表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第67章 神話の終わりと始まり編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1404/3945

第1376話 戦いを終えて

 邪神エンデ・ニルとの戦いを終えた翌日。カイト達はというと後始末を皇国の近衛兵団に一任するとそのままマクダウェル領へと帰還していた。というわけでキャラバンを率いて移動するソラ達より一足先にマクスウェルに飛空艇で帰還していたカイトはというと、やはり各所との間で連絡を取り合う事になっていた。


「ああ。邪神の復活は非常に近い。おそらく一年以内に起きると断言して良いだろう」

『わかった。マクダウェル公、それで戦ってみた感想はどうだ?』

「強いな。やはりオレの想定通り、神話の時代の九割はあると見て良いだろう」


 アベルの問いかけにカイトは己の得た情報を共有する。やはりなんと言っても邪神の復活だ。被害を少しでも減らしたいのであれば、軍の名家であり各貴族の軍高官にも太いパイプを持つブランシェット家に話を通すのは当然の事だった。


『そうか……やはり、見通しは甘くはないか』

「元々想定はされていた事だ……そちらからすれば想定されていた中でも最悪に近しいものの一つだろうがな」

『地球の人口増については加味しろという方が些か酷な話だ』


 カイトの指摘にアベルは苦笑気味に肩を震わせる。そもそも邪神の正体とて謎だったのだ。この土壇場でようやくシャムロック達が掴んだから良かったものの、それまでは推測でしかなかった。

 それでもメソポタミア文明に関わりのある神という事はわかっていたので地球の人口増の影響も一応は考慮に入れていたが、皇国の軍上層部は影響は軽微だろうと考えていた。これは流石に彼らが甘いのではなく、アベルの言う通りそんな事を想定しろという方が無理な話だ。

 流石に異世界の神に元いた世界の信仰が影響してくる、というのは前例がない。そもそも異世界の神という話に前例が無いのだから、仕方のない事だった。


「まぁ、とはいえ……おそらく非常に強い事は事実だ。理性を取り戻していれば、間違いなく敵は強い。各貴族の軍には万全の態勢を整える様に厳命すべきだろう」

『承知した。本件については陛下からも直々に各貴族へ向けて追って通達が飛ぶ。が、当家からも先んじて内々に話をしておこう』

「頼んだ。オレは何分まだ表立って動ける身分ではないしな」


 兎にも角にもブランシェット家は軍の名家だ。そこが動いてくれるのであれば、カイトとしても不足はない。マクダウェル家が各地に散る高位の異族達との繋がりが強いのであれば、ブランシェット家は各貴族の軍高官との繋がりが強い。後は二つの大公家も動けば皇国は盤石だろう。餅は餅屋に任せるのが一番だとカイトは判断していた。


「さて……これで国内はとりあえず盤石か」


 カイトはアベルとの連携を終えると、一つため息を吐いた。今までの動きは敢えて言えば国内の動きだ。国内は足元。足元の態勢を万全にしたのであれば、次は外をなんとかすべきだった。

 皇国一国だけを護りきれば良いのではない。この案件は大陸全土、それどころかエネフィア全土を巻き込む話だ。各国へ向けて情報を共有する必要があった。となると、次に連絡を取る相手は一人だ。


「……おーう、爺。オレだ。大丈夫か?」

『うむ……こちらは今リデルとの会談を終えた所じゃ。そちらは?』


 カイトの呼びかけに応じたハイゼンベルグ公ジェイクは一つ頷くと、カイトへと先を促した。やはり皇国においておおよその政策や防衛策を主導するのは二大公五公爵だ。

 基本、皇帝レオンハルトは君臨すれども統治せず。大枠は決めるものの細かい指示を出す事は稀だ。その意向を汲んで、カイト達懐刀が動くのである。であれば、彼に連絡を取るのは当然だった。


「こっちはブランシェットとの連携を終えた所だ。とりあえず、あちらからトラン家にも連絡が行くだろう。これで国内は盤石だな」

『お主もおるしのう……うむ。それで各国の動きじゃな』


 ハイゼンベルグ公ジェイクはカイトが問いたいだろう内容を先んじて告げる。ハイゼンベルグ家の得意分野は外交。各国の動きを聞くにしても、各国に共有するべき情報を考えるにしても彼との連携は必須だった。


「ああ……各国、特に大国連中はどうなっている?」

『うむ……まずラグナ連邦と教国。これについてはやはり動きが素早い。どちらの国にも旧文明の遺跡があるからのう。ここ最近、やはり異変が観測されておる様子じゃ。向こうも実感として、邪神の復活が近い事を理解しておる』

「やはり、か……」


 カイトはエネシア大陸の大国三つの動きに納得して頷いた。これは当然といえば当然の話であるが、何もカイト達の居る皇国だけに事件が集中しているわけではない。

 旧文明の遺跡が世界各地にある事を考え、更にルーミア文明の遺跡がエネシア大陸に集中している事を考えれば、他の国でも事件が起きているのは当然の話だった。現にルーファウスもかつての狂信者の事件が影響して異変が起きていた事は明言している。であれば、ラグナ連邦でも事件が起きていないと考える方が無理があった。


「まぁ、それなら敢えて注意喚起をする必要はないな。お互いに大国としての面子もある。言えば角が立つか」

『で、あろうな。敢えてわかっているのに注意されればやはり腹も立つ。それが如何に善意であれども、のう。この二国には情報の共有のみで注意喚起をする必要はあるまい。共有については儂から行っておこう』

「頼む」


 ハイゼンベルグ公ジェイクの申し出にカイトは頷いて、大国の対応については後は彼に任せる事にする。もしこれで動きが鈍ければ、各国の奥深くに居る高位の異族達と繋がるカイト――ひいてはマクダウェル家――がそれとなく注意を促してやるだけだ。

 が、その心配もどちらの国も自国に事件が起きていた関係であまりない。であれば、カイトも特段気にするべきではないだろう。


「さて……そうなると問題は中堅国家以下の所か」

『うむ……ここは国家の規模やら遺跡の有無もあり、鈍い所は鈍い。そちらについてはお主が高位異族を通して各国の異族に注意喚起をするのが一番じゃろう』

「わかった。幸い今、龍族達が頻繁に情報共有の名目で交流を得ている。そこに流して貰おう」


 少し前にカイト達が訪れた『青龍の里』でも言われていたが、三百年前の一件で同朋が実験動物の様に扱われた事で『死魔将(しましょう)』、ひいてはその主は龍族達の怒りを買っている。

 そして一度一致団結すれば、龍族はとてつもない団結力を有している。国内外での横の繋がりも強い。彼らに頼めば、国外の龍族達を通して各国に注意喚起は出来る。龍族だ。どの国でもその意向はある程度の力を持つ。注意喚起をしてもらう程度なら、十分に可能だろう。


『そちらは任せよう。儂は儂で大国としての情報網を使い、危機感を共有可能な貴族へと危機感の共有を図る』

「頼む。流石にオレは社交界に戻れんしな」

『別に戻っても良いぞ?』

「あっははは。デメリットの多さがあるから遠慮しておくさ」


 現状だ。ただでさえカイトは月の女神の神使という立場まで加わっている。その助力が欲しいという国は山程、それこそ大国でさえあるだろう。そんな所の支援にひっきりなしに加わっていては確実にカイト自身がパンクする。皇国としてもカイトほどの戦力がそう何度も何度も他国に行かれても困る。現状だからこそ、だ。であれば、結局まだ社交界復帰は出来ないのであった。


『じゃのう。お主がもし今他国に行き、そこで教国が何か事を起こせばそれこそ一大事。今はまだ、じゃのう』

「教国、ね……やっぱり面倒だな」


 何かがある。確実に。カイトは裏で蠢く情報網を下に考えて、そう判断していた。が、ここら残念なことに情報屋達も詳しい情報は入手出来ていない。

 何故か。情報屋は言うまでもなくマクダウェル家を総トップとしている。それは大国であれば普通に知っている事だ。それ故、情報屋の拠点となるヴィクトル商会が入れていなかったからだった。良くも悪くも、あそこがカイトのスポンサーであるからこその問題だった。

 情報屋の情報ネットワークもヴィクトル商会という世界最大の多国籍企業があればこそ活させる物だ。ヴィクトル商会を遮断されては情報の入手が滞るのであった。


『……おそらく誰かが意図的に流している情報じゃろう』

「……誰かが誰か、意図は何かによって対処が分かれる事になるな」


 カイトもハイゼンベルグ公ジェイクも揃ってその顔は真剣そのものだ。二人は怪しいと言っていながらも、決して教国が敵だと断言はしていない。それは出来ないからだ。

 今裏に流れている情報は、誰かが何らかの意図を持って流している事はわかっている。わかっているが、その意図がわからない。それが一番厄介なのだ。

 それ故、その流された情報が真実かどうかもわからない。真実なら教国は敵に限りなく近い中立――現在は和平を結んでいる為――と言い切れるが、もしこれが教国と皇国を全面戦争に貶めたい何者かの策略なら乗るわけにはいかない。その意図を掴む必要があった。


『どうする、カイト。かなりの厄介な任務になるじゃろうが……』

「やるしか、あるまいよ。流石に誰がなんの目的で流した情報かは知らないと判断が出来ん。この情報はあまりに厄介だ。特に現状だと、な」


 カイトは一つの報告書に目を落とす。これは皇国の諜報部が教国の内部から手に入れてきた情報だ。そこには、こう書かれてあった。


「……異世界からの召喚実験。それも、地球以外からの」

『……』


 真剣なカイトの言葉に応ずる様に、ハイゼンベルグ公ジェイクの顔にも更に真剣さを増す。これでまだ地球からの召喚実験であるというのなら、カイトを召喚しようとしているのではないかとも考えられる。

 が、そうではない。この報告書にはエネフィアとも地球とも異なる第三の異世界の存在と、それからの召喚実験が少なくとも一度は実行されている事が明記されていたのである。実験の実行時期は和平よりも前。なおさらに判断しかねた。


『わかった。すでに協力者についても幾つか見繕えておる』

「頼む。教国に入れるタイミングなぞ滅多にあるもんじゃない。その期を逃すと痛い目に遭う」

『頼む、というのは儂の言葉の様な気もするがのう……』


 カイトからの依頼にハイゼンベルグ公ジェイクがため息を吐いた。実際に動くのはカイトだ。なので、という事なのだろう。と、そうして第三の異世界の話をしたからだろう。ふとカイトが問いかけた。


「そう言えば……セレスティア王女達は?」

『おぉ、それか。うむ。流石に調書は取らせてもらった。が、彼女らも彼女らで独自の動きをしたい、という申し出を受けた。迷惑を掛けるわけにも、と表向きは言われたそうじゃがのう。そして皇国としても彼女らに利用価値はない。なので基本は好きにさせる事にはなるじゃろう』

「妥当といえば妥当か」


 ハイゼンベルグ公ジェイク、ひいては皇国上層部の判断は妥当といえば妥当な判断だった。日本だけが異世界として注目されているが、元々それ以外にも異世界がある事は周知の事実だ。なのでこういう事は実際に起こり得るだろう、と誰もが判断していた。これが事故か事件かは横にしても、だ。

 そして彼女らが強い事は事実。実際、彼女らの敵である魔族達も弱くはなかった。それと互角かそれ以上に戦えるのであれば、皇国としてもあまり揉め事は起こしたくない。もし手荒に扱って向こうの世界から救援が来た場合、確実に大問題に発展するからだ。

 しかもカイトが旧縁を持つ世界の王族だ。カイトの注意喚起もあって彼女らは放置と決定したそうだ。もちろん、そこはそれ故にこそ恩を売りたいという思惑もある。なので支援が必要なら遠慮なく申し出る様に、とは添えておいた。


「……段々と事態が混迷としてきたな……」


 今までの動きを見直して、カイトはそう呟いた。ただでさえ動きが謎の者たちが何人も蠢いている状況だ。その上、第三の異世界まで関わってきた。一筋縄ではいかない状態だった。


「……」


 第三の異世界がかつての己が居た世界なのは偶然か、必然か。カイトはおそらく必然と睨んでいた。そしてあの世界に一度渡って理解したのは、意外と近いという事だ。


「……当然か。オレがあっち(地球)に居て、ティナがここに居るのだから。いや、それ以前に……」


 あの世界に戻る為に。カイトはここが合流地点となっているのだろうと判断する。やはり世界と世界を移動するにあたって重要なのは距離だ。距離が離れれば離れるほど、移動が難しくなる。

 これはカイトでもティナでも変わらない。そして彼らは必ず帰らねばならない。因果律を正す為に、だ。であれば、エネフィアと地球はあの世界に最も近い――あの世界から見て――異世界なのだろう。


「……第三の異世界とはおそらくあそこの事だろう……誰か居てくれれば、と思うが……」


 おそらく誰も居ないのだろう。カイトはかつて自分が居た世界にはもう誰も知り合いが残っていないだろう事を理解していた。セレスティアはレックスの末路についてはっきりとこう述べた。

 カイトとヒメアの婚姻を見届けて旅立った、と。旅立ったのが彼とその妻だけとは決して思えない。そしてカイトも当然、あの世界にはもう居ない。おそらくカイトの旅立ちに合わせて、全員が何時か遠い未来での再会を誓って旅立ったのだろう。


「……ああ、わかってるよ。守ってみせるさ……なにせオレは、勇者カイトなんだからな」


 カイトは己の親友にして好敵手の幻影を見て、そう微笑んだ。彼の愛するもうひとつの祖国だ。幾つもの思い出があそこにはある。ユリィも案内したいし、地球で今の家族を守ってくれている相棒達も案内せねばならない。守るのは彼にとっては当然だった。


「……守るものが増えてばかりだ……はぁ……お前も、さっさと来てくれよ。じゃないと支えきれないだろ……」


 今は居ない親友へとカイトは笑いながらそう述べると、そのまま立ち上がる。守るのなら、成すべきことを成す必要があった。守るものは多く、この身は一つ。少しでも前に進むのなら、ここで何時までも感傷に浸るわけにはいかなかった。そうして、彼は僅かな感傷だけを残して、その場を後にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。次回からは新章です。

 次回予告:第1377話『お披露目』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ