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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第62章 南の国の陰謀編

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第1216話 合流

 ハイゼンベルグ公ジェイクとの会談を受けてマリーシア王国国王が動いた頃。カイト達はようやく、その視界の中にシャルマンが主導する連合艦隊の猛追を受けるエルリック艦隊を捉えていた。


「見付けた! ティナ! 信号を送れ!」

『うむ!』


 自身らも討伐軍の猛追撃を受けながら艦隊を視界に捉えたカイトの指示を受けて、ティナが即座に通信を入れる。そしてそれは即座に、エルリック艦隊の旗艦へと届けられた。


「通信、入りました! マクダウェル家に雇われた冒険者達です!」

「彼らが追いついたか! 追撃は!?」

「猛追撃を受けている模様!」


 ハンニバルの問いかけにオペレーターがレーダーが捉えている様子を即座に報告する。これに、僅かにハンニバルが苦味を浮かべる。


「そうか……」


 カイトの実力はコルネリウスとその側近達や翔から聞いている。そしてそこに日向と伊勢というマクダウェル家の二枚看板がある、というのも聞いている。故にこの困窮した状態での強力な増援は嬉しい事は嬉しいが、猛追撃を受けながら、というのが若干頂けない。

 出来れば撒いて欲しい所であったが、彼が把握している飛空艇の性能を考えれば合流出来ただけまだ良かった、という所だろう。それにここまで討伐軍の追撃を受けなかったのは彼らが殿を務めてくれていたからでもある。文句も言えない。


「いや、この状況でひとまず彼ら程の増援が来た事を喜ぶ事にしよう。彼らに支援を頼め! 包囲を一部破り、更に加速する!」

「了解です!」


 ハンニバルの指示をオペレーターは即座にカイト達へと伝達する。出来れば速度を出せる最大にしておきたい所であったが、実はそれは少し厳しかった。半包囲されている状態だったのでどうしても速度より防御を選択せざるを得ず、リルの支援分の加速はまだ出来ていなかったのだ。そうして、その支援要請がカイト達の所にも届けられた。


『聞いたな?』

「おーけー……そろそろ、よい頃合いか」


 既に風の匂いの中に潮の香りは混じっている。おそらく海まっで50キロという所だろう。飛空艇の速度を考えれば、後20分もすればマリーシア王国を抜けられる。そこまで行けば、安全圏だ。


「向こうの準備は?」

『暇しておるそうじゃぞ』

「だーろうな。よくもまぁ、動いてくれたもんだ」


 カイトは僅かに笑みを浮かべる。今回、実はダメ元でとある人物に協力を依頼したのであるが、暇なので受けてくれた。確実に勝ちを得られる切り札になってくれたのである。


「さて……ホタル、後方の艦隊に一度突撃を仕掛けろ。隊列を乱させれば良い」

「了解」

「一葉、二葉。お前たちはホタルの支援を。ソラ、少し支援が無くなるが、頑張れよ」

「「ご命令のままに(イエス・マイロード)」」

「おう!」


 カイトの指示を受けたホタルが身を翻して後方へと突撃し、それを支援するように二葉が飛び立った。更に、それらを支援するように一葉が狙撃を開始する。と、そんな三人が行動を開始した一方で、指示を与えられなかった三葉が口を開く。


「マスター。私はー」

「お前? お前はオレと共にあっち」

「やった! 思いっきりぶっぱで良い!?」

「不時着までな」

「はーい!」


 カイトの指示を受けて、三葉はようやくと言った感じで魔導殻の武装を一気に展開する。カイトの指示は、再びの飽和攻撃であった。


「良し……日向。オレ達は突撃して向こうと合流する」

『はーい』

「伊勢、来い!」

『はい』


 カイトは再び伊勢を抱くと、しっかりと日向の背に跨った。そうして、三葉の砲撃が始まると同時に日向が一気に突撃を開始する。


「砲撃!? どこからだ!?」

「後ろ!? どこからこんな量の砲撃が!?」

「小娘!? あんな莫大な魔導砲を一人で操るだと!?」


 後ろからの唐突な飽和攻撃にエルリック艦隊を包囲していた連合艦隊の艦長達が大いに目を見開いた。後ろに居るのはせいぜい小型の飛空艇一隻。彼らもこんな飽和攻撃が飛んでくるとは思ってもおらず、完全に虚を突かれていた。そうして、僅かに乱れた包囲網をカイトが突破する。


「翔! まだ無事だな!」

「カイト!」


 翔は日向から飛び降りて甲板に着地したカイトに喜色を浮かべる。やはり相当まずかった様子だ。甲板はかなりボロボロだ。中には内部へ向けて一部亀裂が入っており、そこから敵兵に乗り込まれてもいた様子だった。が、まだ五隻とも健在だった。


「おっさんは?」

「コルネリウスさんなら、あそこだ」

「おぉおぉ、頑張ってるな」


 カイトは翔の指し示した方角で吼えているコルネリウスを見て、相当死力を尽くしている事を把握する。身体中傷だらけで、ひと目見てその激闘の程は理解出来た。と、言うわけでカイトは早速こちらの支援を開始する事にする。


「ユリィ、支援頼むぞ」

「はーい」

『ごしゅじんさま、行ってきます』

「おう」


 カイトは伊勢の出陣を聞きながら、即座に準備を開始する。


「まずは、立て直しだな」


 カイトは今自分が何をすべきか、を即座に判断して無数の盾を生み出して障壁全体を覆い尽くす。一時的に補給を取らせる事にしたのだ。そうして唐突に出来た巨大な覆いに、コルネリウスが目を見開いた。


「これは……」

「おっさん! 無事だな! 今の内に補給しろ! そのままじゃ後20分は保たん! この盾なら、10分は保つ! 残り10分、耐えられるようにしろ!」

「! かたじけない!」


 ようやく、カイト達が合流したのか。コルネリウスは彼の言葉を聞いてそれを把握する。そしてであれば、と僅かに彼も張り詰めていた気を抜いた。今までは自分に匹敵する者が居なかったから、死力を尽くしていただけだ。カイトが来てくれたのであれば、話は変わってくる。


「総員、可能な限り密集陣形を取れ! もう一度、最後の立て直しだ!」


 コルネリウスは声を荒げて、部下に向けて集結を促す。カイト達が来たのなら、別れて戦う必要はない。彼らが一軍に匹敵するぐらいわかっている。なら、彼らも確実に守り抜くべく戦力を結集するだけだ。


「「「おぉおおおお!」」」


 コルネリウスの号令を受けて、兵士達が鬨の声を上げて最後の死力を振り絞り、敵を飛空艇の外へと追い出していく。そうして、即座にコルネリウスの下へと集結した。


「……全員、ボロボロだな」

「中佐よりはマシですよ」


 コルネリウスの苦笑に側近の一人が苦笑する。全員、ボロボロだった。が、それでもまだ大半は健在で、彼の側近は一人も欠けていない。


「そうか……今の内に補給を取れ!」


 側近の言葉に笑いながら、コルネリウスは即座に指示を与える。10分しか、時間は無い。その間に全ての用意を整える必要があった。


「良し……これで、ひとまずは耐えられそうか。翔、お前も今の内に補給しておけ」

「ああ、悪い」


 翔はカイトから投げ渡された回復薬を一気飲みする。隠形を使える彼はなんとか隠れながら補給も出来ていたが、やはりそれも可能な限りという話だ。出来るのなら補給はしておくべきだった。と、そんな二人の所にリルがやって来た。


「二人とも、来たわね」

「リルさん。支援、感謝します」

「良いわ。貴方もしっかり、約束を守ってくれている様子だものね」


 カイトの感謝にリルが目を細めた。実はこの戦いに入るに至って、カイトは密かにルミオ達に向けて支援を差し向けていた。彼らは気付いた様子はなかったが、それが密かに彼らをこの激闘でも守り通していたのであった。


「まぁ、約束ですから」


 カイトは五人に貼り付けた式神へと密かに魔力を送る。身体性能を向上しているわけではなかったが、背後からの奇襲や万が一の苦境の場合等ではそれが流れ弾に扮して攻撃を仕掛けてくれていたのであった。と、そんなカイトに、向こうも気付いた様だ。


「カイト!? いつこっちに!?」

「今だ。この盾はオレが創ってる」

「こ、これを……」


 ルミオの問いかけに答えたカイトに対して、ミドが艦隊を覆い尽くす無数の盾を見て頬を引きつらせる。やはり全員無傷とはいかなかったが、それでも怪我の程度は冒険者達の集団の中では軽度だしまだまだ壮健だった。


「お前らも回復薬を飲んでおけ」

「あ、おう。ルミオ、回復薬の予備あるか?」

「ああ、オレが持ってきている。飲んでおけ」

「っと、サンキュ」


 ルミオが回復薬を入れているウェストポーチへと手を伸ばした所で、カイトが先んじてミドへと回復薬を投げ渡す。そうして、ルミオとミドが回復薬で回復している一方でメイがリルへと問いかけていた。


「お祖母様、いつこちらに?」

「今……じゃあないわ。ずっと前から飛翔機の調整をしていたのよ」

「う、動いているのを、ですか?」

「そうね。よく出来た構築だったけれど、若干甘さが見受けられたわ。そこらを修正して、としていたら少し遅れたの。ごめんなさいね」


 目を丸くするメイに対して、リルは妖艶にクスクスと笑う。彼女は適時支援を入れていたものの、ああいう奇襲が使えるのは一度だけだ。一度起きれば、次にあるかもと敵も危惧するからだ。そして危惧していれば、同じ手は使えない。奇襲や奇策は一度目が最大の効果を発揮するのだ。二度目には効果は薄れるのである。

 故に万が一に備えてあの支援をした以降は影に隠れて密かに飛空艇が墜落したりしないように支援していたらしい。とは言え、もうカイトが来た以上は隠れる必要もないと判断したのであった。


「さて……じゃあ、最後の一勝負、行きましょうか」

「そうしましょう」


 リルの言葉にカイトが頷いた。なんだかんだ話していたり回復していたり、とすれば10分なぞあっという間だ。そうして、丁度10分で盾が完全に消失する。


「はい、いらっしゃいませー!」


 盾の消失と同時に、カイトは甲板に手を当てて無数の武具を生み出した。そこに更に、ユリィが一手間加える。


「いってらっしゃーい!」


 ユリィの創り出した魔法陣へと、カイトの創り出した武具が突入する。そして、次の瞬間。突入した武具の3倍の数が生み出された。


「「「なっ!?」」」


 盾が消えたので再び攻勢を、と考えて揚陸準備を整えていた敵艦隊は、まさかの武具の雨に泡を食う。流石にこちらはタイミングが読めずこれからすわ揚陸というタイミングだったので誰一人として降下はしていなかったが、それ故に彼らの放った無数の雨は誰にも防がれる事なく器用に揚陸艇の飛翔機を貫いていく。


「「さよーならー」」


 ばいばーい、とカイトとユリィがメインの飛翔機を穿たれて置いてきぼりにされる揚陸艇に手を振る。メインの飛翔機をやられた所で墜落には至らない。が、推力は落ちるので、飛翔出来ないのであった。

 なお、万が一に備えて飛空艇にはいくつかの予備の飛翔機が備わっていて、それで不時着程度なら出来るので安全である。と、いうわけであっという間に終わった敵の攻勢を見て、翔が呆然と呟いた。


「……相変わらず便利だな、それ」

「だろ?」


 カイトの莫大な魔力量と適性を背景にしている為出来るのはカイトぐらいなものであるが、やはり大群を相手にするには便利な攻撃に翔は思わず羨望を浮かべていた。

 なお、実際にはこうなれるのは慣れている彼だからであって、およそのカイトの正体に当たりを付けているリルは兎も角、他はコルネリウス達も彼らに協力する冒険者達も唖然となっていた。と、その一方でカイトは少し自慢げだった。


「まー、こんぐらいしか他人に出来ない事で出来る事無いからな」

「いや、それ素直に信じらんねぇよ……」

「ま、つってもこれが出来るのは一発ぐらいだ。波状攻撃になると効果は薄れる。今回みたいに敵を食い止めて、と出来たから出来る事だ。次からは来るぞ」

「お、おう……と言うか、お前が来て俺がやる事ってなんなんだろう……」


 もうこいつ一人で良いんじゃないかな、と思わないでもない翔はカイトの言葉に再び構えて、敵の攻撃に備える事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1217話『勝利の切り札』

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