棒人間と劇薬のおねだり
<棒人間と劇薬のおねだり>
またボクは夜中にうるさかったらしい。
廊下に落とされていた。なんだか落ちている位置的に投げられた感じするんだけど。
リリカに聞いてみたら、「クマさんごめんなさい。」って言ってたらしい。
いやさ、ボクを投げたかどうか聞いてるんだけど?!
そして昼過ぎの、夜間勤務のお母さんが起きてきた時。
そんなちょっとお母さんがぼんやりとした時間に、リリカはおねだりを始めた。
寝起きに頼まれると断れないという高等テクニックだそうだ。こわい。
「お母さん、ナテイアンフェタートと、ブロキナスチン塩酸塩が欲しいんだ。」
「ダメよ? 劇薬指定で子供には渡せない。危ないわ。」
「でも、それがないとゲンさんが死んじゃうの。」
「えー。ちゃんと説明して。」
「んーと、詳しくは忘れたけど、占いのおばあさんが、ゲンさんを助けるために必要だって。」
おいー!全然説明になってないよー!
リリカが魔薬の原料のメモをお母さんに見せると、お母さんは眠そうな顔から仕事の顔になった。
「この材料……カルミナさんが。……そうなの。じゃあ、お母さんがカルミナさんに直接渡しておくわ。」
「ありがとう、お母さん!」
占い師のババアはカルミナさんと言うんだね。知らなかった。
じゃなくて!劇薬をそんなホイホイ横流ししていいの?!
寝起きマジックなの? それともババアがすごい人なの?
こっそりあとでリリカに聞いてみると、お母さんは医療従事者だから、誰かが死にそうって聞くとわりと融通きかせてくれるらしい。
本当かな?モグリの闇医者だって言われても驚かないよ?
昨日に稼いだお金で、リリカは乾物屋にいって何かの干物を買っていた。
これも原料の一つらしい。何の干物かは知りたくないような形だった。
世の中には知らないほうがいいことがいっぱいあるよね!
色んなことを知れば知るほど、感動がなくなってつまんなくなるよ。
何も知らないってことは、思考がなんの制約も受けず、自由な発想が可能になるんだよ。
ああ、ボクはバカで良かった!この世界に祝福あれ!
さて、足りない原料はあと一つになった。それが難しいらしい。
何が難しいかって、日帰りでいけない場所にあるから、お泊まりNGのリリカが行けないのだ。
おまけに、やっぱり危険なんだって。
そんなわけで、ボクが一人で取りに行くことになった。
リリカが、今夜はお母さんが仕事休みだから、今から一人で行ってきてって。
なぜだろう、すごく寂しい。家族っていったいなんなの?
ボクの疑問に答えてくれる人はいなかった。
そしてボクは、紙飛行機に乗せられて、高台から飛ばされた。
アイキャンフラーーーーーーーーーーイ!
ボクは空の旅を楽しんだ。棒人間の隠された力なのか、紙飛行機は思ったとおりに飛んでくれた。
飛びまくった。ループ飛行まで可能だった。尾翼から煙が出ないのが残念だった。
高度を上げると、美しい景色が眼下に広がった。
広がる田園風景。遥か彼方に海が広がってきれい。。
ボクが暮らしている街は、ライトグレーの街道に雑多な形の家が集まっていた。
もっと景観を大事にしたほうがいいと思う。統一感とかまるでないよ!
空を飛ぶと、目的地がものすごく早い。
目的地であるルード渓谷にはすぐ辿り着きそうだ。
……えっ、これ、帰りどうすんの?




