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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第69話 収穫祭・中編

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第1441話 中央建屋

 『迷宮(ダンジョン)』内部に引き込まれた要救助者との合流に成功したカイト達救助隊一同。その後、カイトはティナの要請を受けて調査に乗り出したいと言っていたラエリアよりやってきたドゥニスという学者の説得を成功させるとそのまま引き続きその後の計画についてを話し合っていた。


「というわけじゃ。こちらの体感時間としては全員夜になっていると考えて良い。先に待ち構えるのが最悪の可能性もある以上、今宵はしっかりと休むべきじゃと判断する」


 突入前に立てていた計画の内、現状に即した計画を教員や学者達に説明したティナは改めて休憩の必要性を説く。ここのボスはもしかすると『守護者(ガーディアン)』かもしれないのだ。どうやって『守護者(ガーディアン)』をボスにしたのかは気になる所であるが、可能性がある以上迂闊に突っ込む事は出来なかった。というわけで、これに異論が出なかった事で会議は終わりとなり、全員が明日に備える事となった。


「さて……」


 会議の終了後、カイトは窓枠にもたれ掛かって相変わらず沈黙を保つ中央の設備を見ながらため息を吐く。あの推測を述べた彼であるがそんな彼にも何故こうなるのか、という論拠は無かった。

 答えがあるが故、最もあり得る可能性としてそれに即した『守護者(ガーディアン)』が活用されているという答えを導き出しただけだ。


「……『守護者(ガーディアン)』か」


 かつての己を模した世界の異常に対処する為の存在。カイトは呟きながらそれを思い出す。形状や性質等は『ミッション』に合わせて変化するが、一つ言える事は世界側の存在故にチートだという事だ。

 今回の空間の断絶の無視等、様々な特権が与えられている。仕事の性質上仕方がない所であるが、敵に回すとそれ故に恐ろしい相手だった。


「……なぁるほどね。それでこの面子なわけ」

「クオンか……まぁな」


 自らの横にもたれ掛かったクオンの言葉にカイトは僅かに笑いながら頷いた。ここに来る前の段階から、彼はこの可能性を想定していた。後は中に入ってみて状況を確認してから、と考えていたが、可能性として想定していた事は事実だ。


「強いかしら」

「弱いと思うか?」

「思わないわね」


 『守護者(ガーディアン)』。それと戦える事はまず無いと断言して良い。クオンとて善悪で言えば善側の存在だ。それ故、幾らバトルジャンキーと言われようとも『守護者(ガーディアン)』と戦った経験はまず無い。

 あれが出るのは何らかの世界側の異常が出た時。その時にはクオン達とてその異常の解決に奔走する。『守護者(ガーディアン)』は周囲を見境なく破壊する時も多いが、同時にその異変の解決に協力してくれる存在や護るべき存在にとっては力強い味方だ。戦う事がまず無いのだ。が、それ故にこそクオンは舌なめずりをしていた。


「この世界最強クラスのシステム側の存在……一歩間違えば文明が滅ぼされる程の正真正銘の化物。厄災種の対となる存在。それを合法的かつ問答無用に叩けるなんて……ね」

「勝てるつもりかよ」

「勝つわ。でも流石に今回ばかりは、ソロ討伐をやろうとは思わないわね。私も初戦の相手にこの状況で単騎で挑むほど、愚かじゃないわ」


 カイトが懸念するだろう事を先読みして、クオンははっきりと明言する。彼女とてここで何を懸念すべきかはわかっている。ここで最も心配するべきは要救助者達。それに影響が出ない様に戦わねばならないのだ。間違いなく、何の気兼ねなく戦えるわけではない。


「なら結構。とりあえず、今日は休むぞ」

「はーい」


 カイトの言葉にクオンが何時もの雰囲気を醸し出して壁から離れる。そうして、二人は他の戦士達と同じ様に明日のボス戦に備えてゆっくりと休息を取る事にするのだった。




 要救助者と合流して体感時間的に翌日。カイト達救助隊が突入しておよそ15時間という所だ。朝食を食べた一同はヴァイス率いる先遣隊に要救助者が立て籠もる神学校の寮を後にすると、ボス戦に挑む前に最大限の準備を行う事にしていた。


「良し……これで最後だ」


 カイトは一つ頷いて、一抱え程のバッテリーの様な物を地面に置いた。大きさとしては乳幼児程だ。これは魔力を溜めておくバッテリーの様な物だと考えれば良い。これからの戦いがどれほどの激闘になるかはわからない。時間についても未知数だ。

 なので寮に展開されている結界の出力を最大にして、更には予備で用意されている結界も展開。二重に結界を展開して守ろうと考えたのだ。

 しかしそうなると、やはり魔力の消耗が気になる。戦闘時間に応じては結界が保たない可能性があった。なので他の巻き込まれた施設から予備のバッテリーを回収して用意しておこうという判断だった。


「アル。じゃあ、任せた」

「うん、確かに。最後の一つ、確認したよ」


 カイトからバッテリーを受け取ったアルはチェックリストにサインを入れると、軍の兵士にそれを寮の倉庫へと持っていく様に指示を出す。そうしてそれを確認すると、カイトはティナと合流する事にした。


「終わった」

「そうか……では、行くか」


 流石にこの状況だ。全員の顔に油断は無かった。そうしてティナの号令を受けて、一同は中央の建物へと向かう事にする。


「これが、この『迷宮(ダンジョン)』のコアか……ティナ。何か分かるか?」

「ふむ……やはり魔力の流れを見る限り、ここを中心として『迷宮(ダンジョン)』が発生しておるな」


 カイトの問いかけを受けたティナはひとまず、杖を建物に接触させてソナーの様にして反応を探る。ここから先、何があるかわからないのだ。何があっても不思議ではない。であれば、万全を期して進むのみであった。


「防備については?」

「……うむ。問題は無い。内部と外部を隔てる高度な結界か遮断かは確認出来るが……それ以上の事はわからん」

「そうか……良し。中に入ろう」


 ティナの反応を受けて、カイトは中に入る事を決断する。このままここに留まっても一緒だし、これ以上調べても何もわからないだろう。であれば、進むしかなかった。というわけで一同は壁伝いに移動して入り口と思しき場所へと向かう事にする。


「……鍵の様な物は……見受けられませんね」

「さて……そうなると、どうやって開くかね……」


 アイナディスの指摘を受けて、カイトは扉の様な物を見ながら考える。形状としては自動ドアの様な形だが、素材は何らかの石材の様子だ。詳しい事はわからないものの、青く光るラインが入っている所を見ると間違いなく何らかの魔術的な刻印が刻まれていると思われた。


「全員、周囲へ散って何か無いか確認を。ソレイユは周囲の偵察を頼む」

「はーい」


 ソレイユが周囲の警戒に入る一方で、その他の面子はカイトの指示を受けて全部を確認するべく周囲の探索に入る。と言っても状況が状況だ。全員が全員の見える位置に居る様にしていた。そんな中に、カイトもまた入っていた。


「ふむ……」


 中央の建屋の構造材は扉とは違って金属製。見た所一部に魔鉱石(オリハルコン)が使われている様子だった。


「……かなり強固な防備を敷いているな……」


 おそらく当時の飛空艇の魔導砲でも生半可な威力では破壊出来ないだろう。カイトは施されている刻印を見て、そう判断する。警戒しているのは外側か内側か。それはまだわからない。が、何かを警戒していた事だけは、事実だろう。と、同じ様に中央建屋を確認していたティナが一つ頷いた。


「……うむ。おそらくこの刻印……内部から力を外に融通しておるものじゃろうな。間違いなく、中に居る何かの力を外に出しておると見てよかろうな」

「ふむ……となると、これは中の何かを封印している封印装置の役割も兼ねていると考えても?」

「うむ。おそらく扉と材質が異なっておるのはそこらの兼ね合いと考えられる。別回線という感じかのう……」


 アイナディスの問いかけにティナははっきりと頷いた。まだ詳しい事はわからないものの、少なくとも中の力を奪っている事だけは事実らしい。と、そんな彼女は横に来ていたアイナディスへと問いかけた。


「で、アイナ。何かあったか?」

「ええ。こちらへ」

「うむ」


 アイナディスに案内されて、ティナは扉の少し右横。枠とでも言うべき所だった。


「この四角い物体……そうっぽい様な気がするのですが……」

「ふむ……」


 アイナディスの示した所にあったのは、丁度成人男性の手を一回り程大きくした様な箱だ。押し込める様子は無かったものの、魔力を流せそうな雰囲気はあった。敢えて言えば、スイッチの様な形と考えても良いだろう。


「うーむ。この形式では安易に魔力を通すべきでは無いのう……ふむ……」


 どうするべきか。おそらくスイッチだとは思われるのだが。ティナはそう考えながら、アイナディスの見つけ出した装置を観察する。これがもし魔力感知式のスイッチであった場合、調査の為に魔力を通すとそれだけで反応する可能性がある。とはいえ、これが最もスイッチである可能性が高いのは事実だ。であれば、ティナの結論は一つだった。


「カイト。おそらくスイッチらしき物が見付かった。これを動かす。所定通りに隊列を組む」

「ああ……クオン、ソレイユ。頼む」

「ええ」

「はーい」


 カイト以下クオン、ソレイユの三人が扉の前へと移動する。そうして、カイト、クオンの二人を先頭にして、少し離れた所にソレイユが立つ。万が一扉を開いたと同時に敵が現れた場合でも、この三人の組み合わせなら食い止められるという判断だ。

 更にアイナディスはティナの援護だ。こちらは雷の加護を使える為、万が一の場合には即座にカイトらの支援に入れる。一番万全の体制と言えた。


「ふぅ……」


 カイトは一つ深呼吸すると、クオン、ソレイユと一つ頷きあう。そうして、ティナへと一つ頷いた。


「良し。では、開くぞ」


 カイトの頷きを受けて、ティナが眼の前の装置に手を当てる。そうして彼女が魔力を少し通すと、それを受けて何らかの装置の駆動音が鳴り響いた。そして、少し。重厚な扉がゆっくりと開いた。


「「「……」」」


 鬼が出るか蛇が出るか。カイトはゆっくりと開いていく扉の内部に注意を走らせる。そうして十秒程の時間を掛けて扉が完全に開放されたが、何も出てくる事は無かった。


「……警戒解除。何も無い」

「ふぅ……」


 カイトの言葉を聞いて、クオンが張り詰めていた気配を僅かに弛緩させる。やはり何だかんだ言いつつも、彼女も緊張していたのだろう。そうして三人の所にティナとアイナディスがやってきた。

 とはいえ、これでおしまいではない。先に進まねばならなかった。故に、一瞬だけ緩めた気を取り戻すべくティナが号令を下した。


「では、行くぞ」

「ああ。クオン、バディを頼む」

「ええ」


 カイトの要請を受けたクオンが彼と共に最前列を歩いていく。そうしてその後ろにアイナディスが歩き、最後尾をティナとソレイユの二人が歩く。そうして警戒しながら中央の建屋の中に入ると、一同に中の様子がはっきりと見て取れた。


「これは……」


 中に入った彼らを出迎えたのは、複雑な刻印の刻まれた金属の壁だ。中央の建屋の中には巨大なドームがあったのである。そんな奇妙といえば奇妙な光景に圧倒されたカイトであるが、そんな彼は目の前にまた一つの何らかの装置がある事に気が付いた。それは彼の腰程までの大きさの台座とでも言うべきものだった。


「これは……ティナ。これが何か分かるか?」

「ふむ……おそらくこれも先のスイッチと同じ様な物と思われるが……にしては少し大きいのう」

「いえ、スイッチならあの扉の横にあるわ。別物でしょう」


 何かと考えるティナに対して、クオンが目の前にあった扉の右横――台座は左側――を指し示す。そこにはアイナディスが外で見付けたと同じスイッチが設置されており、また別である事を示していた。


「ふむ……少し待て」


 ティナはクオンの指摘を受けて、台座を確認すべく移動する。この様子だとスイッチではないのだろう。そうして台座を確認した彼女であるが、そんな彼女は一つ頷いた。


「ふ……む……これは古代メイデア文明で使われておった文字じゃな。この中には何があるか、という事と危険である事を解説しておる……という所であろうか」

「中には何が居るって?」

「想像通り、じゃ」


 クオンの問いかけにティナはそう言って肩を竦ませる。つまり、この中に居るのは『守護者(ガーディアン)』という事で間違いないのだろう。


「そう……カイト、どうする?」

「行くしかないだろう。アル達は置いてきた。行けない事は無いだろう……と言っても、流石に巨大な奴だとオレ一人にまかせてくれ。流石に、お前でも厳しいだろう」


 クオンの問いかけにカイトははっきりと相手が常識外の相手である事を明言する。『守護者(ガーディアン)』にも幾つかの種類があるらしい。そしてそれは基本的にはサイズが大きくなればなるほど、戦闘力が高くなるそうだ。それ故の結論だったらしい。

 その場合には彼が一人戦闘を行い、それ以外の面子が彼と『守護者(ガーディアン)』の戦闘の影響を抑制するべく援護する、というのが彼らの作戦だった。そうして、再度作戦の念押しをした一同は再度隊列を整えて、中のドームの封印を解くのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1242話『ガーディアンとは』

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