第1018話 パルデシア砦攻略戦 ――出撃――
パルデシア砦攻略戦。後の世にそう名付けられた神聖帝国ラエリア率いる北部軍と神聖王国ラエリアの腐敗の温床であった大大老・元老院連合率いる南部軍の二つの決戦の片方。それはカイトの提供した『ブラックホール・クラスター』弾により、緒戦は北部軍の圧倒的優勢で開始される。
「・・・何とかこちら側の陸戦部隊が突撃しやすい土壌が出来たか」
レヴィは十数個のモニターに展開される戦況を確認しながら、とりあえず安堵の表情を浮かべる。カイトの言った通り、攻城戦で何より重要なのは敵の結界を砕く事だ。
それを為すには、英雄という超火力を持ち合わせる者を何とか結界にまで進ませる事しかない。いや、正確にはこれだけではない。一応、エネフィアにも核兵器に該当する大量破壊兵器は存在している。確かにその後を考えなくて良いのならそれら戦略兵器を使用する事で砦ごと吹き飛ばせば良い。
だがよしんば魔物相手であったのならまだしも国内の、それも内紛でそんな事を出来るわけがなかった。であれば、英雄という一番クリーンかつ被害の生まれない方法しかない。
とは言え、彼らとて無敵の存在ではない。撃たれれば死ぬし、斬られても死ぬ。陸上の敵兵を排除し、上空の航空支援を排除し、彼らが進める道を作らねばならないのだ。
現状はその為の第一段階は何とか突破出来た、と言うところだろう。これで、飛空艇の艦隊に限ればこちらが優勢だ。地上部隊は支援を十分に受けて敵要塞へと進む事が出来る。
「被害状況は出ているか」
「はっ! 先の一斉射撃により、敵艦隊の一割強を撃沈! 他1割程度も応急処置の為、活動停止か砦内部へと撤退しております!」
「総計2割の戦闘不能か・・・数としては上々か」
自分と戦場の間で情報のやり取りを行ってくれているオペレーター達の情報に、レヴィは次の一手を考える。戦場では彼女の予測も大半が無意味になる。それこそジャイアント・キリングが起きる事さえあり得るのが戦場だ。大まかな筋道は立てられても、細かな所までは不測の事態が多すぎるからだ。
「地上部隊の会敵までは?」
「後一分で先発隊が会敵すると思われます」
「そうか・・・ならば、それまでの間にできるだけ多くの飛空艇を撃沈しろ。地上部隊には再度砦からの砲撃に注意するように促せ。基本的な事だが、こちらが一方的に纏まっていない限りは敵とて砲撃も航空支援も使えんのだからな。基本を遵守するように肝に銘じさせろ」
「はっ!」
レヴィの指示にオペレーター達が頷いて、指示を伝達していく。それを見て、レヴィが少しだけため息を吐いた。
「・・・後は、少しの間待ちになるか・・・」
レヴィは戦場を俯瞰しながら、そう呟いた。戦況はまだ固まっていない。制空権はこちらがかなり優勢になっているが、それでもまだ固まったわけではない。
相手には砦に設置されている強力な結界と対空防御があるし、飛空艇もまだ400隻ほど健在だ。勝利が決まったわけでは、決して無い。そうして、更にしばらくの時間が経過した頃、報告が入った。
「先発隊! 全軍敵との交戦を開始! 合わせて第二陣、発進準備整良し!」
「そうか・・・なら、準備が出来た隊から逐次出撃させろ」
「はっ!」
レヴィの指示を受けて、第二隊となる後発隊が各員の乗り込んだ飛空艇から降下していく。それを見て、敵側も追加となる兵士を砦から出す。
相手にとってここまで大軍勢である以上は砦に人員を引きこもらせるのは悪手だ。こちらが兵員を出してきた以上、あちらも兵員を出さねば結界を軽々破壊されてチェックメイトだ。そうして、レヴィが指示を続ける。
「第二隊の陣形構築が終了次第、冒険者の集団を投入しろ。第一陣、第二陣で敵陣をかき乱し、そこに冒険者を一気に突っ込ませて敵陣を瓦解させろ。残る部隊は後詰として温存。工作兵には引き続き負傷兵を収容する為の野営地の設営を急がせろ。並びに衛生兵には飛空艇にて何時でも発進出来る様にさせておけ」
「了解です」
レヴィの指示を受けたオペレーター達が再度、兵員を動かしていく。これで後は飛空艇の艦隊と陸上部隊の戦いだ。レヴィが出来る事は適時応援要請を受けてそれに支援の手を出す事だけだ。
「後は・・・貴様ら次第だ」
レヴィは自らの斜め前方に位置する『桜花の楼閣』を見る。そこに、この戦いの切り札達が乗り込んでいた。後は、彼らの活躍にに任せるしかない。
とは言え、出来る事が無いわけではない。そうして、レヴィは全体の被害を小さくする為に寄せられる報告に冷静かつ冷酷に、対処していく事にするのだった。
一方、その切り札ことカイト達はというとサーフボードの様な板を手渡されていた。
「・・・これは?」
「いや、オレも知らん」
ソラの問いかけに旗艦から戻ってきたカイトも首を傾げる。彼も見たことがなかったらしい。形状としてはサーフボードに似ていて、下と思われる部分にはかなり小型の飛翔機が取り付けられていた。
「これは降下用の魔道具だ。まぁ、空中浮遊は出来ないが、その代わり降下速度を抑えつつ迎撃なんかも可能・・・手っ取り早く言えばサーフボードみたいなもんだと思っとけ。ほらよ、これ、あんたの分」
板状の魔道具を小脇に抱え、それをカイトに手渡したカリンが告げる。これは北部軍より付与された物で、浮く事は出来ないが降下速度をゆっくりにして単体での降下を可能にする物らしい。
その間両手は空いている為、攻撃も防御も可能となる。揚陸艇を出して撃墜される可能性が高い場合には、これを使って戦場に降下する事になるそうだ。
カイトが知らないのは彼の所では揚陸部隊となると飛翔機付き魔導鎧が一般的で、更にカイト達自身は飛空術を使いこなせるからだろう。必要性が無いのだ。と、そんな所に上部ハッチから外に出ていたフロドが連絡を入れる。
『兄ぃ。降下時にはこっちから支援するけど、流石に細かい飛空艇の砲撃は何とか出来ないから注意してね。後万が一の時には連絡頂戴。どこまでやれるかはわかんないけど、支援やってみる』
「わかった。ソラ、準備と覚悟は良いな?」
「おう・・・ホントに、出来るんだよな?」
「出来るって・・・それにオレも降下時には防御行動に入るからそう気張るな」
「わかった。まぁ、とりあえず降下中は防御だけに集中しときゃ良いんだろ?」
「それで良い。後は、軍のオペレーターに従って行動だ」
カイトは最後に理解させるべき事を理解させておく。単独行動はまだ良い。そうせねばならない状況とて生まれるかもしれない。
いただけないのは、無秩序かつ作戦行動に則らない行動だ。それだけは、避けさせねばならない。そうして段々と開いていく目の前のハッチを前に、カイトが最後に一番大切な事を告げる。
「・・・最後に。絶対に守るべき事を告げておく。絶対に生きて帰れ! 生き足掻け! 敵を殺す事も敵を倒す事も二の次だ! 生きて帰れさえすれば、次に繋げられる! 生き残る事こそを、最上としろ!」
「「「おう!」」」
カイトの言葉にソラ達全員が応ずる。そうしてそれを受けて、カイトも完全に解放された揚陸用のハッチへと向き直った。ここからは、冒険部の者達に聞かせる内容ではない。マクダウェル公としての指示だ。
「一葉、二葉、三葉。お前たちは今回、公爵家としての活動になる。本陣へ強襲してくる敵を叩け」
『『『ご命令のままに』』』
「ホタル。お前はこちらに近づくデカブツがあれば、それをやれ。お前なら、弩級の戦艦だろうと単独で撃破可能だ。技術力の差を見せてやれ」
「了解」
「良し・・・全員でこれよりオレと共に敵陣を強襲する。冒険部各員はオレに万が一の場合にはカリン達の指示に従え。戦場では彼女らの方が圧倒的に先輩だ」
カイトはヘッドセットを通じて関係各所に大まかな作戦を伝達する。そしてそれが終われば、全部の指示が終わりだ。後は、地上に降りるタイミングを待つだけだ。そこに軍のオペレーターから戦況の報告が入った。
『第二隊、全軍出撃完了。冒険者各員は出撃準備に入れ』
「来たか・・・」
あと少しで、戦場に出る事になる。全員の顔に恐怖が見えた。そんな彼らの顔を後ろに、カイトは最も信頼する相棒に声を掛けた。やはり戦いに際して彼女の声が無いと何か締まらないのだ。最後に声が聞いておきたかったらしい。
「ユリィ・・・本当に久しぶりに、デカい戦いで別々の所で戦うな」
『何時以来だっけ?』
「先代魔王・・・ティスと戦った時、以来かな。あの時はオレ単騎だったからな」
『もうそんなに昔かー・・・でも、やることは変わらない。でしょ?』
「ああ、何も変わらない」
カイトとユリィは気負いなく話し合う。離れていようと、相棒だ。お互いにやることは変わらない。そうして、カイトが最後に口を開くのはこれだった。
「援護、頼むぜ」
『あいさ!』
「さて・・・カイト・アマネ。出る!」
ユリィの返事を耳に、カイトが地面を蹴って砲撃が飛び交う空中へと躍り出る。そしてサーフボード型の魔道具を投げて、その上に足を乗せた。
「っとと・・・なるほど。奇妙な感覚だ」
「使い慣れなさそうだねぇ」
カイトの横、彼の出発と同時に空中へと躍り出たカリンがカイトへと笑いかける。慣れない事をするべきではないが、飛空術が使える事はまだ隠しておきたいからだ。
降下中を狙い撃たれるのは避けたい。特に背後にソラ達が控える以上、なるべく万が一を生む要因は除外したい所だ。なるべく目立たぬよう、敢えてこのサーフボードを使う事にしていた。数多の冒険者に紛れる事で注意を分散させるつもりだったのだ。
「こんなのなくて大丈夫な身だからな・・・ソラ! 続け!」
「おう! 全員、俺が敵の砲撃防ぐからな! 安心して飛び降りろ!」
カイトの指示を受けて、ソラが空中へと躍り出る。そうして彼も同じようにサーフボード型の魔道具を足に装着して、少し苦労しながらも即座に順応する。
「おし・・・って無茶苦茶来てる!?」
ようやくバランスを取れたソラが目の前を見て、目を見開く。敵味方総勢1000隻もの飛空艇に、堅牢な要塞の各所に取り付けられた無数の魔導砲。それが戦場各所で飛び交っているのだ。その魔弾の数はまさに綺羅星の如く、無数としか言いようがなかった。
「ぐたぐた言わずに盾構えろ! 守るんだろ!」
「っと、おう!」
カイトの叱責にソラが慌てて盾を構えて、出せる限りの<<操作盾>>を出現させる。超広範囲から攻撃は来ているのだ。少ない数では対処が出来なかった。それに、合わせてカイトも己の魔力で編み出した盾を周囲に顕現させた。これで、後ろに続く者達の準備は完了だ。
「良し! 総員、出撃!」
「ウチも出な! 小僧共に先輩って格の違いをみせてやんな!」
「「「おぉおおお!」」」
カイトとカリンの号令を受けて、飛空艇のハッチから一斉に全員が飛び降りて空中を滑空し始める。と、そんな一同は当然一塊になっているわけで、敵からすれば格好の獲物だ。
即座に敵から魔導砲による砲撃が始まった。これはカリンが居るとバレたからではなく、有名所とわからずとも集まっていれば格好の的だろう。単にそれ故だ。
「っ・・・やれる。きちんと対策は立ててきた・・・来い!」
ソラが気合を入れる。このために、付け焼き刃とは言え楓に頼んで対策をやってきたのだ。なら、後は実戦あるのみだった。そうして、ソラはとりあえず自分達の近くに来るだろう魔弾へと、<<操作盾>>を移動させていく。
「っ! 行ける! これなら行ける!」
一発受けてみて、ソラは飛空艇の一撃が訓練よりも少し弱い程度の衝撃である事を理解する。そして同時に、これなら十分に受けきれると自信を得る。なら、もう怯えはなかった。
「ソラ! ここで全力使うな! 行けると思ったら少し力抜いて後に備えろよ!」
「ああ!」
カイトの助言を聞いて、ソラは僅かに肩の力を抜く。戦場。非日常の頂点。その場を知らぬが故に張り詰めていた気を、その場を僅かにでも垣間見た事で少し抜いたのだ。
勿論、十分に恐れるべきだとはわかっている。理解したのは、今この場が恐れるに足る場では無い事だった。とは言え、流石にその次に飛来した戦艦の主砲にはソラも焦りを浮かべるしか無かった。どうやら一塊になっていた上に並の砲撃では無理な事で、戦艦の主砲を撃つ方が良いと判断されたようだ。
「っ! 直撃コースか! カイト!」
「もうやってる!」
カイトはソラの言葉を受けるまでもなく行動に移っていた。彼は両腕を振ってまるで指揮者の様に顕現させた無数の盾を操って、主砲の射線上へと即席の防壁を作り上げる。
「この程度!」
カイトは盾に少しだけ力を込める。それで、戦艦の主砲を完全に防ぎきった。が、その次の瞬間だ。戦艦の主砲なぞ目ではないほどの高出力の攻撃が防壁の先に迫っていた事を、カイトの感覚が知覚する。
「っ!」
「カイト!」
カイトとカリンが気づくのは、ほぼ同時だった。そうして、カイトが一気に盾を嫌な感じのする方向へと向ける。
「カリン! これじゃ多分ムリだ! 抜けた所を頼む!」
「わかってる!」
カイトの申し出を受けると同時に、カリンが全員より前に躍り出る。そうして、その直後。戦艦の主砲を軽々と防いだはずの盾が意図も簡単に砕け散っていく。
「はぁ!」
カイトの盾を打ち砕いたのは、一筋の光だ。それをカリンは目視すると同時に袈裟懸けに斬り捨てる。それでどうやら、光は力を失ったようだ。単なる矢になり、力なく落ちていった。
「・・・矢?」
「っ! ソレイユ!」
『はーい!』
一同が何が何だかわからない表情をするのを横目に、カイトがソレイユへと支援を願い出る。そうして、無数の流星が迸った。
敵はこちらが攻撃を防いだ事を理解している。であれば、確実にこちらを強敵と認めてこちらへの攻撃に専念することになるはずだ。
流石に降下中の狙撃はカイトにもカリンにも有難くないので、狙撃手ではなく狙撃手が放った弾を狙い撃てるソレイユへ援護を願い出たのであった。ふざけた話だが、狙撃を狙撃するというのがソレイユには出来るのである。
「敵は!?」
「超高速で敵の飛空艇の上を飛び跳ねてるよ。ランクS確定だね」
「ちっ・・・嫌なのに目を付けられたか」
カリンの言葉を聞いて、カイトは己の目でも敵影を捉えながら敵が掛け値なしのランクS冒険者であると認める。そんな敵も今は一つの飛空艇の上に留まって、ソレイユの放った無数の流星に対して己も数を放って迎撃していた。
だが、それがカイトとソレイユの目的だ。その次の瞬間、敵の弓兵が乗る飛空艇へと一条の光が直撃して、爆炎を上げた。フロドの狙撃だった。
「ちっ、これでも仕留め損ねたか」
「だがこれで敵も僅かにでもこっちから視界を外した。今のうちに降りるよ」
「だな・・・」
爆炎を切り裂いて現れた一人の男の姿を見て、カイトとカリンは今がチャンスと理解して行動に入る事にした。そうして、カイトは即座に己がなすべき今の最善を導き出す。
もう敵には目を付けられたと見て良いだろう。それも一番厄介なランクS級の敵だ。このまま空中にとどまれば、遠からずカイト達以外は全滅だろう。ならば、答えは一つしかなかった。
「オペレーター。敵の攻撃を受けた。陣地への合流は不可能。狙い撃たれる可能性が高い。強襲を兼ねてこのまま急降下して、敵陣へと勢いを乗せた範囲攻撃を仕掛ける。範囲は提示する。範囲から避難を」
『了解・・・通知受諾完了。どうぞ』
「良し。ユリィ、援護プリーズ」
『はいさ・・・増々で行くよ?』
「オーケー。準備完了・・・何時でもどうぞ?」
『間違えて砦ぶっ壊すなんてやらないでねー! <<増幅陣>>!』
ユリィが口決を唱えると同時に、カイトの眼前から敵陣の直前まで幾つもの魔法陣が展開される。あの弓兵から逃れられているのは、少しの間だけだ。このまま空中に留まっても狙撃を受けるのが関の山だ。
なので一気に降下する事にして、その降下の勢いを攻撃力に変換して敵陣を強襲するつもりだったのである。流石に地上に降りれば敵も味方への誤爆が怖いので高威力は放てない。十分になんとかなる。カイトは着地後に敵に狙われるのを避ける為に、周囲の敵を一掃しようというわけだったのである。
「おし・・・目立ちたくないが、死ぬよりマシか」
「全員、カイトに続きな! 小僧共も付いて来な! 遅れるとさっきの奴に狙い撃たれて死ぬよ!」
カイトが大剣を構えると同時に、カリンが号令を掛ける。そしてその次の瞬間、カイトが雄叫びと共にユリィの展開した魔法陣の中へと突っ込んだ。
「おぉおおおお!」
「行け! 全員、遅れるな!」
蒼い光となったカイトが発進すると同時に、全員が全速力でカイトの後ろを一直線に突き進む。そうしてものの数秒で地面へとたどり着くと同時に、カイトが勢い全てを力に変えた。
「いけぇえええ!」
カイトが吼え、大剣が振り下ろされる。そうして振るわれた力は戦艦の主砲を遥かに上回る一撃で、眼前の敵を大量に吹き飛ばしていった。
まぁ、不意の出来事で一気に降下せねばならなくなった為、急遽設定した降下ポイントの安全を確保する為の行動だ。なので敵を吹き飛ばす爆発力をメインとした攻撃だった。大凡兵士なら誰かが死ぬという事は当たりどころが悪くなければありえないが、それでも周辺の安全は確保出来るし、威嚇にもなってくれる。それで十分だろう。
「うぉー・・・人が吹き飛ぶのって久しぶりにみるね」
その横に、カリンが着地する。そしてそれに続いて、ソラ達と<<粋の花園>>の女冒険者達が降り立った。なおサーフボード型の魔道具は使い捨てらしく、その場に捨て置く事になっている。
「冒険者だ!」
「あの威力、あの速度! ランクは高位! 腕に自信の無い奴は近づくな!」
「連絡のあった増援だ!」
「良し! 敵の陣形が一部崩れた! 今の内に一気に攻め込め!」
カイト達の襲来と同時に、両陣営の兵士達が一気に勢いを変える。北部軍はこれが増援であると理解している為一気に押し込もうとするし、南部軍はカイト達が超級である事がわかったので押し込まれないようにしようとする。
それを遠くで聞きながら、カリンが即座に斬撃を放って地面を深く切り裂いた。予定にない行動で図らずも前線に大きく近づいてしまった為、一度状況確認の為に即席の塹壕を作り上げたのである。
「良し! とりあえず塹壕は作った! 一旦入りな! 方針、考えるよ!」
塹壕の周辺を飛び交う魔弾を切り裂きながら、カリンが一同に指示を送る。まずは現状を知らねばならないし、そこから何をすべきかを考えねばならない。冒険者の集団として進むという当初の予定は狂っている。本部の指示を仰ぐ必要があるだろう。こうして、カイト達はついに戦場へと降り立ったのだった。
お読み頂きありがとうございました。




