ハーレムがいいとか思っていた時期もありました。
<ハーレムがいいとか思っていた時期もありました。>
ボクも前世を含めれば十数年は生きてるけど、こんな殺意を持って刃物を突き立てられるなんて初めての体験ですよ。
どうせ刃物を突き立てられるなら、ちょっとメンヘラな美少女に浮気がバレたりして刺されるほうが良かった。
もちろん浮気相手も美少女で、いろんなタイプの六人ぐらいのハーレムとかでもいいよね。
いやいや、ボクは真面目でいいスライムだから、愛する人はキミ一人だけだよ。
うんうん、キミだけだから安心してね。だから刺さないで、おねがい。
オッサンに刺されても、嬉しくもなんともないよね。
おまけに痛くもなんともない。アレ?
ボクの体に刺さったはずの剣には、刃が無かった。
なにこれ。ドッキリだったの?
あるよねー、刺したと思わせといて刃が引っ込むオモチャ。
なんだ、脅かさないでよ。いやー騙されたな、ボク。恥ずかちい!
「なっ、剣先が!」
「ナイフまで溶かしやがったぞ……。」
「これ高かったのに!」
ボクが吸収したみたい。なにこれ無敵?
実は本当に最強だったんだね!知らなかった!
あ、ナイフはごめんね。弁償してあげようにもノーマニー、オーケイ?
このやろー!よくも殺そうとしたな!
いくらでもかかってこい!
ウソです、ごめんなさい。来ないで。近寄らないで。触らないで。
おまわりさんこの人チカンです。ホモのチカンです。
「いったいなんなんだ?」
「とりあえず戻ろう。治療も必要だし、俺達じゃ手に負えない。」
「そうだな。」
「いてぇ、いてぇよ…。」
オッサンたちは帰っていった。
ボクの体はオッサンの手と剣で大きくなった。
ワザとじゃないんだよ、ごめんよ。オッサン。
オッサンたちが帰って行ったあと、木がまたぶっ倒れた。
もうそろそろ、ボクの入れる木が無くなりそう。
でも、なんか無敵っぽいし、大丈夫かな?
いやいや、死なないからって、攻撃され続けるのはいやだよ。
どうせ死なないからってイジメられ続けたくないよ。
みんなそうだろ?この世界は愛だろ?
ラブ&ピース!イジメをなくそう!
なんでお前らイジメとかすんの?
それはね、この世界が狭いからだよ。狭い水槽の中では共食いが発生するんだよ。
さあ人口を減らそう!戦争は無くならない!
いやいや、ボクは戦争とか嫌いですから。
死にたくないよ。傷つけたくないよ。戦いたくないよ。
助けて、おかあさーん!
そういえば、ボクっておかあさんいるの?
メタルスライムってどうやって産まれるんだろう。
ボクもそのうち子供とか産むのかな。そもそもメスのメタルスライムっているの?
あれ?ボクってメスなの?オスなの?
そもそもメタルスライムに性別はあるの?雌雄同体?
チンコついてるの?内臓は無いぞう。内臓なかったらタマゴも産めない。
もしかして、ちぎれたら増える系?
それとも、体のまわりに小さいのがいっぱいできて、落ちたら別個体になるとか。
でも、仲間が一匹もいないしなー。
ボクを産んだメタルスライムがいるとして、ボクの視界から消えるのは無理だと思う。
だって、動くのがすごく遅いから。
それに、すごく目立つから。キラリと輝いてるから。
じゃあボクは自然発生したのかな?
美少女どころか、メタルスライムの伴侶も無理なの?
他のモンスターと異種婚するの?他のモンスターっているのかな。
今のところ、タヌキとか鳥しか見てない。
もっと遠くに行けば他のモンスターもいるのかな。
でも、きっと触ったら吸収しちゃうね。
変な雑種を作る心配はないけど、子作り前に吸収とかカマキリもビックリだよ!
仲間もいない、子供も作れない、動くのが遅い、交流すらできない。
何をしたらいいんだろう?
ボクはなんのために生まれて、どこへ行くの?
ボクは考える。ゆえにボクあり。
フフフ、ボクはアリを吸収したこともあるんだぞ。
そういえば、一度も色を見せないで育てた人間に色を見せたらどうなるかっていう思考実験あるじゃん?
あれ意味ないよね。だって自分の体が白黒じゃないもん。どうやったって色を見ちゃうよ。
ほら、手のひらを太陽にかざしてごらん。ウギャー?!目が!目が潰れる!
良い子のキミ!太陽はけっして見てはいけません……。
太陽を見てしまうと、一週間後にテレビから太陽が出てきますからね。
ほら!キミの後ろに太陽が!!
まぁいいか。とりあえず進もう。ボクには進むしかない。
だって他にやることがないんだもの。
もう木に隠れるのもやめよう。バレバレだし。
今思うと、なぜ隠れてたのかわかりません。
堂々としてたら、ただの石と思われて見つからなかったんじゃない?
もー、ボクってバカだなあ。
でも、そんなバカなボクも大好き。LOVE。
進むついでに、もうちょっと体を大きくしちゃおっかな?
ちょっとぐらいなら今とそう変わらないし、きっと目立たないよね。
フフフ、漬物石で終わる男じゃないのだよ、ボクは!