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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1534話 地球からのメッセージ ――素材集め――

 地球より届けられたメッセージ。その中に収められていた通信機の設計図。これの取り扱いを巡りカイトは皇都にて公爵や大公、皇帝レオンハルト達との間で会議を行う事となる。その会議は今後地球との関わりを考える事になる非常に重要なものとなったが、それ故に通信機については製造の許可が下りる事となる。

 そうして通信機の製造許可を得たカイトは即座にマクダウェル領に戻る事にすると、飛空艇の中からクズハ達に指示を与えながら戻っていた。


「ああ。設計図の取り扱いは厳重に。ウチの金庫の中に原本は保管し、極秘資料と同等の扱いで決定した」

『かしこまりました。とはいえ、USB……でしたか? そちらについてはどうなさいますか?』

「現状、パソコンの流出は起きていない。気になるとすると、あいつら(死魔将達)だが……流石にあいつらの事を考慮するともう何も出来なくなる。そちらについては盗まれない様にウチの金庫に同様に保管する事で決定した」


 クズハの問いかけにカイトは昨夜の会議で決定した内容を伝達する。やはり地球で作られたとはいえ、高度な、それこそエネフィアの技術をも一部上回る理論を使っているのだ。下手な流出は避けるべきだろう、と判断されたのは当然の事だった。

 将来的にはこの設計図の取り扱いについては今後、大陸間会議で行われる事になるだろう。が、現状は天桜学園の保護を皇国がしているが故、一時的に皇国が保管する事になる。それ故、マクダウェル家での保管となるのであった。


「それで、クズハ。ティナからの報告は?」

『上がっております。お繋ぎしますか?』

「頼む」


 カイトがマクスウェルに居た段階で通信機と分かっても、やはりまだ詳細については解析中だった。なのでひとまず彼は皇都で取り扱いについてを話し合う事にしてティナに解析を任せていたのである。が、それも数日もあれば終わっていた。というわけで、通信機のシステムが切り替わり彼女へと繋がった。


『うむ。どうやら上手くいった様子じゃな』

「まぁ、何とかという所か。それで、解析についてはどうだ?」

『ふむ……』


 カイトの問いかけを受けたティナが僅かに苦い顔を浮かべる。どうやら、芳しくない様子だ。それに、カイトが問いかけた。


「何かあったか? 流石にウランやプルトニウムをもってこい、と言うとは思えんが……」

『流石にあれも言っておらんよ。流石にその発想が無いので魔導炉を作れ、と向こうでなら無理難題となる事を言う事はなく、という所ではあったが……いや、見る限りこれほどの素材をどうやって地球で集めたのやら、と気になる所ではあるが……』

「それは気にするな。姉貴だ、と思えば不思議と納得も出来る」


 ティナの疑問に対して、カイトはもうスカサハだから、という一言で割り切っていたようだ。彼をしてぶっ飛んだと言わせる万能型の戦士だ。気にするだけ無駄だったのだろう。と、それについてはティナも大凡同意出来るらしい。


『ま、そうじゃのう。それについては気にするだけ無駄は無駄じゃろう』

「だろ? で、それならそれで何が問題なんだ?」

『うむ……実は余も見たことも聞いたことも無い性質を示す素材が一つ含まれておってのう』

「ふむ……重要な素材か?」

『うむ。最も重要な素材よ』


 カイトの問いかけにティナははっきりとこれが重要である事を明言する。それに、カイトもまた僅かに顔を顰めた。


「お前で聞いたことがないのに、重要な素材か。どんな素材なんだ?」

『うむ……『時空石(じくうせき)』なる素材じゃ』

「? 確かに、オレも長くエネフィアに居て聞いた事がないな……」


 ティナの述べた素材の名に、カイトもまた僅かな困惑を露わにした。基本的にエネフィアと地球では地球の方が科学技術においては優れており、エネフィアの方が魔術関連技術について優れている。なのでこういった魔道具の製造に関する素材でもエネフィアの方が遥かに種類が多く、知られている物質も多い。だが、これはカイト達が聞いたことのない素材だった。が、だからといって知らないとは限らない。それは異世界、いや、世界と世界が違うが故の独特の事情があるからだ。


「名前が違うだけ、という可能性は? 確か地球の『飛空石』とこちらの『飛空石』は名前が一緒でも示す性質は異なっている、という事があっただろう?」

『うむ。無論、それは余も考えた。が、資料に示されておった特性を読んでも、該当する素材は知らなんだ』


 厄介だな。ティナの説明を聞きながら、カイトは内心でそう思う。この例に出た『飛空石』であるが、エネフィアでは重力を軽減させる石と言う事で説明されている。が、それに対して地球では同名の物は飛空する為の石となっている。

 確かにどちらも使い方次第では空を飛べるわけであるが、これは原理からすれば似て非なるものだ。世界と世界が違えばこういう事も起こり得た。カイトはそう考えたらしいし、ティナもそう考えたのだろうが詳細を見て違うと判断したそうだ。


「ふむ……どういう性質だ?」

『うむ。簡潔に言えば読んでその名の如く、時空間を歪める性質を持つそうじゃ』

「確かに、知らんな……いや、ちょっと待てよ……」


 ティナの言葉にカイトはそう言えば、と古い記憶を手繰る。実は彼はとある事情から周囲から隔絶され時間が狂った『影の国』にて二年程スカサハの師事を仰いでいた事があり、その中で聞いた事があったのだ。


「そういえば姉貴に一度聞いた事があるんだよ。『影の国』の隔離をどうやっているのか、って。その時に確か媒体を使っている、と聞いた事があったな……あれ、なんだったか……」

『ふむ……そういえば余はそもそも隔離されていた事も知らず、お主から聞くまで『影の国』はそういう所がある程度の認識でしかなかったからのう。そこらの話はしたことがなかったか。そも、余も隔絶が解かれた段階で関わったわけじゃからのう』

「だろうな。じゃないと、聞いた事はあったはずだし……えっと、なんだったか……」


 聞いたのは殆ど話半分という所で、カイトとしても本気で聞いていたわけではない。なので魔術で保管している記憶を呼び起こす事になっていた為、少し時間が掛かっていた様子だ。


「ああ、思い出した。確かに、あの時姉貴は『時空石』を使って周囲と隔離している、と言ってたな。それ故、外との時間に差が生まれてしまっている可能性は十分にあり得る、と言ってたんだったか」

『ふむ……確かにこの『時空石』が示す性質を鑑みれば、それは正しいと言えような』


 そもそも異空間という事で気にした事はなかったが、ティナも言われてみてその可能性はあるかもと思ったようだ。無論、これについては実際に確認するしか方法は無いが、その隔絶というのもカイトが入った事で起きた事件により解決済みだ。もはや調べる事は出来ない。それに、別に改めて調べる意味もない。というわけで、カイトは改めて話を戻した。


「まぁ、そこいらはどうでも良いか。とりあえず問題なのは」

『うむ……問題なのは』

「『『時空石』がエネフィアには無いかもしれない、という事』」


 二人は声をあわせて、同時に最大の問題を口にする。エネフィアでは有数の技術者であるティナが知らない素材。流石にこれがまだ帰還してすぐであれば彼女も新発見された素材という事で知らなくとも無理はない。が、すでに帰還して数十ヶ月が経過しているのだ。この時点で新発見の素材があるとは、到底思えなかった。ということは、である。エネフィアではまだ未知の素材という可能性が非常に高かった。それを理解して、カイトが盛大にため息を吐いた。


「はぁ……どうするかね。無いと厳しいか?」

『厳しい、というより無いと作れん。お主がいっそ時の大精霊様に申し出てくれるのであれば、問題は無いじゃろうがのう』

「やれやれ……完全に無いと話が進まない、という所か」

『うむ。無いと話は進められん。無論、それ以外にも幾つもの素材を集める必要はあろう』


 カイトの言葉に同意したティナは、更に問題点を羅列したリストを彼へと提示する。当たり前だが地球では地球で手に入る素材を使って作られている。なのでその素材の中には無い物も少なくない。

 例えばレアメタルやレアアースの類はエネフィアには殆ど無い。当たり前だがこういった素材の大半は人類が高度な半導体技術を手にしてから、必要となったものだ。その技術が無いエネフィアでは素材として存在していても使用用途が無い為、採掘もされていないのだ。大半が鉱脈さえ見付かっていないだろう。


「はぁ……面倒だな。まぁ、とりあえずレアアースやレアメタルの類は何とかなる……か?」

『まぁ、こちらは何とか出来る。ホタルもおるし、なにせマクダウェル領は広大かつ肥沃な大地。ドワーフ達の助力も借りれば探せはしよう。無論、それでも見付からぬ物はあるじゃろうが……』

「少なくとも、現時点でウラニウムとプルトニウムの鉱脈はウチの領内には存在しないからな」

『まぁの。ま、現時点で必要ともならんし、将来的にも必要となる未来は見えん』


 幸い魔導炉という原子炉より遥かに安全かつ効率的な発電機があるのだ。製造の為には些かではないレベルでの高度な魔術の知識が必要というという所が問題といえば問題であるが、それでも都市の需要を満たすには最適と言える。というわけで、今後も原子力発電を作る事はない。それに何より、今のエネフィアが原子力を手にするには後数百年は早い。


「そうだな……とりあえずそちらについては代用は可能そうか?」

『何とか、やってみると言うしかあるまい。それに向こうは科学技術を使ってやっておる。それを魔道具として再現するのは余の得手とする所。ま、これは余の腕の見せ所、としておこうか』

「それは期待しておこう」


 ティナの返答にカイトは一つ頷いて、とりあえずリスト化されている問題点については冒険部総出でなんとかしつつ、それでも何とかならない問題についてはティナの手を借りる事で対処する事を決める。が、ここが決まってもやはりどうしても片付かない問題があった。


「それで、だ……『時空石』はどうするかね」

『それ、のう……』


 やはり代用が出来る部分については何とかなる。が、この代用が出来ない上、見付かっていない素材についてはどうにもならない。というわけで、再び戻ってきたこの難題に二人は頭を悩ませる。


「確かホタルのデータベースにはなかったんだよな?」

『うむ。あの子のデータベースに搭載されておる情報から幾つかの新素材が見付かり、色々と製造しておるわけであるが……その中にも『時空石』と似た性質を示す素材はなかった』

「ふむ……そうだ。カナタは?」

『む。そう言えばそうじゃのう。あの子なら何か知っておる可能性は無くはない』


 カイトの指摘にティナが僅かに目を見開き、なるほど、と頷いた。ヴァールハイトの生活面の補佐をしていたコナタに対して、カナタは技術的な面で補佐をしていたという。彼女であれば現代から失われた素材として、知っている可能性はある。まだ来たばかりという事で、ティナの選択肢にはなかったのだろう。


『ふむ……とはいえ、そういう面であればシャルロットは確か研究所の所属じゃったか。』

「ああ。あいつ、ああ見えて学力だとかなり高いからな」

『ふむ……そういえばシャルの奴は今日から冥界じゃったか』

「あー……そういえばそうか」


 ティナの言葉で、カイトがシャルロットの予定を思い出す。幾らこちらに拠点を置いたからとて、冥界での仕事が無くなるわけではない。

 最低でも月に何度かは顔を出す――死神特権で冥界にはすぐに移動出来る――事にしており、カイトが皇都に行くのなら、と彼女は冥界に向かっていた――公的には依頼で遠征――のであった。が、それ故にすぐに聞けるわけではなかった。


『ふむ……流石に今お主が出ると問題か。わかった。それについては余が少し出向き、聞いておこう』

「頼む……それで無ければ、どうするかね……」


 通信を切断した後、カイトは椅子に深く腰掛けてため息を吐く。兎にも角にもこの『時空石』の入手だけは必須らしい。詳しい報告は帰還後に聞く事にしているが、それでも今から何かを考えておく必要があるだろう。そうして、カイトはそこらのもしもを考えながら飛空艇に乗ってマクスウェルへと帰還する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1535話『地球からのメッセージ』

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