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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第69話 収穫祭・中編

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第1442話 ガーディアンとは

 カイト達のボス攻略から少しだけ、時は遡る。要救助者達と合流した少し後。ドゥニスの説得を終わらせた後の事だ。カイト達は『守護者(ガーディアン)』攻略の為、学者達とは別に攻略する面子を集めて作戦会議を開いていた。が、その為にもまずは『守護者(ガーディアン)』という存在についてを知っておく必要があった。


「『守護者(ガーディアン)』……世界の白血球の様な存在じゃな」

「私とティナは前の大陸間会議で少し話したわね」

「うむ」


 クオンの言葉にティナもまた同意して頷いた。が、流石にこの場合はあの時話していた程の存在は無いだろう、と二人も予想していた。


「そういうわけでまぁ、改めて解説すると『守護者(ガーディアン)』とは世界を護る為のシステムじゃな。主に世界において重大なバグが発生した場合にそれを除去する為に発生する存在。ここまでは、全員が共通認識として有しているものと考えておる」


 ティナは改めて簡易に全員に向けて問いかける。ここらについては『守護者(ガーディアン)』の基礎知識。冒険者でも彼ら程の領域にたどり着けば常識として理解している事だ。それ故、誰にも疑問が出る事はなかった。


「さて……それで『守護者(ガーディアン)』についての話をしたいわけじゃが。これについてはカイトがやると言うておるので、コヤツに任せる」

「ああ……ということで、オレが引き継ごう。まぁ、この場の面子にわざわざオレの過去を隠すまでも無いんで明かすが、オレは一時世界側のシステムとして動いていた事がある。それ故、『守護者(ガーディアン)』については多少見知っていてな」


 カイトの言葉に対して、特に誰も驚きも疑問も有しなかった。そもそも彼は大精霊達とどういうわけかつるんでいるのだ。そこらを考えれば世界のシステム側として動いていた事がある、と言われた所で不思議も何も無かった。


「これはそこで教えられた事だ。まず、『守護者(ガーディアン)』についてだが幾つかの種類とランクに分けられて設定されている。クオン、ティナから大陸間会議での話は聞いた。『大守護者(ウェポンズ)』という存在について話を聞いた、という事だったな?」

「ええ。星や星系、太陽系を護る存在としての『守護者(ガーディアン)』ね」

「ああ……これについて、だが存在はしているらしい。まぁ、呼称が無いのでこの場合はティナのネーミングに沿って『大守護者(ウェポン)』とでも言っておこう。概ね、そいつらの役割はお前らが言っていた通りだ」


 クオンの明言を補足する形で、カイトは『大守護者(ウェポン)』なる存在が存在している事を明言する。これについては特に考えるまでもない。ただ規模が大きくなったというだけに過ぎない。


「さて。それでこれを先の等級に当てはめると、これはランク4と呼ばれる上から二つ目の存在だ」

「ら、ランク4……」


 これで上から二番目。既に想像の埒外にもかかわらず、これでまだ上があるというのだ。アイナディスでなくとも頬を引き攣らせるのは仕方がない事だっただろう。あのクオンさえ、流石に呆れ返っている様子だった。そんな彼女は呆れ混じりながらも、興味本位といった具合に問いかけた。


「参考までに聞いておきたいのだけど……ランク5は?」

「ランク5……そうだな。流石に名前は無いが……そうだな。『守護神(シュッツガイスト)』とでも言おうか。英語だと守護神も守護者も全部ガーディアンだからな。規模としては星系を超えて世界全土に跨る危機が起きた場合に動く存在と思ってくれ」


 カイトが付けた名前はドイツ語における守護神の事だ。これに当てはめると彼いわく、ランク3までの『守護者(ガーディアン)』は総じて『守護者(シュッツァー)』。ランク4の『大守護者(ウェポン)』は『守護天使(シュッツエンゲル)』となるらしい。

 なお、これはあくまでも彼が独自の基準で当てはめたネーミングらしく、世界側の知識を人類側に当てはめて考えた場合、という所だそうだ。なのでこれが正式名称というわけでもないらしい。正式には世界側からすればランク1もランク5も全て『守護者(ガーディアン)』との事である。


「まぁ、これは流石にまず滅多な事では現れない。流石にこいつが動く時はそんなちんけな事態じゃ済まないらしいからな」


 現れてもらっても困るわ。全員がカイトの言葉に内心でそう呟いた。これが現れた時点で星なぞ簡単に吹き飛ぶだろう。星一つが消し飛ぶのと世界全部が異常に見舞われるの。どちらかを選んで前者を選んだ場合に出る存在だ。そう安々と動いてもらっては困る。そんな一同の一方、カイトは解説を続けていた。


「さて。それで話をランク3以下に戻すと、まずランク1。これは基本的には一番危険性の無い存在だ。世界の中に生まれ、時として自らさえ『守護者(ガーディアン)』と知らずに生活する」

「普通の人と同じ様に、というわけ?」

「ああ。まぁ、これは『守護者(ガーディアン)』というよりも『監視者(ウォッチャー)』と考えてくれ。異変が起きそうだけど、異変が潜在的な状態で解決出来るかもしれない。なので異変の近くに周囲に悟られない様に世界側がそういう存在として送り込む。で、もし異変が起きた場合には『守護者(ガーディアン)』として動く、というわけだな。これは基本的な性質は人と一緒だ。時として、世界さえ想定外の解決策を見つけ出せる可能性のある最も人に近しい存在だ。故に任務が終わったり、使命を知らない個体が子を成したりしている事もあるそうだ」

「そんな存在もおるのか……」


 クオンの問いかけに頷いたカイトは改めて一番無害な存在について明言する。ティナでさえ初めて聞く存在だった様子で、しきりに感心した様に頷いていた。案外人について無視している様で、案外考えてくれているそうである。

 これはそれ故、時として使命に背く事もあるそうだ。まぁ、このクラス1の場合は彼の言う通り『守護者(ガーディアン)』というよりも『監視者(ウォッチャー)』だ。最悪は解決されなくても問題はないらしい。


「それで、次。その次がクラス2の『守護者(ガーディアン)』。ここからは本当に『守護者(ガーディアン)』と言って良いな。もしクラス1の『守護者(ガーディアン)』が対処不能と判断した場合に送り込まれる存在だ」

「一番余らが知っている『守護者(ガーディアン)』と」

「ああ。これについては一般的に知られている『守護者(ガーディアン)』と考えて良い」


 カイトは笑いながら一つ頷いて、ティナの言葉に同意する。これについて詳しく述べる必要はなかった。これが誰もが想像している『守護者(ガーディアン)』だからだ。というわけで、クラス2については軽く流す事にして、カイトは次に進む。


「で、その次。クラス3。これもクラス2とさほど変わらない。ただ規模が大きくなるだけだ」

「どの程度の差じゃ」

「そうだな……クラス2の規模が国が崩壊するかもしれない程度なら、クラス2が大量発生した上でも対処不能と判断されて送り込まれるのがクラス3。星一つが危険に晒されていると判断された場合に送り込まれる存在だな。この場合、『守護者(ガーディアン)』達は生命や文明の保護ではなく星の保全を主眼として動く。大抵語られる『守護者(ガーディアン)』が周囲を丸ごと滅ぼした、というのはこのクラス3が動いた場合と考えてくれ」


 であれば、今回もクラス3の『守護者(ガーディアン)』が動いた可能性が高いか。ティナは己の問いかけに答えたカイトの返答から、今回の案件において動いただろう『守護者(ガーディアン)』の予測を行う。が、そんな推測を行っていた所にカイトが否定を行った。


「さて。それでこのクラス3だが、流石にこの中央の建屋にはこれは存在していないと思われる」

「何故じゃ? 可能性としてはそれが一番高く思われるが……」

「建物の大きさがな。少し小さい。基本的にクラス3は数十メートル級の存在だ。あの程度の建屋ではどう頑張っても封印は出来ない。無論、あの建屋から更に地下があって封じられている可能性はあるが……」

「それにしては少し小さいと」

「ああ」


 カイトはティナの言葉にはっきりと頷いた。世界の末端として意思の無いシステムである『守護者(ガーディアン)』はある種魔道具に近い。どうしても出力はサイズに比例してしまうとの事であった。


「まぁ、流石にクラス3が居た場合、これはクオンでさえ戦うのはやめておけ。というより、あまりに出力が高い。オレがなんとかする」

「勝てないと?」

「違うさ。勝てても周囲の被害が馬鹿にならん。あんな建物なぞあっという間に崩壊する。外に出ない様にする為にも、というわけ」


 すっと目を細めたクオンの問いかけにカイトは肩を竦めて首を振る。こればかりはどうしようもない話だ。下手をするとこの『迷宮(ダンジョン)』なぞ簡単に破壊してしまうかもしれないのだ。クオンさえ支援に回るしかなかったのである。そうして彼らは更にその後、この中央の建物に封じられている『守護者(ガーディアン)』の種類に応じた攻略プランを構築する事にするのだった。




 時は戻って、数時間後の現在。カイトらは中央建屋のドーム前に立っていた。


「開くぞ」


 扉横のスイッチに手を当てたティナが改めて全員に通達する。この先に居るのは、世界の守護システムとでも言うべき存在。そして間違いなく一つの文明を崩壊寸前にまで追い込んだ存在だ。油断していて勝てる相手とは、とてもではないが思えなかった。それ故、彼女の声にも僅かな硬さがあったのは、仕方がない事なのだろう。そうしてそんな彼女がスイッチを起動すると、ゆっくりと扉が動き出す。


「……」


 来る。カイトは音もなく静かに動いていく扉を見ながら、覚悟を決める。どうやら扉は多重構造になっているらしい。幾つもの扉によって厳重に封鎖されていた。

 これを鑑みると、どうやらこのドームは相当な厚さがあるのだろう。この『迷宮(ダンジョン)』を作った者たちが相当に警戒している事が理解出来た。そうして一分程も掛けてゆっくりと扉が動いていき、遂に一同に内部の様子が見れる様になった。


「あれが……」

「流石に私も初めて見るわね……」


 初めて見る『守護者(ガーディアン)』の姿に僅かではない警戒を滲ませたアイナディスの言葉に対して、流石のクオンの言葉にも僅かな硬さが滲んでいた。

 そんな彼女らが見る先には、巨大なクリスタルに覆われて一体の騎士の様な奇妙な存在が封じられていた。が、封印されていてなお、その威圧感は失われていない。いや、それどころか本当に封印されているのか、と疑いたくなる程の威圧感だった。


「クラス2『守護者(ガーディアン)』か……助かった。これなら、まだなんとかなる」


 そんな一同を横目に、カイトは封じられているのがクラス2と言われる存在である事に安堵していた。しかし、そんな彼の顔もやはり僅かに歪んでいた。


「が……」


 本来ならあるべき姿とは少し違う。曲がりなりにもシステム側の存在として、そして『守護者(ガーディアン)』の大本となった存在として、カイトはこの『守護者(ガーディアン)』が歪に歪んでいる事を理解していた。そんな彼の顔を見て、ティナが問いかける。


「どうした?」

「……やはり、無理な召喚の結果という所なんだろうな。暴走している」

「ふむ? 後学までにどうすれば判断出来るか聞かせてくれ」

「ああ……あの個体。黒ずんでいるのが分かるか?」

「うむ」


 カイトの問いかけにティナは改めて半透明のクリスタルに封じられた『守護者(ガーディアン)』を見る。形状そのものは神々しい騎士の様だ。が、その色は全体的に黒みを帯びており、所々に真紅の筋が入っていた。神々しい形状故、それは裏返って禍々しい様子にさえ見えた。敢えて言えば、堕ちた騎士。そんな印象さえあった。そんな感想を抱いていたティナに、カイトは改めて解説を入れた。


「通常、『守護者(ガーディアン)』は白や青を中心として本能的に警戒を抱かせない様子になっている。どうしても赤や黒は本能的に警戒や恐怖を抱かせるからな。が、他方もしクラス3と一緒に出現したり、何らかの事情が起きて『守護者(ガーディアン)』そのものに不具合が起きた場合にはこの様に色が変わるんだ。周囲に警戒や避難を促す為、だな」

「なるほど……」


 言われれば、ティナにも理解出来た。元来『守護者(ガーディアン)』は護る為の存在だ。なるべく文明や生命を滅ぼさない様にするのがシステム上のルールだ。それは彼女もわかっている。

 が、それが無理になった場合ははっきりと分かる様にして周囲に警戒や避難を促すのである。あくまでも、『守護者(ガーディアン)』は守護する者。なるべく無用な破壊を生まない為、というわけである。つまり、禍々しい印象を与えるのが正解なのである。


「厄介だな。おそらく、間違いなくこちらに襲いかかってくる」

「そうか……カイト。クラス2と言うたな」

「ああ」

「手はず通りで大丈夫か?」

「ああ……それで行こう」


 ティナの問いかけにカイトははっきりと頷いた。システム側の存在であった彼であるが、それ故にこそ『守護者(ガーディアン)』との戦闘経験はそう多くはない。かなりぶっつけ本番の要素は強くなるだろう。


「良し……台座に封印解除の手はずも書かれておった。準備ができ次第、戦闘開始じゃ」


 ティナは自身も杖を構え準備を整え、全員に支度を促す。ここから先は彼女さえ未知の相手。しかも、間違いなくものすごい強さを有している。何が起きても不思議はない。そうして、用意を整えた一同は対『守護者(ガーディアン)』戦に臨む事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1243話『対ガーディアン』

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