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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第56章 教国からの来訪者達

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第1075話 本家の騎士達

 冒険部に持ち込まれたカタコンベへの調査依頼。それを受けたカイトは冒険部の部隊を率いてカタコンベへとやってきていたわけだが、現在はその本格的な調査を行う為の偵察の為に冒険部に先駆けて偵察に出ていた。


「ふむ・・・地図によるとこの先がカタコンベの大穴か」


 瞬が地図を見ながらおおよその現在位置を割り出して告げる。流石に入って早々に大穴という事はなく、少しだけ下り坂を歩いて移動する必要があった。と、その言葉を聞いたルーファウスが瞬へと問いかけた。彼は流石に部隊長には任命されていない為、地図は渡されていないのだ。


「どれぐらいの深さなんだ?」

「地図だと・・・一応50メートル程の深さだな」

「深いな・・・広さは?」

「これだと・・・直径50メートル程か」

「ふむ・・・」


 ルーファウスは瞬の説明からカタコンベのおおよその外形を想像する。一応、地図を横から見る限りでは通路が螺旋の様に内周側に設置されており、それを使って降りていくような形だ。と、そんなルーファウスに対してアルが告げる。


「基本的に撤退はやりにくいよ。遺体の安置所に続く通路は広くないからね。そこに来て、後ろが穴。勢いで撤退して、っていうのはやりにくい」

「ふむ・・・知っているのか?」

「僕はこっちの軍人だよ。ここの活動は一応、何度かね」

「ふむ・・・」


 アルの言葉にルーファウスは少しだけ頭を撚る。当たり前だが彼とて無闇矢鱈にアルに突っかかるわけではない。と、そんな様子に瞬が少し驚いていた。


「・・・えらく素直に聞いたな」

「いや・・・俺とて軍人だ。こういう仕事の場では感情は無視してきちんと聞くぞ」

「そうじゃないと流石に本家名乗ってもらっちゃ困るよ」

「「・・・」」


 棘を含んだアルの一言にルーファウスが睨み返す。聞くのは聞くが、やはり色々と相性が良いわけではなかった。とは言え、この程度の茶化し合いやじゃれ合いなら別に気にするまでもない。なのでカイトが即座に仲裁に乗り出すだけだ。


「はいはい。で、ルーファウス。何か思う事はあるか?」

「あ、ああ。そうだな・・・突入する場合は陣営は『2-2-1』のフォーメーションにするべきだろう。が、この場合中衛に魔術師を入れて、最後尾に近接の戦士を置くべきだ」

「その理由は?」


 ルーファウスの言葉にカイトがその理由を問いかける。そもそも彼に問いかけた理由はお手並み拝見、という風な意味が込められていた。そしてそれはルーファウスもわかっていた為、しっかりと理由を述べた。


「万が一の撤退を考えた場合だな。ここは見たところ細道が多そうだ。陣形を入れ替えての撤退は難しいと見るべきだろう。であれば最後尾がもし魔術師であった場合、彼らが撤退時には前衛となる。もし万が一回り込まれては事だ。ならば近接を行う者が後ろに立ち、万が一には切り開ける様にすべきだろう」

「そうだな。オレもそう思う」


 カイトはルーファウスの言葉に満足気に頷いた。カイトの考えでもこのフォーメーションが一番最適に思えた。冒険部の魔術師が接近戦をするのは難しいだろう。と、そういう考えで出された結論であったわけだが、それに瞬が疑問を呈する。


「ん? それでは一人無駄にならないか?」

「ああ、無駄にはなるが・・・そもそもあまり大人数で戦える場所でも無いからな」


 カイトは周囲を見回しながら瞬の質問に答えた。そしてその言葉に瞬も周囲を見回せば、確かにそんな印象があった。一応ここなら三人で戦えなくはないが、それでもちょっと厳しい物がある。

 満足に距離を取りたいのであれば、二人にすべきだろう。今回は偵察なので前衛が三人だが、本番では個人の能力を最大に発揮させるためにも二人にした方が良さそうだった。


「ふむ・・・なるほどな。確かにそれはそうか」

「そういうことだ・・・さて、大穴を拝みに行くか」


 カイトは瞬の疑問が解決したし知りたい事は知れたので隊を先に進ませる事にする。そうして、少し歩いた所で一同は大きな穴の前にたどり着いた。その内周部に張り巡らされている螺旋状の通路に入る直前、カイトが全員に指示を送った。


「全員、屈んで身体を低くしろ。大穴に敵が居た場合、こちらが丸見えになってしまう可能性がある」


 今回は偵察だ。あまり本格的な戦闘を考えているわけではないし、大物が居た場合は大穴の底に居る可能性が一番高い。見られて刺激してもあまりよろしくない。なので姿勢を低くして通路の影に隠れた方が良いだろう。


「さて・・・翔から借りてきた魔道具で、と・・・」


 カイトは己も屈むと、螺旋状の下り坂に設置されている手すりの隙間に細長い魔道具を突っ込んだ。翔の偵察用の魔道具だ。彼は現在野営地の周辺の調査に出ている為、必要が無いので借りたのだ。

 最近新しい物を買ったらしく、眼鏡の様な物からモニターの取り付けられたファイバースコープカメラの様な物にアップデートされていた。


「・・・」


 カイトはファイバースコープカメラの様な魔道具を使って大穴の様子を観察する。そうして思ったのは、結構多くの魔物が蔓延っているな、という所だった。


「あぁあぁ、また増えてるよ・・・」

「どんな感じ?」

「こんな所」


 カイトは屈みながら近づいてきたアルへと大穴の様子を見せる。それに、アルは少しだけ顔を顰める。


「あー・・・結構増えてるね・・・これはどこかに大物が居るのかも・・・」

「と言うか、多分居るだろうな・・・とは言え、大穴の底には居ないからあの通路だろうな・・・」

「あの通路だと少しやりにくいね・・・もし戦うのなら、なんとか大穴の底まで釣り上げないといけないんじゃないかな」


 アルとカイトは魔道具を通して送られてくる映像を見ながら、現状と攻略方法を考察する。と、そんな考察を二人に任せていた残りの三人だが、その内アリスが兄へと小声で告げる。


「兄さん、背後」

「・・・魔物が沸いたか。背後を取られても面倒か・・・瞬殿」

「なんだ?」

「入ってきた通路に敵が沸いたようだ」

「・・・確かに音が聞こえるな」


 ルーファウスの言葉を受けた瞬が耳を澄ませると、乾いた骨がぶつかり合う様などこか硬質な音が少しだけ聞こえてきた。


「カイト、背後に魔物がリスポーンした」

「頼めるか? こちらはもう少し情報の収集を行いたい」

「わかった・・・許可が出た」

「そうか・・・アリス。お前が行くか?」

「わかりました」


 ルーファウスの言葉を受けて、アリスも久しぶりの魔物との実戦という事で感覚を取り戻す事にしたらしい。今まで魔術で補佐をしていた彼女が剣を抜く。


「補佐しよう。ルーファウス、行くぞ」

「ああ」


 瞬の申し出を受けて、ルーファウスもまた立ち上がる。戦闘そのものはアリスに任せる事にしたし相性の関係でアリスが負ける事は無いだろうが、それでも万が一は起こり得る。なので二人が監督に出るつもりだった。

 そうしてそんな三人は通った通路に戻っていったわけだが、1分もしない内に彼らの目の前に骸骨型の魔物の姿が現れた。来る時にルーファウスが倒したのと同じ『骸骨兵(スケルトン)』だ。が、どうやらカタコンベの出入り口の方向を向いていたらしく、こちらに気付いた様子は無かった。


「アリス」

「はい、兄さん」


 ルーファウスに言われるや否や、アリスが地面を軽やかに蹴って敵の背後から強襲する。そうして、両手に持った剣で袈裟懸けに敵を一体切り捨てると、そのまま流れる様に二体目三体目と切って捨てていく。と、そこで骸骨型の魔物がこちらの襲撃に気付いて、振り向いた。


「遅い」


 アリスはそう言うと、振り向いた魔物の顔面に左手を向ける。そこに、紅蓮の光が宿った。


「<<聖炎・矢(セント・アロー)>>」


 紅蓮の光は紅蓮の焔の矢に変わると、一直線に飛んでいき髑髏を消滅させる。そうして彼女は更に横の『骸骨兵(スケルトン)』に対して右手の剣を叩き込んで、更に左手を逆の脇の下に通して後ろから近づいていた『骸骨兵(スケルトン)』に対して再び紅蓮の矢を放つ。


「紅色の炎か」

「あれが、我が流派で一番下の紅炎だ。先程カイト殿が言われていた最下位の位階だな」

「あれを纏えば斬られただけで消し飛ぶのか」

「ああ。聖なる炎、だからな。ああいった彷徨える者達に対しては非常に効果的だ。まぁ、アリスの力量だと格下相手までが限度だがな」


 瞬の言葉にルーファウスがどこか自慢げに同意する。やはり自らの流派に誇りがあるのだろう。ルーファウスの時もそうだったが、アリスの斬撃に触れるだけで『骸骨兵(スケルトン)』は一瞬で消滅する。それは防御しても一緒で、一方的で問答無用だった。

 そうしてアリスは一方的に攻撃を叩き込んでいき、見る間に骸骨型の魔物を完全に討伐する。と、その戦いが終わった後、瞬がふと疑問に思った事を問いかけた。


「盾は使わないのか?」

「あ、はい。盾はその・・・魔術を使う際に邪魔になりますので。使えないわけではないですが、日頃は置いてきています」

「大丈夫なのか?」


 瞬は一応念のためにルーファウスへと問いかける。駄目なら駄目で矯正させるのも、彼らの仕事だ。下手なやり方でミスがあっても困る。が、そういうわけではなかった。きちんと、アリスなりの理由があった。


「左手を空けて魔術の照準に近くしたいんです」

「亜流ではあるがヴァイスリッター家のやり方ではあってな。得意としていたのは・・・まぁ、あまり言いたくはないが有名所ではルクス・ヴァイスリッターがこれを得意としていた」

「ああ、彼が・・・」


 そう言えばルクスはあまり盾を多用していなかったな、と瞬は思い出す。彼の場合は攻撃的なスタイルだったので使わなかっただけだが、勿論盾を使う戦い方が出来ないわけがない。

 と言うより、聖剣セットの本来の使い手は彼だ。カイトも使えるというだけである。聖剣と同時に聖盾の使い手でもある彼が使えないはずがなかった。


「彼は一説によれば、右手が使えない時には左手で星の欠片を放つ事で戦っていたらしい」

「星の欠片・・・」


 ルーファウスの言葉を聞きながら、瞬はルクスの戦い方を思い出す。そうして思い出したのは、<<星光剣スターダスト・ブリッツ>>だ。おそらくあれは普通にやる以外にも手から出せるのだろう。あれで重要なのは光の剣を創り出す能力だ。確かに剣は必要ない。


「まぁ、そういうわけなのでな。それは別にしても魔術を併用する騎士では片手を敢えて空ける為に軽めの剣をメインとして、盾を外す者は居る。特に女性騎士にそれは多い。魔術への適性が高いからな」

「主流ではないというだけなのか」

「ああ、そういうことだ」


 ルーファウスは瞬の総括に頷いた。やはり軍は男社会な所があり、それ故に盾を構える戦い方が一般的に思えるだけだ。が、十分にこちらも居るらしい。


「そうか。なら、大丈夫だな・・・戻ろう」

「ああ」

「はい」


 瞬はルーファウスの言葉に納得すると、二人を引き連れて再びカイト達の所へと戻る事にする。そうして身を屈めてカイトへと近づいて、報告を行う。


「カイト。討伐終了だ」

「そうか・・・この様子ならそれなりにリスポーン速度はありそうか・・・ふむ。少々通路が崩れてるな・・・」

「わかった。そっちは今回の任務終了後に軍から修繕を頼んでおくよ」

「ああ、頼んだ・・・あれは・・・側近と見て良いだろうな・・・」


 カイトとアルは相変わらず大穴の状況を伺っていた様子だ。とは言え、どうやら大半の情報は集め終わったらしい。ゆっくりとバレない様に魔道具を回収する。


「これはアリだな。予備買い揃えておくか」

「最近は色々と新製品出てるねー」


 アルが少し笑いながらカイトの言葉に応ずる。これはカイト達が来てから開発された物で、地球の情報を下にマクダウェル家が出した新製品だった。


「良し。戻ろう。これでとりあえず情報は入手出来た」


 カイトはそう言うと、一同に帰還を促す。そうして、カイト達は当初の目的を終えて、野営地へと帰還する事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第1076話『作戦会議』

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