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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第71章 いにしえより遺る者編

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第1517話 オプロ遺跡 ――遺跡の闇・2――

 圧倒的な戦闘力を以って旧文明が作り上げた巨大なゴーレムの破壊を成功させたカイト達三人。彼らは巨大ゴーレムがコアとして使っていた女性を滅却すると、そのまま先に進んでいた。そうしてそんな彼らを出迎えたのは、無数のカプセルが居並んだ空間だった。


「……」

「……カイト、一応、聞いておきたいんだけどさ」

「なんだ?」


 無数のカプセルを横目に見ながら、カイトはユリィの問いかけにの先を促す。それに、ユリィが敢えて冗談めかして口を開いた。というより、そうでもしなければ誰か何かを発したいと思える光景ではなかった。


「これを見てのご感想等はございますでしょうか?」

「……ま、正気を疑うね。どうやらこの研究所の所長は非常に良い趣味をお持ちのご様子で」


 カイトはため息混じりに肩を竦めた。まぁ、先のゴーレムを鑑みればこの最下層の秘密区画でどの様な研究が為されていたかは、察するに余りある。


「言われていた通り、というわけか。酸鼻を極めるね。一体どんな研究をしていたのやら」

「まぁ、ろくな研究とは思えないねー」


 カイトの言葉にユリィもしかめっ面で同意する。カプセルの中に浮かんでいたのは、多種多様な生命体だ。無論、その中にはおそらく元は人なのだろうと思える姿もあった。これが遺体として利用されたのか、それとも情報網の分断等で密かに連れてこられたのかは定かではない。

 が、少なくとも世間に露呈していたとすれば、それが喩え戦争の最中だろうと自国民から非難の嵐を受ける事は請け合いの様相だった。


「シャルは……まぁ、知らないだろうな。流石に」

「流石にねぇ……というか多分、ここを守っていたという英雄達も知らなかった可能性高いね」

「だろうなぁ……」


 カイトはかつて一度だけ話したエルネストの事を思い出す。それ以外にも実は数人、ここで戦ったという英雄達の事を知っていた。彼らがこれを知っていてスルーしたとは考えにくかった。

 まぁ、こればかりは致し方がない事なのだろう。彼らは大半が武に優れた武人だ。いくら英雄と呼ばれようとそれがすなわち知力、それもこの様な学術的な面で優れているかどうかは話が変わる。

 ここでどんな研究が行われていたか、の詳細を知る者は誰一人として居なかった。無論、それを調べられるだけの余力も無かった事も大きい。彼らが気付けなかった事を非難するではなく、彼らにもその余裕が無いほどに追い詰められていたのだ、と考えるべきだった。


「どうする?」

「何時もなら、破壊している所なんだがね……流石に今回はここに入っている事は皇国にも報告している。破壊はしない方が良いだろう。まぁ、それに……陛下なら過つ事はないだろう」


 ユリィの問いかけにここについてはそのままの放置を決定する。カイトにとって一番困るのは、ここの実験記録等を悪用する事だ。改めて言うまでも無い事であるが、ここでの研究はあまりに酸鼻を極める。これを表に出すのは流石に避けるべきだろう。軍事的な活用も可能な限り避けるべきだ。

 なのでそれが迂闊な扱いをされるのは困るが、流石に国が絡んでいる以上は彼単独での判断は避けるべきだった。無論、そこは関わる統治者次第という所だが。必要とあらば揉め事承知で破棄するのが、カイトだった。


「行こう。あまり長居したくはない」

「うん」

「……」


 歩き出したカイトに合わせてユリィがその肩に座り、その後ろをホタルがどこか神妙な面持ちで歩いていく。そうしてしばらくカプセルの間を歩いていくと、また扉が現れた。


「ふむ……そう言えばホタル。直進したが、左右に扉はありそうか?」

「いえ、反応はありませんでした。隠し扉が無い限り、あの扉から繋がっていたのはここだけかと」

「左様で……じゃあ、行くかね」


 カイトは扉横のスイッチを押し込んで、扉を開く。すると、更に先が見えた。そこにあったのは通路だ。左右の壁はガラス張りだ。いや、ガラスに近い物質という所だろう。

 強化プラスチックに似た物、というのが後のティナの結論だった。そうしてそのガラス張りの通路を歩いていくわけであるが、そのカイトの顔はしかめっ面だった。が、そこには何も無い。故に彼がしかめっ面の理由は別だった。


「思い出すねぇ……あのクソの地下室を」

「あー……言われて思い出した……」


 通路の左右。ガラス張りの部屋には、手術台に似た台座が設置されていた。それは期せずして彼らにかつてソーラらと居た研究所を思い出させたようだ。


「あの様子だと十中八九、人も研究材料だったんだろうな……ちっ。気分わりぃな」


 やはりどうしても来歴があるからだろう。カイトは人体実験に対して良い印象を抱いていない。いや、普通にこういう人体実験に良い印象を得る者は居ないだろうが、その中でも特にカイトは嫌悪感を抱いていた。

 というわけで、わずかに苛立ちを隠せない彼は努めて左右を見ない様にしながら先へと歩いていく。道中左右の手術室に入れるだろう扉はあったが、その程度だしガラス張りの部屋に今立ち入る必要性は感じられない。故に無視して進む事にした。そうして更に進む事少し。一同は十字路に差し掛かった。


「ふむ……分かれ道か。どうするかね」

「とりあえずまっすぐで良いんじゃない?」

「それで良いか」


 どうやら十字路の先にはそれぞれ扉があるらしい。一直線に通路が繋がっており、その先に扉が見て取れた。流石にここに休憩室等があるとは思えないので、どちらも研究に関わる設備と考えて良いだろう。

 もしかしたら資材を備蓄しておく為の倉庫もあるかもしれないが、少なくとも研究に関わる事だけは事実だろう。というわけで、カイトはユリィの提案に従って更にまっすぐ歩いていく。


「ここが、直進ルート最深部かね」

「多分ね」


 しばらく歩いた先。三人はその端にある扉の前に立っていた。どうやらこの通路には手術室やカプセルの設置された部屋に続く以外の扉が無かった所を見ると、ここは一番寄り道しなくて良い通路だったのだろう。


「流石にこの領域になると実験体の暴走の方が怖いか」


 わかろうものだ。カイトは鼻で笑う様に吐き捨てる。この領域で研究されていた実験体は総じてまだまだ未完成の技術が大量に使われていただろう。

 そして生体兵器だ。理性を取っ払われた物、もしくはリミッターを設けられている物等様々あるだろう。となると、暴走の危険性なぞ察するに余りある。下手にこの階層で戦われて実験体が連鎖的に暴走を避けたのだろう。


「で、鍵も無し、と」

「流石にここで働いている奴に今更隠し事なぞする必要も無いんだろ。なら手間を省いたとしても不思議はない」

「かなー……じゃあ、開けるよ」

「ああ、頼む」


 カイトはわずかに刀を傾けながら、ユリィの言葉に応ずる。何もないとは思っているが、万が一に備える必要はあるだろう。が、それは杞憂だったらしい。何も起きる事なく扉の先の部屋がカイト達を出迎えた。


「……ま、想像通りだったけどな」


 扉の先を見て、カイトが顔を顰める。案の定というか何というか、やはり先で行われていたのも人体実験だ。その痕跡がそこには残っていた。


「……あんまり、直視はしたくないな。ホタル、お前も記録と記憶しておく必要はない。外部のカメラあるだろ。あれで良い」

「了解」


 カイトの指示を受けて、ホタルは自らに常設されている記録装置を停止させる。無論、記録と記憶は違うので見た物を忘れる事は流石に出来ないが、敢えてこんな酸鼻を極める光景を記録する必要はないだろう。

 なお、調査という事で持ち込んでいるカメラの録画機能は止めていないので、記録はきちんと取られている。パソコンに例えれば外部ハードディスクに保存するのと内部のハードディスクに保存する差、と考えれば良いだろう。


「さて……まぁ、一応何かわかる事がないか確認だけはしておくか」


 カイトは数個並んだカプセルの横にあったコンソールに腰掛けて、パソコンに似た装置を起動させる事にする。どうやら数千年の時の経過にも負けず、まだ動いてくれたようだ。わずかに異音はあったものの普通に起動してくれた。


「さて……認証コード等の必要は無し、と」


 やはりここで働いている者は全員がそれ相応の権限を持っていると考えて良かったのだろう。認証コード等を求められる事はなかった。

 なお、一応念の為に言っておくとこれは偶然だったそうだ。後の調査によるとここは秘密区画を統括する統括システムへと非常時にアクセスする為の特別なコンソールらしく、認証コード無しでも起動出来るらしい。無論、必要無いのは今回の様に直近で全電源喪失が起きた等の非常時だけだ。通常時は必要らしい。


「ふむ……」


 コンソールを起動したカイトはパソコンで例えればデスクトップ上に表示させる情報のタイトルを見て、少しだけ頭の中で情報を精査。どれを見るべきだろうか、と考える。が、やはり何の情報も無いでは検索も出来ない。というわけで、カイトはとりあえず試しに今一番気になる事で検索してみる事にした。


「エンジェリック計画、と」

「なんでそれ?」

「とりあえずファルシュさんがどういう人物か知っておきたくてな。ここから大抵の情報は手に入るだろう」


 ユリィの問いかけにカイトは検索を待ちながらそう答える。ここは秘密区画。大抵の情報は手に入るだろう、という判断だった。が、その彼の考えも虚しく、反応は停止した。


「……あれ……検査結果0件? ふむ……」

「やっぱり嘘って事かな?」

「ふむ……」


 カイトはユリィの言葉を聞きながら、検査方法が悪かったのか、と別の方法を試してみる事にする。そうして考えたのは、彼の名前での検索だ。


「ファルシュ・カリタスで研究員を検索」


 カイトは改めてコンソールに彼の名前を打ち込むと、そのままの対応を待つ。すると、どういうわけかこちらについてはすぐに検索結果が表示された。


「ああ、出た……ランク4研究員か」


 どうやら、彼の告げた身の上は正確だったらしい。秘密区画に収められていた情報でも彼は最上位から一つ下の権限を持つ研究員とされていた。


「ふむ……やはり下級の研究員では無さそう、だな……」


 流石に詳細な来歴は無かったものの、この研究所でどの様な情報に触れられるのか、という内容については手に入れられた。それによると、彼自身が述べていた通りこの秘密区画の情報には接触出来ない様子だがかなり高位の権限が与えられている様子だった。と、そんな彼の来歴を見ていくカイトであるが、そこでふと首を傾げる事になった。


「うん……?」

「どうしたの?」

「……意図的に情報が削られてる……?」


 ユリィの問いかけに答えるカイトが得た所感はそれだ。どうやら彼がかなり優れた研究者であった事は事実――ルナリアの首都にあった国立大学を主席で卒業していた――らしいのだが、その後の経歴が空白になっていたのだ。


「ふむ……ホタル、そっちの画面を付けてくれ」

「了解」


 カイトの指示を受けて、ホタルが彼の座るコンソールの横に設置されていた画面を起動させる。そうして少しして正常に起動すると、カイトは二画面になったコンソールの片方にファルシュの情報を表示させたまま試しに他の研究員の情報を検索してみる。

 と言っても単に研究員であれば誰でも良かったので、リストを表示させて適当に目についた人物をクリックしてみる事にした。


「ふむ……やはりあるな……」


 カイトは適当に表示させた研究員の情報を見て、訝しむ。その研究員には大学を卒業後どの研究機関に所属し、何時ここに来たのかが記されている。そうして更に数人適当に抽出して見てみたが、誰一人としてファルシュと同じ様に来歴が削られている者は居なかった。


「……ふむ」


 カイトは空白に削られているファルシュのデータを見ながら、わずかに椅子に深く腰掛ける。削られている以上、確実に何らかの事情があるはずだ。が、その事情が彼には分からない。と、その間にもユリィがコンソールを操って探してくれていたわけであるが、そんな彼女が唐突に声を上げた。


「あ」

「ん? どうした?」

「この人も削られてる」

「うん? ああ、本当だ……」


 ユリィの指摘にモニターを見て、カイトもまた別の研究員の来歴が意図的に削られている事を理解する。


「ふむ……ということは、他にも何人か削られている人物が居そうか……ホタル、この画面の情報を撮影。後にシャルに確認を取りたい」

「了解」


 カイトの指示を受けて、ホタルがモニターに表示された画面を撮影する。そうして彼女に記録を任せると、カイトは更に居ないかと調べてみる事にする。が、なかなかにこれは骨の折れる作業だったらしい。


「あー……疲れるなー……」


 カイト達が作業を開始しておよそ半日。一度だけ外に出て安全の確保が完了した事を報告したカイトは後詰となる特殊部隊にこの一帯の調査を任せると、つきっきりでコンソールで調査を行っていた。

 やはりここまで巨大な施設だ。研究員の数もそれに合わせて膨大な規模となっており、簡単には終わらなかった。まぁ、幸いな事に単に来歴を削られているかどうかだけを確認すれば良いのでそこは楽だったが、面倒な作業には変わりなかった。が、そのかわりに作業については一区切り付けても良いだろう、という所にまではたどり着いていた。


「とりあえず、この五人か……」


 カイトはファルシュを筆頭にしてモニターに表示させたままにした五人の研究員の情報に目を向ける。まだ半分程度しか確認出来ていないが、この五人については来歴が完全に抹消されていた。中には大学卒業後数十年が経過しているのに、一切の経歴が抹消されていた者まで居る。


「ホタル。記録は?」

「終わりました」

「そうか……良し。出よう。流石にそろそろ良い時間だ」


 カイトは疲れた目を擦りながら、コンソールから立ち上がる。適時ユリィにも確認を任せていたが、それでも流石に疲れていた。そうして、三人は特殊部隊に撤退を告げて秘密区画を後にする事にするのだった。

 平成の間、お読み頂きありがとうございました。令和になりましてもお付き合い頂けましたら幸いです。

 次回予告:第1518話『オプロ遺跡』

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