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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1543話 地球からのメッセージ ――精神世界にて――

 すいません。色々とあって投稿が遅れました。

 マクダウェル領東部はとある山中の中にある『第三番洞窟』。その奥深くから繋がる地脈へと向かい『時空石』の探索を行っていたカイトであるが、何のヒントも無しでは見付からないという事でユリィの助言を受けて時の大精霊である時乃よりアドバイスを貰う事になっていた。

 そうして得られたアドバイスによると、どうやらカイトの持ち込んだ装備ではよほど運が良くなければ百年掛かっても見付からないとの事であった。というわけで、彼は時乃の助言に従って一度『第三番洞窟』から脱出していた。


「と、いう感じだそうだ」

『お、おう……ま、まさかそこまでレアリティの高い物とは……』


 『第三番洞窟』を後にして洞窟前に設置されている秘密基地に戻ったカイトより報告を受けたティナは、その内容に思わず唖然となっていた。さすがの彼女も『時空石』がレッドベリルと同程度かそれ以上の希少性を有するとは想定していなかったらしい。

 いや、正確には想定以上だった、という所だろう。そもそも自分達が知らないのだから希少価値は高いだろうとは思っていたが、それでも想像していた以上だった、というわけだ。


『むぅ……これでは一歩進んで二歩下がるという所かもしれんのう』

「まぁなぁ……とりあえず、こっちは時乃から支援を貰える事になった。なのでどれだけ時間が掛かるかは分からんが、何とかはなると思う」

『ふむ……まぁ、これは悪い報せでもあり、良い報せでもあるか』

「ああ」


 ティナの指摘に対して、カイトも一つ頷いて同意を示した。そしてこれは確かにカイト、ひいては冒険部にとっては悲報と言うしかない事であるが、『時空石』の存在を教えられた各国からすれば胸を撫で下ろす事の出来る話だったからだ。


「少なくともこの『時空石』を使った犯罪は滅多な事では起きないだろうな」

『というより、これを軍事で使う事も無理じゃろ。さっすがの余もレッドベリル以上の希少性を有する物を見つけるのは困難じゃ……というか、出来たらもう出来ておるし』

「そらな」


 地球でも有数の希少性を有するレッドベリルを上回る希少価値かもしれない。それだけでどれだけ探すのが難しいか、わかろうものだ。


「まぁ、それはどうでも良いだろう。で、そっちはどうする?」

『ふむ……まぁ、環境調査については必要である事は違いあるまい。こちらについてはそのまま進める事にしよう。そちらとてすぐに見付かるとも限るまい?』

「ああ。一応、お前の魔道具に更に改修を加えてはくれるらしいが……そもそもそれでも存在するかどうかが分からない事にはどうしようもないからな」


 結局、最終的にはそこに行き着く。確かに時乃は探す事に対しては助力してやる、と言っているわけであるが、決して持ってきてやるとも在り処を教えてやるとも言っていない。甘くはあってもそこまで甘くはないのだ。少なくとも探しには行けるだろうが、探せるかどうかは、また別である。


『であれば、こちらでも引き続き探すのが良いじゃろう。こちらで先に見つかれば幸いじゃしのう』

「頼む。じゃあ、こちらも作業に戻る」


 とりあえず伝えるべき事は伝え終えた。カイトはそう判断して、通信を終わらせる。と、そんな彼の横に時乃が現れた。その手にはティナが作った探査用の魔道具があった。


「出来たぞ」

「サンキュ。何がどう変わったんだ?」

「ほれ」


 ぽん、と時乃は魔道具を起動させる。見た目そのものに変化はない。というより、起動してもても機能そのものに大した変化は見られなかった。


「何も違いは見えんが?」

「そりゃのう。単にこのグリップの部分に『時空石』を仕込んでおいただけじゃ。共鳴する様にした、という所よな」

「は?」

「くくく。そう言うても、よ。所詮はこれに仕込める程度の大きさ。主様の爪の半分の半分という程度の大きさで、敢えて言えば先に吾が言うた採算性が何とか取れる程度の大きさ、という所じゃろう」


 なるほど。人に出来る範囲で手を貸した、という所か。時乃の言葉の正確な所をカイトも理解する。


「まぁ、この上で更に上流に進み続けよ。かなりの難行にはなろう。が、主様が出来ぬとは思わぬ」

「難行ねぇ……」


 どうやら、面倒さは並外れたものになりそうだ。カイトはそう察してため息を吐いた。とはいえ、やらねばならない事は事実だ。というわけで、カイトは再び明日からの調査に備えてゆっくりと休養を取る事にするのだった。




 明けて翌日の朝。カイトは再び片道二時間程の道のりを通って地脈の上に戻っていた。が、そこで彼はシーヴと共に立ち止まる事になった。


「……」

「……あの」

「ああ、言わなくても良いですよ。流石に今は控えます」


 シーヴの問いかけにカイトは即座に首を振る。改めて言う事でもないが、星は生き物だ。故に地脈とは敢えて言えば星の血管の様なものだ。なのでどうしても流れは一定にはならない。というわけで、この日はどうやら流れが速い日だったらしい。


「はぁ……厄介だな」


 側面の退避場所ではなく、中盤の休憩地点にまで戻ったカイトは一つため息を吐いた。ここからどうなるかは、行ってみないと分からない。再度になるが、地脈の流れは生き物のようなのだ。

 一時間で治まる事もあれば、一週間待っても無理な事もある。とはいえ、現状それでは困る。というわけで、カイトは休憩に見せかけて己の精神世界に入り込む事にした。


「……というわけで、こっちに来たわけですが」

「なにー?」

「お前ら、人の精神世界だからって好き勝手やってんな……」


 小首を傾げたノームの問いかけにカイトが深い溜息を吐いた。と、そんな彼であるが、そこに居たもう一人の自分に対して半眼で問いかける。


「てか、お前も好きにさせるなよ」

「言うな。なんだかんだ、オレもこいつらには甘い」


 『もう一人のカイト』はカイトの苦言に僅かに苦笑する。何度か言われていたが、彼は基本的にはカイトの精神の奥底に眠っている。が、眠っているというのは実は語弊のある言い方だ。

 この様に実際は起きている。が、それが表に出てくる事はないので眠っていると言っているに過ぎない。常日頃は、ここで大精霊達と共に気ままに過ごしていた。


「まぁ、良いか……とりあえず」

「ああ」


 カイトの言葉に『もう一人のカイト』もまた頷くと、即座にその場で一体化する。ここは彼の内面だ。魂の中と言っても良い。なのでこの場でだけは一体化する事に何ら問題もない。というより、ここで何が起きていたかを知るには融合してしまった方が楽で良い。


「やれやれ……また色々としてくれて。まぁ、オレも言えた義理じゃないが……」

「も、申し訳ありません……」


 融合した事により記憶が継承されて、僅かな苦笑を浮かべたカイトに桜華が頭を下げる。基本的に大精霊達の世話は彼女に任せているわけであるが、『もう一人のカイト』の執り成しもあって掣肘はあまり意味はなかった。と、そんなカイトへとシルフィが告げる。


「でもさ。そもそも意味なくない?」

「何がだ?」

「ここ。そもそも確かに君の精神世界は精神世界だけどさー」

「厳密には違う」


 シルフィの言葉を引き継いで、ルナ――ここでだけは昼夜関係なく普通に話せるらしい――が明言する。それに、カイトもまたため息を吐いた。


「まぁ、そうと言えばそうなんだがな。が、オレの精神世界である事もまた事実だ」

「それも、そうなんだけどね。そもそも普通に考えて精神世界だから、って何でもかんでも当人の好き勝手に出来るわけがないし。そもそも桜華がここに入れるの、って可怪しいから。彼女、普通の使い魔だから。ここに顕現するのって可怪しいからねー」


 カイトの意思一つで現れたり消えたりする色々な物を見ながら、シルフィは桜華を見てため息を吐く。彼女が言及した通り、桜華は使い魔。それもルゥらとは違う普通の使い魔だ。

 故にカイトの意思一つで顕現するわけであるが、それでも普通はカイトの精神世界に顕現は出来ない。精神世界とは意識の中。敢えて言えば想像の中だ。想像の中に使い魔の顕現は出来ないのだ。これについてはルゥらも一緒だ。彼女らが話せているのは、カイトとは別個の魂を持つからと言える。

 こういった事が出来ているのは大精霊達だから、そしてカイトだからという事で納得されているだけだ。と、そんな所に空亜が姿を現した。


「何? 私達に感謝でもしてくれてる?」

「んー。感謝はしてるかな。実際、僕ら大精霊って普通には集まれないからねー」


 空亜の問いかけにシルフィは僅かに笑う。何度か彼女らから明言されていたが、大精霊達が意思ある存在として集まれる事は滅多にない。ここでのみ可能で、だからここに集まっているというのがカイトから語られている事だ。が、それにも色々と理論があるらしかった。と、更にそこに心愛が現れた。


「ボクと空亜で精神と空間の力を使ってここにボクらの生存が可能な空間を確保。ミコトがそこに物質を顕現。それでようやく、かな」

「そういう意味で言えば……時乃一人ここで何も貢献してない気が」

「なんじゃ」


 シルフィのツッコミに最初から居た一人である時乃が湯呑から口を離す。まぁ、こればかりは仕方がないといえば仕方がない。空間を司る空亜。精神・心を司る心愛。物質を司るミコトの三人はこの精神世界を形作る為にどうしても必須だ。

 この三人が力をあわせてカイトの精神世界を好き勝手に出来る様にしていたのである。なお、ミコトは漢字では(ミコト)と書くらしい。全ての物質を司るということは、全ての命を司るとも言い換えられるからだ。それ故、ミコトと名付けたらしかった。


「お主らに貢献しておらぬだけで主様には貢献しておる。ここで経時変化を出さねば主様自身が未来の主様と融合し、未来を知る事になりかねん」

「そだねー……というか、ミコト何してんのさ」

「さぁのう」


 シルフィの問いかけに時乃が首を振る。この場に居るのは、ミコトを除いた11人の大精霊だ。と、呼ばれたからか、何者かの気配がその場に現れた。


「……」

「おい。顕現が面倒だから、ってそのままで話さないでくれよ。ここだから良いが、外だと」

「危ない人確定だねー」


 カイトの言葉を引き継いで、シルフィが告げる。ミコトが司る物は万物全て。存在そのものと言っても良い。故にどこにでも存在出来るし、そもそも常時顕現している様なものでもあるらしい。まぁ、これは高位4人の大精霊全員に言える事ではある。

 が、ミコトは何かとものぐさと言って良いのだろう。顕現する事が稀といえば稀で、それどころか言葉を発する事も稀らしかった。と、そんなカイトの苦言を聞き、ミコトがその場に顕現する。

 具体的にはベッドと一緒に、だ。基本カイトの意思一つでなんでも生み出せるこの空間であるが、先にも言われていた通りそれはひとえに彼女の力があればこそだ。故に彼女なら自由自在にここで物質を生み出せた。なお、基本的にここで何かが必要になった場合は一度彼女を経由して、色々と生み出されているらしい。桜華は言ってしまえばその窓口のようなものだった。


「……面倒くさい。私の意思聞きたかったら耳澄ませば良い」

「おいおい。流石に大精霊ならぬ身にゃ、それは無理ってもんだろうに」

「面倒……人の権限もっと引き上げたい……」

「やめれ……で? 何してたんだ?」


 非常に面倒臭そうにベッドに寝転がり枕に顔を埋めたミコトに、カイトは肩を竦めながら問いかける。それに、ミコトがそのままの姿勢で答えた。


「ち……の……ち……た……」

「せめて枕から離れて言わんか」


 枕に阻まれて殆ど聞こえない声を聞いて、時乃が呆れ混じりに顔を強引に上げさせる。そうして、ミコトが再び口を開いた。


「……地脈の調査してた。というより、させてた」

「ん? 何かおかしな事でも起きてるのか?」

「そうじゃないとやらない」


 ぽすん、と再びミコトが枕に顔を埋める。させてた、というのは誰かというとフリオニールだ。彼が司るのが地脈。異常が出れば調べるのが仕事だった。なので大精霊として異常を検知して、彼に調査を命じたというわけなのだろう。


「瘤が出来てる。明日までは無理」

「なるほどね……」


 何度も言っているが、星は生き物だ。地脈に異常が出る事もある。というより、異常が出るからフリオニールの仕事がある。どうやらカイトが居る場所から近い所に異常が起きている、という事なのだろう。


「自然か? それとも意図的か?」

「自然。流石に神の権能でも復活もしてないのに地脈に瘤を創るのは却下」

「そか。なら、諦めよう」


 カイトが気になったのは邪神の復活による影響だ。が、ミコトはそれが無いと明言していた。ということは、カイトとしても諦めるしかない。というわけで、カイトは少しの間自らの精神世界に留まって、今日の調査は諦めて基地へと帰還する事になるのだった。

お読み頂きありがとうございました。

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