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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第72章 繋がる兆し編

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第1531話 繋がる兆し

 シャルロットがオプロ遺跡から密かに持ち帰ったヴァールハイトの本当の遺言。カイトに向けて語られた遺言と最期の依頼を受け取った彼は、その情報の真偽を確かめるべくその日の内に行動を起こしていた。

 とはいえ、流石に現状で彼が動くわけにもいかない。なので一度この事を皇帝レオンハルトへと奏上し、進めていた作業の一環と偽装して魔石を持ち込ませて警備ゴーレムを検査させる事になった。

 そうして、全てが決まって数日。公爵邸地下のティナの研究室には、警備ゴーレムの内部から見付かったサンプルが持ち込まれていた。それは即座に検査が行われると、その翌日の朝に設定されていた会議にて詳細が報告される事になった。


『結論から言えば、これは確かに『振動石』……旧文明によれば『振動石(ヴァイヴ・ストーン)』とやらで間違いあるまい』


 自身の研究室から遠隔で会議に参加していたティナがはっきりとサンプルが『振動石(ヴァイヴ・ストーン)』である事を明言する。それに、皇帝レオンハルトが問いかけた。


『魔帝殿。では『振動石(ヴァイヴ・ストーン)』の鉱脈を知っているという可能性は如何ほどと思われる』

『かなり、高かろう。少なくとも人類の未来を憂いていた事は事実。これが嘘とは思いにくい』

『ふむ……』


 ティナの言葉に皇帝レオンハルトが眉間に深いシワを刻む。やはり一度騙されている以上、これも嘘ではと思いたくなるのは無理もない。

 が、これが本当であった場合、未採掘の『振動石(ヴァイヴ・ストーン)』の鉱脈が見付かるかもしれないのだ。現状『振動石(ヴァイヴ・ストーン)』が如何なるもので、どこに埋まっているかも分からない状況だ。戦いが近い今、下手をすると旧文明の研究記録より遥かに重要度は高いかもしれなかった。


『マクダウェル公。一つ、改めて問いかけたい』

「は……何でしょう」

『以前に貴公がレガドの情報提供にて得た未発見の遺跡。それの総数は如何ほどであったか』

「二桁は下りません」

『そうか』


 皇帝レオンハルトはカイトの返答に一つ頷く。別に彼も数を聞きたかったわけではない。敢えて言えばこれは合いの手を求めているに過ぎない。そしてその上で、真剣な目で問いかけた。


『……公よ。この未発見の遺跡のどこかに、子供達が居ると考えられるか?』

「……難しい質問です。無くはない、としか……」

『か……』


 『天使の子供達エンジェリック・チルドレン』の子供達がどこに運び込まれたかは、ヴァールハイトその人も知らないとの事だ。が、少なくともシャルロットはその存在を知らなかったという。であれば最終決戦には参加していないか、そこまで目立った交戦をしていない可能性は高い。

 であれば、一人ぐらい現在まで残っていても不思議はない。ヴァールハイトとしても全員が見付かるとは考えておらず、一人でも良いので見付けてくれ、というに過ぎなかった。


『……確か、そのヴァールハイトとやらが改造を施した子供の数は大凡100人という事だったな』

「はい。と言っても、それ以上の数が運び込まれたとの事ですが……」

『むぅ……酷い話だ』


 カイトの言葉を聞いた皇帝レオンハルトは沈痛なため息を吐いた。流石にこれには酸鼻を極めるとしか言えなかったらしい。なのでこの案件については彼も保護の方向でカイトと意見を一致させていた。後はその子供達の状況次第、という所だろう。そうして一度しかめっ面をした彼は首を振って、気を取り直した。


『いや、今はその様な事を言うべき時ではないな。女神よ。当時を生きた貴公らなら、何かを存じてはいられないか?』

「私は見ていないわ。でも、今私とお兄様の配下に思い当たる節がないか思い出させている所よ」

『ふむ……ありがとうございます』

「陛下。とりあえずは現在進んでいる調査を終わらせる事が肝要かと。その中で新たに情報が見付かる事もありましょう。もしやすると、彼の娘らの様にシェルターに避難してそのまま、という者が見付かるやもしれません」


 どうするべきか、と考える皇帝レオンハルトに対して、カイトが奏上する。兎にも角にも現状では情報が少なすぎる。が、幸いな事に今はかつてとは違いレガドが居たり、シャルロットが居たりする事もある。更にはカイトの縁を使えば神々に協力を願い出る事も出来るだろう。今までより飛躍的に精度の高い調査が出来ている。


『ふむ……』

「あれもこれもと進めていては、どちらも仕損じる事になりかねません。地球では二兎を追う者は一兎をも得ず、と言います。まずは足元を固め、その次として未調査の遺跡を調査。その中でもし見つかれば良し、見付からねば改めて考える方向で良いでしょう」

『……確かにそれはそうか。うむ。では、現在の調査についてはそのまま。が、やはり今回の一件を鑑みれば、未調査の遺跡については更に戦力を増強して臨むべきだろう。マクダウェル公。今回の一件、ユニオンからも全面的な協力が欲しい。少々、公からもユニオンに説得を頼んで貰える様に頼んで貰いたい』

「かしこまりました」


 やはりこれは依頼だ。皇国がこれと頼んだギルドの中には様々な理由から拒否された所も無くはない。が、ユニオンの後押しがあればそういった所も動いてくれる可能性はあった。今の所はこれで良いが、未知の遺跡の調査には彼らの手があればなお良い。

 それ故、カイトに頼んだというわけなのだろう。そうして、とりあえずはこのまま発見済みの遺跡については調査を続行させる事にして、これ以降についてはそれからとする事で今回の会議は終了する事になるのだった。




 さて、そんな朝一番の会議が終わって公爵邸を後にしたカイトは、ティナやシャルロットら参加していた関係者と共に冒険部ギルドホームへと戻っていた。が、そうして玄関に入った彼らを出迎えたのは、一つの騒動だった。


「……何があったんだ?」

「ああ、来た! おい、天音が来たぞ! 会長を通してやれ!」


 入るなり出来ていた人だかりを見て目を丸くしていたカイトであるが、そんな彼を見つけるなり誰かが声を上げる。と、そうして人だかりの中から桜が現れる。そんな彼女の顔は真剣で、何か重大な事が起きていたのだとカイトにも理解させた。


「何があったんだ?」

「はい……実はカイトくんが会議に参加している間に、学園の方から連絡が入ったんです。これが届いた、と」

「これ……?」


 桜が差し出したのは、一つの封筒だ。大きさは角2型。A4サイズの用紙が十分に入るサイズだ。分厚さはそこまでではない。ありふれた、どこにでもある封筒だ。が、これを見てカイトも目を見開いた。


「これは……ふむ……ティナ」

「あいよ」


 目を見開いたカイトであるが、真剣な目をして一度封筒の表紙に書かれていた文字を見るとそのままティナへと回す。そうして、彼女が魔眼を起動させた。


「……本物、と言ってよかろう。少なくとも魔術で偽装されている可能性はなさそうじゃ」

「そうか……」


 本物、と。となると、この表紙に張られた送り状は以前に自身がした事への意趣返しと考えれば良いのだろうな。カイトはそう判断し、一度だけ深呼吸をして逸る気持ちを抑えながら次の指示を出した。


「全員、気になるのはわかるが、一旦この場から移動してくれ。ここで集まっていると客を刺激する。一……いや、二時間後、気になる奴は食堂へ集合しろ……椿! 居るか!」

『はい、御主人様。こちらに』


 カイトの問いかけに椿が吹き抜けの上から頭を下げる。それに、カイトは些か不躾だが吹き抜けを一気に跳び上がった。


「ギルド全体に通達を。オレは公爵邸へ戻る。流石に皇国との話し合いが必要だ。合わせて、残留している上層部にはあちらに集合する様に指示を出せ。依頼で出ていた場合、一時間で帰還出来る距離であれば、よほどでない限りは緊急事態として帰還させろ。ルーファスとアリスに対しては、天桜学園側で緊急の用事が出来た、と伝えておいてくれ。まぁ、遠からずわかるだろうが……」

「かしこまりました」


 兎にも角にもこの案件は自身一人で結論を出して良い事ではない。そう判断したカイトは今後の事を考えて、公爵家での判断を行う事にしたようだ。そうして、カイトはたった今さっき出ていったはずの公爵邸へととんぼ返りに帰還する事にするのだった。




 カイトが公爵邸へととんぼ返りに戻ってすぐ。とりあえず彼は上層部の集合を待つ間に即座に皇帝レオンハルトへと報告を行っていた。

 幸い、今はまだ会議が終わってすぐだ。更にはこの会議がどれだけ長引くかは分からず、故に彼は午前中全て予定を空けていた。なのでカイトからの急ぎの用事という事もあってすぐに応対してくれた。


『なんと! まさか地球からと?』

「はい。中はまだ確認しておりませんが……今ならまだ陛下にご報告が可能だろう、と判断し取り急ぎ届いた事だけは報告させて頂きました」

『ふむ……そうか。吉事か凶事かは分からぬが、少なくとも届いた事は事実か』

「はい」


 先にも言っていたが、この中身はまだカイトも確認していない。というより、彼に取り次いで貰う間に確認しようと思っていたが、カイトの予想以上に取り次ぎが早く確認している暇がなかったのだ。

 この程度なら可能では、と思うわけだが、実際には彼は貴族だし相手は皇帝だ。戻るという事で着替えたわけで、身だしなみを整える必要が出てしまったのである。

 それ故、逆に皇帝を待たせるという本来ならあってはならない事が起きた――無論、これについてはカイトの立場上仕方がないので不問にされたが――程だった。


『ふむ……公よ。その中身の報告、どれぐらいで出来る』

「一時間もあれば。この分厚さです。中身次第という所ですが、報告だけでしたら十分です」

『ならば、その際にまた報告せよ。俺の方でも予定は空けておく。その後はその際に話し合う事にしよう』

「ありがとうございます」


 兎にも角にもこれで皇帝レオンハルトからの指示を仰げる。カイトは彼の言葉に頭を下げる。ここら、貴族社会の良い所と言える。普通なら幾つもの会議が必要な事でも、トップを動かせれば何とかなる事も多い。そして地球からの手紙だ。必然、それの通達についても皇国の指示を仰がねばならなかった。というわけで、取り急ぎ彼の予定を空けて貰う事に成功したカイトはそこで通信を終えると、改めて会議室の椅子に深く腰掛ける。


「さて……すまない。待たせたな。この服装についてはまぁ、目を瞑ってくれ」


 会議室の椅子に腰掛けたカイトは、とりあえず集まった面子へと謝罪を述べておく。と言っても流石にまだ全員は揃っていないし、出ている面子についても全員が帰還する、という報告はあったもののまだ帰れていない。

 と、それに対して急に、しかも公爵邸に集まる様に指示を受けて困惑気味な瑞樹が問いかける。彼女は由利と共にレイアの調練の最中に呼び出された為、詳しい事情を聞けていない様子だった。


「それで、なんですの? 急に集まれ、と言われて集まったわけですが……」

「こいつが、地球から届いたらしくてな」

「地球から……?」


 カイトが提示した封筒を見て、瑞樹だけでなく状況が分かっていなかった面子が目を見開いた。届いたのは、地球からの封筒。表紙には彼の宛名。送り主は彼の父、『天音 彩斗』の名が書かれていた。そうして、カイトは時間が無い事もあり帰還中の面子には後で説明する事にして、一足先に中身を確認する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1532話『地球からのメッセージ』

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