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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第55章 ラクシア攻略戦

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第1058話 凱旋と帰還

 シャムロックの世話になり浮遊大陸の一日目を終えたカイトは、その後も浮遊大陸の各所で時間を潰しつつ、エンテシア皇国への帰還までの時間を潰していた。そうして三日程時間を潰した彼だが、その彼を乗せた浮遊大陸は四日目の朝に、エンテシア皇国の領海へと入っていた。


「見えた。やはり来るか」

『わかった。では、ここで止めよう』


 カイトの言葉を受けて、『雲の離宮』に留まるティアが浮遊大陸の動きを止める。浮遊大陸の移動先にはエンテシア皇国からの出迎えの艦隊が待機しており、これ以上進ませない様にしたのである。今の場所はおおよそ、エンテシア皇国皇都付近の海岸から300キロという所だ。飛空艇なら一時間程度で往来が可能な距離だった。そうして、カイトは己の通信機を使い、飛空艇の艦隊へと連絡を入れる。


「こちらカイト・マクダウェル。応答を」

『公か。朝早くからご苦労だ』

「陛下。そちらも朝早くからお疲れ様です」

『あはは。流石に神王殿とミスティア様となれば、出迎えねばなるまい』


 カイトの挨拶に皇帝レオンハルトも笑って道理を述べる。彼はこの二人が来るというので自ら出迎えの艦隊を率いてきた、というわけだった。


『公はこれからどうするのだ?』

「私はカリンと共にマクダウェルへと戻ります。ここまで同乗させて貰っただけですし、予定より些か遅れていますから・・・」

『そうか。ご苦労だった。先にシャリク殿より連絡があり、エンテシア皇国の助力に感謝すると共に、妹を頼むと連絡が入っている。護衛は頼んだ』

「はい」


 カイトは皇帝レオンハルトの言葉に頷くと、そのまま飛行場へと戻っていく。すでにカリン達は先んじて浮遊大陸を降りており、カイトもハンナの遺した飛空艇を使って後を追うつもりだった。そうして飛空艇を起動させた彼は一人、浮遊大陸を後にするのだった。




 さて、そうして飛空艇を発進させた彼であるが、飛空艇は一度ティナに預ける事にしていた。というのも、これはまだカイトの使用に耐えられる物ではないからだ。


「ふむ・・・これが、のう」

「武装の一部は流石にオミットさせられているが、軍用品として最低限必要な装備は整ってる。速度についても十分耐えられるだろうな」

「ふむ・・・わかった。一応色々と改良はしておこう」

「頼む」


 カイトは飛空艇をティナへと引き渡す。これで、後はカイト達が使える様に改修してもらうだけだ。なお、これについてはハンナからカイトへ譲渡された形になる為、カイトは好きにつかう事にした。シャーナもそれが良いだろうと判断していたので、そうさせてもらう事にしたのである。


「で・・・行ってやれ。覚悟は出来ているであろうが・・・」

「そうだな・・・じゃあ、行ってくる」


 ティナの提案を受けて、カイトは少し神妙な面持ちでその場を後にする。カイトは飛ばしたので一足先に到着したが、カリン達の乗った飛空艇は巡航速度で移動していた。なのでまだマクスウェルの街には到着していなかったのだ。そうして、カリン達と合流したカイトはソラに冒険部の統率を任せる事にした。


「ソラ・・・後は、任せた」

「おう・・・あー・・・なんていやぁ良いかわかんねぇけど、こっちは任された」

「ああ・・・まぁ、少し留守にする事は多くなると思うが、そこは理解してくれ」

「わかってる。流石にそれで文句とか言わねぇよ」


 カイトの言葉にソラが頷いた。カイトはこれからハンナの遺体をシャーナの下へまで届ける事になっていた。本来なら彼が率いて凱旋を果たすべき所なのだが、彼は依頼を受けて渡航したのだ。

 優先されるべきがどちらか、というのは誰でもわかる。そうして、彼は一人ハンナの入った棺と共に、飛空艇を降りて公爵邸へと移動する。先んじてシェリアとシェルクが事の次第をシャーナへと伝えに行っており、準備を整えてくれていた。


「・・・シャーナ様。ハンナ殿をお連れしました」

「ありがとうございます・・・ハンナも、おかえりなさい」


 シャーナは棺に向けて微笑んだ。が、その目は赤く、泣き腫らした様子があった。そしてそれは、彼らを出迎えてくれた全てのメイド達が一緒だった。


「・・・シャーナ様。私は彼女の葬儀の手配を行います。皆様は、彼女の側に居てあげてください」

「ありがとうございます。そして、よろしくお願いします」


 カイトの申し出を受けて、シャーナが頭を下げる。カイトが葬儀の手配を行う事は確かだが、実際としては彼女らだけにしてやる為の方便という所だろう。そうして、カイトは一緒に帰って来た二人に向けて、その後の事を頼んだ。


「シェリア、シェルク。二人は皆のフォローを」

「「はい」」


 二人はカイトの言葉に、棺を離宮の奥の部屋へと移動させていく。それに、シャーナ達も付いていく。それを見つつ、カイトはマクダウェル家側から補佐として来ていたフィーネに一つ頷いて、踵を返した。


「後は任せた」

「かしこまりました。葬儀屋の手配等必要な事はユハラにお聞きください」

「ああ」


 フィーネの言葉を背に、カイトは一度公爵邸へと戻る。そうして、ユハラと共にカイトはハンナの葬儀に必要となる各種の手配を整える事にした。


「彼女らの喪服はシャリク陛下が帰りに渡して下さった。やはり数十年も王位に就いていると必要となるらしくてな。それに立場を考えてもラエリア様式の方が良いだろう」

「わかりました。では採寸についてはキャンセルで。葬儀屋については?」

「そちらの手配は頼む。墓所に空きはあるな?」

「もともと、あそこの土地は有り余ってますから。今は、少々手狭ですけどね」

「学園近くの湖か・・・遺体は全部そこだったな?」

「はい。遺体だけは、あちらに」


 カイトの問いかけにユハラは頷いた。マクダウェル公爵家に仕える従者達は基本的には、マクスウェル近郊の墓所に葬られている。町中に墓所を作る事は難しかったからだ。やはり、墓所だ。良くないモノを引き寄せてしまう事が多く、安易に町中に作るわけにはいかなかったのである。

 故にエネフィアではカタコンベの様に地下に墓所を作る事が多い――地下なら封印が容易な為――のだが、カイトは街からは少し離れた所だが陽のあたる場所に設置する事を決めた。

 管理は手間になってしまうが、死者の慰撫を考えた場合はそちらの方が良いからである。なので常には墓守達に墓所を守ってもらいつつ、街には慰霊碑の様な形の墓所を設けて常にはそちらに皆参拝していた。


「あそこに学園が来たのは、街の人々のとっても良かったのかもな」

「お陰で道が出来ましたからねー」

「あはは。公道の整備をしたかったが・・・往来が少ない故に費用対効果が合わなかったからなぁ」


 カイトは僅かに苦笑気味に学園が転移した結果の密かな影響を語る。一応、学園が来る前も道はあったらしいのだが、それは簡単な道でしっかりと舗装されているとは言い難かった。敢えて言えば、獣道。せいぜい馬車は通れるものの、という程度だ。

 だが、天桜学園が来て人の往来がそれなりに盛んになった事で改めてしっかりとした道を作ろうとなり、しっかりとした道が作られたのである。それ故か今までは年齢等で行けなくなった者達があちらに墓参りする事も増えてきたそうだ。冒険部の冒険者は本拠地が近いということで、その依頼を受ける事も多いらしい。


「そうか・・・ああ、そうだ。墓石等の手配は?」

「そちらは、すでに。墓石についてもすでに製作に取り掛かっているとの事です。もともとテンプレートは存在していますから」

「そうか。楽になったもんだ」

「それだけ、長い月日が流れていますからね」


 カイトのどこか複雑な表情にユハラは微笑んで告げる。カイトが就任した当時には、墓石一つ待つだけでも一週間近く待たされたものだ。が、今ではテンプレートがあり、それが常備されているという。

 今では大抵は名前を刻んで新たな遺体を埋めるスペースを確保して、という程度だ。それだけ、多くの従者が死んだという事でもあった。


「そうだな・・・ああ、オレの喪服はどうなっている?」

「ご主人様の喪服でしたら、椿が管理しています」

「そうか。なら、彼女に聞こう」


 カイトは各種の手はずを整えた後、椿に聞く事にする。彼女はカイトがこちらに居る間も冒険部のギルドホームに待機してくれていて、こちらには居なかった。

 なお、冒険部の方は今回の依頼内容の一つがハンナにある事は承知しており、彼女が死んで遺体が回収された事と共にその対応で公爵邸へ少し詰めている事は告げている。カイトがシャーナの護衛をしていた事は周知の事実だ。そこから、ハンナと知り合いである事は誰もがわかっている。

 なのでカイトが居ない事は誰も不思議には思っていないらしい。流石に知り合いが死んで喪主がこの状況ではこちらを優先せざるを得ないだろう、と誰もが理解を示していた。と、そこらの手配を行っていると、しばらくすれば葬儀の関連業者からの応答が返って来た。


「あ、ご主人様。花屋さんから葬儀の花について早ければ今日の夜には届けられると返答が」

「そうか。では彼女の葬儀に必要な花はこちらへ。献花に使う花は馬車に積み込む様に指示してくれ。埋葬の時に使う」

「わかりました。では、そのように」

「ああ・・・ああ、椿か」


 花屋の手配を終えた所に、通信機を通して椿から連絡が入る。彼女には喪服の手配を頼んでおいたのだ。その手はずが整ったという事だろう。


『御主人様。喪服のご用意が整いました。そちらに持っていきましょうか?』

「いや、流石にいつまでもこちらに留まっても不思議に思われる。喪服を取りに行く名目で顔は見せに行く」

『かしこまりました。では喪服についてはこちらで持ち運ぶ為のケースをご用意しておきます』

「ああ、頼んだ・・・それで、冒険部の方はどうなっていた?」


 カイトは己の喪服の用意が整っている事に頷くと、一応の所を聞いておく。今回は事情が仕方がないとはいえ、まだギルドホームには帰れていないのだ。


『凱旋、と呼んで良いものかと』

「そうか・・・そりゃ良かった。頑張った甲斐がある」

『はい』


 カイトの言葉に椿も同意する。どうやら、ソラ達は盛大に出迎えられたらしい。一応カイトの事に話が及ぶと少しだけしんみりとした雰囲気が蔓延するらしいのだが、そこはソラがなんとかフォローをしてくれていたそうだ。なら、それはそれで良いだろう。

 そもそも彼らも他と変わらず依頼で出ていただけで、そこで運良く勲章を貰っただけだ。そしてこれが内戦であった以上、死者は必ず出る。それだけの話だ。


「そうか・・・あまりオレには気を遣わない様には通達しておいてくれ。別に怪我したわけでもないし、最初から覚悟はしていたからな」

『かしこまりました。上層部の皆様へ密かにそう頼んでおきます』

「助かる。では、こちらの用意が一通り終了した頃にはそちらに戻る」

『かしこまりました。お早目のお戻りを』


 カイトは椿の返答を最後に、通信を切断する。これで、とりあえず喪服も大丈夫だ。後は墓石の手配が整うかという事と、遺体を運ぶ為の専用の馬車――いわゆる霊柩車――が整えば一度カイトも戻れるだろう。

 とは言え、その手配はやはり人口の多いマクスウェルである事と冒険者等が居る関係で即座に返答があるわけではない。しばらく待たされる事になる。そうして、カイトはこの日一日その用意に費やす事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。後2話で、この長かったラエリア編第二部は完全に終了です。

 次回予告:第1059話『閑話』

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