「ボクはわるいスライムじゃないよ!」……そんなふう考えていた時期が私にもありました。
<「ボクはわるいスライムじゃないよ!」……そんなふう考えていた時期が私にもありました。>
かみさまって本当にいるの?
ボクが何かしたの?この人たちだって死にたくなかったはずだよね。
なんでこんなに簡単に、たくさん、死んでいってしまうの?
ボクは最強になりたかったけど、誰かを虐殺したかったわけじゃなかったよ。
ただ、バカにされずに、いじめられずに、みんなと仲良くしたかっただけ。
どうしてこうなった。
ボクが押しつぶして殺してしまった人たちが、ボクの体の糧になって、ボクが大きくなる。
大きくなったボクにぶつかったモノが、人が、またボクの体の一部になる。
そして、さらに大きくなったボクに、またモノや人がぶつかってしまう。
もう、止まらない。止めようがない。
ボクの体なのに、ボクの意思ではどうすることもできない。
どうしてこうなった。
「はやく、はやく逃げるんだ!」
「家に入って、隠れるのよ!」
呆然としている人も、逃げようとしている人も、すべてボクの体に飲み込まれていく。
ボクはただ必死で、なるべく動かないようにしていた。
それでも、ボクの体の下のほうで、みしみしと音を立てて、すべてが飲み込まれていく。
あの子が隠れている家も、祈りを捧げる老婆も、かわいい犬も、小鳥も、地面に落ちてるゴミも、、宝石も、大人も、子供も、お母さんも。
すべてが等しく、ボクの体に飲み込まれて消えていった。
豪華なお城も、美しい神殿も、のどかな集落も飲み込まれた。たぶん、あのきれいな兄妹も、リーダーも、団体さんも、おねーさんも一緒に飲み込んでしまったんだろう。
どうしてこうなった。
見渡す限り、天をつく高さの巨大なボクに溢れている。
もしかしたら、運良く逃げられた人もいるかもしれない。
でも、ほとんどがボクの中に吸収されただろう。だって、もう陸地が見えなくなってる。
ボクはそっと、海の中に入っていった。
美少女と、おっぱいと、リーダーが一緒にいるんだから、きっと寂しくない。
海の底で、双子の美少女が歌で呼び出してくれるまで、眠っていよう。
ボクはいいスライムなんかじゃなかった。
いいやつなんかじゃない。天使なんかじゃない。
むしろスライムですらない。ボクは災害だ。天災だ。
そんなことに気付いたボクは天才だ。
なんでボクはわるいスライムじゃないよって思ってたんだろう。
ボクはわるくないけど、よくもなかった。
普通の、ふつうのただのバカです。みんな許して。
すみません、反省しています。
僕の前世の行いが悪かったってわかってます。
なんの努力もしてませんでした。ダラダラと甘えて生きてました。
でもだからって、ここで死んだ人たちはみんな悪くないでしょ?
どうして死ななきゃならなかったの。どうして。
ボクのせいで死ぬほど、みんな悪いことをしてたの?
ごめんなさい、何もかもボクが悪かったです。
次はきちんと頑張ります。名実ともに良いことをします。
だから、次こそは人間でお願いします。
そして、ボクの体と意識は、ゆっくりと海の底へ沈んだ。
『天災』が沈んで五年後、荒れ果てた彼の地は緑の大地に少しずつ戻っていった。
そして十三年後、船に乗ってやってきた男は彼の地を見つけ、新大陸発見とした。
新大陸には人が集まり、栄えた。
数万年ほど経つと、水底の『天災』が海産物を吸収し続けていたのか、陸地が海に沈み始めた。
そしてさらに数億年の後、この星は『天災』に全てが包まれて、美しく輝く星となったのである。
どうしてこうなった!




