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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第58章 ギルド同盟編

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第1116話 同盟への誘い

 皆さんのおかげで本日を持ちまして、連載開始よりまた一年が経過しました。紆余曲折や幾度もの手直し等を経て4周年突入です。ありがとうございます。


 まだ物語も半ばですが、今後共ご愛読の程、よろしくおねがいします。

 マクスウェル近郊のギルドのギルドマスターや幹部達を引き連れてカイト達冒険部の所へとやってきた青年ランテリジャ。彼は一通りの社交辞令と雑談に近い状況説明を終えるとカイトへと、ギルド同盟の提案を行っていた。


「ギルド同盟・・・改めて伝える必要は無いかと思われますが、一応念のために。話を進める為にも、一度お読みください」


 ランはそう言うと、持ってきていたカバンから一つの資料を取り出した。それはギルド同盟に関する資料だ。どうやら、お手製らしい。

 こういう所一つとってしてもきちんとした教育がされている事がわかる。であれば、この彼はそこそこの出身だというカイトの推測は正しいのだろう。


「ふむ・・・」


 カイトはランの勧めを受けて、一度己の知識と整合性を取る為に資料を閲覧する。が、書かれている事は特に気になる事もない普通の説明だった。同盟は同盟。力や知識等を融通しあう為の物だ。特段珍しい物でもなんでもない。

 そしてそれはそうで、これは今回ランが進めている同盟の詳細を書いてある物ではないのだ。ランが提案する同盟の基礎、単なるユニオンにおいての同盟の位置づけ等の基礎知識を語っているだけだ。条件等は改めて話し合う必要があった。そしてそれ故、カイトも数分で全てを読破する。


「ああ、大丈夫だ。オレの知識と相違ない」

「はい・・・ああ、それは差し上げます。要らなければ処分しておいて頂ければ」

「わかった」


 カイトは受け取った資料を椿へと手渡しておく。処分するか保存しておくかは、また後で考えれば良い。そうして基礎知識の共有が成されたのを両者確認した後、ランが話を続ける事にした。

 基礎知識の共有はやはりこれも後から面倒事に発展しない為にやっておいただけだろう。差し上げる、という発言も意図的な物と推測される。


「さて、それでは本題に入りましょう。我々の提案するギルド同盟ですが、これは基本的に合議制を取りたいと考えております」

「妥当だな」

「ご理解いただき感謝します」


 カイトの同意にランが頭を下げる。なぜ妥当なのか、というとこれは実績の問題と見栄の問題が絡んでくる。基本的にギルド同盟は2つの種類があり、一つがランの提案した合議制。これは各ギルドが一応は同格として扱われる。故に、同盟の盟主も居ない。これはユニオンの小規模版と考えて良いだろう。

 それに対してもう一つあるのが、どちらかのギルドがもう片方のギルドを傘下に加える類のギルド同盟だ。これは上下関係がはっきりと決まっている。謂わば親分子分の関係と言っても良い。

 これで一番良い例はバーンタインの所の<<(あかつき)>>だ。ここは八大ギルドの一つである<<(あかつき)>>をトップとして、多くのギルドが傘下に加わっている。上下関係は明白だ。

 こちらを取ると誰かがトップになる必要があるが、その場合は当然、冒険者としての実績とランクで判断される。その場合、最有力となるのはカイトだった。だがだからこそ、カイトも合議制を良しとした。


「まぁな。流石にオレとて望まん」

「あはは。ええ、ご理解いただけて感謝の限りです。そこだけが、貴方の所に持ち込む上でボトルネックになっている所でした。が、この様子では杞憂でしたか」

「あはは。それは良かった」


 ランの事ばにカイトは笑って頷いた。なぜ、カイトなのか。それは言うまでもなく彼ほどここ一年で実績を上げている冒険者は殆ど居ないだろうからだ。

 この半年以内で新聞に載った回数であれば、下手なランクSの冒険者をも上回っている。大半が巻き込まれた結果なので彼も意図した結果ではないが、結果が全てだ。実績であればこの場の誰よりも得てしまっているのであった。実力も見合っていると言える。

 だが流石にそんな数ヶ月の者をトップに据えては、実利はあるが見栄としてあまり良くない。良く思わないギルドは多いだろう。故にカイトも厭ったというわけである。そうして、笑って安堵を浮かべていたランへとカイトが更に先を問いかけた。


「合議制、と言ったな? であれば、最初は議長をどこが務める事になる?」

「ああ、それは我々が。そこばかりは、言い出しっぺの法則ということで」

「なるほど。良いだろう。受け入れよう。ウチはそちらのやり方を勉強させてもらおう」

「ありがとうございます」


 カイトの発言を受けて、ランが頭を下げる。勿論、ここらはお互いに裏もしっかりと把握していると把握しての事だ。その裏とは、議長を務めた場合に出る利益の事だ。

 やはり、同盟も利益が在りきのお話だ。その議長となると色々な利益が付き纏う。そしてカイトはこれを提案者である彼らに譲る、と暗に示したのだ。

 そしてその最初ぐらいは発案者にくれてやっても問題はない。土台を一番はじめに作ったのだ。それぐらいの利益は供与してやるのが筋だろう。そして筋を通す事が、組織と組織で円滑に関係を構築する為に最も重要な事だ。それ故、カイトもそれに同意したわけである。というわけで、彼はそこらある意味ではどうでも良い事を終わらせると実務面に入った。


「それで、会議場は?」

「それについてはマクスウェルに設置したいと考えております。マクスウェルが一番交通の便が良いですからね」

「まぁ、それは本拠地がここなウチとしては良いが・・・他も良いのか?」

「一応、これはまだ青写真の段階。詳細はまた後に詰めたいと思いますが、その為の初回はこちらでと」

「ふむ・・・それなら結構だ」


 ランの申し出をカイトは受け入れる。マクスウェルであればカイトは地元だ。そして大都市故にそういう会議は多く開催されており、貸会議室という所もある。選択肢としては順当な物だ。そこは冒険部のギルドホームからほど近い所にある為、カイトとしては万々歳と言う所だろう。


「はい・・・その場合、ですが会議場の予約等はそちらに一任したいのですが・・・」

「まぁ、それは構わないが・・・費用は供託金を設営するのか?」

「はい、そのつもりです。これはユニオンに一つ口座を作り、そこに連名で預けようかと」

「それが一番、か・・・わかった。維持費等についてはまた詰める事にした方が良いだろうな」

「そのつもりです」


 カイトの提案にランが頷く。ユニオンでも勿論こういう同盟については把握している。なので揉めたりどこかのギルドが勝手に引き出したりしない様なシステムが備わっている口座があり、更には万が一同盟が解消された場合の資金の配分等まできちんと決められるのであった。これを利用しない手は無いだろう。


「まぁ、そちらの誘いについては了承した。この事についてはウチとしても悪くない申し出だ。それにあんたの事についても、人柄云々はまだ見えんがギルドのサブマスターとしては信頼出来る」

「ありがとうございます」


 カイトの返答にランが頭を下げる。ギルドとギルドのやり取りになると、どうしても上から目線や威圧的になる事も多い。それを避けて努めて平身低頭に出れる者は少ない。

 が、今回の様な一件ではそれが重要だし、冒険者でしっかりと色々な根回しや事前調査を終えられている者は少ない。冒険者云々ではなく、統治者として悪くない腕前だろう。

 それを考えれば、ランは好印象と思える。彼とであればもし万が一何らかの食い違いが出ても、利益重視のドライな関係を構築する事も可能だろう。馴れ合いを求めるも良し、ドライな関係を求めるのも良し。カイト達の好きに選べる。

 そういう意味で言えば、ランは最大限カイト達に提示出来る条件を提示してくれたと言える。そしてカイトが好印象を得てくれているのを見たランは、次の話題に入る事にした。


「それで、です。貴方のおっしゃられる通り、人柄云々が見えないのは事実。我々も活動実績等から皆さんにお声がけをしていますが、やはり無闇矢鱈に揉め事を起こされる様な方に入られるのは有難くない」

「当然だな」

「ご理解いただき感謝します。それで、です。そこを含めて一度ギルドマスターやそれに準ずる幹部が集まって合同演習の様な形の任務を受けたいと思っています。今日はそのお誘いを、と」

「なるほど。そういうことであれば、こちらも受けよう。人数というかそちらの誘った数から鑑みてそこそこ大きな依頼で、しかし短い物だと思うんだが・・・」

「はい。公爵軍の討伐戦に参加しようかと。あれであれば万が一には軍に仲裁して頂けますし、各々の腕を見るにも十分でしょう」

「他にももし万が一めぼしい無名の所があれば、唾を付けておこう、と」

「あはは。ご明察です」


 カイトの言葉にランが笑って同意する。相当に彼は抜け目ない性格だろう。幾つもの事を同時に考えている様子だった。その一方でカイトには椿より依頼書が提出されており、それを読んでいた。


「ふむ・・・直近であれば明後日集合のこれか?」

「・・・はい、それですね。公爵軍第一中央軍による遠征任務。参加規定等は無し。人数は無制限、と」

「わかった。ではこちらも本ギルドとして、受領手続きを行っておこう。参加して欲しい面子等はあるか?」


 カイトはランの申し出を受ける事にすると、更に問いかける。ここらは彼が中心として動いている事だ。であれば、選択権は彼にあると断じて良い。であれば、その指示に従うべきだろう。


「そうですね。最低各ギルドのギルドマスターか、サブマスターはお一人。サブマスターももし万が一の場合の代理となる方であれば尚更良い。そちらであれば・・・ソラ・天城さんですか?」

「あー・・・いや、あいつは今は無理だ。色々とあってな。多分明後日には間に合わん」

「はぁ・・・まぁ、そういうことであれば、適材を選んで頂ければ構いませんが・・・」


 カイトの僅かに苦笑気味な言葉にランも何かがあるのだろう、と理解する。ここらは流石に情報屋と言っても数時間前の事だ。入手なぞ出来ているはずもなかったし、ランが聞いた時点での情報にも無かっただろう。

 とは言え、カイトも隠しているわけではないし、どうせ少し街を歩いて情報を探ればすぐに分かる事だ。今頃、ソラは由利とナナミに付き添われて病院に行っている。少しすれば馴染みの所では笑い話になっている事だろう。


「昨日の大雨の中、病院からの突発の依頼で外に出てな。お陰で今朝から熱で寝込んでる。こればかりは、理解してやってくれ」

「ああ、それは・・・ご愁傷様です。それでしたら、やはり誰かサブマスターかそれに類する方を」

「わかった。そうさせてもらおう」


 カイトはランの言葉を有難く受け入れておく。流石に多くの所が動く物事なので、カイト達の為だけに日程をずらすわけにもいかないだろう。

 そしてランとしても体調不良の者に出てほしくはない。妥当な判断である。そうして、そこら種々のやり取りの後、カイトはラン達を送り出してため息混じりに執務室の椅子に腰掛けた。


「やれやれ・・・面倒ではあるが・・・」

「御主人様。どうされますか?」

「とりあえずは明後日の任務での動きを見てからだ。彼らの手腕次第、として組んで良しなら組む」

「かしこまりました。では、必要な書類等はこちらで」

「頼む」


 カイトは組む事になった場合に備えて、椿に用意を頼んでおく事にする。その一方で、カイトはソラの代役を考える事にする。が、これはほぼほぼ考える必要が無かった。


「ティナー、ちょいと頼まれてくれ。仕事だ。あ、もち表向きな」

「む? 余か? 余とお主で組まねばならん話なんぞ早々見受けられんじゃろうに」


 カイトの申し出にティナが目を丸くする。カイトとティナだ。この世で最強クラスの化物二人である。揃って出る事になる話なぞ想像が出来なかった。


「さっきの客、ギルド同盟の話を持ち込んできてな。見極める為にもお前の力を借りたい」

「ふむ・・・なるほどのう。わかった。では、久しぶりに余も外に出る事にするかのう」

「頼む」


 カイトはティナの応諾に頭を下げる。一応、カイト不在時の取りまとめはサブマスターになっているが、その実態としてはティナの影響が一番大きい。

 そういうことを考えたのであれば、後々カイトの不在時に彼女の事を疑問視されるよりも始めから彼女を紹介しておくのが一番良かった。そして、こちらにも声を掛けておかねばならない人物がもう一人居た。


「で・・・まぁ、風紀委員長殿の顔も立てておかにゃなるめぇよ・・・ソレイユー、お仕事の時間ですよー」

『え? にぃと仕事?』

「ああ。ギルド同盟の話が持ち上がってなぁ・・・そういうギルド関連だとフロドよりお前だろ?」

『んー・・・そだね。わかった、じゃあ、一緒に行くねー』


 カイトの言葉にヘッドセットを介したソレイユが応ずる。ラン達も把握しているだろうが、フロドとソレイユは八大ギルドから出向している者だ。

 やはりカイト達が同盟を結ぶというのであれば、その意向を伺っておかねばならないだろう。どちらか片方は連れて行く必要があった。そしてその場合、適役はソレイユなのであった。と、そこらの手はずを整えるカイトへと、瞬が問いかけた。


「カイト、何があった?」

「ん? ああ、そうか。そう言えば説明しておかないとな」


 カイトは瞬の求めに応じて、先程あったこと、ギルド同盟に関する事を語っていく。こういうことは必要な事なので理解は得られるが、やはり語る事は重要だ。そうして、カイトは今日明日と二日に渡ってランの誘いの為の準備を進める事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1117話『ギルド同盟』

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