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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第66章 エンテシアの遺産

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第1327話 エンテシアの遺産

 ティナの手によって魔力の流れから動力炉の場所を掴んだカイト達調査隊一同。彼らはリオに臨時の拠点の防衛を預けると、そのまま下を目指して進んでいた。

 とはいえ、こちらについては構造等がわかっていない事もあり即座に行けるわけではなかった。なのでやる事は先程と変わらない。構造をマッピングしつつ進んで、下への階段を見つける事だった。というわけで、調査隊は部隊を幾つかに分けて行動していた。


「エル。通信機の状況はどうだ? 通信が入ったが……」

『……そっちはどう? 戦闘、終わった?』

「まだだ……が、この程度は問題ないな」


 カイトは偶然に遭遇したゴーレムの一団を無力化しつつ、エルーシャの問いかけに答えた。エルとしては安全な所で連絡を返す事を考えていたが、この程度の敵にカイトが苦戦するわけもない。なので戦闘中に普通に連絡を返したというわけである。とはいえ、決して雑魚だったというわけではない。カイトとしても目を見張る物があった。


「材質は魔法銀(ミスリル)。技術的には末期のゴーレム達より少し高いという所か。この遺跡を保有していたと思われる貴族か研究者の技術力の高さが窺い知れるな」

『うん。こっちも一体一体なら大丈夫だけど……って、そうじゃなくて。戦闘中に連絡を返さない』

「安心しろ。こっちには背後にも目がついてる」

「うおりゃ!」


 カイトの背後に回り込もうとした人型のゴーレムに向けて、何時も通り肩の上に腰掛けるユリィが雷撃を発射する。別にカイトが背後を気にする必要もない。彼女が居るのだ。不安なぞどこにもありはしなかった。


『信頼してるのね』

「当たり前だ……こいつはなにせ、オレが最も信頼する相棒の一人だからな」

「えへへ」


 カイトの掛け値なしの信頼にユリィが嬉しそうに笑顔を浮かべる。最も信頼する相棒の一人。彼の相棒三人に優劣はない。だから、最も信頼という一つしかない称号は三人に与えていた。完璧に同格だからだ。


「ってわけで、油断してても問題ない。それになにより……オレの流派にとって見切りは最初に教え込まれる事だ」


 カイトはユリィに頼るだけでなく、神陰流を活用して敵の攻撃を回避する。結界が魔物に有効でゴーレムに通用しにくいのに対して、ゴーレムに対して神陰流は特に有効だった。神陰流は流れを読む事に長けた剣術だ。隠そうともしない――そもそも隠すという考えさえない――ゴーレム達の動きなぞ予め教えられている様な物だった。


『そう。まぁ、それなら良いんだけど……あ、そだ。こっちで階段見付けたよ』

「お、そうか。わかった。そっちに合流する……ティナ、聞こえているな?」

『うむ。わかっておるよ。こちらでマッピングはしておる。エルーシャ達の所への道案内は任せよ』

「頼む」


 ティナからの返答にカイトは頷いて、さっさと討伐を終わらせる事にする。


「ユリィ、なるべく破損なく片付ける……久しぶりにやる」

「おろ……本当に久しぶり?」

「本当に久しぶりだ……しびれるなよ?」


 カイトはそう言うと、少しだけニヒルに笑って見せる。そうして、彼の姿が少しだけ変わり紫紺の軽鎧を身に纏った。


「<<雷の旗手ライトニング・フラッグ>>……ライトニング……バスター!」


 カイトは雷を纏う旗を取り出すと、そのまま地面にしっかりと突き立てる。そうして、旗を中心として強烈な紫電が迸った。


「「「……」」」


 一瞬で全滅したゴーレム達を見て、カイトが率いていた三ギルドの冒険者達が沈黙する。そうして、今までほとんど見なかった意見が一致した。


「「「最初からやれ!」」」


 まぁ、道理である。というわけで、そんな声が響き渡る暗い廊下での戦闘は、カイトが久しぶりにスタイルチェンジを使った事で早々に決着する事になったのだった。




 エルーシャ達の報告からおよそ30分。カイト達は再びリオの守る拠点に戻っていた。下への階段を探すという事で一同はここを中心として各方向に散っており、道案内を含めてもここで合流するのが最適と判断されたのである。

 というわけでそこにはカイトとエルーシャ達だけではなく、瞬やアル、ルーファウスもまた集合していた。と言ってもアルとルーファウスの両名はたった今、到着したばかりだった。とはいえ、これには事情がある。


「あ、もしかして僕のチームが最後?」

「ああ……まぁ、道中で戦闘が多めだったらしいな。迎えもやったのはお前達の所だけだ」

「どうにもゴーレム達を転送する為の簡易の『転移門(ゲート)』があるみたいだよ。何度かひっきりなしに増援が来て、撤退したからね」

「報告は聞いてる。ルーファウスもお疲れ」

「いや、この程度はどうということもなかった」


 カイトのねぎらいにルーファウスが頭を下げる。流石にこんな所でいがみ合う事はない。なのでルーファウスも普通にアルへの救援を受け入れ、彼が率いていた部隊を率いてアルの救援へと向かったのである。なお、何故彼だったかというと、彼が一番最初に拠点に戻ってきていたからだ。なので支援要請を受けてそのまま出ていったというわけである。


「とはいえ、少し休憩をした方が良いな。どの程度のペースだった?」

「えっと……大体5分で10体程いっぺんに出て来たかな。増援のペースとしちゃかなりだったよ」

「ふむ……そうなると少し考えた方が良いか」


 アルからの報告にカイトは少しだけ思考を巡らせる。カイト達の所ではアル達が出会った様な簡易の『転移門(ゲート)』は見ていない。おそらくどこかに定点として設置して、そこから増援要請があれば増援が来る様にしていたのだろう。


「ティナ。先程の反応から、どこかの警備システムが生きている可能性は見えたか?」

『ふむ……そう言えば最下部の幾つかの地点で生きている反応があったのう』

「予備電源というところか」

『じゃろう。お宝じゃと思うても良いじゃろう』


 ここが何をしていたかはわからないが、ゴーレムの性能といい使われている技術といい、少なくとも重要な施設であった事だけは事実だ。であれば、なにかを守るために外部電源があっても不思議はない。そしてその何かは間違いなく、この遺跡の者達にとって重要な資産である事が簡単にわかった。


「ふむ……可能なら、そこの確認もしておきたい所か」

『じゃのう……言うても先にメインシステムを復旧して、ホタルをリンクさせるのが先決じゃろう』

「……そうだな。わかった。先に進む」


 カイトは気を入れ直すと、再び動力炉を探す為に行動を開始するのだった。




 それから、更に一時間。カイト達は地下二階の調査を進めていた。どうやらこの階層には先の様な大広間はなかったらしい。が、代わりにかなり入り組んでいて、迷路の様だった。


「戦闘音……ティナ。だれか戦闘中か?」

『うむ。瞬の所が戦闘中じゃ』

「開始からどの程度だ?」

『まだ少しじゃ』

「なら、戦闘に加わる」


 カイトはティナからの情報に、即座に介入を決める。敵は強くはないが、弱くもない。瞬を温存させられる所で温存させるべきだった。そうして移動速度を上げて曲がり角を曲がると、戦闘中の瞬達の姿が見えた。


「っ! カイト! 助かる!」

「ああ……ユリィ!」

「はいさ! <<雷付与ライトニング・エンチャント>>!」

「さて、行くぞ!」


 カイトはユリィによって雷を付与された旗をくるくると回して、見得を切る。そうして、人型のゴーレムの胴体を穂先とでも言うべき所で打ち据えた。


「そ、それで戦うのか」

「意外とこれ、楽だと気付いた」


 旗の一突きで一体のゴーレムを倒すカイトを見て、瞬が唖然となる。まぁ、たしかに旗を武器に戦うのは如何に彼でも初めて見るのだろう。


「それに何より、ほら、ほとんど無傷で手に入れられるだろ?」

「なるほどな……確かに」


 カイトは内部に雷を叩き込んで、ゴーレム達を無力化している。それ故に外観としてはほとんど無傷に等しく、敢えて言えば胸のあたりにちょっとした凹みが出来ている程度だった。


「ふむ……」


 そんなカイトを見ながら、瞬はどうやってか己にも同じことが出来ないか考えてみる。別に破壊しては駄目とは言われていないが、このゴーレムとて重要な歴史的資産だ。なるべく無傷の方が良いのは当然だ。


「棒にしてみれば?」

「うん?」

「穂先だけを消すんだよ。今の瞬なら、出来るはずだよ」


 悩んでいた瞬に向けて、ユリィがアドバイスを送る。それに、瞬ははっきりと同意する。


「出来る事は出来るがな。出来ても無理だ。扱い方分からん」

「そりゃそうでしょ……でも別に棒術として戦う必要は無くない?」

「……それもそうか」


 ユリィの指摘になるほど、と瞬も頷いた。極論かつ暴論だが棒と槍は穂先があるか無いかの差だ。要は穂先の無い槍として使えば良い。それなら、瞬にも使うことが出来た。


「……こう、だな」


 そうと決まれば即座に実行。瞬は即座に手に持っていた槍を編み直して、棒を創り出す。今までほぼ毎日槍を握っていたのだ。穂先の重さは既に彼の手の中にあった。故に、それが無い槍の柄をイメージするだけだった。


「はぁ!」


 編み出した棒を使い、瞬は突き出しを繰り出してみる。その感覚には若干の違和感がないでは無かったが、他の武器を使うよりもはるかにやりやすかった。が、結果は違った。


「……むぅ?」


カイトと同じようにやったはずだったのに、瞬が突き倒したゴーレムの胴体には大きな凹みが出来上がっていた。それどころか一部には断裂が生じていて、内部の基盤が見えていた。瞬の思った以上に装甲が柔らかかったのである。


「力み過ぎ。電撃で倒すんだから打撃は殆ど必要ない。敵の動きをよく見て、寸止めで良いんだよ」

「……そ、それをカイトはやっていたのか……」


ユリィからの助言に瞬が相も変わらずの技量に呆れ返る。よく見れば分かった事だが、カイトは殆どゴーレムを叩いていなかったのだ。別に接触させなくても電撃は流し込める。故に手前数ミリの所で止めて、電撃を流していたのである。


「ふむ……難しいな。だが……これは良い訓練になる」

「そうだね。これはすごい難しい。でもだからこそ、良い訓練になる。魔物相手にこんな事はしないからね」


笑みを浮かべる瞬の言葉に、ユリィもまた同意する。見極めねばならない事は非常に多い。敵の動き。装甲の強度。流し込むべき電撃の威力。そこらを一瞬で判断して、その上で寸止めだ。非常に難しい事は敢えて言うまでもないだろう。


「訓練は良いが、怪我はしない様にな」

「分かっているさ。それに<<雷炎武(らいえんぶ)>>を参式にすれば十分に勝てる」


カイトの忠告に瞬はしっかりと頷いた。これは訓練ではなく実戦だ。油断は禁物だ。そんな瞬だが、再度棒を突き出してみる。


「ダメか!」


今度は遠過ぎた。寸止めを心掛けた結果、逆に遠くになり過ぎて電撃が届かなかったのだ。そんな瞬に、カイトがアドバイスを出す。


「雷で穂先を創ってみろ。せっかく加護を持つんだし、雷のコントロールの訓練にもなる」

「分かった。やってみる」


瞬はカイトの助言に従って、魔力で槍を編み出すと同様に雷で穂先を創り出してみる。がこれがまた難しかった。


(雷が……ブレるな。いや、当然か)


スパークを発する穂先を見て、瞬は苦い顔になる。どちらかといえば槍の穂先というよりも、穂先から電気を発して犯罪者を無力化するさすまたに見えた。まだまだコントロールが甘い証拠だった。

とはいえ、これでも問題はない。瞬はそう判断して、敵を打ってみる。と、これは偶然ではあったが、それは結果として一つの良い結果をもたらした。


「はぁ!……うん?」


自分が意識するよりも僅かに前に吹き飛んでいったゴーレムを見ながら、瞬が思わず目を丸くする。おまけにその胴体には殆ど傷が無く、瞬が理想としていた通りでさえあった。だがそれ故にこそ、瞬には何が起きたかさっぱりだった。


「どうなっているんだ?」

「どうやら穂先のイメージで編んでいたからだろう。雷が僅かな実体を得ていたらしい。しかもコントロールが甘く穂先に鋭さが無かった事で、偶然ではあったがクッションの効果を果たした、というわけだ」

「なるほど……う、うーん……」


禍転じて福となす。カイトの解説を聞く限りではそう考えて良いのだろうが、これは敢えていえば瞬の技術の未熟さ故だ。故に素直に喜べば良いか嘆けば良いかわからなかった。


「次は……ああ、終わりか」


どうやら今の一撃で仕留められたのが最後だったらしい。瞬は若干の消化不良を感じつつも、棒を消す。その一方、カイトは次へ向けて動いていた。


「良し……ティナ討伐終了だ。次はどっちの方向だ?」

『うむ。次は……』


カイトの求めにティナは支援のため作っていたマップを見ながら、カイト達に行くべき場所を指し示す。そうしてそこでカイトの班と瞬の班は再び別れて行動する事になるのだった

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1328話『火を囲み』

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[一言] 真ん中らへん ゴーレムの性能と良い使われてる技術と良い❌ ゴーレムの性能といい(言い)使われてる技術といい(言い)〇 かと
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