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「ボクはわるいスライムじゃないよ!」……そんなふう考えていた時期が私にもありました。  作者:
次こそ人間に生まれたいって願ったら、棒人間に転生した。
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棒人間と棒状のもの

<棒人間と棒状のもの>


 クマを目前にして死んだふりをするアホの子のリリカ。

そして襲いかかる双頭のクマさん。

ボクは気がついたら、クマを突き飛ばしていた。


 ボクが思い切り突き飛ばした双頭のクマは、体が変な方向に捻れて、地面に倒れて動かなくなった。

三十秒ほどリリカと二人で動かなくなったクマを見つめた。

地面にじわりと赤い血溜まりができていった。


 すごい。クマ即死。ボク最強。ヤバい。

やはりボクは今世でも最強チート能力を保有しているみたいだ。

最強は嬉しいけど、それより普通に人間にしてよ!


 そして気付くと、ボクの手には棒が四本あった。意味がわからない。

ボクの体を構成している五本の棒とよく似ている。というか同じ。

どこから出てきたんだろ?


 ボクの体と同じ棒は、ボクにくっつけたり外したりできるみたいだ。

だから、ボクは股間にそっと棒をくっつけた。なんでかっていうと、男だから。

そしたら笑顔のリリカにへし折られた。かわいくないって。ひどい。


 たぶん、この棒はレベルが上がると貰えるに違いない。

いきなり強そうなクマを倒したから一気にレベルが上がったんだ。

レベルが上がったら、だいたいスキルとか技とか魔法が貰えたりするだろうに、ボクは棒。なんで?


 ボクは、意味のよくわからない棒で、後頭部に『升』と書いてみた。

升っていうのは、隠語でチートのことだよ。チートをくっつけると(マス)に見えるでしょ?

それについては、リリカの許容範囲内だったらしくて、特に何も言われなかった。

さすが微妙ファンシーのリリカ。意味すら聞きゃしねえ。


 ボクとリリカはギリギリ、帰りのバスに間に合った。危なかった!

帰りの五十分、リリカはヨダレを垂らしながら寝て、ボクは窓の外を眺めてた。

流れていく木々に、移ろう景色に、ボクの心は揺れた。


 ヤバい。クマさん即死ヤバい。ボクはまた世界の危険物なのかな……。

今度もボクはこの世界をぶち壊してしまうのかもしれない。

そうしたら、また独りで長い時間を過ごすのかな。


 いや、ボクはファンシーな魅力の棒人間!

美少女の心を癒やすために舞い降りたサポート妖精!

リリカはきっとボクの助けで魔法少女とか伝説の美少女戦士とかに変身するんじゃない?

そのためには、この棒でステッキ状の何かを作成しないといけないかもしれない。


 ボクは窓からオレンジ色に染まった空を見ながら、ステッキ状の何かのデザインを考えた。

デザインが決まらないうちにバスは停留所に到着してしまった。


 口の端にヨダレの跡が残るリリカが、仕事斡旋センターへ採集したカクショウを提出した。

重さを量って何枚かの紙幣と硬貨を貰ったよ。いやー、今日はとってもよく働いた!


 家に帰ると、リリカがベッドに倒れこんで、ぽつりと言った。


「ゲンさん、ありがと。」

「えっ。どういたしまして。」


 なんだ、リリカも良いところあるじゃん。

そう思ってた。その時までは。


 その日の夕飯で、ボクは無理やり顔に煮えたぎったシチューを押し付けられ、

口の位置がわかりにくいって言われてペンで顔を描かれた。

『゜へ゜』しかもこんな顔。描くならイケメンにしてよ!


「食べないと死んじゃうんだよ!」

「ほら、あーん!!はやく!」


 こんなに怒気を孕んだ「あーん」をされる日が来るなんて思ってなかった。

「あーん」ってもっと幸せピンクなものじゃなかったの?こわい。

リリカのお母さんは微笑ましそうに見てるだけだし。見てないで助けてえええ!


 心の隅で、リリカはボクのためにしてる、ボクのためにしてると唱えて頑張った。

ボクの顔は白濁したシチュー汁まみれになった。

いちおう前向きに善処してみたけど、やっぱりどうにも食べられなかった。


これは早く治さないとヤバイ。

じゃないと、リリカの「あーん」がトラウマになって食べれなくなりそう。こわい。


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