第1015話 パルデシア砦攻略戦 ――ミッションブリーフィング――
ハンナを連れ帰った翌日。カイトはシェリア、シェルクの両名との間のやり取りを終えると、昼を過ぎた頃に改めてシャリクから呼び出されていた。そうして呼び出された部屋には多数の軍の高官も同席していた。
「こうやって直に話すのは、大陸間会議の時以来か」
「そう・・・なりますか」
シャリクの言葉にカイトも応ずる。接触そのものはこの間の様に何度もあったわけだが、直に顔を合わせるのは夏以来は初となる。
「まずは、改めて感謝しよう。君のおかげで忠臣の亡骸を取り戻せた。それは事実だ。誇って良い」
「有り難きお言葉」
「ああ・・・では、改めて作戦終了に関するデブリーフィングを開始してくれ」
「わかりました」
カイトは改めて、昨日の早朝に起きた一連の出来事を報告していく。朝の内に改めてソラ達との間で情報のやり取りを行って、詳細を理解していた。なので時間もあった事で昨日シャリクに行った簡易報告よりも更に詳しく報告を行う事となった。
「ディガンマ・・・聞いたことがあるな」
「有名か?」
「ああ。東部地方を主に活動拠点としていた剣士だ。<<風双剣>>のディガンマ。おそらくラエリアを中心として活動する冒険者の中では有数の力量を持つ奴だろう」
「東部・・・東に居た頃の伝手で雇われたか」
軍の高官達は情報を交換し合う。どうやら、大半が北部を出身としていた為ディガンマのことはあまり知られていなかったようだ。大国の例に漏れずラエリアも広い。軍の高官だから、と有名所を全員把握しているわけでもないだろう。と、そんな所にカイトが口を挟んだ。
「いえ。彼はおそらく自分から売り込みに行ったのだと思います」
「ふむ?」
「彼は去り際、情報はしっかりと口止めしておけ、というような内容の事を口走っていました。それを考えれば、ハンナ殿の身柄をレゼルヴァ伯が確保の後、おそらく何ら反応を示さない彼女に苛立ったレゼルヴァ伯かセルヴァ候、もしくは両者の周辺がそれを零して、という流れなのでしょう。もしかすると、敢えて道化師が流した可能性もあります」
「なるほど・・・その後、こちらに流れてきたわけか・・・」
「二ヶ月前レゼルヴァ伯だと、一時期『死魔将』の手の中にあった、と考えて間違いなさそうだな・・・なら、あり得るか・・・」
軍の高官達は今までに得られている情報に従って、推測を立てる。ここはそうなのだろう、と全員が一致した認識を持っていた。そうして、カイトは更に己の推測を開陳した。
「はい・・・おそらくハンナ殿が運び込まれたのは二ヶ月ほど前。その後一ヶ月の尋問の後、何ら反応を示していない彼女を見て処置を施したのだと思います」
「ふむ・・・」
「話さなかった、と言ったがそれは自らの意思でと思うかね?」
「いえ・・・おそらくなのですが、話せなかった、が真実ではないかと」
カイトは己の得た情報を頼りに、結論を下す。ここらは前例があるわけではないので、完全に彼の推測だ。そうして、それを断った上でカイトは己の推測を話し始めた。
「これはあくまでも、推測なのですが・・・生物学的には、一ヶ月前の時点まで生きていたのは事実でしょう。ですが論理的に生きていたというのとは、違うのかと」
「ふむ? 続けてくれ」
「はい・・・我々は通常、生きている、死んでいるの境目を意思の有無にて判断しています。そう言う意味では、死んでいると見做すべきだったのではないか、と」
「魂はすでに抜けた抜け殻だけだった、というわけかね?」
「はい」
カイトは軍高官の問いかけを認める。カイトの推測としては、それだ。いわゆる脳死状態と言っても良いかもしれない。が、事態は脳死よりも更に悪い。魂が無い、ということは輪廻転生の輪の中に還ったという事だ。すなわち、死んだと同義である。
「数ヶ月前のクーデターの時点で彼女は魂を燃やし尽くしたのだと思っています。その魂はおそらく、輪廻転生の輪の中に還ったと見て良い。しかし肉体そのものはおそらく道化師により保存されていた・・・意思の無い肉体は障壁も無い。回収する事は容易いでしょう。その後、『死魔将』達はタイミングを見計らい、何らかの目的に沿ってレゼルヴァ伯へとハンナ殿の肉体を譲渡したのではないか、と」
「なるほど・・・筋は通っているな」
カイトの推測をシャリクが認める。流石に『死魔将』の目的に関してはわからない、としておいた。そもそもあの研究所が目的なのでは、というのもカイト達の完全な推測だ。
さらに言えば、研究所に入った理由とてカイトでなければあり得ない、という前提に立つ。明かすわけにもいかない。適切なタイミングまで、彼らの側で管理しておくつもりだった。そうして、幾つかの推測を立てていたシャリクが一つ頷いた。
「わかった。その目的については、こちらで考える事にしよう。ご苦労だった。本件についての報酬はユニオンに預けてある。こちらで受け取って次の戦いの準備に使うなり、本拠地に戻った際に使うなり自由にしてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「ああ・・・以上だ」
「もう戻って良いぞ」
「はい」
シャリクが終わりを宣言し、軍高官が戻る事に許可を下ろす。と、そうして背を向けて部屋を後にした所で、帝城の職員がカイトへと話しかけた。
「カイト・アマネ様ですね?」
「ええ、そうですが・・・」
「預言者様がお呼びです。次の作戦における貴殿の配置や前哨戦についての解説を行う、との事です。案内致します」
「わかりました」
どうやら、レヴィが呼んでいるらしい。なのでカイトは職員に案内されて、今度は軍が接収している区画へと歩を向ける。彼女も軍の高官達とのやり取りの為、帝城に一室与えられたらしい。そんな彼女の部屋だが、入った時は誰も居なかった。それを見て、職員が少しだけ慌てた様子で周囲を見回す。
「・・・あれ・・・?」
「こちらだ。少し席を外していた。終わったらまた呼ぶ。外せ」
困惑する職員の横にレヴィが姿を現した。そうして、彼女の指示を受けて職員が部屋を出て行く。
「そうですか・・・では、失礼いたします」
「ああ。来たか・・・一喜一憂の結末に終わったが、気落ちはしていないな?」
「している暇を与えてほしいんだがな」
カイトはレヴィの来客用の椅子に座ると、即座に肩を竦める。悲しむ余裕ぐらいは欲しかったが、そんなものも与えてくれないのが現状だ。良くも悪くも、慣れている。なのでどうすべきか、というのは分かっていた。
「相変わらず見られるのは嫌か」
「嫌とかそう言う問題ではない。わかっているだろう?」
「まぁな・・・監視カメラの類は全て外してあるか」
「当たり前だ。それが、私を雇用する際の最大の条件だ。不在時に誰かが入るのは好きにしろ。しかし、隠れて私の監視はするな。それが私の条件だ」
カイトと同じようにレヴィが肩を竦める。どうやら彼女は監視されるのは嫌いらしい。まぁ、好きな者は居ないだろう。が、それを契約の中にまで持ち出すのは珍しかったし、飲ませられる者はもっと珍しい。
なお、隠れてするな、というだけなので秘書官やそういう立ち位置でなら別に受け入れる。部屋に監視カメラ等を逐一取り付けるな、というわけであった。解除するのが面倒というわけらしい。
「まぁ、そんな事を話す為に呼んだわけではない。前哨戦の顛末を話しておく」
「わかった」
「まず、前哨戦だが戦いそのものはこちらの完勝と言って良いだろう。基地はほぼ無傷で奪取した。今は先行する部隊が基地の外周部を取り急ぎ拡張している所だ」
「出発は?」
「明日の朝にシャリクがここを出る事になっている。そのまま一気に『ラクシア』へと進軍して、敵の本拠地を叩くつもりだ」
カイトはレヴィの言葉を聞いて、それなら今日一日は休息に費やせる、と判断する。あまり時間を掛けても相手に時間を与えてしまうだけだし、そもそもカイト達が間に合うか間に合わないかなぞ趨勢には影響しない。一日余裕があるだけ良しとすべきだろう。
「ということはオレ達もそれに合わせて、か」
「ああ。貴様らにはシャリクの直轄の部隊の中に入ってもらう。実力的にもそれが妥当だろう」
「わかった。と、完勝つっても基地の攻略作戦を行ったんだろ? こちらの被害は?」
「損害は軽微。敵も元々守り抜くつもりは無かった様子で、基地の自爆システムを作動させていた」
「で?」
「それぐらいが読めない私ではない」
「ですよね」
レヴィのどこか自慢げな表情にカイトは当たり前か、と苦笑する。大方敵が撤退の準備をしている横から予め器用に密偵を潜り込ませて、自爆システムを早々に解除させたのだろう。基地の自爆システムが起動する事を理解していれば、それだけを専門にした者を送り込める。余裕だったと言えるだろう。
「良し・・・じゃあ、これからの行軍ルートは?」
「ああ・・・まず、明日の朝にシャリク率いる近衛兵団の第1~第3師団が出陣する。貴様らはこれに同行する事は先にも言ったな?」
「ああ、聞いた」
「よろしい・・・それでそこからだが、明日の昼にこの奪取した基地に入る。そこで先行していた第4、5師団と合流。作戦の最終調整と負傷者の収容を行う」
「そこで一泊か」
「そうなる。その間に、各地の方面軍と合流。翌日に出陣だ」
二人は地図を見ながら、これからの予定を話し合う。早ければ、今週中にも紛争は終結する見込みだ。遅くとも来週の中頃には終わる。その予定で、作戦を立てていた。
「さて・・・それで敵の陣営だが、流石にこれはわからん」
「わかったら怖いわ」
「まぁな・・・が、こちらの陣形は固まっているし、敵の使うだろう陣形も大凡常道だろう。奇を衒う司令官ではない事は確かだからな」
「と言うより敵に陣形もクソも無いだろ」
「攻城戦だからな」
カイトの言葉にレヴィは笑った。攻城戦だ。取れる手は必然、少なくなる。が、ここでエネフィア独特の事情が絡んでくる。
「が、地球とは違いこちらは城に引きこもっていれば勝てるわけじゃあない・・・出て来るだろうな。有名所はわかってるか?」
「ああ・・・先の基地攻略戦で<<死翔の翼>>というギルドの団員が偵察に来ているのが目撃されている」
「名前は聞いたことがあるが・・・強いのか?」
「ああ、強い。トップの男とは何度か会ったことがあるが、並の使い手ではないな。下手をすると、ディガンマよりも一回り上かもしれん。どこにこれほどの猛者が居たかは知らんが・・・生半可な実力ではないだろう」
「それはまた・・・」
ディガンマでさえ、並の使い手ではなかったのだ。それを一回り上回るとなると、バーンタインにも匹敵するだろう戦闘能力だろう。明らかに超級だった。
「他にもかなり有名所が来ているな。勿論、ディガンマも来ると見て良いだろう」
「嫌になるな・・・こちらのランクSがどれだけ居るか、に応じちゃあガチで敗戦もあり得るぞ」
カイトはわずかに背筋を凍らせながら断言する。いくらカイトでもランクSを相手に即座に勝負は決められない。特に乱戦になればなおさらだ。彼の最大の持ち味はその過剰なまでの出力を背景にした圧倒的な攻撃力。それを完全に解放して戦えば、どんな強敵だろうと数発で倒す事が可能だ。
だがそれは即ち、超広範囲に渡って攻撃が届いてしまう事にも他ならない。つまり、周囲を気にしないで良い状態を作り上げて戦わなければならないのだ。逆説的に言えば、その環境下になければカイトは十分に足止めが可能な存在に落ちてしまうのである。
であれば、最悪敵のランクSの数に応じてはカイトの足止めをやられている間にシャリクが討たれる可能性は十分にあり得た。それを考えれば、こちらにもそれ相応の数のランクS冒険者が必要だった。
「公的に参加しているのは、3人だ」
「げっ・・・最悪だな、それは・・・」
カイトが顔を顰める。たった3人。相手は二桁のランクS冒険者を雇い入れた。それに対して、こちらは三分の一も居ないのだ。
「早まるな。公的には、だ。貴様は当然含まれていない」
「ああ、なるほど・・・それなら、まだ分かるな。誰だ?」
「公的に存在しているのは、カリン・アルカナム。ジューダス・クロート。ジュリエット・ゲニウス」
カイトの問いかけを受けて、レヴィは北部軍に所属する3人のランクS冒険者の名前を挙げる。と、そうして語られた名前の最後に、カイトは耳慣れた名がある事に気付いた。
「ゲニウス? ゲニウスっていやぁ・・・<<知の探求者達>>のフェルナンド・ゲニウスと関係あるのか?」
「<<知の探求者達>>の現ギルドマスターであるジュリウス・ゲニウスの長女だ」
「フェルナンドは死んだか。流石に」
カイトは笑いながら、馴染みの者が今は亡き者である事を理解する。カイトの出した名は、カイトが居た時代のギルドマスターの名だった。そしてジュリウスはその息子の名――フェルナンデスと言うらしい――でもない。であれば、流石に両方死んでいたと見て良いだろう。
「当たり前だろう。とは言え、流石に短命では研究が進まん、と最近になり延命の為の魔術に手を出した・・・いや、最近と言っても200年ほど前の話だがな。子供の内から慣れさせていく必要があるから奴の孫に施して、という形だな。今代のジュリウスはすでに百歳を超えているが、まだ現役だ。生まれる前から専用に調整されたジュリエットは4桁に突入出来るだろうな。その10代ほど後で外的要因と病を除けば不老不死に到れるだろう。そこまで一族が保てば、だが」
「マッド一族め・・・研究の時間が足りないから、と不老長寿に手を出しやがりますか・・・」
カイトは相も変わらずな<<知の探求者達>>の魔術師達の現状に呆れ返った様に吐いて捨てる。まぁ履いて捨てたと言ってもそこには親しみがあり、どこか相変わらずバカな事をやっている、と知り合いにあきれている様な様子があった。例えるのなら、ティナへのそれに似ていた。そして、レヴィも同じように呆れ返っていた。
「まったくだ・・・あの一族は頭のネジが一本ぶっ飛んでいる。腕は、確かなのだが・・・」
「腕は、な」
「腕は、だ」
二人は揃ってその魔術の腕前だけは賞賛に値すると断言すると、同時にため息を吐いた。二人からしても賞賛が出来るほどの腕前らしい。十分、この戦いでの切り札足り得るのだろう。
「気をつけろよ。貴様が勇者カイトだとわかると本気で子供を望まれかねんぞ。言っておくが、ジュリエットはかなりの美貌かつ研究バカだ」
「へいへい・・・お前こそ気をつけろよ」
「私は女だ。問題ない」
「あー・・・魔術は不可能を可能に出来るわけではない、か。女が女を孕ませる事は出来んか。で、腕前の方は?」
「<<知の探求者達>>の代表としてその名に恥じない腕前、と断言しておこう。貴様と話し合った初手は彼女に行ってもらう事にしている」
「そういうことね・・・了解」
レヴィの言葉を聞いて、カイトは自分の提案した作戦が受け入れられていた事をここで知る。元々レヴィが作戦の総指揮を任された事を聞いた時に二人で考案してみたのであるが、どうやらそれを使う事にしたのだろう。その援護役として、彼女が選ばれたらしい。
「ま、そっちは良い。公式ではない奴らは?」
「貴様とユリィ、フロド、ソレイユの四名だ。それに、私もだな」
「お前はともかく・・・フロドとソレイユもか?」
「ああ。この二人は貴様預かりになる。弓兵達は流石に参戦はしないがな」
「オレ預かりってか最後尾の飛空艇の上から援護射撃させろ、って事だろ?」
「そういうことだな」
カイトの指摘をレヴィは認め、正式な書類をカイトへと提示する。それは<<森の小人>>のギルドマスターの署名で、カイト宛の手紙だった。内容は簡潔にフロドとソレイユを一時的にカイトの指揮下に加える事の依頼だ。
ユニオンがこの書類を受け取った日付は、カイト達が来るよりも随分前だ。レヴィが予め二人が加われる様に手を打っていたのである。屁理屈ではあるが、これで南部軍は北部軍に二人が居ても文句は言えない。カイトの判断だ、と言われればそれまでだからだ。
「はぁ・・・貴様が神化ではなく別の力を覚醒させればな」
「すいませんねぇ。手っ取り早く、かつ身体への負荷の少ない技となるとこいつしか思い浮かばなかったんですよ」
「わかっている。だがどうにせよそれでは攻撃力の増大にはなっても・・・いや、一緒か」
「そりゃそうでしょ。オレが、頂点。そして調整の面でもオレが頂点。ちまちま崩していくならまだしも、戦場でバカスカ撃ちまくってる状況で敵の最大の防御を撃ち抜くとなりゃ、それ相応の出力が必要。その繊細さにかけてオレの上を行く奴は居ない。その時点で、一撃必殺は無理と諦めろってわけだ」
「ちっ・・・それが出来れば、攻城戦なぞ貴様を城にぶち当てれば終了という楽な試合なのだがな」
レヴィは苦笑気味に出来もしない事を口にする。その出来もしない事を可能にするのが、<<無冠の部隊>>だ。それも居ないのに楽が出来るわけがなかった。
「はぁ・・・とりあえず。貴様らの配置は本隊右翼だ。<<粋の花園>>の旗艦をシャリクの守りに配置したかったのでな。この位置になった。更には貴様の初手の事もある。この位置でなければ、貴様の運用が出来ん」
「ふむ・・・ということは、戦場への突入は第二陣か」
「そうなる。揚陸艇で降下する部隊だな。切り込み隊ではないが、出来るな?」
「適度に砲撃して、頃合いを見て突撃か・・・敵の本隊とかち合う事になりそうか・・・ま、やってみる」
「頼んだ」
カイトは最後にレヴィから自分の配置についての指示書を受け取って、立ち上がる。聞くべきことは大半聞いておけた。これで、後は体を休めるだけだ。が、その直前。一応聞いておかねばならない事を、レヴィは思い出した。
「・・・わかっていると思うが」
「わーってるよ。そんな心配しないでもな。見境なく突撃なんぞやらん」
「なら、結構だ・・・が、けじめは、付けさせるのだな?」
「ああ」
カイトは背中越しに問いかけられる問いかけに、短くもはっきりと断言する。数多の少女らを外道の所業の食い物にしたデンゼルだけは、決して生かしてはおけなかった。勿論、私怨も多分に含まれている。だがこの大義名分もまた、事実ではあった。
「奴にはお似合いの殺し方をしてやる・・・地球で得た冥府の神の力。それを使う」
「使えるのか?」
「・・・些か、無茶はするがな。こっちでも可能ではある」
「あまり無茶はするなよ。おそらく二戦目の『ラクシア』攻略戦だろうが・・・わかっているな。一日目で終わりではないぞ」
「あいよ。なーに、安心しろ。単にイナンナの冥界下りに見立てて、ちょいと恐怖を味わってもらうだけだ」
「そこらは、好きにしろ」
別にレヴィとしては、敵をカイトがどう殺そうと気にする必要はない。勝手な行動さえしてくれなければ、それで良い。というわけで、その会話を最後にカイトは部屋を後にして、明日からの連戦に備えてこの日はしっかりと身体を休める事にするのだった。
お読み頂きありがとうございました。
次回予告:第1016話『パルデシア砦攻略戦』




