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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第60章 湖底の遺跡編

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第1149話 調査再開

 魔導炉の復旧作業が終わった翌日の朝。カイトは魔導炉の復旧と一部『無冠の部隊(ノー・オーダーズ)』の隊員達の残留を受けて、改めて部隊の構成を練り直す事にしていた。とは言え、それは前日の内に終わらせていたので、朝には通達するだけになっていた。


「というわけで、『無冠の部隊(ノー・オーダーズ)』の方々が技術班として協力してくれる事になった。それに合わせて、オペレーターも幾分層は厚くなった。それと前2日の調査結果と魔導炉が復旧出来た事を受けて、改めて部隊分けを行っておいた。確認しておいてくれ」


 カイトは一同へと状況の推移を伝達すると共に、新たな部隊分けを通達する。そうしてその説明が一通り終了した所で、カイトは改めて馴染みへと声を掛けておく。


「で、ルーファウスとアリスは今日から翔達の所へ頼む。と言っても通信機はオンラインだ。万が一の時には連絡を」

「わかった」

「わかりました」


 カイトは己が率いていた面子の内、己に親しい部分については改めて依頼しておく。これは一義的には翔達の所に人員が必要だからだが、『無冠の部隊(ノー・オーダーズ)』の隊員達が参加した事で変に会話を聞かれたくないからだ。

 どちらにせよ後者の理由がなかろうと前者の理由で十分に通じる。研究施設には危険も多い。なので、二人も変には思わなかった様子だ。それに、実は彼らとしても冒険部がどういう情報を入手するか調査するのも仕事に入っている。なのでできればカイトの所よりも翔の所に向かいたいという思惑もあった。

 まぁ、ルーファウスとしてはできればアリスにはカイトの側で中央建屋を確認してもらいたい所だが、ここらはカイトの指示に従うしかのが最良と判断したので諦めたようだ。と、そうしてそこらの班分けを改めて行った所で、カイトは危うく重要な事を忘れる所だった、と気を取り直す。


「さて……ああ、翔。お前らだが出来ればまず何処かにあるだろう予備の動力室を探してくれ」

「予備の動力室?」

「ああ。どうにもメインの動力室から確認した限りではそちらにある一機……第3予備動力室? という所がまだ起動しっぱなしらしい。まぁ、状況から見てバグだとは思うんだが、確認しておいて損はないからな」

「わかった」


 カイトの言葉に翔が頷いた。昨日ティナも言っていたが、おそらくこれはバグによる誤表示だと思われる。が、バグが多すぎてあまり確信は持てない。となると、仕方がないので一度目視で確認しておくしかないだろう。


「ルーファウス、悪いが突入の際には支援してやってくれ。そっちの人数は最大だし問題は無いだろうが、万が一僅かに魔導炉が生きていた場合、魔物が居る可能性はある。とは言え状況を考えてみてもお前の実力なら、なんとでもなるだろう」

「承った」


 カイトの依頼をルーファウスが受け入れる。彼としても魔導炉が生きているとは思っていないが、それでも万が一という事はあり得る。気にしておくべきは気にしておくべきだと軍人として判断出来た。そしてカイトは出来る限りの手立ては施しておく事にした。


「ソラ、先輩。そちらももし可能なら、一昨日開通させておいた通路を使って翔の所の支援を」

「りょーかい。まぁ、こっち何かあるとは思わないから、そっち行けると思うわ」

「こっちは……まだ調査がどうなるかわからん。が、出来る限り間に合う様にしよう」


 ソラと瞬もカイトの指示に同意する。とりあえず、カイト達以外の人員は援軍として差し向けられる様には出来ただろう。これで、万が一でもなんとか出来るはずだ。そうしてそこらの対処を決めれば、後は実際に調査開始だ。


「さて、全員今日も出発だ」


 カイトは全員に号令を下す。そうして、再び彼らは湖底に沈んだ遺跡へと調査に向かうのだった。




 さて、各班が各班に割り当てられた建屋の屋上に移動して潜入する事になったわけであるが、メインの魔導炉が復旧したおかげかそこそこの光源の確保が出来ていた。


「うん、なんとか光源が確保出来てるか」


 カイトは第一階層目を見回す。明るくなってわかったがどうやら、このエリアは大広間の様な所らしい。広かった事でそこそこの光源が生き残っており、懐中電灯を片手でなくても探索可能なぐらいの光源は確保出来ていた。これなら、暗闇から魔物の奇襲を受ける事は無いだろう。


「で、先輩。これから何を探すんですか?」

「ん? 通信設備だが……聞いてなかったのか?」

「あ、ごめんなさい。そうじゃなくて……どうやって探すんですか?」

「ああ、それか」


 暦の問いかけにカイトが少しだけ考える。が、答えは出る事はなかった。


「レガド。通信設備は確か動力室の上にあると予想されているんだったな?」

『はい。基本的に通信設備の通信可能距離は出力に比例します。故に動力室の直上においておくのが、基本的な設計になっているはずです』

「りょーかい。とりあえず動力室の直上の部屋を調べてみる」

『お願いします。それさえ動かす事が出来れば、私の側から研究所の情報を探る事が出来ます』


 カイトの応諾にレガドは改めてその重要性を説いた。基本的にやはり重要な情報はパスワードによるロックはもとより、何らかの特殊なシステムにより暗号化が行われている。研究所とは最先端の技術を研究している所だ。盗まれれば一大事なので、これは当然の処置だろう。

 が、そうなるとカイト達ある意味の盗人達ではこの解析の為に莫大な時間と設備を必要となってくる。暗号化の処置についてもパスワードもわからないのだから、当たり前である。その点、レガドは同じ文明だ。更に良いこともあった。


「接続出来た後は任せて良いんだな?」

『はい。私は元来、秘匿研究所の統括システム。そして実は、この浮遊研究所は万が一システムが乗っ取られた場合等に備えて外部からハッキングする為の上位権限が与えられています』


 レガドがカイトの問いかけに同意して更に告げる。やはり大空の上を常に移動し続ける研究所というのはある種の要塞にも等しい。故に万が一何らかの敵に何処かの研究所が乗っ取られた場合には現地に飛んで、総司令部としての役割も持ち合わせていたらしい。

 内部に訓練施設の様な迷宮(ダンジョン)が組み込まれているのは、それ故でもあったそうだ。研究所を守る警備兵達であると同時に、万が一の場合にそこに飛んでいき戦う戦士でもあったのである。


「サルベージも可能、と」

『そういうことです。少なくとも、研究所の統括システムの再起動が叶えば何があったかを知る事は可能でしょう』

「頼んだ」


 カイトはレガドの言葉に応ずると、とりあえず移動を開始する事にする。もし上手く情報が入手出来れば、わざわざ全部の研究室を回る必要がなくなる。

 勿論それでやらないで良いわけではないが、そちらは最悪公爵家の研究チームに一任する事も可能だ。最も重要なのは研究データ。それが手に入れば、とりあえず冒険部としての問題はない。が、その為にも道案内が必要だ。と言ってもいつも通りホタルである。


「まぁ、そういうわけで。ホタル、地図を展開しておいてくれ」

「了解」


 ホタルはカイトの指示に応ずると、相変わらず彼女の視覚の中に表示される地図を頼りに、動力室の直上付近を目指して歩いて行く。が、直上付近の部屋にたどり着いて、一時停止する事になった。


「……あらら……」


 カイトは手で一同に屈む様に指示する。部屋の前に魔物が屯していたのである。倒さねばならないだろう。


「マスター……夜行性の魔物です。生体反応を見るに、睡眠中かと」

「ん……さて……」


 カイトは小声で応じて、少しどうするか考える。寝ているのなら好都合だ。起きる前に一気に討伐するのが吉だろう。そして寝ているのであれば、作戦を練るだけの時間は十分にあった。


「良し……アル」

「何?」

「氷龍は何体まで操れる?」

「……ああ、わかった。了解。この程度なら余裕だよ」


 どうやら、カイトが言わんとする事は理解出来たようだ。小型の氷龍で密かに浮遊して、気付かれぬ間に一気に凍結させてしまおう、という判断だった。


「皐月。アルが凍らせた魔物を鞭での一掃を頼む」

「りょーかい」

「じゃあ、やるよ」


 これで、作戦は決定だ。というわけで、皐月が応じたのを見てアルが魔物の数ぴったりの小型の氷龍を生み出してゆっくりと忍び寄らせる。そうして近づいた氷龍は魔物に取り付くや静かに、しかし一瞬でその身を凍らせていく。


「終わったよ」

「よし……皐月」

「ええ」


 皐月が物陰から飛び出て、鞭を振るう。眠っている間に凍らせられてしまった魔物はそれに気付く事もなく、澄んだ音を上げて全部砕け散った。どうやら中までしっかり凍りついていたようだ。


「……ふぅ」


 全てが砕け散ったのを見て、皐月が一つ安堵のため息を吐いた。これで直上の部屋へ入れるだろう。勿論、扉が動けばの話であるが。


「お見事、それと二人共お疲れ……ここで休まず、先の部屋で休むぞ」


 カイトは安全の確保が終了した事を受けて、一同に先を促す。ここよりも遥かに部屋の中の方が安全は安全だろう。であれば、休むにしてもそちらで休むべきだ。というわけで、カイト達は更に少し歩いて、扉の前へと移動する。とは言え、まだ開けない。


「ホタル、お前は逆側を」

「了解」


 カイトは壁に張り付くと、ホタルに逆側の壁に張り付いてもらう。そうして、カイトは僅かに扉を開いた。それは本当に少しだけで、人間では覗けない程だ。が、ユリィなら覗けた。


「良し……ユリィ。中、見えるか?」

「見えてるよ……電気は点いてるから……居るね。でもどうやら浸水はしてなかったっぽい。一応、扉の下の部分凍らせとくね」

「あいよ……全員、突入時に躓いたなんか馬鹿な事はやめてくれよ」


 どうやらこの部屋は比較的無事だったようだ。幸いといえば幸いな事に水が入り込んでいたという事はなかったらしい。そしてわざわざ水の流入をさせる必要もないだろう。

 浸水で相手が気付くかもしれないし、通信装置を起動した際に何か不具合が出るかもしれない。耐水性が高いと言えど、避けられるのなら避けるべきは当然である。なのでユリィは水が入り込まない様に氷で封をしておく。


「敵数……5。二足歩行の魚人っぽいやつ」

「場所は?」

「手前に三体。奥に二体」

「ふむ……」


 動力室とは違ってこちらの敵はまだカイト達に気付いていない。なのでカイトはそれを利用して、ユリィからの報告を下に奇襲作戦を行う事にする。流石に起きている相手に先程と同じ手は使えない。


「速攻か」

「それが一番かな」


 カイトのつぶやきにユリィが同意する。であれば、人員は自ずと決定出来た。なのでカイトが即座に指示を与える。


「暦、お前はオレについてこい。右奥の一体をお前が殺れ」

「はい」

「藤堂先輩。剣道部三人を率いて手前の三体を一撃でお願い出来ますか?」

「ああ、わかったよ」


 速攻を仕掛けるのであれば、やはり刀が一番良い。というわけでカイトを筆頭にした刀使い達が突入と同時に<<縮地(しゅくち)>>で強襲するのが一番と判断したようだ。というわけで、カイトは呼吸を整える。


「ユリィ。カウント頼む。ホタル、扉を」

「あいさ」

「了解」


 カイトからの依頼を受けたユリィが扉の上に浮かび上がり、ホタルが扉の開閉スイッチに手を当てる。後はユリィの合図に合わせて、一斉に強襲だ。


「3……2……1……ゴー」


 ユリィが魔力で編んだ旗を振り下ろすと同時に、ホタルが扉を開く。そうして、扉が開くと同時にカイトを先頭にして暦が続き、その後に藤堂を先頭にした一団が突入する。


「はぁ!」


 カイトは左奥の魚人の様な魔物へと一瞬で肉薄すると、炎を纏わせた刃を深々と突き刺した。そして同じように暦や藤堂達も炎の刃を敵へと突き立てる。その一瞬後。魚人の様な魔物達は一瞬で灰燼と化す事となった。


「……戦闘終了。どうやら、通信設備で良さそうだな」


 カイトは一息つくと、周囲を見回してそこに設置されている幾つかのコンソールを観察する。受話器のような物は見受けられなかったが、机の上にはモニターのような物があった。


「半分程崩落してるが……半分の内幾つかは使えそうか。レガド、通信室を確保した。何をすればいい?」

『わかりました。では、部屋の奥の方に成人男性程の奇妙な四角い箱はありませんか?』

「……あるな。若干凹んだりしているが、原型は留めている」


 カイトはレガドの指示に従って部屋の奥を見て、そこに据え付けられていたある種のサーバーの様な物体を発見し観察する。そしてその報告を受けて、


『それは幸運でした。原型を留めているのであれば、修理も容易でしょう。大して難しい事はありません。そちらの技術班とこちらから指示しますので、ホタルと共に作業を』

「了解した……全員、しばらくこの部屋で待機。藤堂先輩、先輩はそこの崩落した天井を登って上層階の通路の確保をお願いします。アル、お前は前の通路の確保を」

「わかった。半分、付いて来てくれ」

「了解」


 カイトは藤堂とアルの二人を中心として部屋の確保を依頼すると、自分はホタルと共に早速修理に取り掛かる。そうして、しばらくの間一同はそこに留まって作業を行う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1139話『一つの区切り』

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