第1027話 パルデシア砦攻略戦 ――終結――
狂気の沙汰と言われる300年前のカイト発案の作戦を現代で使う事にしたレヴィの戦術により、『パルデシア砦』を守る強固な結界は完全に砕け散った。そうして結界を破壊したカイトはそのまま、砦内部の攻略に取り掛かる事にする。
「こちらカイト。誰か聞こえていたら応答してくれ」
『ああ、あたしが聞こえてるよ』
「カリンか。そっち何処だ?」
『こっちは・・・っと。北側のデカイ庭だ。庭っつっても訓練用のエリアって所だけどね』
カイトの問いかけにカリンが周囲を見回しながら答えてくれる。どうやら、向こうは戦闘の真っ最中らしい。無数の剣戟の音が響いていた。とは言え、並の相手を相手にカリンが負けるはずもなく、余裕が滲んでいた。
『そっちは?』
「こっちは丁度そっちを眺めてるとこ」
『ん? おや、そんな所に』
カイトとカリンはお互いの姿を見付けて、手を振り合う。カイトの現在の居場所は『パルデシア砦』の一番上、対空防御の為に設置された魔導砲の上だった。勿論、破壊済みである。そうして、そんなカイトへとホタルが指示を求めてきた。
「マスター。こちらも侵攻を開始しますか?」
「そうだな。せっかく乗り込んだんだ。このままはいさよなら、は止めておこう」
「もう終わってる様な気もするけどねー」
カイトの言葉にユリィはわずかに肩を竦める。彼女の言う通り、カリンや瞬達が敵の最前線を飛び越えてここに入った時点でほぼ確実にこちらの勝ちだ。
すでに前線を支えていた飛空艇の残存の兵力はこの場からの撤退を始めており、後はどれだけ早急に砦を陥落させる事が出来るか、という所でしかなかった。相手も負けを悟ったらしく、見切りを付けたようだ。良い手際だった。
「ホタル、レヴィからこの砦の地図情報は入手しているな?」
「肯定します。南部軍に潜伏したスパイが得た物が突入部隊にも融通されています」
「良し・・・ならこっちはカリン達と合流して、魔導炉の停止に動くぞ。自爆されると厄介というかうざったい事この上ない」
カイトはこの後何をすべきかを即座に決めると、屋上の縁に足を掛けた。そして同じように、ホタルも足を前に出す。
「了解。では、当機もアサルトを開始します」
「ああ・・・じゃあ、こっちも行くか」
「はーい」
カイトとホタルは同時に、カリン達が交戦中の北門近くの大広場へと舞い降りる。
「っ! 敵!? 何処から!?」
「上から!?」
「カイトか!」
舞い降りたカイトの姿を見て、瞬が声を上げる。それに、冒険部一同がカイトに気付いた。
「おう! おい、南部の兵士共! 聞こえてるな! 一つ聞くが、このまま死にたいか! 数日前の戦いの話ぐらいは聞いてるんだろう! 総司令官は確実に貴様ら諸共自爆するつもりだぞ!」
瞬の言葉に返事をして、カイトは即座に声を上げる。それは単なる推測だが、決して何の根拠もない言葉ではなかった。そうして、敵の注目を一身に集めた彼は更に続ける。
「貴様らも基地の自爆に巻き込まれて死にたくはないだろう! 逃げる敵を追い、殺す余力はこちらには無い! 投降を述べるつもりもない! 今はその暇も惜しい! もしまだ生き延びたくば、ここから遠くへ逃げろ!」
「「「っ!」」」
カイトの避難の呼びかけに、南部軍の兵士達は自分達が戦った先にある末路を想像して、思わず動きを止める。これが何の脈絡もない嘘だとは、彼らは思っていない。
敵の進軍を少しでも阻止する為ならば、自軍の兵士もろとも自分達の基地の自爆ぐらい容赦なくやる。それが軍というものだ。そんな司令部の考えは兵士である以上、彼らもわかっている。ここでそれでも戦えるのはその意思に殉じるつもりのある者ぐらいだ。
だが、そんな気概のある者は南部軍には多くはない。ただ彼らの所属している軍が南部軍というだけで、そして上が敵同士故に北部軍が敵なだけだ。同じ国の仲間同士で戦って総司令部の見栄で生命を散らすほどの意味は、彼らは見出だせなかった。
「ど、どうする?」
「ど、どうするったって・・・」
「し、信じられるか・・・?」
南部軍の兵士達がカイトの提示した事実に困惑と混乱を生じさせる。それに、瞬は思わず凄いと思った。この戦場を一瞬で掌握してみせたのだ。僅かな言葉だけで、敵を混乱に陥れる。幾つもの経験や慣れ、そしてそれを敵にさえ信じさせるある種のカリスマが無ければ出来ない事だった。そんな動揺する兵士達に向けて、カイトは更に叩き込む。
「どかねぇんなら殺す! 生憎オレは死にたくねぇんだ! だが、邪魔しねぇってんなら好きにしろ! 後の身の振り方は貴様らで考えろ! オレ達はカリン・アルカナム殿と共に内部へと進行し、自爆を阻止しに行く! 軍にはこちらは任せる! 全員、行くぞ!」
「「「っ!」」」
カイトはダメ押しとばかりに、カリンの名を使う。ここでこれ以上戦う事の不利を悟らせる為だ。相手にランクSの、それも近接戦闘に長けた冒険者が居るのだ。まともにやって勝てるわけがない。
それを理解すればそうなれば、ただでさえ降下気味だった敵の士気は一気に下落して、ついには勝手に武器を手放す者も現れ始めた。
「お、俺は降伏するぞ! カリン・アルカナムなんかと戦ってられるか! 死にたくねぇよ!」
「おい、貴様! 何を言っている! 降伏するな、戦え!」
「俺も! 俺も降参だ! あんたらの邪魔はしねぇ! だから助けてくれ!」
一人、また一人と兵士達が次々に降伏し始める。それを指揮官と思しき兵士が食い止めるべく声を荒げた。
「何をやっている! でまかせにまど、ぎゃあ! き、貴様、何を・・・」
「俺はこんな所で死にたくねぇよ! お、俺は今から北の奴らに協力するぞ! どっちにしろもう負けだ! 基地の自爆を阻止するんだ! 地元で家族待ってるんだよ! こんな所でてめぇらの自滅に付き合って死ねるか!」
指揮官の言葉には従えない、と連鎖的に裏切りまで発生する。そうなれば、後は噂が噂を呼んで自爆が真実として語られるようになり、カリン達が戦いを繰り広げていた広場が一気に大混乱に陥る。
元々ここは戦場だ。それ故、その精神状態はまともな状態ではないのだ。ただでさえこの場の南部軍の兵士達の中には自分達の行動を疑っている者は少なくない。少し揺さぶりを掛けてやれば、意図も簡単に操れるのであった。それを横目に、カイトはわずかにほくそ笑んだ。
「北部軍に雇われた冒険者のカイト・天音だ。敵には説得が有効だ。敵の司令はともかく、末端の兵士達は基地もろとも自爆するつもりは無いようだ。先の補給基地が自爆しようとしていたという事実を上手く使え。降伏する者は決して手酷く扱うな。明日の仲間になる」
カイトは浮足立つ兵士達を横目に、通信機を使って砦の各所を侵攻している味方へと必要な情報を告げる。なし崩しとは言え、北部軍に協力してしまったのだ。そこから協力的になってくれる者は見込める。そういう者達の持つ情報は、ここで失った兵力にも勝る可能性は十分にあった。
「今のうちに内部に進んで一気に魔導炉を制圧するぞ」
「お、恐ろしいな、天音は・・・」
「俺は素直に凄いと思ったが・・・確かにそうだな」
カイトの号令と共に走り始めた一同だが、その最中に綾崎と瞬が頬を引き攣らせていた。これもまた、一つの戦い方だった。
そうして走り始めた一同だが、もし向かってくる者が居てもカイト、カリン、ホタル、ユリィの四名が揃った状態で危険なぞあるはずもない。おまけに敵の冒険者達はすでに撤退済みや状況を見て投降済みだ。強敵と言える相手も殆ど居ない。
「ホタル。どっちだ?」
「こちらです・・・が、正門の扉は閉じられている模様」
ホタルは『パルデシア砦』内部へ通ずる扉に手を当てて、完全に封鎖されている事を読み取ってそれを報告する。と、そんなホタルがカイトへ向けて口を開いた。
「マスター、ご提案が」
「許可する」
「・・・感謝します」
内容を聞くこともなく即座に許可を下ろしたカイトにホタルはわずかに呆気にとられるが、即座に拳を引いた。そうして、なんら遠慮なく強引に扉を叩き壊した。
「おみごとー」
「わーいわーい」
カイトとユリィがキレイに扉を吹き飛ばしたホタルへと賞賛を送る。カイトの想像通りだったし、これが今の最善策だろう。障害物なぞぶち壊せば良いだけだ。
「良し。じゃあ、後は・・・」
扉の前で構えていた兵士達を見て、カイトは最善の一手を一瞬で構築する。常に蹴散らすのが最善というわけではない。というわけで、戦闘が始まる直前。強大な圧力を放出して敵を威圧したカイトが再び声を荒げた。
「おい、てめぇら! 邪魔すんじゃねぇよ! 自爆に巻き込まれるぞ!」
カイトは轟々と強者の風格を漂わせながら、敢えて敵の手を明言する。それに末端の兵士達が驚いて指揮官を見た。嘘とは思えなかったのだ。
「ど、どうなんですか、隊長!」
「まさか本当に俺達ごと吹き飛ばすつもりなんて無いですよね!?」
「っ! う、嘘だ! 口からでまかせを言っているだけだ! 構わん!」
指揮官らしい兵士がカイトの言葉を否定する。しかし、彼の中にはわずかに揺れが見えた。これが本当なのかどうかは、残念だが彼にもわからないのだろう。
その指揮官の僅かな動揺はしかし、全ての兵士達が気付けるほどだった。そしてその動揺が生まれた隙に、カイトは指揮官の言葉を遮って更に敵を誑かす。
「はっ! じゃあこの魔力の高まりはなんだ!? 尋常じゃねぇ量の蓄積がある! てめぇらだってどこかで感じてるんだろ! もしかしたら、ってな! 大大老と元老院のクズ共のやり口ぐらいお前らだって知ってるはずだ!」
「「「っ・・・」」」
兵士達――指揮官さえ含めて――は今度こそはっきりと動揺する。確かに、その通りだ。基地のシステムが復帰して以降、基地の内部の魔力濃度が尋常ではなく高まり続けている様な気がしていたのだ。そう、それはまるで基地の魔導炉が暴走を始めている様な感じで、である。
「「「・・・」」」
兵士達は自分達の指揮官ではなく、カイトの言葉こそを道理と見てしまった。この状況だ。もし敵を一人でも多く減らしたいのなら、と考えた場合に取れる手は一つしかない。
それは敢えて言うまでもないだろう。この砦の魔導炉を暴走させる事だ。魔導炉は原子炉より遥かに安全だが、同時に人為的に暴走させれば桁違いの被害を作り出せる。
それを兵器として運用しない手は無い。勿論、本来ならばあまりに非人道的な上に土地に対する様々なデメリットが付き纏い、最悪は大精霊からの不興を買うという最悪の可能性があるので使用はされない。
しかしそれを利用すれば、北部軍の大半を蹴散らせる。すでに陥落の見えた要塞一つで、敵の大半を撃滅出来るのだ。追い込まれている大大老や元老院議員達がやらない可能性は、どこにも無かった。
「隊長!」
「隊長! 自分達はどうすれば良いのですか!」
兵士達が必死に指揮官へと問いかける。肌から感じる圧は明らかに敵の言葉が正しいと言っている。が、情報が無い。どうすれば良いか彼らにはわからないのだ。そうして、指揮官が一度ぐっと目を瞑り、意を決した様に目を開いた。
「一つ、問いたい」
「なんだ?」
「逃げれば、追わないか?」
「追っている時間が惜しい」
僅かに焦りを見せるカイトの答えに、指揮官は今度は僅かに目を瞑って意思を決める。カイトの態度が嘘には見えなかったのだ。
「・・・全員、武装解除・・・南部出口から避難だ」
「「「っ・・・」」」
指揮官の言葉に全員が顔を顰める。負けたと言っているのと同義だ。だがもはや南部軍のやり方に付き合ってやる道理はどこにも無かった。
「全員、身を守る以外には戦うな! もし降伏を望まれたのなら降伏しても構わん! 基地からなるべく遠くへ! 一歩でも遠くへ逃げろ!」
「「「はっ!」」」
指揮官の下した決断に、部下達が一様に応ずる。誰だって死にたくない。こんな無意味な戦闘での自滅になんて巻き込まれたくはないだろう。そうして、指揮官は一つだけ小さく頭を下げて兵士達と共に去っていく。
「・・・上手く行ったか。物分りの良い指揮官で助かった」
カイトは発していた圧力を消して、少しだけ安堵を浮かべる。実のところ、魔力の高まりは途中まではブラフだった。カイトその人が発していたのである。
が、それは途中までだ。つまり、途中からは魔導炉が本当に暴走を始めたという事に他ならなかった。指揮官の見た焦りも演技ではなく、本物だったのだ。
「全員、急ぐぞ! 時間は殆ど無い!」
カイト達は逃げた兵士達を追うことなく、一直線に動力室へ向けて壁をぶち抜いて移動していく。というわけで、あっという間にカイト達は魔導炉の前の部屋にまでたどり着いた。が、そこで足を止める事になった。
「っ・・・結構キツイ領域か・・・」
「魔力蓄積量、規模から考えて後10分で暴走臨界値へと到達すると思われます」
「ギリギリ、か」
ホタルの見立てを聞いた瞬がため息を吐いた。10分の余裕があれば、この面子が揃っていればなんとかなる。そう思ったようで、そしてそれは事実だ。この面子が居てこの時間ならば、妨害さえ無ければなんとか対処が出来た。そうして、一同は最後の壁であり、魔導炉を守る重厚な防護壁を破壊する事にした。
「はっ!」
防護壁だ。流石に殴ってなんとかなるものではない。なのでカイトが刀で切り裂いた。そうして、部屋の中に充満していた濃密な魔力が彼らの居る部屋にも流れ込んでくる。原子炉と違い暴走しても温度がさほど上がらないのは、魔導炉の良い所という所だろう。
「ぐっ・・・」
「凄い濃度だな・・・」
流れ込んだ濃密な魔力に、瞬達が顔を顰める。とは言え、冒険者でも中堅レベルにまで鍛えた彼らなら耐えられないほどではない。なので彼らは腹に力を入れて、部屋へと入った。と、そんな部屋にはすでに先客が居て、防護服を着て何らかの作業を行っていた。
「っと! 動くな!」
『っと! ちょっと待った!』
刀を突きつけて先客へと声を掛けたカイトに対して、先客は両手を挙げて交戦の意図が無い事を示した。そうして彼は慌てて、自分の身分を口にする。
『俺は北部軍のスパイだ! 魔導炉の暴走を見て・・・って、お前! あの時のじゃないか! ほら、俺だよ、俺! 『パルテール』のクソ伯爵の所に捕まっていた奴だ! 回復薬を貰っただろ!?』
男は瞬の顔を見るなり、慌てて防護服の顔の部分を脱いで胸元を空けて、自分があの時の密偵である事を明らかにする。と、その顔を見て、瞬がカイトへと語りかけた。
「あの時のか! カイト! そいつの頬から肩口にかけてのデカイ傷に見覚えがある!」
「マスター。当機も確認しております。魔力の波形でも一致を確認。99.9%の可能性で当人です」
「そうか、すまなかった。作業を手伝おう。指示してくれ」
二人――主にホタル――の言葉に、カイトは刀を降ろして協力を申し出る。
「助かる! こっちは第一魔導炉の停止を行う! そっちはこの部屋の防御と第二以降を頼んだ! 出来れば中央制御室の制圧もやってくれ! この魔力濃度だ! 監視カメラとかで見られる事は無い! 予備の魔導炉には別のスパイの連中が入っている!」
デンゼルの所に捕まっていた男はカイト達からの協力の申し出を受けると、即座に先程自分が作業をしていたコンソールへと向き直る。それに、カイトが即座に指揮を開始した。
「カリン! そっちはギルドで中央制御室の制圧を頼む! 非常停止装置があるはずだ! 可能なら、予備の魔導炉の支援にも向かってくれ! 先輩達はオレ達が作業をする間にこの部屋の警護を! ホタル! お前も中央制御室についって行って直接ハッキングを試みろ!」
「わかった! シア、ネリネ! 付いて来な! 四人で制圧するよ! ホタル、あんたも遅れんなよ! 他は予備の動力室の制圧に行きな!」
「こっちは部屋の警護に入る! 全員、魔力酔いして倒れるなよ!」
カイトの指示を受けてカリン達が部屋の外に出て中央制御室を目指し始め、瞬達が動力室へ来る兵士達を食い止める為、即席のバリケードの設営に入る。そうして、誰もが焦りを浮かべる中、瞬く間に時間が経過していった。
「ふぅ・・・なんとか、か・・・」
「はぁ・・・」
『マスター。中央制御室、制圧しました。非常停止システム作動』
「あはは。こっちが一歩早かったがな・・・はぁ、とは言え、これでもう問題はないか」
ホタルからの連絡を聞いて、カイト達は一斉に安堵のため息を漏らした。幸い暴走する魔導炉のある動力室に突っ込む勇気というか愚挙が出来る敵はおらず、戦闘が起きる事はなかった。それについては幸いという所だろう。と、魔導炉の掌握とほぼ同時だ。砦内部の館内放送にて、声が響いてきた。
『私は本基地を預かっている・・・』
どうやら、基地の総司令らしい。そうして聞いているとそれは北部軍へと降伏を宣言したという内容で、兵士達にも投降を呼びかける言葉だった。カイト達がここに至るまでの戦いを繰り広げている間に、別働隊が砦の最深部に居る総司令官を捕獲する事に成功したのだろう。
「こちら、ギルド冒険部所属カイト・天音。魔導炉の暴走を停止させた。これで自爆する心配は無い」
『了解。各所へと伝達します』
カイトの報告を受けて、軍のオペレーターが連絡を入れ始める。これで、パルデシア砦攻略作戦は完全に終了だった。所要時間はおよそ6時間弱という所だ。真っ昼間に開始した作戦だが、終わった時はすでに周囲には黄昏が垂れ込めていた。
「はぁ・・・なんとか、か・・・上と合流しよう。貴方も来てもらえるか?」
「ああ、わかった。元々ここに居たのはシャリク陛下からの密命だ・・・ああ、パルミラって知ってるか? 確かお宅らのリーダーと会ったって聞いたんだが」
カイトの言葉に密偵の男はわずかに困り顔で頷いて立ち上がる。と、そうして出された名前に、カイトが頷いた。
「ああ、彼女か。オレが会った。脱出の支援をしたのは彼女だったのか?」
「ああ。彼女は予備の魔導炉の停止作業をしてくれていたんだ。合流して、軍の連中の所に合流しよう」
どうやらこの基地にはパルミラも一緒らしい。なら、この男も安心出来るだろう。なお、後に聞けばシャリクからの密命を受けたパルミラが彼らと合流して、この基地に潜む様に指示を出していたらしい。理由は勿論、要塞の自爆を僅かにでも食い止める為だった。
そうして、カイト達は完全に魔導炉を安全な状態に移行させて、予備の魔導炉に向かっていたというパルミラやカリン達と合流した後、地上を制圧した軍と合流するのだった。
お読み頂きありがとうございました。パルデシア砦陥落。一度大休止を挟んだ後、ラエリア編第二部の最終章に突入です。
次回予告:第1028話『大休止』




