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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第62章 南の国の陰謀編

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第1185話 語られざる戦い

 タバコの密造者とその生産地の証拠を確保する為、マリーシア王国ミリックス伯爵領に乗り込んだカイト達。とりあえずミリックス領ではタバコが蔓延している事を着いて早々に確信したカイト達であるが、それをひとまず横に置いて反乱軍討伐に置いていかれない様にするために一先ずは領主より依頼を受ける為に伯爵邸へと足を運んでいた。

 と、そうして伯爵邸に足を運んだのであるが、カイト達がランクAやランクBの冒険者集団であるのを見るや、即座に伯爵によって謁見の機会が設けられる事になっていた。


「おぉ、わざわざ遠い所よりよく来てくれた。儂はライアード・ミリックス。拙くも国王陛下より伯爵の地位を授けられ、この地を治めておる。依頼を見たという話じゃったのう。感謝の言葉も無い」


 謁見の間に現れたのは、一人の恰幅の良い男性だ。年齢はおよそ50前後という所だろう。運動をしている様には見えず、たるんだ贅肉が見て取れた。

 とは言え、貴族だ。これは珍しい事でもない。そんな彼はオルガマリーらを見ながら嘆き悲しむ顔と感謝の表情を織り交ぜながら、席に着いた。そうして、彼は早速とばかりに話に入る。


「して……来る時に庭をちらりと見たのだが、あの巨狼はお主らの誰かの飼い犬か?」

「私のでございますわ、伯爵。小さいのはあの子の子。今はサブマスターのこちらの少年に調教を任せている所です。こちらの少年は私の弟子。他の者は少々故があり、私が面倒を見ている様な形です。ですので魔物使い(モンスターテイマー)は我ら二人だけですわ」

「おぉ! やはり魔物使い(モンスターテイマー)であったか! いや、実に見事な巨狼だ。あのような魔物を使役するのであれば、そなたもさぞ強いのであろうな」


 ライアードはオルガマリーの言葉に目を見開いて、歓喜を露わにする。魔物使い(モンスターテイマー)の力量は使役する魔物を見れば分かる。ゆえにあの強そうな巨狼を見て、オルガマリーがそのランクに違わぬ実力者だと確信したのだろう。


「近くでご覧になられますか? 巨狼は完璧に調教が済んでおりますし、子の方も竜の方もこの弟子には従順。近くで見る分には構いません」

「おぉ、そうか。それはぜひとも見せてもらいたい」

「かしこまりました」


 どうやら、贅肉でダルンダルンではあるが肝は座っているらしい。ライアードは笑いながらオルガマリーの提案に同意する。なお、オルガマリーとて何も酔狂で問いかけたわけではない。しっかりと理由があっての事だ。そうして、オルガマリーは伯爵の求めに応ずる形で指笛を作って笛を鳴らした。


「おぉ……遠くで見た時よりも遥かに雄大で強大だ。これはなんという名だ?」

「申し訳ありません……何分魔物使い(モンスターテイマー)にとって使役する魔物の名は何より重要な事。安易にお教えすることは……」

「おお、そうであったな。名を呼ばれ反応するのは調教されている証。安易に明かせぬのは当然の話であった。失礼した……あの小さいのには触っても問題はないか?」

「はい……大丈夫ね?」

「はい、既に私の命なく噛み付く事は無い様に調教しています。が、決して迂闊な事はなさいませんよう」


 オルガマリーの問いかけにカイトは笑顔で同意する。それに、ライアードがおずおずという形ではあるが、日向の頭をなでてみる。流石に彼も巨狼の方を撫ぜる程の度胸は無かったようだ。


「わかっておるとも……ほう。実に良い毛艶だ。これがここまで大きくならぬのであれば、ぜひとも買い取りたいと言いたい所であろうが……」

「流石にまだ躾も狩りの調練も終わっておりません。生まれた時より一緒にいさせているこの弟子にのみ従順というだけで、私でもまだ時折言うことを聞いてはくれません。決してお譲り出来る領域では……」

「そうか。それは残念だ」


 ライアードはオルガマリーの言葉を聞いて残念そうに日向の頭から手をどけると、再び自分の席へと戻っていく。その顔は本当に残念そうで、演技をしている様子はなかった。


「ふむ。とは言え、実に見事な巨狼よ。まさかこの様な巨狼を使役する冒険者を迎え入れられるとは、実に幸先の良い事だ」


 ライアードは相好を崩して何度も頷いた。どうやら、カイト達の来訪を敵を殲滅する好機と捉えたようだ。そんな彼を見て、オルガマリーが問いかけた。


「ふむ……もしや、手をこまねいておいでなのですか?」

「……うむ。恥ずかしい事にエルリック将軍は我が国の誇りの様な男であってな。それがなぜこの様なことに……いや、これをお主らに語っても詮無きことか。とは言え、兵士達にも動揺が走っている上、彼奴は英雄の名に恥じぬ用兵の妙を修めておる知将。それにその息子もまた、猛将で知られるものすごい戦士でのう……飛空艇の各所に取り付けられた魔導砲を使いこちらを牽制し、よしんば近づけても息子の方に阻まれて如何ともしがたい」


 ライアードはオルガマリーの問いかけに嘆きを僅かに滲ませながら、自分達の苦境を語る。そうして、怒りを滲ませた彼は僅かな嘆きを更に見せた。


「にしても……実に嘆かわしい。儂とエルリック将軍はもうかれこれ30年程の付き合いになってな。息子の方は生まれた時から知っておる。まさか裏であんな事をしているとは、儂の目が曇っておったわ」

「いえ……私はそのエルリック将軍を存じ上げておりませんが、そのような知将であれば裏の顔はわからないでしょう。敵を称賛すれど、閣下がご自分を卑下なさらないでください」

「……いや、かたじけない。旧友に裏切られた事とこの様な事態になっておる事で、僅かに気弱になっておったのかもしれんな。貴殿らを得た以上、その弱気は捨てる事にしよう」


 ライアードはオルガマリーの言葉に感謝を示して、僅かに照れを見せながら何度となく頷いた。とは言え、ここまでは敢えて言えば社交辞令。本題に入る為の前準備だ。そうしてそれをきっかけとして、本題に入る事にした。


「おぉ……あまり長々と話しても戦っておる兵士達に悪い。早速、話に入ろう。お主らは遠方から来たとの事であったな? であれば、事の次第は詳しくは知るまい……おい」


 ライアードは幾度か手を鳴らして、側仕えの執事を近寄らせる。


「この方々にあの一件をお見せしろ」

「かしこまりました」


 執事はライアードの言葉に頭を下げると、何らかの準備を行っていく。そうして、しばらく。カイト達の見守る前で、ライアードの後ろに大きなモニターが下に降りてきた。それが全て下がった所で、執事が口を開いた。


「これからご覧いただくのは、エルリック将軍の飛空艇に偶然乗り合わせた兵士が最後に送ってきた通信です。それを御覧ください」


 執事はそう言うと、スイッチを押して映像を開始する。そうして映し出されたのは、一人の若い兵士だ。後ろには扉があり、誰かが扉を壊そうとしている所が見て取れた。


『誰でも良い! これを聞いていれば国王陛下に届けてくれ!』


 どうやら、兵士は相当追い詰められている様子だ。顔には満面の焦りが滲んでいた。その形相はまさに必死で、一刻の猶予も無い事が察せられた。よく聞けば彼が塞いだだろう扉の先では兵士達の物だろう裏切り者、だの開けろ、だのという言葉が飛び交っており、相当危険な状況にある事がわかる。


『マリーシア王国南部ミリックス領の外れ! そこに放棄された鉱山が幾つかある! その合間にタバコの畑がある!』


 兵士はどうやら盗み出しただろう書類をカメラのレンズへと向ける。そこにはこのミリックス領の外れの位置が記されていて、そこにタバコ畑があることが察せられた。そうして、彼は更に焦りながら情報の伝達を行う。


『この飛空艇の飛翔機に爆薬を仕掛けた! なんとかそれで一時的にだが航行不能にする事が出来るはずだ! 早急に軍の用意を整える必要がある! 増援を求む! 繰り返す! 増援を、っ!』


 兵士が増援を求める言葉を繰り返すとほぼ同時に、彼の背後の扉が大きく歪む。強大な力が加わって、強固な扉が破られつつあるのだろう。そうして、その次の瞬間。扉が大きく裂けて、一人の大柄な若い男が入ってきた。彼は相当に怒っている様子で、それはまさに鬼の様な形相だった。


『見つけたぞ、裏切り者め!』

『っ! ちぃ!』


 兵士が入ってきた敵を見て、顔を顰める。が、その兵士の懐から何かが出た。それは大きさとしては手のひら大で、魔石の様に見えた。敢えて言えば、手榴弾のようにも見える。兵士は振り返るなり、それを握りしめたのだ。それに、敵が大いに焦りを浮かべた。と、そこで一度何故か映像が停止する。


「この入ってきた男が、エルリック将軍の息子コルネリウス。この男がまた手練れでな。お主らにあたってもらう事になるだろう」


 ライアードは停止させた画面の中で驚きを浮かべる若い男を指し示した。どうやら、彼が今回のエルリック一派で一番の実力者なのだろう。この映像もどちらかと言うと彼を紹介する趣が強いのかもしれない。戦う前に敵の姿を見せておこう、というわけなのだろう。そうして、それを示したライアードが一つ頷くと再び映像が再開する。


『っ! 貴様、何を考えている!』

『この距離なら、いくらあんただって無事じゃ済まないだろ!』

『っ! 総員、退避!』


 何らかのスイッチを押した兵士を見て、入ってきたコルネリウスが大慌てで仲間達へと避難を命ずる。そうしてその一方。兵士はというと、何をやったのかを理解しているらしく脱力して段々と輝きを増していく魔石を取り落とした。


『はは……』


 兵士とて早まった行動だというのはわかっていたのだろう。最後に、そんな謝罪が誰かへと発せられる。そうして彼は涙を流しながら、慌てた様子でこちらへと顔を向けた。


『っ! そうだ、今なら逃げられる!』


 彼はそう言うと、録画していた装置を手に取って立ち上がる。そうして、あらん限りの力で壁をぶち抜いて、外への逃げ道を作り出す。敵は引いた。今なら、逃げられる可能性があった。咄嗟に死中に活あり、と気付いたのだ。

 が、その直後。逃げられる事に気付いた彼の逃げる事も叶わず爆発が起きて、衝撃で持っていた録画機器が大きく吹き飛ばされていき、何かにぶつかって映像は完全にブラックアウトする。録画機器が壊れたのだろう。


「……以上です。この後、爆発に気付いた付近の住人達がこれを届けてくれ、裏切りが発覚したわけです」


 執事が映像の終了を明言する。それと共に暗くなっていた室内が明るくなり、モニターが上がっていく。そうして、改めてカイト達の方を見たライアードが口を開いた。


「……うむ。実に見事な兵士であった。最後は残念であったが……かのような若者こそ、本当に英雄と言うべき者なのだろう。あれが大成しておれば、かの大勇者に恥じぬ我が国の本当の英雄になれたのやもしれん」


 ライアードは非常に残念だ、という気持ちを滲ませながら首を振って兵士の死を悼む。まぁ、ここらは多大な演技を含んでいるだろう。とは言え、たしかに職務に殉じたのであれば、統治者として悼むのは道理だ。ゆえにカイト達も気にはしなかった。


「それで、今見てもらった様にタバコ畑はこの地の東部。隣の侯爵家との境にほど近い所にあった廃棄された鉱山の合間にあってな。まさか侯爵様の麾下であった彼がこの様な事を我が領土でこの様なしているとは……儂自身、情けない限りじゃ。廃坑と言うて長々と放置しておったのがまずかった。この廃坑については隣のラフネック家に管理を依頼し、その上で罰は陛下より賜るつもりであるが、今は早急に現状を回復せねばならん」


 伯爵は改めてエルリック将軍の一派が占領する一帯をカイト達へと通達し、その上で自戒の念と決意を語る。そこは捨てられた鉱山がある一帯で、今は周囲に幾つかの小さな村が点在するのみだ。鉱山が盛んだった昔は栄えたのだろうが、今はもうその面影も無かった。


「今はなんとか儂らが奪取して封鎖しておるが、陣地に近づけば被害は甚大。どうか、民達の為にも助力を願えんだろうか。今回は相手の強大さも鑑みて近隣の貴族達、特に侯爵閣下も兵を配して逃げ道を塞いで下さっておるが……うむ。まだあと一歩、足らぬのだ」


 ライアードがオルガマリーを見ながら、依頼の受諾を願い出る。それに、オルガマリーは笑顔で頷いた。


「わかりました。私達は傭兵であれど、人の道よりは外れてはおりません。そのような外道鬼畜に落ちた兵達を討伐するのであれば、喜んでこの牙をお貸し致しましょう」

「おお、そうか。かたじけない。そなたらの助力があれば、討伐も叶おう」


 オルガマリーの申し出にライアードが相好を崩して感謝を示す。彼はそうと決まれば、と早速話を纏めに入った。ここらの手腕は確かに、伯爵に相応しい手際の良さだ。


「依頼料については依頼書にあるとおりであるが、特別の功があればそれに応じて支払おう。支度金については必要であれば後であちらの者に言って受け取ると良い。勿論、状況如何に応じては勲章等も国王陛下より授与される事になる」

「ありがとうございます」

「うむ……それで、何か問うておきたい事はあるか?」


 オルガマリーの感謝に頷いたライアードは次いで問いかける。これに、カイトが問いかけた。


「閣下。一つ許可を頂きたい事が」

「何じゃ?」

「はい……我々は移動の足として小型の飛空艇を有しております。数世代前の物ですので攻撃力は皆無ですが……防御性能には幾度かの改修を加えて拠点代わりにしている物です。戦場の端で良いですので、どうか我らもしっかりと腰を据える場を頂ければと」

「おぉ、そういうことであるか。うむ。軍に連絡を送り、お主らの飛空艇をおける場所を探させよう。だが、端で良いのか?」

「はい。軍の方々としても軍以外の飛空艇があっては作業はしにくかろうと思います。我々がしっかり休む為の場所を、と」

「そうか。わかった。そういうことであれば、軍の連中も悪い顔はしまい。儂からも口添えするゆえ、それで向かうと良い」


 ライアードはカイトの申し出に快諾を示した。これは一義的には確かにカイトの言う通りでそこに他意は無いが、実はこれにはまた別に隠れた意図がある。万が一、この伯爵も取り込まれていた場合空港にあっては脱出時に面倒だと判断したのだ。

 この場は政治に近い。腹に一物を入れているのは、どちらも一緒だった。当然、ここまで快諾した伯爵とて内心ではカイト達を利用してやろうと思っている事だろう。この世はそういうものなのだ。


「ありがとうございます。マスター、私はこれ以上は」

「そうねぇ……貴方がした以外だと私も何も無いわね。出来ればあの子が外に晒されると怯える人も居るから、隠したかったのは事実だし……」


 カイトの言葉にオルガマリーは一度自分の頭で他に無いかを考える。が、何も思い浮かばなかったようだ。


「そうか。では、さっそく行動に取り掛かってくれ……良し。これで儂のサインは大丈夫だ。後は向こうで現地の司令官にこれを見せれば、お主らに便宜を図ってくれよう。後に周辺の領主達と共に儂も現地へ赴く。殲滅はそれからであるゆえ、それまで長旅の疲れをしっかり癒やしておくように」

「ありがとうございます」


 オルガマリーはライアードよりの激励に感謝を示すと、立ち上がる。それを受けて執事が腰を折って付いてくる様に促した。そうして、カイト達はとりあえず一番最初の関門を突破する事に成功するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1186話『行動開始』

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