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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1545話 地球からのメッセージ ――もう一方――

 場所の特異性から地脈の影響以外の妨害を受ける事なく作業を進めていたカイトであるが、彼はおよそ一週間程の間で何とか目的となる『時空石』を手に入れる事に成功していた。

 と、そんな彼の一方、『飛空石』の地層の付近にて『時空石』を探していたティナはというと、こちらは一転して魔物からの妨害を受けながら調査を続けていた。と言っても、彼女の側は軍としての行動をしている。なので彼女が討伐に赴く事はなかった。


「少佐。魔物の群れの討伐、終了致しました」

「うむ」


 軍の士官からの報告に、ティナが一つ頷いた。今回、ティナは冒険部からの出向ではなくソフィーティア少佐として動いていた。こちらに来れるのは皇帝レオンハルトの命令によりティナのみとされていたし、これは誰もが知っている。

 というわけでわざわざ正体を偽装して逐一ティナとしてクズハらを迂回して命令を送るより、予め軍の少佐として彼女らより命令を受ける形で動いた方が楽で良かった。少佐だ。調査隊を一つ指揮するには十分過ぎる地位と言って良いだろう。それに何より、こうしておけば他にいくつかの事案について並列に処理する事が出来た。


「魔導機の部隊はどうじゃ?」

「はっ。報告によれば連携は問題なく取れているとの事です」

「うむ。では、動作の面での不具合については後に技術部宛に報告書を提出させよ」

「はっ」


 ティナの命令に、軍の士官は敬礼で応ずる。今回のティナの表向きの任務は領内における地質調査と、住民達から報告があった一部地域における魔物の討伐だ。

 それに魔導機と半魔導機の部隊の実地訓練をあわせて行わせる事にしたのである。更にはこれにはまた別の側面がある。ということで、彼女はそれについての確認を行わせる事にした。


「で、工作用の半魔導機について問題は?」

「問題無し。流れ弾も当たっておりません」

「よし。では、作業を再開させよ」

「はっ……各員、作業を再開せよ」


 ティナの指示を受けて、飛空艇に乗ったオペレーター達が指示を伝達する。そうして、戦闘用とはまた違う装備を装着した半魔導機に似た大型魔道鎧が動き出した。


「ふむ……」


 動きについては悪くはないか。ティナは自分が設計したわけではない大型魔導鎧が動くのを見て、一つ頷いた。当然であるが、軍の仕事とは戦うだけが能ではない。日本とて自衛隊は災害の発生があれば災害救助も行う。これはエネフィアでもそうだ。

 というわけで、今までも大型魔道鎧の中にはそういった災害時に使われる、例えば地球で言う所のショベルカーや削岩機の様な装備を持つ物もあった。

 ティナは魔導機や半魔導機向けに開発されていた装備や、それに特化した機体を試験させていたのである。丁度今回は調査がメインとなる。更にはその調査も専用のドローンを使うわけだ。とはいえ、その調査には時間が掛かる。その間何もすることがない、というのは色々と問題だろう。

 というわけで彼女はこれ幸いと実地における試験運用には丁度良い機会だろう、と申し出てカイトもゴーサインを出していたのである。というわけで、彼女の見守る前で特殊な検査機を腕に装着した個体が地面へと検査機の先を向ける。


「ソナー起動確認……後10秒でモニターに検査結果が表示されます」

「うむ」


 しばらくティナが待っていると、ブゥン、という音と共に半魔導機から送られてきた検査結果が艦橋のモニターに表示される。そうして、地中の状況が表示された。


「出力安定……飛空艇に搭載された検査機と情報の誤差を確認します」

「うむ。結果は横に表示せよ」

「はい」


 ティナの指示にオペレーター達は飛空艇に搭載されている検査機からの情報を下に、半魔導機の持つ検査機からの情報に誤差が無いかを調査していく。これは新規で開発された検査機だ。問題が無いかを確認する為には、すでに結果が正しいと判断されている検査機を下に確認するのが一番だった。


「ふむ……」


 表示された二つのデータを見比べて、ティナは僅かに眉をひそめる。やはりどうしても出力や持ち運べる大きさにしなければならない、という問題が付き纏う。

 なので探知出来る範囲は、飛空艇に搭載されている検査機の方が広かった。が、そこは問題ではない。そんな事はわかっている話だ。重要なのは戦闘時に使えるかどうか、という所であった。


「うむ。問題は無い。これなら、万が一魔物との戦闘が起きておっても問題なく調査できよう」

「了解です。では、詳細なデータを回収するべく、一旦帰還させますか?」

「ふむ……いや、その必要はない。次の訓練と検査に移らせる」


 オペレーターの提案に、ティナは一つ首を振って指示を出す。


「は……では、ドワーフ達に指示を出します」

「うむ。目標距離はまぁ、今回は試験という事もありそこまで深く設定する必要は無いじゃろう。およそ100メートル地下で良い」

「はい」


 ティナの続いての指示に、オペレーター達が次の行動の指示を出す。この訓練で何をしていたかというと、ドワーフ達の様に地中や山の中で暮らす者達の里に問題が出た時に対処する訓練だ。

 例えば彼らの土地に魔物の群れの襲撃があり、里への道が完全に崩落したと仮定する。となるとまず里の場所をしっかりと確認する必要があるだろう。これはそういった地中や洞窟の中を住居とする者達の救援を行う為の訓練、という所だった。

 もし相手が天竜であれば飛空艇を呑気にその場に留まらせて検査を、というのは中々に難しい。一応その為に小型の飛空艇や魔導鎧があったわけであるが、やはり飛空艇は大きい。守りにくい。

 その点、魔導機一機であれば小回りも利くし、魔導機数機で守りやすい。無論、その分出力は低下するので何時も何時でも魔導機を動かすというわけではないが、使い分けられるのは重要だろう。


「さて……どうかのう」


 飛空艇から地面へ向けて投下された小型のカプセルを見ながら、ティナは更に推移を見守る事にする。これについては元々開発されていたもので、敢えて言えば揚陸艇を更に改良した物と考えれば良い。

 収容人数としてはおよそ一個小隊程で、兵士が乗って地下へ救援に向かう為の物と考えれば良い。下部にはドリルが取り付けられており、それで掘り進むのである。今回はその訓練と共に半魔導機の持つ検査機で探す要救助者代わりとなって貰う為、出したのであった。


「少佐。所定の距離に到達しました」

「うむ。では、再び検査させよ」

「はい」


 ティナの指示を受け、再度半魔導機が動いていく。やる事は先程と一緒だ。と、そうして検査が行われている所に、また別の報告が入ってきた。


「少佐。周辺を巡回する小型艇より報告。巨人種五体がこちらに接近中との事です。詳細は現在確認中」

「む……」


 まぁ、何隻もの飛空艇が留まっているのだ。かなり目立つ。が、こういった事は広い所でないと試験がし難いし、そもそも軍としての訓練も含んでいる。なので戦闘はもとより、考慮に入れていた。というわけで、僅かに顔を顰めたティナは即座に指示を出した。


「巡回の小型艇は敵の詳細を確認の後、距離を取る様に命令を送れ。実戦に即した訓練を行う。データの観測を行う艦以外の艦は距離を取れ。護衛の魔導機は調査専用の半魔導機の護衛を行いつつ、敵の討伐を」


 ティナはどうやらこれを訓練とする事を決めたようだ。彼女の指示を受けて飛空艇の艦隊が移動を開始し、合わせて数機の魔導機が検査機を地面に付けている半魔導機の護衛に入るべく移動を開始する。その一機に、アルは居た。


「任務了解。これより半魔導機の護衛に入ります」


 アルはオペレーターから下された指示を復唱すると、自分用に調整された魔導機を動かす。基本的に彼はやはりヴァイスリッター家の次男という立場がある。

 なので彼には専用機が与えられており、肩の部分にはヴァイスリッター家の家紋が入れられていた。と、そんな彼の横にバーンシュタット家の家紋が入った機体が近付いてきた。


『アル。今、巡回の小型艇から情報が届きました。そちらに情報は?』

「ちょっと待って」


 リィルの問いかけに、アルは小型艇からの情報を頼りに魔導機の望遠機能を使って敵影を目視する。こちらに向かっているのは巨大な魔物の群れ。大半は『石巨人(ストーン・ギガンテス)』だ。その中に『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』という魔物が一体混じっていた。金属で出来た全長20メートル程の巨大な魔物だ。

 こちらも大きさとしてはさほど変わらないが、見てわかる通り防御力としては段違いと言って良いだろう。なお、鉄というが素材は鉄ではない。なので簡単に破壊出来るわけではなかった。


「……」


 一番厄介なのは、『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』だ。それを見ながら、アルは自らの武装を確認する。基本的に彼の専用機として調整されているこの魔導機の武装は彼当人と同じく、主兵装は片手剣と盾だ。それに合わせて制式採用されている魔銃を備えている。魔銃はアルとしては得意ではないが、大型魔導鎧を扱う上で扱い方は学ばされている。

 そんな兵装を見てアルが思ったのは、やはり総じて護衛機の中では防御力が高いという所だろう。今回、彼の任務は兵器の試験ではない。護衛だ。故に装備は内蔵式として制式採用されている物と、彼が使い慣れた片手剣と盾だけだ。攻めきるには些か心許なかった。


「確認したよ。『鉄巨人(アイアン・ギガンテス)』は中々に厄介かな。でも、問題はないよ。生身だと援護があれば倒せるし」

『そうですね……ラウル中尉。こちらは大丈夫ですが、そちらはどうですか?』

『おうおうー。マイちゃん。そっちは?』

『こっち、準備中ー』


 やはり魔導機の操縦であれば、この二人の方が慣れているという所だろう。リィルの問いかけに二人が気軽に答えていた。この四人が、今回の護衛任務を命ぜられていた。数であれば敵よりも少ないが、十分に勝てるだろう。

 なお、護衛対象の半魔導機は本来ならば軍の工作兵が搭乗する事になるが、今回は試験という事でテスト・パイロットとしてカヤドが乗り込んでいた。今回の様に戦闘があり得る可能性を鑑みて、今回の試験期間だけは万が一に対応出来るテスト・パイロットが乗る事になったらしい。というわけで、彼が今回の総指揮を取る事になっていた。


『各自。すでにわかっていると思うが本機は検査の最中、動く事が出来ない。戦闘に合わせて周囲の環境の変化を加味した試験を行う為、検査速度より防御に出力を回す。今までの検査状況を鑑みこれより五分、本機は一切動けなくなる。その間、護衛を行え』

「『『はっ!』』」


 カヤドの指示に、アルは承諾を示す。今まであれだけの速度で検査を終わらせられたのは、カヤドの言っている通り出力の全てを検査機に回せていたからだ。が、実戦ではそんな事はまず起こりえない。

 一応、今回敵となる巨人種達はよほどの亜種でも無ければ遠距離攻撃はしてこない――してきても精々投石程度で障壁で何とかなる――が、遠距離攻撃をしてくる想定で戦闘を行う事になったようだ。


『アルフォンス少尉とリィル少尉。両名は基本、ラウル中尉の指示に従え。ラウル。細かい指示は出せるな?』

『一応、上官ですからね』

『任せる。背後から支援は行うが、あまりあてにはするなよ』


 ラウルの返答にカヤドは一つ頷くと、基本的な戦闘については彼に任せる事にする。やはり機体が機体だ。搭載されている各種のセンサーについても戦闘用の機体より大きく劣っている。なので支援出来る所は支援するが、基本的にはラウルに任せるしかなかった。そうして、アル達は巨人種の群れとの戦いを開始する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1546話『地球からのメッセージ』

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