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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1538話 地球からのメッセージ ――改良案――

 地球から送られてきたメッセージと、そこに記されていた通信機の設計図。それの開発許可を得て開発に向けて動き出していた冒険部であるが、カイトもまたその作業に勤しんでいた。そんな中、彼は最重要の素材となる『時空石』の確保に向けて足となるバイクの受領をしていた。

 と、その最中。ティナからの報告により、かつてカイト達が調査した湖底の遺跡のサーバよりサルベージされた情報から、ルナリア文明における最新の通信機の設計図が入った事を知り、それを用いての通信機の改良を提案される。そうして提案を受けたわけであったが、そんなティナから提案されたのは通信機の改良の為に地球に居る彼の師の一人、スカサハを呼べという事であった。


『で、呆けておる様子じゃが、改めて言う。スカサハを呼べ。それが一番確実じゃ』

「まぁ、そりゃそうだろうけどさ……」


 確かに、スカサハならば自力でエネフィアまで転移出来る。が、呼ぶと面倒しか引き起こさないのが彼女だ。なにせカイトをして、ティステニアを上回ると言わしめる女傑である。その上でカイトが精神的に勝てない存在だ。色々な意味で非常に強いのであった。というわけで、渋るカイトへとティナが告げる。


『何より、改良案が出来ておるのにわざわざ作る必要もあるまい。資材の無駄じゃ』

「……はぁ。はいはい。わーりましたよ。呼べば良いんでしょ、呼べば」


 確かに、これからを考えれば『時空石』やその他の貴重な素材がどれだけ手に入るかは未知だ。特に『時空石』を使い回せるかは未知数と言わざるを得ない。そもそも必要量の確保が出来るかどうか以前に、一つでも確保出来るかも分からないのだ。なるべく試作する回数は減らしておきたい所ではあった。予め改修が可能なら、改修しておくべきだろう。


『うむ。それにアヤツがおれば更に改修が可能かもしれん。なるべく打てる手は打っておくべきじゃ』

「あいよ……とりあえず上に戻る」


 ティナの指摘は至極当然の事だ。なのでカイトもその提案を受け入れると、一度地下の研究設備から上に戻る事にする。ということで、そこでティナと合流するとカイトは影を生み出した。

 この影を用いての通信は時乃の力を応用している為、世界間で起きる時間差を無視出来る。今回カイト達が作ろうとしている通信機は言ってしまえば、これを魔道具として再現したものと言う所であった。


「あー……あー……こちら弟子。こちら弟子。応答可能なら応答どぞー」

『ん? ああ、バカ弟子二号か』


 浮かび上がった影を通して現れたカイトの映像を見て、スカサハが特に驚くでも無く一つ横柄に頷いた。と、そんな彼女であるが、やはりカイトが通信を取ってきたタイミングから通信機に関する内容だと理解していた様子だった。


『なんだ? まさか『時空石』が見付からんとでも言うか?』

「それもあったが……こちらのとある賢者に話を聞いて何とか出来そう、って結論は出た」

『ほぉ……まぁ、それについては任せる。それで、では何が問題だ?』

「ああ」


 スカサハの問いかけを受けてカイトは、改めてこちらの現状を語る事にする。そうして更にティナを交えて会話を行って、スカサハが一つ頷いた。


『なるほど。そういう理論が……ふむ……』


 やはり根本は魔術師という所なのだろう。ティナより提示された理論を見て、興味深げにスカサハは眉の根を付けて考えていた。と、そんなわけなのだが、次の瞬間にはカイトの真横に影が持ち上がり、中からスカサハが出てきた。


「うぉ!?」

「ふむ。論文をしっかり見せよ」

「これじゃ」

「……はぁ」


 お前ら普通に会話すんなよ。あっさりと異世界転移を成し遂げたスカサハと、それに特に疑問も無いティナに、カイトはため息を吐いた。はっきりと言うが、異世界転移なぞちょっと論文を見たいから、という理由で行使出来る魔術ではない。

 というより、簡単に出来るのなら冒険部はこんな苦労をしていない。伊達に難易度は魔法一歩手前と言われる魔術ではないのだ。が、この二人だと軽く思われるのだから、困ったものであった。


「ふむ……亜空間に信号を飛ばす……なるほど。これを使えば世界と世界の狭間での影響を無効化出来ような」

「うむ。とはいえ、その前の段階の双方向での通信をどうやって確立するか、という所でいくらか難しい話が出るが……」

「ふむ……」


 ティナの問題提起に、スカサハが僅かに思考する。ここらの問題点を話し合いたいが為、彼女を呼び出したのだ。と、そんなわけで彼女がしばらく後に口を開いた。


「確かお主ら以前、『導きの双玉』なる物を使わんかったか?」

「うむ」

「あれはどの様な理論で片方から片方に転移する?」

「ふむ……これは前回解析した際に得た推測に過ぎぬが、おそらくこの両者には何らかの繋がりが確保されておるのじゃろう。故に世界を越えてもその繋がりが確立されておったのだと推測される」


 ティナは以前にエネフィアより送ったメッセージボックス作製の際の事を思い出して、スカサハの疑問に答える。ここらは国家機密レベルの事であるが、スカサハはカイト陣営だ。別に明かした所で問題はない。と、そんな彼女がティナへと提起する。


「それと同じ事は出来んか?」

「ふむ……ルルの助力があれば、という所かのう」


 ルル。それはイクスフォスの妹にして、ティナの叔母。そして一族始まって以来の天才と言われる彼女だ。確かに彼女の助力があれば、『導きの双玉』以上の物を作れる可能性は高かった。と、そんな推測を交えたスカサハはその上で、と提唱する。


「であれば、それを利用して事前段階の通信を確保。別に常に使う必要も無いので、負担は少なかろう。技術的にもさほど難しくする必要はない。ここで必要なのはこの二つの通信機をリンクさせる機能よ」

「なるほど……確かに必要に応じて機能すれば良いだけじゃな……」


 スカサハの提起を受けて、ティナはなるほど、と頷いた。となると、幾つかの改修案が浮かんだらしい。


「ではまず必要な改修はこの『転移門(ゲート)』を応用した亜空間通信の確保と、この前段階となる通信の確保じゃな」

「うむ。ではこちらではあの天使長に当たりリンク機能を保有可能な小型通信機を作ろう」

「頼む。こちらでは更に解析と試験を続け、『転移門(ゲート)』を応用した通信技術の確立を進める」

「うむ」


 スカサハはティナの言葉に頷くと、早速とばかりに真紅の槍を取り出して地面を叩く。すると、それだけで地面から影が盛り上がって彼女がすっぽりと入れるぐらいの大きさになった。


「では、また来る」

「あいよー」

「うむ」


 言うだけ言うと飛び込んだスカサハにカイトが手を振り、更にティナが頷く。そうしてあっという間にスカサハは地球へと帰っていった。


「……で、一つ言うが」

「なんじゃ?」

「相変わらずぶっ飛んでんなー、あの姉貴……」


 笑うしか無いとはこの事だ。一応言うが、カイトとて彼女の助力を受けて自分が帰還した時より遥かに高度な異世界転移術を開発した。なので異世界転移に関して言えば彼とて簡単に出来る。が、さもちょっと出掛けてくる程度で出来るかと言われると、はっきりと言って首を横に振る。


「まぁのう。あれは多彩さに掛けては二つの世界一と言って良いかもしれん」

「姉貴、ガチチートキャラだしなぁ……というか、そもそも魔術師じゃなくて魔法使いだし……」

「それで言えば、余もお主も魔法使いは魔法使いじゃろ」

「まぁ、そうなんだがねぇ……」


 ティナの突っ込みにカイトは只々ため息を吐く。なお、スカサハが使った魔法は自身のオートリレイズとでも言う所だそうだ。大抵の怪我なら世界側の補佐により、自動で治癒されるらしい。

 それどころか普通は死ぬ様な一撃を受けても復活可能、という正真正銘のチートだった。しかも世界側を弄っている上、当人の強さも相まって生半可な力では傷一つ付かない。カイトでも殺すのは難しい、そしてそれに特攻の魔法を持つ自分ぐらいしか殺せない――封殺ならはティナなら可能との事――だろう、と言わしめる程だ。以前に中津国で戦ったダオセなぞ目でもない領域で不死身だった。


「いや、そりゃ良いか……何か揉め事は起きなかったし」


 兎にも角にも何も問題は起きなかったのだ。それならカイトとしても万々歳である。というわけで、彼は一つ胸を撫で下ろす。


「で、ティナ。色々と話し合っていた様子だが、色々決まったのか?」

「む? なんじゃ。聞いとらんかったのか」

「おう」


 ティナの問いかけにカイトは真顔ではっきりと頷いた。彼女とスカサハの議論なぞ、いくらそれなりには学力としても賢いと言われる彼でも聞きたくないらしい。

 中身が高度過ぎて理解が追いつかないからだ。というより、そもそも魔術師同士の高度な専門分野の会話に剣士がついて行ける道理がない。ついていく意味もない。必要な結論だけを受け取るのが、彼の役目だ。


「そもそもお前らの話なんぞ理解出来るか。右から左へ全部聞き流した」

「はぁ……まぁ、お主が理解する必要も無いので問題はないか。結論を言えばルルの助力を借りて、通信機を通信開始前の段階でリンク。その上で、信号の劣化が起きん様にしたという所じゃ」

「……とりあえずバージョンアップしたって所でよろし?」

「よろし」


 カイトの問いかけにティナは手っ取り早く頷いた。どうせこんな理論を知っていようと意味はない。この理論を知っておく必要があるのは技術者だけだ。というわけで、カイトはさらっと流す事にした。


「よし。で、何か必要な物は?」

「新規については無い。というより、余で何とか出来る」

「そうなのか?」


 ティナの断言にカイトは首を傾げる。あれだけ理解を放棄した話をしていたのだ。またやれどこかの霊峰の奥深くまで探しに行け、と言われると思っていたらしい。が、ここら彼も少し忘れている事があった。


「お主なぁ……かつての大戦において『転移門(ゲート)』を復元したのは誰じゃと思うておる。その理論に関しては、このエネフィアにおいては余こそが第一人者。粗方の理論は理解出来ておるよ。素材についても、復元の際に使った物を応用すれば良い。今ならあれの一段上の物を作ってみせよう」


 ティナは呆れながら、カイトへとかつての大戦において戦火を拡大させる最大の要員となった『転移門(ゲート)』技術の事を思い出させる。そもそもあれを復元したのは彼女その人だ。それがある程度の目処が立った所で何者かがティステニアを操ったのが、事の真相だ。

 そして事の真相を知った彼女は今更もう躊躇する意味はない、と封印していた『転移門(ゲート)』技術の研究を再開したらしい。である以上、彼女であれば何とか出来る可能性は高かった。


「それ故の申し出だったわけか」

「うむ。量産についてはプロジェクトチームに任せるが、今ここで作る程度なら余で可能じゃ。伊達に天才と言われておらぬ所を見せてやろう」

「そりゃ、頼もしい。それについてはお前に一任しよう」


 他ならぬ自らが最も信用する女が断言するのだ。であれば、カイトはそれを信じて許可を下ろすだけだ。


「うむ。ではこれについては余に任せよ」

「よし……じゃあ大まかには変更は無しか?」

「うむ。幾つかの回路の変更やそれに合わせての修正は必要となるが……それについては設計図の修正が必要。そしてそれについてはすでに思案出来ておる。後は向こうからスカサハが来るのを待ち、という所じゃろう」


 そもそもスカサハが帰った理由は、イクスフォスの妹にリンクさせるのに必要な魔道具を開発してもらう為だ。それが無い事には話が進まない。そしてそれに合わせて、設計図も改良しなければならないだろう。ということで、今は待ちとなるらしい。が、それに合わせてやらねばならない事もある。


「わかった。まぁ、あいつの事だからこっちに来るだろうが、もしお前の方に来たらオレは別行動中だと言っておいてくれ」

「うむ。余も余で『飛空石』の層の調査に向かわねばな」


 兎にも角にも、今は各々が各々で出来る事をする時だ。二人はそう同意すると、各々が各々の為すべき事を為すべく行動に入る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1539話『地球からのメッセージ』

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