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「ボクはわるいスライムじゃないよ!」……そんなふう考えていた時期が私にもありました。  作者:
次こそ人間に生まれたいって願ったら、棒人間に転生した。
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棒人間と占い師のババア

<棒人間と占い師のババア>


 すがすがしく爽やかな朝。

ボクは美少女と同じ布団で枕の横に寝てたと思ったら、廊下に落ちてた。

どんな寝相だよ!ボクってそんなに寝相悪かったっけ?

前世では身動き一つせずに寝てたのに。ふしぎ!


「ゲンさん……。」

「あ、リリカ、おはよー。」


 リリカがすごく眠たそうに起きてきた。

目をこすってあくびをして、ちょっと怒ってる。なんで?


「ゲンさん、夜中ずっとうるさかったよー。」

「えっ。すみません。ごめんなさい。」

「あんまりうるさかったから、廊下に出しちゃったよ。」


 ああ、それで廊下に落ちてたのかあ。

ボクって寝言とかひどかったかな?棒人間だからなの?

でもだからって廊下に放置するなんて、リリカさんひどい。



 リリカのお母さんが帰宅して、朝食を食べてる間にまたボクは水を飲む。

ぜんぜんお腹は空かない。棒人間の体は便利だなあ。

お母さんが寝てしまうと、うるさくしてはいけないので、リリカと一緒に外に出た。


 リリカは暇な昼には、仕事斡旋センターで簡単な仕事を引き受けたりしているらしい。

学校みたいなのは近くには無いんだって。子供も働いているとは、世知辛い世の中だね!

ボクもやれる仕事があるならやりたいな。ヒモ生活もいいけど、お小遣いも欲しいの。


「ちょっとその前に行きたい所あるから来て。」


 リリカに言われるまま、大通りから裏通りの細い道に入ると、ぼろぼろの掘っ立て小屋についた。

木の板に『卜占(ぼくせん)』と書いて張ってある。


「ここって?」

「占いのおばあさん。こんにちはー!」


 リリカさんたら、こんな裏通りにまで入り浸っているなんて。

大人の目が無いからって非行少女寸前なのかもしれない。

ボクが正しい道に導いてあげないと。ハッ、もしかしてそのために出会ったの?

さあボクのムネに飛び込んでおいで!カモーン!


「何か用かね、お嬢ちゃん。」

「ゲンさんを見て欲しいの。」


 占いのおばあさんは、真っ黒のボロ布を身にまとった汚くて小さいババアだった。

皺だらけで、長い白髪を一つに縛っている。

なに?ご老体にボクを視姦させるプレイだったの? こわい。


「ゲンさん?」

「この子のこと。触ろうとすると怯えるし、夜中にすみません、ごめんなさいってずっと泣いてるの。」


 えっ。なにそれこわい。

ボクってそんなことしてたの。女子に泣いてる所見られるとか恥ずかしい。

ちょっとした弱みならギャップ萌えでウケるの? それなら許す!


「前の飼い主にいじめられたのかもしれなくて。」

「ん?こ、これは……?!」


 誰にも飼われてないから!

というか、驚くよね、棒人間だしね。

しかも夜中にすすり泣く恐怖の棒人間! ハゲてるから毛は伸びない。


「ゲンさんと言ったか。とんでもない量の業じゃな。」

「業?」

「そうじゃ。アートマンを見るに何十億、何十兆の命を背負っておる。」

「あーとまん?」

「個の中心にあるものじゃ。一体何をしたんじゃ? これはひどい。

ふーむ?自分の意志に関わらず、世界のすべてを食い尽くしたのか。」


 たしかにボクは星を丸ごと飲み込んだから、普通の人よりはだいぶ殺っちゃってると思う。

よくわからないうちに、ボクの中身をすべてを全裸にされて見られてしまった。エッチ!

え?もちろん体はずっと全裸だけど。丸出しだけど。


「そうか……。命を体に入れるのが恐ろしくて、何も食べられないようじゃ。

触れるだけで殺してしまっていたから、触られるのも嫌うようじゃな。」


 えっ、ボクってそうだったの?自分でも知らなかったよ!

じゃあ、首根っこ掴まれたくないって思ったり、手を繋ぎたくないっていうのは、弱点とかテレじゃなかったのかー!!


 自分さえわからない部分まで一目見ただけで把握するとは、このババアなかなかやるね!

ボクのことをボクより知ってるんだから、もう心の友と言ってもいいかもしれない。

初対面なのにボクの心の友になる権利を持つとは、そんな人なかなかいないよ?


「ふーん。よくわかんないけど、なんとかできない?」


 リリカは理解する気がまったくないよね!

間違いなく、ボクを撫でまわしたり、餌付けする気しかないよね!

拾われる人を間違ったかな……。チェンジ! 無理ですか。そうですか。


「わしが全盛期の時の力をすべて使えば、業を減らしてやれたかもしれんな。」

「今は無理なの?」

「うむ、今のわしの力では無理じゃ。これ以上詳しくも見れぬ。」

「えーと、ボクは別に今のままでもいいよ?」


 ボク自身は困ってないもんね。

夜中うるさいなら離れた所で寝るし。リリカが寂しいなら耳栓をあげてもいいかもしれない。


「それがな、このまま水しか飲めないでいれば、二週間も経たないうちにおぬしは死ぬ。」

「えっ?」


 食欲なくて便利って思ってたけど、人間なのでちゃんと食べないと死ぬらしい。

もっと他に人間らしくすべき所あるんじゃないの?!

顔とか!体とか!頭身とか!


「そんな!なんとかならないの?」

「ううむ、力を戻す魔薬というのがあるが、原料が揃っておらん。」

「じゃあ、わたしたちが集めてくるね。何がいるの?」

「普通に集めるのは難しいぞ。」

「とりあえず教えて!」


 リリカの押しの強さがこわい。

この子はきっと将来的に肉食系女子になる。そんな予感がした。


「では、集まったらまた来るがよい。」

「じゃあ、またね!」

「どもでしたー。」


 ボクたちは、力を戻す魔薬の原料のメモをもらい、掘っ立て小屋から離れ大通りへ戻った。

リリカはメモを眺めながら、何かを書き加えてる。


「んー、この辺はお母さんに頼んで、これとこれは取りに行くっと。」


 リリカの知っている材料ばかりみたい。

入手は難しいって言ってたけど、どうなるんだろう?


 ボクが無理やりごはんを食べればいいんじゃないかと思ったけど、食事にチャレンジした時にまったく食べれる感じがしなかったんだよね。

点滴があるといいんだけどなー。でも、点滴するにも棒のどこに刺すのかわからないよ。

棒人間もあんがい不便だね!

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