棒人間と初めてのお仕事
<棒人間と初めてのお仕事>
今まで水しか飲んでなかったボクだけど、棒人間でも食べないと死ぬというのがわかったとたんに、なんか頭がふらふらする気がしてきた。
は、はやく薬を作らないと危険かもしれない!
「リリカ、どうするの?どうしたらいい?」
「とりあえず、今日の仕事を見に行こー。お金がないと買えないのもあるし。」
リリカに連れられて、仕事斡旋センターに来た。
掲示板いっぱいに小さなメモ紙が貼ってあって、ご近所さんの手伝いや、、採集や、害獣討伐みたいな各種雑用が引き受けられるらしい。
普通だったら興味津々で見れるだろうけど、ボクはいま命が危険なんだよ。
素早く稼げる仕事ならなんでもいい!とリリカに告げると、リリカが選んだのは採集の仕事だった。
「ちょっと危ない場所なんだけど、魔薬の原料もついでに取れるし、早く稼げるよー。」
「そんな都合のいい場所があるの?早く行こうよ!」
リリカの説明もろくに聞かず、ボクは道もわからないのに飛び出した。
そして車に思いっきり跳ね飛ばされた。無傷だった。さすが棒人間。
「うーん、ゲンさんに首輪とリード買わなきゃかな?」
やめて!ボクはペットじゃない、ヒモなんだ!
ヒモに紐をつけるのはやめて!
この世界の車は、自導車という、行き先に向かって勝手に走ってくれる便利なものなんだって。
リリカは原理とかも色々教えてくれたけど、どうにも頭に入らなかった。
右耳から左耳へそのまま抜けて出ていった。耳ないけど。
普通は障害物も避けたり止まったりするんだけど、ボクはわざわざぶつかりに行ったみたい。
結果的には無傷だったけど、ただでさえ少ない余命をゼロにする所だった!危険!
勢いに任せての飛び出しはやめよう。
リリカとボクは、乗り合いの自導車、つまりバスに乗って五十分。
郊外の山道へと辿り着いた。
「三時間以内に戻らないと、帰れなくなるから、頑張ろうね!」
一日三本運行の田舎のバスこわい。
ボクたちは獣道から山間に入り、目的のものを探そうとした。
「ところで、何を探すんだっけ?」
そういえば、ボクは何を探すのか知らなかった。
そんなボクに、リリカは草を引きちぎって渡してくれた。
「ゲンさんはこれ取ってて。仕事のやつ。袋いっぱいいるから。」
カクショウというギザギサした葉がミツバみたいにくっついてる長い草だ。
ボクはプチプチとカクショウを見つけては取り、ブーケみたいにまとめて袋にふわっと入れてみた。
うん、芸術的! さあ、どんどんしまっちゃおうね。
この草は乾燥させて粉末状にするとかで、保水してなくてもいいらしい。
ボクの芸術は、すぐヘコたれて、へなへなになってしまった。
こんなに簡単に集まっちゃったけど、いいのかな?
リリカを見ると、地面を見ながらどんどん奥へ入っていってた。
はぐれたらヤバイ。主にボクが。慌ててリリカの後を追った。
迷子にはなりたくないの。
リリカに追い付くと、魔薬の原料のひとつがなかなか見つからないらしい。
デーラドゥーナという毒草なんだって。
見た目は警戒色の赤い花がついてるから目立つってことだけど、数が少ないんだろうね。
足が棒になるくらい探しまわった。あ、ボクの足はもともと棒だった。
そしてようやく見つけた赤い花。デーラドゥーナの特徴が当てはまる。
駆け寄ったその数メートル横には、クマがいた。双頭のクマが、めっちゃ威嚇してきてる。
「リ、リリカ、ちょっと危ないってこういうこと?!」
「う、うん。たまに襲われて死んでる人がいるの。」
そういうことは、早めに言ってよー!
いや、ボクが聞いてなかった気もするけど。
クマが出たらどうするんだっけ?
「ゲンさん、死んだフリするよ!」
小声でそう言うと、ぱたりと倒れるリリカに、クマが近づいてきた。
それ一番やっちゃダメなやつですからあああ!
倒れてじっとしてたら腸喰われるから!
リリカに向かって腕を振り上げる双頭のクマ。
もうだめだー。




