヤドの操る試作機の護衛に当たる事になっていた。


『さて……アルフォンス少尉』

「なんでしょうか」


 ラウルからの通信に、アルが問いかける。基本的に現状、ラウルとマイの二人はカイトの直轄の兵士だ。なのでカイトと共に最初期の魔導機においてテスト・パイロットを務めたアルやリィルとは随分と前から面識があった。とはいえ、やはり軍では階級があるわけで、年齢も相まってアルとリィルは敬語を使っていた。


『君はとりあえずあの『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』を頼む。後でこいつはなんとかするけど、その前に周囲の『石巨人(ストーン・ギガンテス)』を何とかしておかないと投石で護衛に問題が出る』

「了解」


 妥当な判断だな。ラウルの指示に、アルはそう思う。やはりこの巨人種の集団で一番危険なのは『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』と言って良い。魔導機や半魔導機であれば、『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の討伐は特に苦労する話ではない。

 元々巨人種の様な巨大な相手との戦いを念頭に置いて開発されている大型魔導鎧の系統において、これは練習相手とも言える相手だ。金属で出来た鎧と、石の巨人だ。自分達の方が強く、テスト・パイロット達からしてみれば年に二桁単位で討伐している相手で、これに手抜かりがあれば始末書ものだ。

 が、やはり身体が金属で出来ている『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』は厄介だ。金属と金属。肉体の面での差は殆どない。それに要らぬちょっかいを出されるのは避けたい所だ。なので基本、こちらが一緒に現れた時はよほど兵装が整っていなければ最後に確実に討伐するというのが、大型魔導鎧を駆る者達の基本だった。


『頼む……で、マイちゃん。そっちアルフォンスくんの援護お願い。確か今回も双銃持ってきてるんでしょ?』

『ええ。基本兵装だからね』


 基本的に今使っている魔導機は二人が皇都の中央研究所で開発されていた試作大型魔導鎧の兵装を流用している。現状彼らはカイトの正体を知ったという事でカイトの直轄に配属されている――表向きは<<死魔将(しましょう)>>相手に足止めを成し遂げたという事での特殊部隊への栄転――が、基本的な立場は変わらない。

 今は近衛兵によって構築される魔導機の部隊のテスト・パイロットという立ち位置に近かった。なので今でも古巣から武器の試験を頼まれたりしていたのである。と言っても、やはり立場や周囲の差から兵装については格段にパワーアップしている。なので双銃と言っても性能は段違いだった。


「じゃ、お願いねー……さて」


 アルとマイの二人に指示を与えた――その前にリィルには指示を出している――ラウルは改めて、敵影を確認する。まだ接敵には少しの時間がある。作戦を考える時間は十分にあると考えて良いだろう。

 これで何時もであれば肩部に装着したランチャーで砲撃したい所であるが、今回は訓練も兼ねている。超長距離からの狙撃は禁止だ。無論、肩部のランチャーを使ってはならないという事ではないので、これで先制攻撃を仕掛けるつもりではある。


(マイちゃんの兵装は……)


 ラウルは飛空艇より送られてきた各機体の情報を確認する。カヤドも言っていたが、基本的な戦闘については彼が指示する事になっている。であれば、まずは各機体の武装を確認する必要があった。


(さっき言った魔銃が二つ。ただし皇都の時代より連射力と攻撃力は割増。近接兵装は制式採用の片手剣。うん。やっぱり正解か)


 マイの機体の攻撃力はこの護衛任務を請け負った四機の中で一番低い。ラウルはそう判断すると、先の己の判断が適切だったと自分で頷く。そうしてマイの兵装を確認した彼は引き続き、リィルの兵装の確認を行う事にする。


(で、リィルちゃんの兵装は……まずは見てわかる槍。制式採用のアップグレード版)


 リィルの機体もワンオフで調整されている。なので基礎スペックとしてはラウル自身が乗る機体より一段程高いスペックと言える。その彼女が持つのは、真紅にカスタマイズされた槍だ。彼女の意匠に合わせたと言える。


(それ以外は制式採用の魔銃だけだけど……各種のバーニアやスラスターは増設。機動力は高い。アルフォンスくんとは対照的と言えるかな)


 ラウルはリィルの魔導機を見ながら、横目でアルの機体を流し見る。リィルの機体が軽装甲だとするのなら、彼の機体は重装甲だ。防御主体と言って良い。その分機動性では一番低いが、出力は高い。『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』の足止めを彼に頼んだのは正解だろう。

 なお、ではラウルとマイの二人の機体はどうか、と言われるとこれについては一般的な量産モデルと言って良い。無論、まだまだ魔導機が量産に漕ぎ着けられていない事を考えればほぼ専用機に近いカスタマイズがされているが、スペックとしては量産機をベースとしている。敢えて言えば先行量産型という所だろう。量産に向けた最後の試作機を使っている形だ。


「さて……リィルちゃん。こっち、左側やるから右側お願い」

『了解です』


 ラウルはリィルの方を向いて一つ頷くと、続けて手振りを交えながら左側の二体に向けて自分が対処する事を告げる。彼の魔銃はライフル型。皇都の研究所に所属していた時代からの馴染みとなるグリップ底部にグレネードを装着している。これなら、『石巨人(ストーン・ギガンテス)』を何とか出来る。

 更には肩部のランチャーも連射力はないが威力、射程共に申し分ない。更には連射力を重視すれば、牽制も出来る。と、そんな風にこちらの戦力を勘案していた彼へと、アルが提案する。


『中尉。初弾はそちらにおまかせして良いですか?』

「ああ。そっちはその後に続ける俺の援護に合わせて敵に突撃してくれ。で、距離を取らせてくれ。流石にあいつに邪魔されちゃ面倒くさい。その後をマイちゃんが続く形で頼む」

『了解です』

『あいさー』


 アルとマイの二人がラウルの指示に了承を示す。そうして少し待つと、敵の集団が交戦可能区域へとたどり着いた。


「よし……」


 現状、この距離で攻撃が可能なのはラウルの機体の肩部ランチャーのみだ。故に彼はしっかりと地面を踏みしめると、反動で機体が動かない様にしっかりと固定する。せっかく相手の射程外から一発撃ち込めるのだ。それを無駄にする必要はない。


「……」


 ラウルは周辺に待機する小型艇から送られてくる観測を下に、肩部ランチャーを微修正していく。相対距離はおよそ3キロ。全速力で駆け抜ければあっという間の距離だ。が、距離がある事は変わりがない。故に攻撃が届かないと思っている敵はまだ速度を上げておらず、こちらから一方的に攻撃を叩き込める。そうして、彼は照準が合った事を示すアラートが鳴り響いたと同時に、肩部ランチャーの引き金を引いた。


「よし! 一体撃破! アルフォンスくん!」

『はい!』


 ラウルの声掛けを受けて、アルが一気に飛び出した。それに対して長距離による狙撃を受けて僅かな困惑を露わにした魔物達であったが、即座に気を取り直した様子だ。どこからともなく巨大な岩石を生み出して、アルへと投ずる。


「そうはさせるかっての!」


 そんな投石を見て、ラウルは即座に肩部ランチャーの設定を変更して連射モードにすると、投じられた巨岩に向けて魔弾を連射する。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。とりあえずアルに直撃しなければ良い。よしんば打ち砕けず破片が直撃したとて、魔導機には問題がない。と、そんなアルの突撃に続いて、マイが飛翔する。


『こっちにも当てないでよ!』

「わかってる! リィルちゃん、そっちもお願いねー!」

『了解です!』


 マイの軽口に応じたラウルの声掛けを受けて、最後にリィルが一気に突撃を仕掛ける。と、彼女の突撃とほぼ同時に、最初に突撃したアルの魔導機が『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』へと突撃し、僅かな押し合いが始まった。


『ぐっ!』


 やはり上位種という所だろう。『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』の力は最大限の勢いが乗った魔導機の突撃を押し留めていた。が、やはりここは地面の上。僅かに滑ったのをきっかけとして、一気に押し流されていく。

 そうして十分に『石巨人(ストーン・ギガンテス)』との距離が取れた所で、アルは掴んでいた『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』を解き放った。そこに、アルの後ろを飛翔したマイが双銃で牽制を仕掛け、その場へ足止めする。


「よし」


 これで敵を分断出来た。そう判断したラウルは一つ頷くと、『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の群れとしっかりと確認する。こちらの内の一体はすでに彼の初弾により撃破されている。故に残るは三体のみ。その三体のど真ん中に、リィルの駆る魔導機が降り立っていた。彼女の力量と専用にカスタマイズされた魔導機、敵の戦闘力等を複合に鑑みれば三対一でも問題なく勝てるだろう。

 が、これが実戦を想定した訓練である以上、なるべくはこちらが数の利を取るべきだし、それが不可能なら最低でも一対一に持ち込むべきだ。

 しかし現状は最初からこちらの方が数が少なく、一体面倒な敵が混じっていたという状況がある。なら、彼自身もこの場を離れる必要があった。本来一機はカヤドの支援に残るべきだが、そちらの方が悪手となるなら出るべきだろう。


「隊長! 少し離れます! 索敵と通信は常にオンにしておいてくださいよ!」

『わかっている。伊達にお前の軍歴以上にテスト・パイロットはしていない』


 今回は敵が敵だ。遠距離からの攻撃は仕掛けられる事はないが、それでも油断して良いわけではない。というわけでラウルはそう言うと、速攻を仕掛けるべく飛翔機に火を入れる。そうして、あっという間に『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の群れへと肉薄すると、そのままの勢いでライフル型の魔銃を手にしてグリップを変形。グレネードを投射する。


「よし」


 グレネードの命中で上がった爆煙を見ながら、ラウルは即座に魔銃を腰のコネクタに接続して締結させると、右腕に内蔵されているワイヤーフックを発射する。

 そうしてグレネードの爆発で脆くなった部位にフックを食い込ませ『石巨人(ストーン・ギガンテス)』を確保すると、そのまま飛翔機の出力を全開にして『石巨人(ストーン・ギガンテス)』を持ち上げた。


「リィルちゃん! 後はよろしく! こいつ仕留め次第、援護する!」

『了解!』


 『石巨人(ストーン・ギガンテス)』に二対一なら、リィルは余裕で勝ちを得られる。ラウルはそう判断すると、確保した『石巨人(ストーン・ギガンテス)』と共に高速でその場を離れる。彼女の邪魔にならない様にしたのである。そうしてラウルは少し離れた所でフックを振り回し、遠心力を利用して『石巨人(ストーン・ギガンテス)』を地面へと叩きつけた。


「冥土の土産だ! くれてやるよ!」


 地面にめり込んだ『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の胴体部分に入っている亀裂に向けて、ラウルは手榴弾を叩き込む。そうして更にそれを踏み抜く様にしてめり込ませると、飛翔機を吹かして一気に飛び上がる。そして、数秒後。起き上がろうとした『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の胴体に閃光が迸り、『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の内部から爆発が起きた。


「よし。じゃあ、援護するか」


 これで『石巨人(ストーン・ギガンテス)』は二体撃破。ラウルは一つ頷くと、カヤドの下へと戻りながら肩部ランチャーを起動させる。確かに余裕で勝てるが、援護があれば更に盤石で勝てる。そしてまだこの後には『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』も残っているのだ。手早く片付けるべきだろう。


「隊長、戻りました」

『了解だ。検査状況はおよそ半分を終了した』

「了解です」


 カヤドからの報告に、ラウルは一つ頷いて再びしっかりと地面を踏みしめる。そうして、彼はしっかりと狙い定めて『石巨人(ストーン・ギガンテス)』へと砲撃を開始する。


「よし」


 命中した。確かに初弾とは違いチャージが十分ではないので十分な威力は無いが、それでも体幹を崩すぐらいの効果はあった。そしてそれで十分だ。その瞬間を狙い定めて、リィルが上空から一気に降下して槍を敵に突き立て、撃破した。


「ここまでくれば、後は問題ないな」


 残る敵は二体だけだ。ラウルは半数以上を撃破して、僅かに肩の力を抜く。油断して良いわけではないが、『石巨人(ストーン・ギガンテス)』の最後の一体も二対一でやれば余裕で勝てる。そして流石に四機の魔導機なら『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』も楽勝と言い切れた。そうして、ラウルはそのままこの場を動かず味方の支援を行いながら、四機で残る敵を全て討伐する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1547話『地球からのメッセージ』

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