表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第68章 四大祭・秋編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1415/3943

第1387話 大精霊に仕える者たち

 神殿都市に到着して各々の行動を開始してから数時間。カイトは天桜学園の幹部として各所への挨拶回りを行いながら、忙しく過ごしていた。とはいえ、それもやはり日が暮れると一旦終わりを迎える事になる。挨拶回りにせよ何にせよ、これは相手あっての事だ。なので基本は相手の公人としての時間内に行う事だ。というわけで夕暮れと共にカイトはソラが確保してくれていたホテルへと入っていた。


「ああ……ここか」

「あ、やっぱり知ってんのな。向こうもなーんか大体わかってます、って感じで話進めてくれてたし」


 カイトの呟きを聞いたソラはなるほど、と納得を得ていた。ソラが確保と言ったものの、実際の手配をしたのは神殿都市側、ひいては公爵家だ。なのでカイトも見知っていたらしい。

 カイト達が今回泊まる事になっているホテルは歴史あるホテルだ。上位の貴族達も宿泊した事があり、間違いなく一流と言えるだけの事はあるだろう。が、それだけではなかった。


「ああ、そうか。お前は知らないよな。ここは砕月っていう中津国系の龍族がオーナーを務めているホテルの系列なんだよ。『ポートランド・エメリア』に本店があって、こちらはその系列の一つだな。昔ここに出店するのに関わった。はー……ここもこうまで成長してたかね」

「あ……なんか先輩があの街にスーツでむちゃくちゃ強かった人が居たとか聞いたような……」

「そいつ。ホテルの総支配人やってるんだが、腕利きは腕利きでな」


 ソラが頭をトントンと叩いてかつての『ポートランド・エメリア』での事件の事を思い出していた一方、カイトはそれで間違いがなかったので頷いておく。ソラはやはり直に見た事は無かったが、港湾部で戦っていた瞬はやはり見ていた様だ。そして横で聞いていた瞬も、それで納得を得ていた。


「それであれだけ強かったのか」

「まぁな。あの時代はマクダウェル領でもよく街に魔物が攻めてきていた。そんな時、街の守りの一人としてずいぶんと活躍していた」


 若いながらも龍族。そしてカイトの関係者だ。やはり色々とそこらで伝手はあって、腕も磨いていたらしい。というわけでかなり強いらしい。と言っても戦士ではないので尋常ではないほどに強いというわけでもなく、冒険者のランクで言えばAぐらいにはなるそうだ。アルと同格、という所だろう。


「で、ソラ。それはともかくとして、だ。お前の方はどうだった?」

「あっと……ヴィクトル商会の方とは話してきた。とりあえず納入予定は遅れる事は無いだろう、ってさ。すでに第一便についてはこっちへ来てるし、第二便も順調にって」

「そうか。なら、そっちは問題ないな。ティナの方も機材の搬入予定に問題は無い、って言ってるし……」


 カイトは合流したティナとの会話で得た情報を思い出して、開店には間に合いそうだと胸を撫で下ろす。やはり開店に間に合わないのが一番困る。そのために数日も前の段階でカイト達が入って色々な申請をしていたわけだし、ヴィクトル商会や各種の商家をせっついて遅れないようにしてもらっている。そしてこの時期に遅れるのは商人達もご法度と理解している。遅れる事はまず無いと考えて良いだろう。


「後は本隊の到着を待ちつつ、各自で大神殿へお参りか」

「混み合う前に行った方が良いかな?」

「それを、オススメする。例年の状況を鑑みると、コミケ期の有明よりヤバいらしい」

「あれをかよ……」


 ソラはカイトからの返答にげんなりと嫌そうな顔をする。延べ人数で十万人超、日本の経済にも影響するとさえ言われるオタク達の祭典の混雑状況はテレビでも放送される程だ。それと比べられる状況だ。マクダウェル春夏秋冬の四大祭は伊達ではなかった様だ。


「まぁ、あっちもあっちである種の信仰だが、こっちはガチの信仰だ。この時期だけは這ってでも来るというご老人も少なくないんだ。というより、この時期の混雑がわかってなお来る、という信心厚い奴らが世界各地から来る。この期間は毎日礼賛を、という人も居る。となると必然、各大神殿は信者達でごった返す」

「「あー……」」


 マクダウェル家秋の大祭は一応は収穫祭だが、宗教色の強いお祭りでもある。それ故にこそ、今回だけは来訪者もお祭り騒ぎを楽しみたいという者だけではない。

 熱心な信者達も大挙して押し寄せる。彼らにしてみれば大精霊信仰の総本山のお祭りだ。何もしなくてもある程度の来客はあるのである。そこに観光客も加わる為、混雑度は他の三つに比べて例年かなり多かったそうだ。


「と言うわけで、行くなら今がチャンスだ。後で泣きを見たくないならな」

「よっしゃ。明日行こ」

「そうしよう」


 ソラの明言に瞬も続く。そんな話を聞かされてのんびりとするつもりは無かった。ただでさえもう混雑しているのに、この上に熱心な信者まで来るというのだ。厄介になる前にお参りは済ませておくのが、得策だろう。


「ははは。そうしておけ……っと、じゃあ、ちょっとオレは出掛けてくる」

「ん? なんか用事?」

「仕事。と言っても公爵としての、だが」

「そか。じゃあ、行ってらー」

「ああ」


 ソラの見送りの声に背を押されつつ、カイトは今まで居た部屋を後にする。そうして向かう先は大神殿が共同で運営する神殿だ。会議場の様なものだと言えば良いだろう。一応は領主だし、祭りも近い。来賓も非常に高貴な身分が多いし、街の幹部を集めて引き締めを行う事になっていたのである。そしてこの街は神殿都市。必然として幹部は、と言われると彼らだった。


「各神殿の長達は……揃っているな。復帰後全員が一堂に会するのを見るのは初か」


 カイトは神殿の会議室に設置された円卓の己の椅子に腰掛けて、必要な人員が全て揃っている事を確認して頷いた。各大神殿の長達。彼らこそがこの街の真の統治者達と言って過言ではなかった。

 間違いなく彼らの影響力は選挙で選ばれる市長よりも大きいし、この祭りの事を考えれば一番の上役と断じて良いだろう。そして各大神殿の長達だ。カイトの正体を知らされていても不思議はない。彼らにとって大精霊の友と言われるカイトは神や現人神にも等しい相手だ。その邪魔をする事は彼らの沽券が許さない。


「まぁ、各々には一人ずつすでに会っているし、数名は見知った者もいるので改めての自己紹介は無いとは思う。が、やはり正式な場として集い、こうして顔を合わせる事が出来たのは幸いだ。なので改めて自己紹介をしておこう。我が名はカイト・マクダウェル。諸君らの主の友だ」

「「「おかえりなさいませ、マクダウェル公」」」

「感謝する」


 各大神殿の長達の言葉に、カイトが小さく頭を下げる。彼の述べた通り、すでに各個人で一度面識を得ている。そして更に言えば何人かは彼の言った通り、まだ新人と言える時代に見知っており、出世して大神官となった者たちも居た。挨拶が必要無いと言えば必要はないが、彼の言う通り正式な場なので、というわけなのだろう。


「では、挨拶が終わった所で改めて。まずは各員の今までの努力と信心の厚さに感謝を示そう。ご苦労だった」


 まず、カイトは各大神殿の長達に今回の収穫祭の準備へのねぎらいを送っておく。これはトップとして重要な事だろう。そうしてねぎらいを行ってから、カイトは本題に入る事にした。


「さて……この場に居る大神官達には改めて言う事も無い事ではあるだろう。おそらく、代々の大神官から収穫祭の裏を聞いているかと思われる。が、やはり代々伝えられているだけで信じられている者、信じられない者様々だと思われる。なので改めて、私が明言しておこう。この祭りには大精霊達も参加する。もちろん、今年もまた」

「「「っ」」」


 カイトの明言に対して、やはり神官達は驚きを隠せなかった。それは三百年前から居る居ないに関係がない。そもそも三百年前はカイトが居たから参加していたとも見做せる。なので彼が帰還した今年からは再度参加していても不思議はない――前にソルとルナが言っていたが大抵は参加している――筈だが、やはりそれでも大精霊が参加するとなるとどうしても驚きが隠せなかったのだろう。


「とはいえ、だ。だからこそ諸君らには改めて注意をしておこう。収穫祭に参加資格が無い理由。それは言うまでもなく、彼女らが参加するからだ。身分を問わず、つまり彼女らだと誰も知る事なく彼女らが参加する為。この祭りは彼女らに感謝する為のものでもある。気兼ねなく参加してもらおう、というのが諸君らの初代達の考えだ。故に、諸君らにも同じ事を心掛けてもらいたい」

「「「かしこまりました」」」


 カイトの喚起に、神官達が頭を下げる。これに有無はない。カイトの意向は大精霊を慮っての事だ。それに何かを言うのであれば、彼らは神官たり得ない。


「よろしい。まぁ、それでも基本は私の側に彼女らは居る事になるだろう。正体を知られずに行動するわけではあるが、やはり屋台もあるが故に金だけはどうしても必要だ。こればかりは、人の世の中で活動するのであれば仕方がない事である。が、時に彼女らも個別に活動する事もある。気付いても騒がず、街の住人達と同じ様に接してくれ」


 カイトは改めて神官たちへと注意事項を説明しておく。大精霊達の存在が明るみに出れば、それだけでも大騒動だ。というよりそうなるとカイトの存在も危うくなる。色々な側面からそれは避けておきたかった。そうして、その後もカイトは神官達との間で会合を行う事にするのだった。




 会合の終了後。カイトはかたっ苦しいやり取りを終えて一つ息を吐いていた。円卓に座るのもしばらくぶりなので、少しだけ感慨に浸りたい、と言って先に大神官達を下がらせたのだ。


「はぁ……固い。固いよ、皆さん……」


 やはり神官とは真面目な者たちなのだろう。総評として、神官達は全員かたっ苦しい、もしくは生真面目、ともすればクソ真面目とさえ言い得る者たちばかりだった。

 いや、それは仕方がないのかもしれない。そもそも彼らからすればカイトは現人神にも等しい存在だ。その前で不真面目に、というのはまず不可能だろう。それはカイトもわかる。それについては辟易するしかないのであるが、同時に仕方がないと諦めてもいる。流石にその程度の分別はある。


「にしても……風と土の大神官はまさか、か。まぁ、エルフもドワーフも長寿。不思議はないか」


 一息吐いたカイトが思い出したのは、顔なじみだった大神官だ。風の大神官は基本エルフか妖精が多いとは聞いていた。任期は十年ほど。ほど、なのは体力的な問題があれば代替わりになるからだ。種族や就任時の年齢に応じて、前後するらしい。任期が死ぬまでではないのは、腐敗防止の為だ。

 なお、大神官が腐敗していれば大精霊達もすぐに察知する。そうなれば彼女らも黙ってはおらず、公爵家が乗り出す事になるだろう。マクダウェル家には政教分離の原則があるので基本として介入する事はないが、大精霊の代行として公爵家が大神官を任命している。なので同じ様に大精霊の介入があれば、免職も可能だった。


「光と闇の大神官は通例として兄弟姉妹での任官。今年は姉と弟という関係という話だったな。火の大神官は武人として鍛えるべし……豪快な方だったのは、それ故か」


 やはり大神官と一言で言っても、そこは人だ。様々な性格がある。共通していたのは純粋かつ厚い信仰心ぐらいだろう。立場、種族、年齢など様々な点が異なっていた。と言っても比較的若い、というのはカイトが感じた印象だった。


「……雷の大神官は基本、学者肌か。水の大神官は柔和だったな。ふむ……中々に面白いな」


 カイトが居た当時はまだ大神殿も出来たばかりで、各大神殿の特色というのは見受けられなかった。が、三百年も経過していればやはり各大神殿にも特色や独自色が出てくる。それを思い出して、カイトは笑っていた。

 見知っていた二人はともかく、他の六人はカイトが去った後に生まれた者たちだ。それ故、各大神殿の土壌でその極点に立つ者として立っている。なのでその大神殿の特色に応じた性格の様子だった。


「……まぁ、オレはずっと関わらざるを得ない組織か。ゆっくりと知っていく事にしよう」


 この大神官達の任命は代行としてクズハが行ったが、次の大神官の任命はおそらくカイトがする事になるだろう。今代の任期が終わるのはまだ十年近くも先だ。今回は比較的若い神官が多く、体力的にも問題が無いだろう、という事で任期は長くなっていた。流石にそこまでカイトも自分が隠れて行動出来るとは思っていない。であれば、必然として次の代では彼が任命する事になるのだろう。


「……さて。一度戻って、彼らとの会合の調整を行わないとな」


 カイトはそうつぶやくと、最後まで残っていた円卓から立ち上がる。カイトはカイトである以上、大精霊達との関係が切れる事はない。であれば、それを祀る神殿とも永遠に関わらざるを得ないという事だ。そのためにも、色々とやらねばならない事があった。そうして、彼は再びホテルへと戻って冒険部と大神官達との予定の調整を行う事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1388話『収穫祭前々日』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ